入れ歯を作ったばかりのときは、まだ入れ方や管理方法に慣れておらず、どのようにすればよいのか戸惑ってしまうものです。長い付き合いになるかもしれないので、ぜひ正しい入れ歯の入れ方・外し方を覚えましょう。
入れ歯の着脱方法が間違っていると、大切な入れ歯やお口を傷つけてしまうこともあります。入れ歯を正しく装着することで、食事や会話が以前より楽しくなるかもしれません。
今回は、総入れ歯や部分入れ歯の入れ方と外し方のポイントを紹介します。入れ歯を保存する際の注意点も解説しますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
総入れ歯の入れ方・外し方
- 総入れ歯の入れ方を教えてください。
- 総入れ歯は入れたときに、指で軽く押して入れ歯と粘膜をしっかりと吸着させることがポイントです。
通常は上顎の入れ歯から入れますが、場合によっては下顎用から入れても構いません。
総入れ歯は厚みがあって大きいので、そのままでは入りにくい構造になっています。
大きいため入れ方にはコツがいりますが、前歯をつまみ回転させながら入れると、口角を傷つけずスムーズに入ります。
- 下顎の入れ歯を入れる際の注意点を教えてください。
- 下の総入れ歯も同様にして斜めに回転させながら、お口の中に入れます。
そのまま左右の指をそれぞれ奥歯に当て、顎の粘膜に沿って静かに押し入れます。
下顎用は定位置に治ったことを確認したら、左右の奥歯を指で押して吸着させるのがポイントです。
入れたときに、必ず左右の奥歯を軽く指で押して吸着しているか確認することが大切です。
- 上顎の入れ歯を入れる際の注意点を教えてください。
- 上顎の入れ歯を入れる際は、ゆっくり回転させながら斜めに入れて、中で回転させて戻しましょう。
そのまま無理してまっすぐ入れようとすると、口角に入れ歯の端が当たって傷つけてしまう恐れがあります。
上顎に入れ歯が収まったら、左右の奥歯の部分を軽く押して装着しましょう。床の中央部分を親指で押して粘膜と吸着させても構いません。
入れ歯が浮かないよう床の空気を抜き、しっかりと密着させるよう注意しましょう。
- 総入れ歯の外し方を教えてください。
- 入れ歯を外すときは、洗面台の鏡などでお口の中を見ながら行いましょう。
下の洗面台に水を張っておくと、万が一落下しても衝撃から守ってくれます。
通常は下顎の入れ歯から外しますが、上顎の入れ歯が緩くて落ちそうな場合には上から外しても構いません。
下の歯は、前歯の部分をつまんで後ろの部分を上げる要領で行うと、脱着がスムーズです。
入れ歯を浮かしたら、奥歯から手前の方向に少し回転させながらお口の外に出すようにしましょう。
上の歯は前歯をつまみ、後ろの部分を浮かすように下に下げると外れます。お口から出すときは、下顎用と同じく少し回転させるか入れ歯を斜めにして出すようにしましょう。
まっすぐに取り出すと口角を傷つける恐れがあります。
部分入れ歯の入れ方・外し方
- 部分入れ歯の入れ方を教えてください。
- 部分入れ歯を入れるときは、まずバネの金具部分を両指で持って歯にかけます。
歯の生えている方向に金具を軽く指で押すようにして、金具が安定するまで静かに押し入れます。
部分入れ歯は浮いていると外れやすいので注意が必要です。
また、部分入れ歯で噛んだときに違和感があるからといって、自分の判断でヤスリで削るなどの行為はしてはいけません。
口内炎のような傷や潰瘍ができて痛みが生じた場合は、使用を中断したうえで、かかりつけ歯科医院を受診して調整してもらうようにしましょう。
- 部分入れ歯を歯で噛むようにして入れても大丈夫ですか?
- 部分入れ歯は歯で噛むようにして入れると、痛み・変形・破損の原因につながる恐れがあります。
入れにくいからと、部分入れ歯を歯で噛んで入れるなどして無理な力を加えるのは絶対にやめましょう。
総入れ歯に比べて部分入れ歯の入れ方・外し方には少しコツがいりますが、歯の生えている方向に金具を指で押す・外すようにすると、入れ歯も簡単に脱着できます。
慣れるまでは、鏡を見ながら金具の位置を合わせて指で丁寧に行うなど、手間暇をかけて工夫しましょう。
- 部分入れ歯が浮いているとどのようなリスクがありますか?
