部分入れ歯を作ったものの、「お手入れの仕方がよくわからない」「面倒だから使っていない」という方はいませんか。
実は、部分入れ歯は、残存する歯の健康のためにも毎日のお手入れが欠かせません。また、適切な方法で洗浄・保存しないと、部分入れ歯の寿命を縮めてしまいます。
そこで今回は、部分入れ歯のお手入れの仕方や怠ったときのリスクなどについて解説します。
これから部分入れ歯を作ろうと考えている方・新しく作りたての方は、ぜひこの記事を参考に、適切なお手入れの方法を知って習慣づけてください。
部分入れ歯とは
歯を1本~複数本失った場合、その欠損部分を補うために作るのが部分入れ歯です。
保険適用のプラスチック製部分入れ歯のほかにも、保険適用外になりますが多岐にわたるタイプがあります。
装着することで食事の際の咀嚼力が向上し、発音の改善や見た目の回復にも役立ち、取り外しが可能というメリットもあります。
しかし、健康な歯にフックをかけるため歯茎や残存歯などにダメージがあるというデメリットがあるということも理解しておきましょう。
また、就寝前には部分入れ歯を外して歯と歯茎を休ませる必要性があります。また、毎日の洗浄や定期的な歯科医師によるメンテナンスが欠かせません。これにより、部分入れ歯の寿命を延ばし、お口の健康を維持することができます。
部分入れ歯のお手入れ方法
毎食後、部分入れ歯を外して洗浄します。入れ歯専用の歯ブラシを使って、水洗いしてください。
間違っても、部分入れ歯を着用したまま自分の歯と一緒に歯磨きをしないよう注意が必要です。
研磨剤が入ったハミガキ粉を使用すると、義歯表面に目には見えない程の細かい傷がついて色素沈着・臭いの原因となる恐れがあります。
また、就寝前には入れ歯洗浄剤できちんと洗浄します。入れ歯を外した後に自分の歯もよく磨き、歯茎を軽くマッサージして休ませてください。
部分入れ歯を1日中装着したままにしていると、お口の中の常在細菌が繁殖して、歯周病・口内炎・う蝕などの原因となる可能性が高まります。
最後に、部分入れ歯の内面がぬるぬるしていないか指で触ってチェックしてください。粘膜に接する面なので、プラークと呼ばれる細菌の塊が残りやすい場所です。
丁寧に磨き終わったら、流水でよくすすぎ、洗浄は完了です。
食後のお手入れ
食事を終えるたびに歯を磨くのと同様に、部分入れ歯も毎回外して洗浄してください。まず、使用した部分入れ歯をお口から必ず外して、流水下で食べかすや汚れを洗い落としましょう。
食事の通常の汚れなら水洗いで構いませんが、油汚れや汚れがたくさん付着している場合は、食器用の中性洗剤を使用すると効果的です。
専用の歯ブラシを使って、擦り洗いをしてください。なお、金具の部分は複雑な形をしているため、専用ブラシの先端の尖った方で細かい部分まで丁寧に擦り洗いしましょう。
寝る前のお手入れ
寝る前には部分入れ歯を外して、よく洗浄しましょう。保管ケースに入れる前に、入れ歯洗浄剤を使用しても構いません。
擦り洗いするときは、入れ歯専用の歯ブラシで丁寧に擦ります。また、細菌は夜寝ているあいだに繁殖しやすいので、寝る前はていねいに歯磨きをしてください。
このとき、歯肉や粘膜を指でマッサージするとリラックスできます。毎日の就寝前には、部分入れ歯は外して洗浄・保管するのが基本です。
部分入れ歯は小さいため、就寝中に誤飲したり、フックが頬肉にあたり傷を作ってしまったりするリスクがあるからです。
ただし、患者さんによっては歯ぎしりや食いしばりなどの理由から、就寝中に入れ歯を入れるよう歯科医師から勧められるケースがあります。
その場合は、お口の中に細菌が溜まりやすい状態なので、翌朝起きたらすぐ口腔内の清掃と入れ歯の洗浄が必要になります。
部分入れ歯のお手入れで準備すべきもの
部分入れ歯のお手入れのために、以下の4つを準備しましょう。
- 入れ歯専用のブラシ
- 部分入れ歯用の洗浄剤
- 洗浄容器
- 保存用ケース
外した部分入れ歯は、まず流水で大まかな汚れをざっと洗い流します。次に、洗浄容器の中に洗浄剤1錠とぬるま湯を入れて、部分入れ歯を浸してください。
