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入れ歯中の食事はどうしたらいい?注意点や食事を楽しむ方法を解説

入れ歯中の食事はどうしたらいい?注意点や食事を楽しむ方法を解説

何歳になっても自分の歯で食事をしたいと思う方は多いのではないでしょうか。

しかし、何らかの原因で歯を喪失し入れ歯を使うようになると、食事を楽しめなくなってしまうことがあります。

必要なときだけ入れ歯を使えばよいと思い込み、自己判断で入れ歯を外してしまう方がいますが、食事をするうえで入れ歯は必要です。

本記事では、入れ歯使用中の食事方法や注意事項などを解説しています。入れ歯でも食事を楽しみたい方は、ぜひチェックしてみてください。

入れ歯を外して食事をするとどうなる?

口元を押さえる人

食事をするとき、お口に違和感を覚えてしまい、入れ歯を外している方は少なくありません。しかし、歯の健康と健康寿命に関係があるのをご存知でしょうか。

何らかの原因で歯を喪失した場合、入れ歯を使っていない人よりも入れ歯を使っている人の方が、認知症の発症や転倒のリスクが低いとされています。

その他、入れ歯をつけないで食事をすると、どのような影響があるか解説します。

誤嚥しやすくなる

歯を喪失した場合、入れ歯などをつけないと、うまく食物を咀嚼できません。歯で咀嚼するのではなく、舌で上顎に押し当ててすりつぶしながら食べるようになってしまいます。

その結果、食物が小さい状態にならず大きい塊のまま咽頭部に送り込まれ、誤嚥しやすくなるのです。

誤嚥を防ぐためには、入れ歯をつけてしっかりと食物を咀嚼し、少しずつゆっくり食べることが大切です。

高齢者が誤嚥すると、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があり、命に関わります。厚生労働省の調査によると、誤嚥性肺炎は2022年の死亡原因の第6位です。

85歳を超えた方は誤嚥性肺炎を発症することが多くなる傾向にあります。誤嚥性肺炎は、唾液などからの細菌感染が原因の1つであるため、お口や入れ歯を清潔に保つことで予防できます。

食物が詰まりやすくなる

入れ歯をつけていないと上顎と舌ではうまくすりつぶすことができないため、お口に入れた食物をそのまま飲み込んでしまうことが少なくありません。

たとえ、餅・ご飯・粥・ゼリーなどやわらかいものであっても、詰まりやすく窒息のリスクが高いとされています。

場合によっては、命の危険があります。食物に合わせて、事前に食べやすいサイズに用意しておきましょう。

一口の量を無理なく食べられる量にすることが必要です。食事をするときは、入れ歯をつけてしっかり噛むことを心がけましょう。

噛む力が弱くなる

よく噛むという動作は、唾液や胃液などの消化液が出て、必要な栄養を身体に取り込みやすくするという大切な動作です。

人は、食物の温度・噛み応え・歯ざわりなどにより、食物をおいしく認識します。

しかし入れ歯を外して食事をすると、しっかりと噛むことができないため、噛む力が弱くなってしまうのです。

入れ歯に慣れていなかったり違和感があったりなどの理由により、入れ歯を外してしまう方がいます。入れ歯を外してしまうと噛む力が弱くなるため、食物をおいしく感じにくくなるでしょう。

