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歯にひびが入る原因とは?ひび割れたときの症状と治療法を解説

歯にひびが入る原因とは?ひび割れたときの症状と治療法を解説

歯にひびが入ることは、日常生活ではあまり意識されないかもしれませんが、誰にでも起こりうることであり、かつ早期に対応しないと深刻な問題に発展する可能性があります。ひびが原因でむし歯や痛み、さらには抜歯に至るケースも少なくありません。

本記事では、歯のひびが生じる原因やそのリスク、そして適切な治療法について詳しく解説します。歯の健康を守るために、早期の発見と治療の重要性を理解していただければと思います。

歯のひびとは

歯のひびとは 歯にひびが入ると聞くと、ぶつけたり怪我をしたりするケースを想像するかもしれません。しかし意外にも、歯にひびが入るリスクは、私たちの日常に潜んでいます。

歯にひびが入る状態について

歯にひびが入ることは、20代や30代の若い人にはあまり見られませんが、40代後半くらいから徐々に増えてきます。驚くべきことに、普段の生活で特に歯をぶつけたりしていないのに、歯にひびが入るのです。昔は、60代になると多くの方が入れ歯を使っていたので、歯にひびが入るケースはあまり見られませんでした。入れ歯だと噛む力が弱いため、歯が割れるリスクも少なかったのです。

しかし近年では、歯の健康に気を使う人が増えており、天然の歯でなんでもしっかり噛めるためひびが入ってしまうケースもあるそうです。

歯科医院には、むし歯がない健康な歯なのに、痛みを訴えて来院する患者さんが週に1人くらいはいますが、歯にひびが入ったことが原因で、歯が割れてしまっているケースがほとんどです。ひびから細菌が歯の内部に入り込み、歯の神経に感染して痛みが生じるほか、神経を取った歯が割れて来院される方も、毎日のように見られています。

歯の構造とひびの入りやすさ

歯は、外側からエナメル質、象牙質、そして中心に歯の神経や血管が通っている歯髄(しずい)という部分からできています。エナメル質はとても硬く、象牙質を守る役割がありますが、硬い反面、強い力がかかるとひびが入りやすいです。

特に、噛む力が強い方や、食いしばりや歯ぎしりの癖がある方は、エナメル質に過剰な負担がかかり、ひびが入るリスクが高くなります。

また、神経を取った歯は、血液が通わなくなるため、歯自体がもろくなり、割れやすくなります。ひびが入った歯は、さらにひびが広がり、歯が割れてしまうこともあります。

歯にひびが入ったときの症状

歯にひびが入ったときの症状 歯にひびが入ったときの症状は、原因やひびの深さによって異なります。また、歯の神経が生きているか死んでいるかでも症状が変わります。ここでは、ひびの状態に応じた症状について説明します。

歯にひびが入ったときのよくある症状

歯にひびが入っても、まったく自覚症状がないことがあります。多くの人の歯には、加齢や使いすぎによって細かいひびが少なからず入っています。特に、エナメル質(歯の表面)にできたひびであれば、放置しても大きな問題にはならないことがほとんどです。

しかし、歯や歯茎に痛みが出たり、噛むと痛い、歯茎が腫れて出血したり、歯がぐらぐらするなどの症状が現れることもあります。これらの症状がある場合は、ひびが深くなっている可能性があります。

歯の表面にひびが入った場合の症状

ここでは、ひびが神経にまで達していない状態を想定します。歯に神経が残っている場合、ひびが原因で知覚過敏が起こることがあります。例えば、冷たい飲み物を飲むと歯がしみるなどです。

ただし、ひびによる知覚過敏なのか、通常の知覚過敏やむし歯が原因なのか、見た目だけでは判断が難しいため、歯科医院でレントゲンを撮って調べる必要があります。

歯の深いところまでひびが入った場合の症状

この場合は、ひびが神経に達しているか、その手前まで進んでいる状態です。

冷たいものがしみるだけでなく、温かいものでも痛みを感じることがあります。また、ものを噛むと違和感や痛みが生じ、ときには歯科治療で削られたときのような鋭い痛みが走ることもあります。この段階まで進んでしまうと、神経に達している可能性が高く、神経の処置が必要になります。さらに痛みが消えたと感じたときには、神経が死んでしまっていたというケースも少なくありません。