部分入れ歯用のリテイナーと呼ばれる洗浄容器を使うと、万が一落としても紛失や破損の心配がないので便利でしょう。
洗面器にぬるま湯を張るか、 洗面台に栓をして洗浄しても問題ありません。普通の汚れなら3~5分程度で落ちます。
最後に、入れ歯用歯ブラシで丁寧に水洗いします。金具は複雑な形をしているので、入れ歯用ブラシの小さい方のブラシで細かい部分まで洗浄します。
流水でよくすすぎ、保管ケースに水を入れて浸水して保管しましょう。小さなお子さんやペットのいるご家庭では、手の届かない冷暗所に保存してください。
部分入れ歯のお手入れをしないリスク
部分入れ歯のお手入れが不十分な場合には、以下のような5つのリスクが考えられます。
- 細菌が繁殖しやすい
- 口内炎
- 口臭
- 色素沈着・歯石沈着
- むし歯・歯周病
以下、順番に説明していきます。
細菌が繁殖しやすい
部分入れ歯は、金属の金具が歯にかかっていたり、義歯の内面が歯茎に覆いかぶさっていたり、複雑な構造をしています。
そのため本物の歯よりも汚れやすく、放置すると細菌が繁殖して温床になりかねません。
また、汚れが十分に落としきれていない場合が多く、食後には食べかすが付着しやすいため、それを栄養源として細菌がさらに繁殖するという悪循環に陥ってしまいます。
さらに、入れ歯の劣化も早まり、周辺の歯や歯茎への感染リスクが高まります。この悪循環を断ち切るには、毎食後と就寝前の洗浄の徹底が欠かせません。
専用ブラシを使って、プラークが溜まりやすい場所は特に念入りに磨いてください。
口内炎
部分入れ歯のお手入れが不足している場合は、細菌の塊であるプラークが歯や歯茎に付着して 口内炎ができやすくなります。
粘着性が強いプラークは歯の表面にしっかりと付着し、そこにカンジダという真菌が繁殖すると、強いうがい程度では取れません。
きちんと専用の歯ブラシで擦り洗いしてください。また、部分入れ歯が歯茎に合っていない・お口の中を噛んでしまうなどの物理的刺激が口内炎の原因になることもあります。
口内炎の原因が入れ歯に使われている金属アレルギーの場合、その金属を特定して取り除く必要があるため、歯科医師に相談してください。このように口内炎が慢性化すると、味覚の変化や痛みから食事が楽しめなくなってしまうので注意が必要です。
口臭
部分入れ歯のお手入れが不十分だと、汚れが溜まって細菌が繁殖してしまいます。この細菌の塊であるプラークが、口臭の原因になります。
うがいだけでは十分に落とせないので、いったん入れ歯を外して専用の歯ブラシを使って流水で洗い流してください。
特に、留め金の部分は汚れが溜まりやすいので、丁寧に磨いてください。入れ歯のお手入れはきちんとしているのに口臭が気になるという方は、歯周病かもしれません。
留め金をひっかけている歯と隣の歯茎が炎症を起こしている可能性もあります。
そのような場合は、歯に溜まった汚れが歯茎を蝕み臭い膿となって出てくるので、これが口臭の原因とも考えられます。
入れ歯をきれいに磨いても口臭が気になる場合は、早めに歯科医院へ受診してください。
色素沈着・歯石沈着
喫煙や紅茶・コーヒー・赤ワインなど色素の濃い飲食物によって、色素沈着を起こして変色することがあります。毎日のケアとして、飲食後には必ず入れ歯を外して洗浄しましょう。
水洗いで落ちない場合は、洗浄剤を使用して擦り洗いすると効果的です。専用歯ブラシでていねいに擦り洗いしてください。
また、入れ歯の着色汚れを防ぐためには、歯石を取るなど歯科医院でのメンテナンスも大切です。
色素沈着・歯石沈着がどうしても気になる場合は、歯科医院へ受診して超音波洗浄機での洗浄をすればきれいに落とせるでしょう。
歯科医院に調整や定期検診などで通院する際に、確認してみてください。
むし歯・歯周病
部分入れ歯を洗うのはもちろんですが、部分入れ歯を外した後は、自分の歯のお手入れも大切です。
歯のお手入れを怠ると、細菌が繁殖してむし歯や歯石沈着の原因となってしまいます。特に、部分入れ歯で覆われていた部分は歯周ポケットとなりやすいため、先行して磨いてください。
食事の後は口腔内をきれいにして、再び流水で洗浄した部分入れ歯を装着するよう習慣づけるとよいでしょう。
