入れ歯を始めると「以前よりもろれつが回らなく喋りづらくなった」「入れ歯の不具合では?」と感じる方が多いようです。
本記事では入れ歯にすると滑舌が悪くなる原因や対策法について、以下の点を中心にご紹介します。
- 入れ歯で滑舌が悪くなる原因
- 入れ歯による滑舌悪化を軽減させる方法
- 滑舌に影響しにくい入れ歯・補綴物とは
入れ歯にすると滑舌が悪くなる原因や対策法を理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
入れ歯をすると滑舌が悪いのはなぜ?
入れ歯を使用するようになってから「滑舌が悪くなった」と感じる方が多いのではないでしょうか。
入れ歯を使うようになってから発音が難しくなり、コミュニケーションに支障をきたすこともあります。仕事やプライベートにおいても大きな影響を与えるため、改善を希望される方も多いのではないでしょうか。
滑舌が悪くなる理由は、主に入れ歯のフィット感や形状に関連しています。適切にフィットしていない入れ歯は、口内での安定性を欠くため、発音時に舌や唇がうまく動かせなくなります。
また、入れ歯の素材や構造がお口のなかで異物感を生じさせることで、自然な発音が難しくなることもあります。
改善方法は、まず入れ歯が適切に作られているかを確認し、必要に応じて調整を行うことが重要です。
さらに、滑舌のトレーニングを行うことで、発音を改善する手助けにもなります。
入れ歯で滑舌が悪くなる原因
入れ歯で滑舌が悪くなる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
入れ歯のサイズが合っていない・入れ歯が分厚い
入れ歯がしっかりフィットしていないときは、快適さや発音の明瞭さに悪影響を及ぼします。
正しいサイズの入れ歯は舌の動きを妨ぐことなく、自然な発音をサポートします。
しかし、サイズが合わない入れ歯や分厚い入れ歯は、話す際の不快感や不安定さを引き起こし、コミュニケーションが難しくなることがあります。
特にサ行やハ行などの子音は、下顎を前方に出して漏れた息で発音されるため、入れ歯のフィット感が悪いと、発音が困難になり、相手に何度も聞き返されることにもなります。このような状況では、会話が楽しくなくなるだけでなく、コミュニケーションにも支障をきたすことがあります。
入れ歯は、お口のなかで舌が自由に動けるスペースを確保する役割を果たしています。
発音の際、舌の動きがスムーズであることが重要ですが、分厚い入れ歯を使用すると、そのスペースが狭くなり、唇に入れ歯が当たる感覚が強くなり、結果、会話がしにくく感じることがあります。
一方、薄すぎる入れ歯は、噛む力に対して強度が不足し、割れてしまうリスクが高まります。
また、安定性も損なわれるため、快適に使用することが難しくなります。
入れ歯のサイズや厚さが適切でないと、日常生活に影響を及ぼすことがあるため、ご自身に合った入れ歯を選ぶことが大切です。
入れ歯と歯の隙間や舌が動くスペースが変わる
入れ歯がお口の中に適合していない場合、入れ歯と残っている歯との間に隙間が生じることがあります。この隙間から息が漏れることで、発音が困難になることがあるため注意が必要です。
また、舌の動くスペースが狭くなることで、お口のなかでの舌の位置や動きが制限され、より一層話しづらさを感じることもあります。
正しいフィット感を持つ入れ歯は、言葉を話す際の快適さの向上につながります。
入れ歯の調整が不十分
入れ歯が適切に調整されていない場合、滑舌に悪い影響がある可能性もあります。
入れ歯が不安定になると、言葉を発する際に違和感を感じたり、発音が難しくなったりすることがあります。歯科医院での定期的な調整が大切です。
歯科医師による適切なメンテナンスによって、入れ歯のフィット感を向上させ、快適な使用を維持することが可能とされています。
定期的なチェックを受けることで、快適さと機能性を保ちましょう。
入れ歯による滑舌悪化を軽減する方法
ここでは、入れ歯による滑舌悪化を軽減する方法を解説します。
発音の練習をする