神経のない歯にひびが入った場合の症状

神経がない歯にひびが入っても、浅いひびであれば自覚症状はほとんどありません。感じるとすれば、噛んだときに少し違和感がある程度です。しかし、この状態を早めに発見し、歯科医院で診てもらうことがとても重要です。ひびが大きくなり、症状がひどくなると抜歯が必要になることもあります。

ひびが歯の根の先端まで進んでいる場合は、抜歯が必要になる可能性が高いです。特に、奥歯など根が複数ある歯では、ひび割れした根だけを抜いて残りの歯を残す方法(分割抜歯、ヘミセクション、トリセクション)がありますが、前歯など根が一本しかない場合は、割れてしまうと抜歯になります。

また、神経を取った歯の場合、噛む部分だけでなく、歯の根っこの部分にも割れや亀裂が入ることが多くなります。このような場合、歯茎が腫れたり、その周りから膿が出てくることがあります。また、噛むと痛みが出ますが、神経がある歯のひびや亀裂と違って、鋭い激痛ではなく、鈍い痛みが続くことが少なくありません。

歯にひびが入る原因

歯にひびが入る原因 ここでは、歯にひびが入るいくつかの原因について解説します。

噛み合わせの問題

噛み合わせが深い過蓋咬合(かがいこうごう)や、前歯が噛み合わない開咬(かいこう)などの噛み合わせの問題は、一部の歯に過度な負荷をかける原因となり、歯にひびが入るリスクを高めます。

噛み合わせの問題は、放置すると歯周病や顎関節症などほかの口腔問題にもつながることがあります。早期に歯列矯正を行うことで、歯にかかる負担を軽減できる可能性があります。

また、噛み合わせが原因で歯にひびが入るリスクが高い方は、定期的に歯科医院で診察を受け、お口のなかの状況をチェックすることが重要です。

外部からの衝撃

転倒や交通事故、スポーツ中の事故などによって、歯にひびが入ることがあります。このような外部からの衝撃は避けがたいものですが、スポーツをする際にはスポーツマウスピースを装着することで、口腔内の外傷を防ぐことができます。特にコンタクトスポーツでは、顔や顎への衝撃が強く、歯を守るためにマウスピースの使用が推奨されます。

また、日常生活でも思わぬ衝撃で歯にひびが入ることがあるため、転倒や事故に遭った際には、早めに歯科医院で診察を受けることが大切です。

硬い食べ物の摂取

硬い豆や煎餅、飴、スルメなどの硬い食品を頻繁に食べると、歯にひびが入るリスクが高まります。特に、硬い食べ物を噛む際に強い力が歯にかかることで、エナメル質が割れやすくなり、結果としてひびが入ることがあります。

たまに食べる程度であれば大きな問題にはなりませんが、硬い食べ物を常食すると、歯への負担が蓄積され、ひびが広がるリスクが高くなることを意識しておきましょう。歯が痛んでいる場合は、硬い食べ物を摂取することを避けることをおすすめします。

歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに行われることが多く、歯に大変強い負荷をかけます。これらの習慣が長期間続くと、歯にかかる力が蓄積され続けるとひびが入ることがあります。

特に就寝時に行われる歯ぎしりや食いしばりでは、通常の噛む力を大きく超える100kg以上の力がかかることがあり、エナメル質がすり減り、ひび割れの原因となります。

歯ぎしりや食いしばりによるひび割れを防ぐためには、ナイトガード(マウスピース)を使用することが推奨されます。ナイトガードには、歯にかかる力を分散し、ひび割れのリスクを軽減する効果があります。