- 入れ歯を支えているのはバネのかかっている歯の部分のみですので、噛み合わせが悪いと食事のときにかかる力に耐えることができずに入れ歯が浮いてしまうことがあります。
少しでも浮いてしまうと、部分入れ歯が外れやすくなるでしょう。
金属のバネの部分は尖っているので、お口の中を傷つける可能性があります。
バネ部分の変形や、バネをかけた歯の痛みの原因となることもあるため、注意しましょう。
食事中に入れ歯が浮いてしまうと、食べカスが入れ歯の下に入って汚れの原因にもなります。
また、小さな部分入れ歯の場合は間違って飲み込んでしまうリスクもあるかもしれません。浮いているときは、指で金属のバネの部分を押してしっかり歯に固定させるようにします。
- 部分入れ歯の外し方を教えてください。
- 部分入れ歯を外すときは、人差し指を金具にかけ、親指を歯の下に当てて外します。
上の歯は金具を下に、下の歯は金具を上に動かして、水平に力を加えるのがポイントです。
外したときは親指と人差し指でしっかり持つようにしましょう。
小さな部分入れ歯は、お口の中に落とすと、誤嚥の危険があるので注意します。
バネに指をかけ、空いている指でバネがかかっている歯を押さえます。両側にバネが付いている場合は両方同時に動かしましょう。片方のバネだけを動かしても取れませんし、バネが変形する恐れがあります。
入れ歯(義歯)の洗い方や保存する際の注意点
- 入れ歯の洗い方を教えてください。
- 洗浄する際は入れ歯は必ずお口から外して、入れ歯専用ブラシを用いて流水で汚れを落とすのがポイントです。
総入れ歯は入れ歯専用ブラシで全体を清掃しますが、部分入れ歯の金属のバネ部分は複雑な形をしているため、ブラシ先端の細い部分で丁寧に磨くようにしましょう。
入れ歯用ブラシだけでは落とせない汚れや臭いを取り除くため、就寝前には、専用の入れ歯洗浄剤を併用しましょう。
保存容器も毎日清掃して、清潔を保つことも大切です。
また、入れ歯を洗う真下には必ず水を張った容器などを準備して、落下の衝撃を緩和するようにします。
部分入れ歯の方は、入れ歯の洗浄のほかにも自身の残っている歯の口腔ケアも忘れずに行いましょう。
- 入れ歯を保存する際の注意点はありますか?
- 入れ歯は衝撃と乾燥に弱いので、水に浸した状態で衝撃や温度変化の少ない場所で保管しましょう。
特に子どもやペットがいるご家庭では、手の届きにくい場所に収納するなど破損や紛失から守る対策が必要です。
ティッシュペーパーに包んで置いておくと、ゴミと間違えられて捨てられてしまうこともあるので、保管場所をきちんと決めておくとよいでしょう。
また、入れ歯はお口の中で使用するよう設計されているので、保存するときも適度な湿気が欠かせません。
入れ歯の清掃が終わったら、保存容器に水を入れ、入れ歯を水に浸した状態で管理するようにします。
編集部まとめ
今回は、入れ歯の入れ方から保存する際の注意点までを解説してきました。
入れ歯には、総入れ歯と部分入れ歯があります。それぞれ入れ方や外し方も違うので、今回ご紹介した着脱・洗浄方法を参考に正しく管理しましょう。手入れがよいと清潔に口腔内が保てるだけでなく、入れ歯の寿命も延びるかもしれません。
ただし、入れ歯の装着や管理とともに、入れ歯での新しい噛み方に慣れるまでには少し時間がかかります。最初は、細かく切った食べ物を少しずつお口に入れるようにして、やわらかい食品から徐々に慣らすようにします。入れ歯を装着したからといってすぐに歯が全部あったときと同じように食事ができるというわけではないことも知っておきましょう。
参考文献