入れ歯を装着した最初の頃は、発音に苦労することがあります。スムーズに話せるようになるまでには時間がかかるようです。
自身の声を客観的に確認するために、スマートフォンで録音してみるのもよい方法です。自身が苦手とする音を特定し、重点的な練習が可能になります。
また、入れ歯を装着した状態で舌をどのように動かすかを理解し、練習を重ねることで、発音が徐々に改善されていくでしょう。
日々の練習を通じて、自然に話す感覚が身につくようになります。
入れ歯を薄く削る
入れ歯が分厚いと感じる場合は、担当の歯科医師に相談してください。自己判断で入れ歯を削る行為は、強度に影響を与え、最終的に壊れてしまうリスクがあります。
適切な調整を行うことで、快適に会話ができるようになるため、医師の指示を仰ぐことが大切です
入れ歯を調整する
入れ歯を装着している際に、歯と入れ歯の隙間から息が漏れていることに気付いたら、すぐに担当の歯科医師に相談しましょう。
歯科医院で入れ歯のフィット感を確認し、必要に応じて調整を行うことで、快適さが向上し、食事や会話の際の不安も軽減されます。
定期的に入れ歯の状態をチェックすることで、よりよい使用感を維持できるでしょう。
滑舌に影響しにくい入れ歯・補綴物
滑舌に影響しにくい入れ歯・補綴物があることをご存知ですか。
以下で詳しく解説します。
金属床義歯
滑舌に影響しにくい入れ歯・補綴物の1つ目は金属床義歯です。
金属床義歯とは
金属床義歯は、上部構造を支えるための床を金属で作製した義歯の一種です。このタイプの義歯は、保険適用の義歯よりも薄く、より堅牢に設計されているため、舌の動きに影響を与えず、食事中の温度をしっかりと感じられるのが特徴です。
自由診療に分類されるため、コストが高めになる点はデメリットですが、滑舌を改善したい方にとっては効果的な選択肢となるでしょう。
金属床義歯のメリット
金属床義歯にはいくつかの大きな利点があります。以下に特徴4つを紹介します。
- 舌の動きを妨げにくい
発音の際、舌の動きは重要です。上顎に舌を当てる言葉が多いため、口内の空間が広いことが求められます。保険適用の入れ歯は、厚みがあるため口腔内のスペースが狭くなり、発音しにくくなることがあります。
一方、金属床義歯は薄型設計が可能とされていて、舌の動きを妨げにくく、発音がスムーズに行えます。 - 熱伝導性によって食事を楽しめる
保険適用の入れ歯は、レジン製で熱伝導が悪く、食事の味が感じにくいことがあります。
しかし、金属床義歯は熱伝導性が高く、食材の温度をしっかりと感じられるため、よりおいしい食事体験につながります。 - 汚れにくく清潔を保ちやすい
レジン床の義歯は、傷がつきやすく、細菌が繁殖しやすい特性があります。清掃を怠ると歯垢が蓄積し、除去が難しくなります。
金属床義歯は表面が滑らかで汚れが付きにくいため、手入れが簡単で、清潔に保ちやすいです。 - 耐久性が高く変形しにくい
標準的な保険の入れ歯は、プラスチック製で割れやすい欠点があります。
対照的に、金属床義歯は大部分が金属で構成されているため、耐久性があります。
また、熱による変形も少なく、長期間使用できます。
上記のメリットにより、金属床義歯は快適な口腔環境を提供し、生活の質を向上させる選択肢となり得ます。
金属床義歯の注意点
金属床義歯の注意点には、以下の2点で注意する必要があります。
- 保険適用外の自費診療
金属床義歯は自費診療となるため、治療費用は保険適用のレジン床義歯よりも高額になります。
具体的な金額は歯科医院によって異なるため、作製を依頼する前にかかりつけの歯科医院で詳細を確認することが重要です。 - 修理の難易度
入れ歯が合わなくなった場合、レジン床義歯は診療台に備えた器具を用いて調整が可能とされていますが、金属床義歯では状況が異なります。金属製のため、金属部分を追加できず、レジンを盛り足すなどの方法で対処する必要があります。
しかし、この修理方法では金属床の本来の薄さが損なわれる可能性があり、場合によっては新たに作り直すことになってしまうこともあるため、注意が必要です。
コーヌス義歯
滑舌に影響しにくい入れ歯・補綴物の2つ目はコーヌス義歯です。