差し歯などの耐久性

むし歯治療や神経を取る処置、根管治療を行った後、見た目は被せ物や詰め物で歯があるように見えますが、実際には歯の構造が大きく損なわれています。

このような場合、特に銀歯などの強い被せ物が使われると、その噛む力が残っている歯に過度な負担をかけ、結果としてひびが入ることがあります。

銀歯が外れたり、適度に力が分散されれば問題は少ないですが、しっかりと銀歯がはまっていると、直接的な力が歯にかかり、ひびが入る原因となることがあります。場合によっては、歯が割れてしまうこともあります。このようなリスクを避けるためには、定期的に歯科医院でチェックを受け、適切なケアを行うことが大切です。

歯のひびを放置するリスク

歯のひびを放置するリスク 歯にひびが入っても、自然に治ることはありません。初期の段階で症状がない場合には経過観察を行うこともありますが、放置するとむし歯や歯の痛み、歯茎の腫れや出血、歯がぐらつくなど、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

ここでは、歯のひびを放置することによるリスクについて説明します。

むし歯になる可能性

ひびが入った歯をそのままにしておくと、象牙質が露出してしまうことがあります。象牙質はエナメル質に比べてむし歯になりやすいため、露出しているとむし歯のリスクが大幅に増加します。

また、たとえエナメル質表層の浅いひびであっても、そこに汚れがたまり、結果としてむし歯になることがあります。ひびから始まったむし歯が進行すると、歯が割れたり欠けたりする原因にもなります。

痛みを感じやすくなる可能性

象牙質や神経が露出すると、通常では感じないようなわずかな刺激でも強い痛みを引き起こすことがあります。また、初期にはごく小さなひびであっても、時間とともに広がり、歯が欠けたり、割れたりすることがあります。

このような場合、早期に治療を受けることで再接着が可能なこともありますが、治療が遅れると根管治療が必要になったり、もっとひどい場合は抜歯が必要になることもあります。

さらに、ひびが歯の根まで進行したり、歯が折れたりした場合には、歯茎や顎の骨に炎症が起こるリスクもあります。

歯のひびの治療法

歯のひびの治療法 歯にひびが入った場合、どのような治療法があるかを解説します。

経過観察

エナメル質に入ったひびは、多くの人に見られるもので、症状がなければ特に治療を行わないこともあります。ただし、ひびから水などがしみる知覚過敏が発生する場合があり、その際には知覚過敏の治療が必要です。

また、噛み合わせが原因となることもあるため、その場合はマウスピースを使用するなど、噛み合わせを調整します。

詰め物やクラウン

ひびが象牙質に達している場合、詰め物やクラウンで歯を保護する治療が行われます。詰め物は、ひびの進行を防ぐだけでなく、痛みを軽減する効果もあります。クラウンは、歯全体を覆うため、より高度な保護が可能です。

しかし、ひびが深すぎる場合や、歯の構造が大きく損なわれている場合には、詰め物やクラウンだけでは対応できないことがあります。

根管治療

ひびが歯の神経に達している場合、根管治療が必要です。根管治療では、感染した神経を取り除き、歯の内部を清掃して消毒します。その後、詰め物やクラウンで歯を補強します。

根管治療は、歯を保存するための重要な治療法です。しかしひびが歯根にまで及んでいる場合や、歯が完全に割れている場合は、歯を救えないこともあります。

抜歯やインプラント

ひびが歯根まで進行している場合や、歯が完全に割れている場合には、抜歯が必要になることがあります。抜歯後、インプラントやブリッジなどの補綴治療で歯を補う方法があります。

インプラントは失った歯を補う方法の一つで、審美性にも優れており近年注目されている治療法です。しかし骨の状態や健康状態によっては、インプラント治療ができない場合もあります。インプラントの適用が難しい場合は、入れ歯などのほかの選択肢も考慮する必要があります。

まとめ

歯にひびが入ることは、意外とどのような人にも起こりうる症状ですが、放置せずに早期に治療を行うことが大切です。軽度のひびであれば経過観察や簡単な処置で済むこともありますが、深刻な場合には根管治療や抜歯が必要になることもあります。

40代を過ぎれば誰にでもなる可能性があることを念頭に置き、定期検診を受けるなどの対応を取ることで、早期発見につながります。早めに処置できれば治療法も選べますし、長く天然歯を残すことも可能です。ぜひ歯の健康を維持する習慣を身につけてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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