一方入れ歯のお手入れはきちんとしているのに口臭が気になるという場合は、歯周病を疑ってください。
歯石を取る・むし歯を治療するといったことは自分ではできません。定期的へ歯科医院を受診してください。
部分入れ歯の保存方法
部分入れ歯を長持ちさせ、健康な口腔環境を維持するためには、適切な保存方法が欠かせません。以下では、部分入れ歯の正しい保存方法について説明します。
汚れを流す
洗浄の際は、流水で汚れを洗い流すことが基本です。面倒でも必ずお口から外して、部分入れ歯の表面についた食べかすや大きな汚れを流水で流しましょう。
次に、入れ歯洗浄剤を投入した容器に入れ歯を浸けます。正しく使用するには、製品に記載された指示に従い、適量な水の量と時間を守ってください。
最後に、再び流水でしっかり洗い流しましょう。歯の健康のためにも、汚れがきちんと落ちているか指で触って確認しながら、完全に洗浄する習慣をつけてください。
水や洗浄液で保存する
洗浄が完了した部分入れ歯は、きれいな水に浸して保管しましょう。
夜寝る前は保存ケースに入れて保管しますが、日中使っていないとき・歯と歯茎を休ませたいときも同様です。
義歯を外したら、乾かないようにきれいな水に浸しておくことを覚えておきましょう。また、担当医師の指示にしたがって洗浄剤を使用しても構いません。
刺激や温度変化の少ないところに安置する
部分入れ歯を外して保存するときは、保管ケースに入れてきれいな水に浸しておきます。
入れ歯に使われているプラスチック樹脂は、熱や乾燥に弱い素材なので、温度変化の少ない冷暗所に置きましょう。
また、透明なケースではなく、なるべく光を通さない専用のケースがおすすめです。紛失や破損の原因になるので、保管ケースは他人の目の届きにくい場所に置いてください。
誤って家族に捨てられたり、小さなお子さんやペットに壊されたりするリスクを低減できます。
部分入れ歯の注意点
部分入れ歯を正しく使用し、長持ちさせるためには、3つの注意点があります。
- 入れ歯を洗う頻度
- 入れ歯を使用できる期間
- 入れ歯を外すタイミング
以下、順番に説明していきます。
入れ歯を洗う頻度
部分入れ歯の清掃は、毎食後と就寝前に行うため、1日3~4回が基本的な頻度です。
毎食後に外して洗うのが理想ですが、外出などでブラシ洗いが無理な場合は、外して流水で洗い流すようにしてください。
ただし、部分入れ歯の表面は傷つきやすいので、磨くときは専用ブラシを使って丁寧に扱いましょう。
歯を磨く歯ブラシや歯磨き粉を使ってゴシゴシ擦るのは厳禁です。専用の歯ブラシと洗浄剤を使って洗ってください。
入れ歯を使用できる期間
部分入れ歯を使用できる期間は、およそ5年といわれています。
また、部分入れ歯に問題がなくても顎の形や歯の状態は変化しています。この変化に合わせて、部分入れ歯が合わなくなるケースも見られます。
使用しているうちに歯茎とフィットしなくなって外れたり痛みが出たりする可能性もあるので、歯科医院でこまめに調整・メンテナンスしてもらいましょう。
部分入れ歯の違和感に気付いたら、早めに担当の歯科医師に相談してください。
入れ歯を外すタイミング
入れ歯を長い間外さずにいると、お口の中の細菌が粘膜や歯に付着してさまざまな口腔内のトラブルにつながることがあります。
朝に装着した部分入れ歯は、毎食後に外して洗浄することが必要です。日中であっても、入浴中など外せる時間を見つけたら外してください。
就寝前には外して保管しておき、歯と粘膜を休ませてリラックスさせてあげましょう。
まとめ
今回は、部分入れ歯のお手入れの仕方・お手入れを怠るとどのようなリスクがあるのかなど詳しく説明してきました。
「咀嚼力を回復したい」「歯の欠損を他人に知られたくない」など、さまざまな目的で部分入れ歯を作ったことでしょう。
作ったばかりの方は、普段から装着して慣れることも大切です。
せっかく作った部分入れ歯をいつまでも長く使いたいと思う方もいますが、耐久年数はおよそ5年といわれています。
歯茎の状態が変化してくるので、入れ歯が合わなくなってしまう可能性があります。
日頃のケアと歯科医院でのメンテナンスを欠かさずにしましょう。
参考文献