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歯が溶ける酸蝕症とは?むし歯との違いや歯を溶かさないための予防方法、治療方法を解説

歯が溶ける酸蝕症とは?むし歯との違いや歯を溶かさないための予防方法、治療方法を解説

歯が溶ける酸蝕症(さんしょくしょう)は、近年増加している現代特有の口腔内の健康問題です。炭酸飲料や酸性の食品を多くの人が摂取するようになり、その影響でむし歯ではないにも関わらず、歯が徐々に溶けていく症状が見られるようになりました。

酸蝕症は、食生活や生活習慣に密接に関連しており、また初期には症状が現れづらいため、早期に発見し適切な予防策を講じることが重要です。本記事では、酸蝕症の原因や症状、むし歯との違い、そして歯を溶かさないための予防方法や治療方法について詳しく解説します。

歯が溶ける酸蝕症の概要

歯が溶ける酸蝕症の概要 ここではまず、歯が溶ける酸蝕症についての概要や、その原因などについて解説します。

歯が溶ける酸蝕症とは

酸蝕症とは、酸によってむし歯ではないのに歯が溶けてしまう病気です。

近年、多くの人が炭酸飲料など酸性の飲食物を摂取する機会が増え、それによって歯が徐々に溶けていくことが問題となっています。この病気は食生活や生活スタイルと密接に関わっている、現代特有の健康問題の一つです。

酸蝕症の厄介な点は、歯が少しずつ溶けて進行するため、気付かないうちに症状が進むことです。このため、早期発見につなげるには、定期的な歯科検診が欠かせません。

酸蝕症になる原因

酸蝕症はかつて、メッキ工場やガラス工場で酸性のガスを吸い込むことによる職業病の一種とされていました。しかし現代では、酸性の飲食物を過剰に摂取することが主な原因とされ、生活習慣病の一つと考えられています。

口内が酸性になると、歯は脱灰(だっかい)と呼ばれる現象により溶けてしまいます。体内で特に硬いエナメル質でも、pH5.5以下では溶け始めると言われており、さらにエナメル質の内部にある象牙質は、pH6.0~6.2の範囲で脱灰が進行します。

柑橘類(レモンやグレープフルーツ)や炭酸飲料(特にコーラ系)は、口内を急速に酸性にします。また、逆流性食道炎や摂食障害を抱える方は、強い酸である胃酸が口内に逆流することで歯が溶けることがあります。

ただし、口内が一時的に酸性になっても、唾液の洗い流し効果や緩衝作用(酸を中和する力)によって、再石灰化が促進されます。

しかし、唾液の再石灰化効果を超える頻度や時間で口内が酸性にさらされると、脱灰が再石灰化を上回り、歯がどんどん溶けてしまうのです。

酸蝕症で溶けた歯はもとに戻るのか

一度溶けてしまった歯は、自然にはもとに戻りません。溶けた歯を修復するには、詰め物や被せ物を用いた治療が必要です。

歯の損傷度合いによって適切な材料や治療法が異なるため、歯科医師と相談しながら治療を進めることが重要です。

酸蝕症の症状

酸蝕症の症状 続いて、酸蝕症の具体的な症状について見ていきましょう。

歯の形状が変化する

酸蝕症が進行すると、歯の表面が溶けることで、歯の形状に変化が見られるようになります。具体的には、歯のとんがりが丸みを帯びたり、歯の高さが低くなるなどの変化が起こります。

また、歯の表面が光沢を失い、マットな質感になることもあります。このような変化は特に、前歯や奥歯の噛み合わせ部分で顕著に見られます。

詰め物が外れやすくなる

歯の表面のエナメル質が失われ、詰め物が接着している部分の強度が低下します。その結果、詰め物が外れやすくなることがあります。

特に、酸性の飲食物を頻繁に摂取することで、詰め物の接着力が弱まり、再装着が必要になるケースが増えます。

知覚過敏になる

酸蝕症によってエナメル質が溶け、すり減ると、その下にある象牙質が露出します。象牙質はエナメル質よりもやわらかく、外部刺激に対して敏感です。

そのため、冷たい飲み物や風に触れた際に強い痛みを感じる知覚過敏の症状が現れることがあります。知覚過敏は進行する酸蝕症の重要なサインであり、早期の対応が求められます。