おいしいと感じなければ食事は楽しくなくなり、あまり食事をとらなくなってしまう可能性もあります。

自分の歯のようにうまくいかないことがあったとしても、入れ歯をつけて食事をするようにしましょう。

入れ歯でも食事を楽しむ方法

食事をする男性

入れ歯をつけるようになっても、自分の歯で食べていたときのように食事を楽しみたいと思う方は多いのではないでしょうか。

入れ歯に慣れるまでは違和感や痛みが生じる可能性があります。

しかし、足を骨折した際にリハビリをするのと同じように、入れ歯をつけて食事をする練習が大切です。

定期的に歯科医院での調整やチェックを受けながら、入れ歯を外すことなく、つけたまま食事を楽しみましょう。入れ歯でも食事を楽しむ方法をお伝えします。

ゆっくり食べる

普段お口に入れていた食物の大きさや量を減らし、ゆっくり食べることを心がけてください。

急いで食べ、一度にたくさんお口に入れるのは止めましょう。ゆっくり食べることは、健康にもよいとされています。

満腹感を覚えるまでには時間がかかるため、必要以上の量を食べてしまいます。そのため、早食いは肥満度が高い傾向にあるのです。

ゆっくりよく噛んで食べることにより、肥満の予防もできます。今まで早食いや大食いの傾向にある方は特に、焦らずゆとりのある食事時間を心がけましょう。

やわらかいものを食べる

入れ歯を作成後、すぐにどのようなものでも不自由なく食べられるわけではありません。入れ歯に慣れるために食べる練習が必要です。

まずは、やわらかいものをゆっくりと食べるようにしましょう。

お粥のようにやわらかいものだと、流し込んでしまう場合があります。窒息のリスクがあるため、やわらかいものでも、しっかりと噛むことを心がけてください。

入れ歯で食べることに慣れると、徐々に硬いものでも食べることができます。ただし、無理して硬いものを食べることは止めましょう。

入れ歯安定剤を利用する

入れ歯安定剤は入れ歯を安定させるための材料で、クリームタイプ・パウダータイプ・シートタイプ・クッションタイプの4種類があります。

患者さんのお口に合う入れ歯であれば、入れ歯安定剤は必要ありません。入れ歯安定剤が必要なのは、以下のとおりです。

  • 入れ歯を作成したばかりで慣れていない
  • 長年使用している入れ歯がゆるくなった
  • 何度入れ歯を調整しても合わない

入れ歯安定剤は、長期間使用するものではありません。一時的に必要な場合に入れ歯安定剤を使い、入れ歯に違和感を覚える方は歯科医師に相談しましょう。

また、入れ歯の種類や用途に合う入れ歯安定剤を選んでください。入れ歯の材質によっては使用できない場合があります。

適切に入れ歯安定剤を利用すれば、楽しく食事ができます。クリームタイプの入れ歯安定剤を利用した場合、入れ歯からはみ出た分は取り除いておきましょう。

入れ歯安定剤は細菌が付着しやすいため、歯や歯肉に付いたままにしておくと歯周病やむし歯を引き起こす恐れがあります。

入れ歯中の食事の注意点

医療従事者

自分の歯を喪失した場合、審美的にも機能的にも入れ歯は必要です。

しかし自分の歯とは異なるため、注意点があります。入れ歯をつけて楽しく食事をするために、注意点を頭に入れておきましょう。

食材の大きさに気を付ける

調理

入れ歯は自分の歯程、しっかりと噛むことができません。そのため、食べやすい適切な大きさに食材を切って用意するようにしましょう。

隠し包丁を入れるのも食べやすくなる調理法です。薄すぎたり細かくしすぎたりするとうまく噛めないため、飲み込みにくくなる可能性があります。

また、ごまやイチゴなどの小さい食物は、入れ歯と歯肉に挟まることが少なくありません。そのような可能性に気を付けて、少しずつ食べるようにしましょう。

硬いものや繊維質のものを避ける

おせんべい

入れ歯中の食事では、硬いものや繊維質のものは避けるようにしましょう。

おせんべいやイカ・タコ・アワビなどのような硬いものをそのまま食べようとすると、痛みが生じることがあります。

噛む力を必要以上に使わなくてすむようにするために、小さく一口サイズにしたり、噛み切りやすい硬さに煮たりするなどの工夫をして食べるようにしましょう。

また、ほうれん草のような繊維質のものは食べにくいとされています。無理して普通に食べようとすると、痛みを感じたり入れ歯に不具合が出たりする可能性があります。

熱いものは控える

総入れ歯の場合は、上顎で温度を感じにくくなっているため、食物の温度には気をつけましょう。

60度以上の熱湯につけると、入れ歯が変形する可能性があります。一度変形した場合、修理ができません。

またクリームタイプの入れ歯安定剤はお湯で溶けてしまうため、スープや温かい飲み物を食べたり飲んだりすると、入れ歯安定剤が流れてしまう可能性があります。

できる限り熱いものは控えましょう。クッションタイプの入れ歯安定剤はお湯でも溶けないため、ときと場合によって入れ歯安定剤を替えるのもおすすめです。

入れ歯で食事を楽しむためのコツ

食事をする女性

入れ歯はおいしく食事をするために必要です。入れ歯に慣れるまでには時間がかかることを覚えておきましょう。

自分の歯で食事をしていたように入れ歯でおいしく食事をするためには、コツがあります。また、長く入れ歯を使うには、適切な調節と日々の手入れが必要です。

食べにくい場合は入れ歯を調節する

食べにくい場合は、入れ歯がお口に合っていないことが原因と考えられます。

一時的に入れ歯安定剤を使用するなど応急処置をし、できる限り早めに歯科医院を受診して入れ歯を調節してもらってください。

調整せずに合わない入れ歯を使い続けると、噛みづらさや痛みが出てしまう恐れがあります。調整後はやわらかく細かいものから食べるようにして、少しずつ入れ歯に慣れていきましょう。

