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フッ素にはむし歯予防効果がある?フッ素の働き・むし歯予防の方法を解説

フッ素にはむし歯予防効果がある?フッ素の働き・むし歯予防の方法を解説

近年の日本では、フッ素入り歯磨き粉の使用やフッ素塗布は、ごく一般的なむし歯予防となっています。

フッ素はむし歯予防の効果があるといわれていますが、実際のところはどうなのでしょうか。そもそもフッ素とはいったいどのようなものなのでしょう。

今回はむし歯予防においてフッ素がどの程度効果があるのか、またフッ素入りの歯磨剤の効率的な使用方法についてなど、フッ素に関するさまざまな疑問にお答えします。

フッ素の働きやむし歯予防効果

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フッ素とはどのようなものですか?
厳密にいうとフッ素とは元素名(F2)で、フッ素元素がそのまま(気体)の状態で天然に存在することはほとんどありません。
フッ素は水に溶けるとフッ化物イオンという化合物に変化します。フッ化物イオンは、海水を含む水や土壌などのあらゆる自然環境に存在しており、食品にも含まれています。
例えば海水中のフッ化物濃度は1.3ppmで、食品なら穀類は0.1〜2ppm・卵類なら0.2〜0.5ppm・野菜類は0.1〜1ppm・お茶は0.5〜2ppmという濃度です。
このように自然の状態で食品中にもフッ化物が含まれているため、私たちは知らない間に日常的にフッ素を体内に取り入れています。むし歯予防に利用されているのはこのフッ化物の一種で、以下のような種類があります。
  • フッ化ナトリウム
  • フッ化第一スズ
  • モノフルオロリン酸ナトリウム

これらのフッ化物は、市販されている歯磨き粉の成分表に表示されていることも少なくないので、一度確認してみてください。

フッ素にはむし歯予防効果があるのですか?
フッ素のむし歯予防効果については、さまざまな調査が行われています。
新潟県のある村で全乳幼児を対象に行われた調査では、むし歯数が69.5%減少し、むし歯がまったくない3歳児の割合は17.7%から51.5%に増加したという結果が出ています。長期間にわたる調査でもフッ素のむし歯予防の効果は証明済みです。
しかしフッ素を利用することでむし歯が100%予防できるわけではなく、歯磨き習慣やその他のむし歯予防対策も大切です。
フッ素の働きやむし歯を予防するメカニズムを教えてください。
まずはむし歯になるメカニズムを簡単に解説します。
  • 糖質(しょ糖)を摂取すると口内のむし歯原因菌(歯垢)が増殖
  • むし歯原因菌が糖質から酸を発生させる
  • 酸により歯のエナメル質からリン・カルシウムが溶け出す(脱灰)
  • 脱灰が進行し、エナメル質に穴が開く(う蝕)

このう蝕の状態がむし歯です。むし歯を防ぐには、脱灰の段階でリンやカルシウムを補充することです。そうすれば歯が修復されう蝕しにくくなるでしょう。その歯の修復に効果のある物質がフッ素です。
フッ素が歯に付着すると、エナメル質のハイドロキシアパタイト結晶がフルオロアパタイトという結晶に変化します。フルオロアパタイトは大変安定した結晶構造を持ち、酸にも強いという性質があります。
そのため、歯質が強化されむし歯になりにくくなるのです。またフッ素には唾液中にあるカルシウムやリンを歯にくっつける再石灰化という働きもあり、初期の小さなむし歯なら治ることもあります。
その他にもむし歯原因菌が酸を作り出す過程を邪魔したり、フッ素自身が抗菌作用を示したりすることで、よりむし歯になりにくい口腔内環境を作れるのです。

フッ素によるむし歯予防にはリスクはありますか?
前述したとおりフッ素は食品にも含まれていますので、過剰に摂取しない限り問題はありません。ただし過剰摂取した場合は、急性中毒になる可能性があります。
しかし、一般的な食生活や医療現場・むし歯予防におけるフッ素使用量ではほとんど心配がありません。幼い子どもがいる家庭などは、万一を考えて次のようなことに注意しておくとよいでしょう。
  • 幼児が歯磨剤を使用する場合は必ず見守る
  • フッ素配合の洗口液などは幼児の手の届くところに置かない

フッ素によるむし歯予防の方法は?