酸蝕症とむし歯の違い

酸蝕症とむし歯の違い 酸蝕症はむし歯と同様に歯の表面が欠損していきますが、両者にははっきりとした違いがあります。

むし歯は主に歯垢に含まれる細菌によって酸が生成され、それが特定の箇所で歯を溶かしていく病気です。一方、酸蝕症は細菌が関与せず、酸性の飲食物や胃酸などが歯面全体に影響を及ぼし、広範囲にわたって歯が溶ける現象です。

これにより、むし歯と酸蝕症では治療方法や予防策も異なります。ここでは、両者の違いを詳しく解説します。

温度の変化で歯が染みるようになる

酸蝕症が進行すると、冷たいものだけでなく、熱いものを摂取した際にも歯がしみるようになります。これは、酸によって歯面全体が溶けるため、エナメル質が徐々に失われ、象牙質が露出するからです。

象牙質は外部の刺激に対して敏感であり、その結果、知覚過敏が生じやすくなります。温度の変化に敏感になるのは、酸蝕症がかなり進行しているサインといえるでしょう。

歯の表面に凹みができる

酸蝕症が進行するにつれて、歯の表面にクレーター状の凹みが見られるようになります。これは、酸によってエナメル質が溶けるため、部分的に歯が深く削れてしまう現象です。凹みが広がると、歯の形状が変わり、噛み合わせに影響を与えることもあります。

詰め物に隙間や段差ができる

酸蝕症の影響で歯の表面が溶けると、詰め物やかぶせ物との間に隙間や段差が生じることがあります。これは、酸によって歯が溶けることで、詰め物の境界部分が劣化するためです。

この段差や隙間は、さらに酸や細菌が入り込みやすくなる原因となり、詰め物が外れるリスクも高まります。

溶けた歯の治療方法

溶けた歯の治療方法 歯が溶けた場合の治療方法について知っておきましょう。

フッ素の塗布

酸蝕症で溶けた歯の治療には、フッ素の塗布が有効です。フッ素はエナメル質を強化し、再石灰化を促進する働きがあります。特に初期段階の酸蝕症では、フッ素を定期的に塗布することで、エナメル質の強度を高め、さらなる酸による溶解を防ぐことが期待できます。

歯科医院でのフッ素塗布に加えて、フッ素配合の歯磨き粉を使用することも効果的です。こうした治療を再石灰化治療ともよびます。

つめ物やかぶせ物による治療

酸蝕症が進行し、歯が大きく溶けてしまった場合には、詰め物やかぶせ物を用いた治療が必要になります。

詰め物(インレー)は、小さな部分の損傷を修復するために使用され、かぶせ物(クラウン)は歯全体を覆うことで、機能と形態を回復させます。これらの治療は、溶けた歯を保護し、再度の酸による損傷を防ぐ効果もあります。

治療に使用される材料には、レジンやセラミック、金属などがあり、損傷の程度や部位、患者さんの希望に応じて適切な材料が選ばれます。また、治療後は定期的なメンテナンスが重要で、定期的な歯科検診とプロフェッショナルケアを受けることで、治療の効果を長持ちさせることができます。

歯を溶かさないための予防方法

歯を溶かさないための予防方法 歯を溶かさないための予防方法を知り、日常生活にいかしましょう。

酸性の飲食物を食べ過ぎない

酸蝕症の予防には、まず酸性の飲食物の摂取量をコントロールすることが重要です。 具体的には、炭酸飲料、スポーツドリンク、柑橘系の果物やそのジュース、酢の物などが挙げられます。これらの飲食物は強い酸性を持ち、頻繁に摂取することで、歯のエナメル質を溶かしてしまうリスクが高まります。

例えば、日常的に炭酸飲料を飲む習慣がある場合、これを水やお茶に置き換えるだけでも、酸蝕症のリスクを大きく減少させることができます。また、レモンを含む水を飲む際には、ストローを使用して酸が歯に直接触れないようにするなどの工夫も効果的です。

さらに、酸性の食品を食べた後には、すぐに水でお口をすすぐことで、口内の酸を中和し、歯を保護することができます。

唾液の分泌を促進する

唾液は、お口のなかの酸を中和し、歯の再石灰化を促進する重要な役割を担っています。したがって、唾液の分泌を促進することも、酸蝕症の予防につながります。

具体的な方法としては、ガムを噛むことが効果的です。特にキシリトール配合のガムは、唾液の分泌を促進するだけでなく、歯の健康にもよい影響を与えます。

また、水分補給も重要です。体が十分に水分を保持していないと、唾液の分泌が減少し、酸蝕症のリスクが高まります。特に、高齢者やストレスがある生活を送っている方は、唾液の分泌が減少しやすいので、こまめに水を飲む習慣をつけるようにしましょう。