食後に入れ歯の洗浄を行う

歯科衛生士

食後は入れ歯を丁寧に水で洗浄してください。入れ歯を落とすと破損の恐れがあるため、洗浄の際には洗面台に水を張っておくようにしましょう。

入れ歯専用ブラシで丁寧に入れ歯を磨きます。研磨剤が入った歯磨き粉は入れ歯を傷つけてしまい、臭いや着色の原因になるため気をつけてください。

1日に1回は入れ歯専用の洗浄剤を適切に使用し、入れ歯の清潔さを保ちましょう。

食事で入れ歯が使いにくくなった場合の対処法

家族に相談

毎日入れ歯で食事をしていると、摩耗によって少しずつ入れ歯がすり減ったり噛み合わせが悪くなったりします。

そのまま使い続けると、以下のような不具合が起こる可能性があります。

  • 発音しにくくなる
  • 吐き気がある
  • 食事中にお口のなかに痛みが生じる
  • 食事中に食物を噛みにくくなる
  • 頭痛や肩こりの症状が現れる
  • お口の周りにしわができる
  • 入れ歯が外れやすくなる

まずは、入れ歯を洗浄してみましょう。汚れが入れ歯や歯肉に付着して使いにくくなった可能性が考えられます。

また、一時的に入れ歯安定剤を利用すると、症状が緩和する可能性があります。ただし、そのまま入れ歯の不具合を放置せずに、早めに歯科医院を受診してください。

歯科医師に相談して、お口のチェックと入れ歯の調整などをしてもらいしましょう。

入れ歯が食事で壊れてしまったら

口の中を見る

入れ歯が食事で壊れてしまったら困ることでしょう。食物をうまく噛むことができなくなってしまいます。壊れた入れ歯を使い続けると、歯や歯周辺に悪影響を与えてしまいます。

まずは入れ歯を使うのを止めましょう。急に壊れてしまったときに慌てなくてすむように、対応をしっかりと確認しておくのが大切です。

歯科医院に相談

入れ歯が壊れたら、できるだけ早めに歯科医院で相談しましょう。入れ歯の壊れ方は、主に以下のとおりです。

  • 入れ歯にヒビが入っている
  • 入れ歯の一部が割れてしまった
  • 入れ歯の一部が取れてしまった

入れ歯の種類や壊れ方によって、修理できる可能性があります。ただし、歯科医院で修理したとしても、修理した部分から再度壊れてしまうこともあるのです。

修理ができなかったり何度も壊れてしまったりする場合は、新しく作り直すことになります。

しかし保険で入れ歯を作成した場合は、作成後6ヵ月以内は入れ歯を新しく作成できないため注意しましょう。

入れ歯が壊れたままにしておくと、口腔内を傷つけたり噛み合わせが悪くなったりなど、お口に悪影響を及ぼすリスクがあります。

入れ歯作成後は定期的に通院し、お口の状態と入れ歯のチェックおよび調整をしてもらうことが大切です。

壊れた入れ歯を保管

入れ歯が壊れたら、欠けたり割れたりした入れ歯はできる限り集めておきましょう。劣化防止のため、水が入ったケースのなかに一緒に保管してください。

入れ歯がすべてあれば修理できる可能性が高まるため、欠けた歯は細かくても捨てずに取っておきましょう。なお、壊れたまま入れ歯を使うことは止めてください。

自分で修理しない

入れ歯が壊れた場合、自分で修理するのは止めてください。割れたり欠けたりしたものを自分で接着剤でつけてしまうと、接着ミスが原因でずれが生じることが多いとされています。

自分で修理した入れ歯を使うと、お口に悪影響を及ぼす可能性があるうえに、入れ歯が修復不可能な状態になってしまいます。

入れ歯は、一人ひとり異なるお口に合わせて精密に作成するものです。少しでも合わないと、違和感を覚える方が少なくありません。

入れ歯が壊れた場合は自分で修理せず、歯科医院で相談しましょう。

まとめ

孫と祖母

自分の歯を失っても、入れ歯で食事を楽しめます。 食事中の入れ歯における注意点を押さえて、自分の歯で食事をしていたときのようにおいしく食事を楽しみましょう。

入れ歯を作ってすぐに普通に食事ができるわけではありません。歯科医院での調整を重ね、入れ歯に慣れることで徐々に普通に食事できるようになります。

入れ歯で食べると食事がおいしくないと不安になる方がいます。入れ歯による歯の回復はリハビリテーションの一環であり、装着後も適切な調整や練習が必要な装置です。

不具合がある場合には歯科医師による調整が必要となりますので、放置したりそのまま使用したりせずに歯科医へ早めに相談するようにしましょう。

入れ歯は、自宅での日々のケアや歯科医院でのメンテナンスが大切です。何歳になっても、よく噛んでおいしく食事するために、毎日入れ歯のお手入れを心がけましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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