歯を見ている女性

フッ素によるむし歯予防の方法を教えてください。
フッ素を使用したむし歯予防には以下の方法があります。
  • フッ素塗布(フッ化物の歯面塗布)
  • フッ素洗口(フッ化物洗口)
  • フッ化物配合歯磨き粉の使用

フッ素塗布は歯科医院で行われているむし歯予防です。高濃度のフッ素の液やゲルを直接歯に塗布する方法で、歯科医師と歯科衛生士のみ行うことができます。
フッ素塗布は、乳歯や永久歯の生え始めの時期に行うと効果的です。通常は年に2〜4回程度定期的に塗布を行うことで高いむし歯予防効果が得られます。
近年では、さらに手軽にむし歯予防を行う方法としてフッ素洗口があります。これは低濃度のフッ素水溶液をお口に含み、30秒から1分程度の間ブクブクとうがいをしてから吐き出す方法です。
うがいをするときは上を向かずに前を向いて行います。上手にうがいができる年齢という制限はあるものの、学校や保育園など集団の場でも実施しやすくて経済的であることから、世界的にもメジャーなむし歯予防の方法となっています。
またフッ素配合歯磨き粉によるむし歯予防も、日本を含め多くの国で利用されている方法です。

歯科医院でのフッ素塗布に関して詳しく教えてください。
フッ素塗布に使用するフッ化物にはゲルと溶液があります。塗布方法には以下の3つの方法があります。
  • 綿球法
  • 歯ブラシ法
  • トレー法

綿球法は綿球や綿棒に溶液タイプのフッ素を浸して歯面に塗布する方法です。
歯ブラシ法では歯ブラシにゲル状のフッ素を乗せ、歯磨きの要領でフッ素を塗布します。
トレー法とは、既成または各個人の歯列に合わせたトレーに、溶液かゲル状のフッ素を入れてそれを噛むことで塗布させる方法ですが、日本で一般的に用いられているのは綿球法か歯ブラシ法です。
塗布終了後はお口に溜まった唾液を吐き出してもらいます。うがいや飲食は塗布後30分〜2時間は避けてください。塗布は定期的に行うことで高いむし歯予防効果が期待できるので、歯科医院では次回の塗布時期の目安や予約なども行います。

フッ素塗布は大人でも受けられますか?
歯科医院では、大人のフッ素塗布についても行っているところが多くあります。フッ素塗布は、乳幼児や子どもだけでなく大人のむし歯予防にも効果があると報告されています。
知覚過敏を和らげる効果もあるため、大人の方も定期的にフッ素塗布を受けることをおすすめします。
歯科医院でのフッ素塗布は保険が適用されるのでしょうか?
フッ素塗布は予防治療にあたるため、基本的には保険適用外となっています。
しかし、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)に認定された歯科医院であれば、毎月1回予防目的の診療が保険適用となります。
歯磨き粉などによるセルフケアでも効果は見込めますか?
フッ素配合の歯磨き粉によるセルフケアは、正しい歯磨き粉の量と歯磨き方法で行えばむし歯予防に効果的だといわれています。
また歯磨きの後にフッ素配合の洗口液を使用するとより高い効果が期待できます。

フッ素配合歯磨き粉の効果的な使い方

子供と歯磨きをする男性

フッ素配合の歯磨き粉は毎日使用した方がよいのですか?
フッ素配合の歯磨き粉は毎日2回の使用をおすすめします。日常的に利用することで、より高いむし歯予防効果が期待できるでしょう。
なおフッ素配合の歯磨き粉は、フッ素濃度が1,500ppm以下に定められた医薬部外品です。適切なフッ素の使用量は年齢によって異なるため、フッ素濃度は使用する人の年齢に応じて変えてください。

編集部まとめ

家族で歯磨きをする写真

フッ素は、日常的に使用することで、むし歯を予防したり初期のむし歯を治したりできます。

歯科医院でのフッ素塗布のほかに、フッ素配合の洗口液やフッ素配合歯磨き粉などのセルフケアも可能です。

むし歯は子どもだけでなく大人にとっても決して小さな健康問題ではありません。むし歯のない人生を目指し、また子どもたちにむし歯の悩みをつくらせないためにも、ぜひフッ素の利用を考えてみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

鶴見大学歯学部大学院卒業 / 現在は若菜歯科医院の院長

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