就寝前、スポーツ後の酸性飲食物は控える

酸性の飲食物を摂取するタイミングにも注意が必要です。特に、就寝前やスポーツ後に酸性飲料を飲むことは控えましょう。就寝前に酸性飲料を飲むと、寝ている間に唾液の分泌が減少するため、口内が酸性のまま長時間放置され、歯が溶けやすくなります。

また、スポーツ後は体が乾いているため、唾液の分泌が一時的に減少しています。この状態で酸性の飲み物を飲むと、口内の酸性度が一気に上がり、歯が溶けるリスクが高まります。スポーツ後には、まず水やスポーツドリンクの代わりにミネラルウォーターや電解質補給飲料を選ぶとよいでしょう。

また、酸性飲料をどうしても飲みたい場合は、運動後すぐにお口をすすぎ、酸を洗い流すことを心がけるとよいです。

・食後の正しい歯磨き習慣
酸蝕症の予防には、食後の歯磨き習慣が重要です。ただし、酸性の飲食物を摂取した直後に歯を磨くことは避けましょう。これは、酸によってやわらかくなったエナメル質が傷つきやすい状態にあるためです。

食後は少なくとも30分から1時間程時間を空けてから、なるべく研磨剤が入っていない歯磨き粉を選び、フッ素配合の歯磨き粉を使って歯を磨くことが推奨されます。これにより、エナメル質が再石灰化する時間を確保し、歯の健康を保つことができます。また、逆流性食道炎の方はできるだけ嘔吐した後歯ブラシをするようにを心がけましょう。

・プロバイオティクスの活用
近年、口腔内の健康維持にプロバイオティクスが注目されています。プロバイオティクスは、善玉菌を増やし、口腔内のバランスを整えることで、酸性環境の形成を防ぐ働きを持ちます。

ヨーグルトやサプリメントとして摂取することが可能で、これを取り入れることで酸蝕症の予防に寄与することが期待されます。

口内を酸性にしてしまう病気を治療

逆流性食道炎や摂食障害など、お口のなかを酸性にしてしまう病気は、酸蝕症の大きな原因となります。これらの病気が原因で胃酸が口内に逆流し、歯に悪影響を与えることがあります。そのため、これらの病気を適切に治療することも、酸蝕症の予防に欠かせません。

逆流性食道炎の治療には、食事の改善や薬物療法が有効です。例えば、脂肪分の多い食事やアルコール、カフェインなどを控えることで、胃酸の逆流を防ぐことができます。また、睡眠時に頭を高くして寝ることや、就寝前の2〜3時間は食事を控えることも、逆流を予防するために効果的です。

摂食障害の場合、専門的な治療が必要です。摂食障害を抱えている方は、心理的なサポートと医療的な治療を組み合わせることで、症状の改善を図ることができます。これにより歯へのダメージを減らし、酸蝕症の進行を防ぐことが可能です。

定期検診を受けて口腔内をケアする

酸蝕症の予防には、定期的な歯科検診がとても重要です。定期検診では、歯科医師が口腔内の状態をチェックし、早期に酸蝕症の兆候を発見することができます。酸蝕症は初期段階では自覚症状が少ないため、定期的な検診によって早期発見と予防が可能になります。

例えば、歯の表面に微細な変化が現れた段階で、歯科医師がフッ素塗布やプロフェッショナルクリーニングを行うことで、酸蝕症の進行を防ぐことができます。また、定期的に歯石を除去することで、口腔内の衛生状態を保ち、酸性の影響を受けにくくすることができます。

さらに、歯科検診では生活習慣や食生活についてのアドバイスも受けられます。例えば、酸性の飲食物を控える方法や、唾液の分泌を促進するための生活習慣の改善策など、個々の患者さんに適したアドバイスが提供されます。

まとめ

酸蝕症は、むし歯とは異なる原因で歯が溶けてしまう病気であり、その予防と治療には食生活や生活習慣の見直しが欠かせません。酸性の飲食物の摂取を控えることや、唾液の分泌を促進する習慣を取り入れることで、酸蝕症の進行を防ぐことができます。

また、定期的な歯科検診と適切なケアが、早期発見と治療につながり、歯の健康を長く保つために重要です。

もし酸蝕症の症状を感じたら、早めに歯科医に相談し、対策を講じることをおすすめします。酸蝕症から歯を守るために、日々のケアを怠らず、健康な歯を維持しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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