コーヌス義歯とは
コーヌス義歯は、ドイツで開発された精密な部分入れ歯の一つで、茶筒のふたが簡単に外れない構造を応用しています。
部分入れ歯は、金属のバネを使って残った歯に固定しますが、コーヌス義歯は異なります。残存歯に金属製の冠をかぶせ(茶筒の本体に相当)、その上に入れ歯を重ねて装着することで、しっかりとした安定感が得られます。
外れにくく安定して噛めるうえに、口腔内で接触面が少ないため、発音への影響も少ないのが特徴です。
コーヌス義歯のメリット
コーヌス義歯のメリットは、噛む力が強く見た目が自然である点が挙げられます。クラスプ(バネ)を使用しないため、義歯が目立ちにくく、美しさを保ちます。
また、義歯自体が小さく設計できるため、装着時の違和感も少なく、食事の際にも自身の歯に近い感覚を得られます。
仮に将来、土台となる歯がダメになっても、修理で対応できる場合が多いようで、新たな義歯を作る必要はありません。
さらに、技工士が常駐している場合、その場で修理ができます。
コーヌス義歯は歯磨きがしやすく、歯周病になりにくい構造であるため、土台となる歯も長持ちする傾向にあります。
また、噛む際の力が均等に分散されることで、歯や歯茎、顎の骨への負担が少なく、これらの組織が痩せにくくなるため、痛みや不快感を感じにくいのが特徴です。
義歯が安定しているため、長期間にわたって快適に使用できるとされています。
コーヌス義歯の注意点
コーヌス義歯を使用する際には、土台となる歯が健康であっても削る必要がある点に注意が必要です。
また、この治療は健康保険の対象外となるため、費用負担を考慮することも重要です。
入れ歯治療を受ける歯科医院の選び方
入れ歯治療を受ける際には、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要です。
高齢の方に多く利用されている医院は、入れ歯の治療経験が豊富である可能性があります。
待合室の患者さんの年齢層が高めの医院は、入れ歯治療を得意としている場合が多いようです。
また、最近では80歳で20本の歯を維持する”8020”を達成する方が増えており、総入れ歯よりも部分入れ歯のニーズが高まっています。
部分入れ歯にはさまざまな種類があり、これに関する情報をホームページで詳しく紹介している歯科医院は、入れ歯治療に力を入れていると考えられます。
歯科医師にも得意分野があるため、知人の紹介やインターネットの情報も参考になりますが、治療の難易度や内容が異なる場合もあるため、最終的には自身に合った医院を見つけることが大切です。
入れ歯治療を成功させるためには、診査と綿密な治療計画が不可欠です。患者さんに併せた治療の選択肢を丁寧に説明してくれる医院を選ぶとよいでしょう。
大学病院の補綴や義歯を専門とする診療科でトレーニングを受けた歯科医師は、入れ歯の製作に強みがあります。こうした専門性も選ぶ際の目安になります。
また、入れ歯は作った後のメインテナンスが必要です。
長期間快適に使用するためには、入れ歯の状態を定期的に確認し、適切に調整を行うことが大切です。
歯茎の形や入れ歯の摩耗の変化に対応するため、アフターケアをしっかり行ってくれる医院を選びましょう。
まとめ
ここまで入れ歯にすると滑舌が悪くなる原因や対策法についてお伝えしてきました。
入れ歯にすると滑舌が悪くなる原因や対策法について要点をまとめると以下のとおりです。
- 入れ歯を入れると滑舌が悪くなる理由は、入れ歯のフィット感が変わるためであり、入れ歯が適切に作られているかを再度確認し、必要に応じて調整を行うことが重要
- 入れ歯を薄く削ってもらったり、自宅で発音の練習をしたりしてみることで、入れ歯による滑舌悪化を防ぐことが期待できる
- 対策をしたのにも関わらず入れ歯による滑舌悪化が改善されない場合は、金属床義歯やコーヌス義歯などの自費の入れ歯・補綴物の使用を検討してみる
入れ歯をつけた際に少しでもお口の中が気になったら、歯科医院で適切な診断と治療を受けてみてください。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。