セラミックは、白くて見た目が美しいため、詰め物や被せ物などの補綴物として選ばれることが少なくない素材です。見た目のよさだけでなく、耐久性にも優れており、ほかの歯科素材よりも長く使用できる点が魅力です。
ただし、自由診療なので、もしも取れてしまったらどうしようと心配な方もいるかもしれません。また、別の歯医者で治療可能かどうかも気になる点の一つでしょう。
そこで今回は、セラミックが取れる原因や取れたときの対処法などを解説します。すでにセラミックの詰め物をしている方も、これからセラミック治療を検討されている方も、ぜひ参考にしてください。
セラミックの詰め物が取れる原因
- セラミックの詰め物が取れるのはなぜなのでしょうか?
- セラミックは耐久性が高い歯科素材ですが、詰め物が取れる可能性はゼロではありません。セラミックの詰め物は、接着剤である歯科用セメントを使用して強固に接着するのが一般的です。それでも取れてしまう原因には、まず接着剤の経年劣化が考えられます。ほかにも、以下のような原因が考えられます。
- 外傷・スポーツによる衝撃
- 歯ぎしり・食いしばり
- 悪い噛み合わせ
- 二次カリエス(再度のむし歯)
外傷・スポーツ事故などでセラミックが破損したり、取れたりすることがあります。また、歯ぎしり・食いしばり、硬いものを噛んだときの強い衝撃が原因でセラミックが取れることもあるでしょう。また、噛み合わせが合っていない場合は、セラミックに負担がかかるため取れてしまうこともあります。
さらに、一度むし歯治療が完了した歯が再度むし歯になることを二次カリエスといい、セラミックが取れる原因の一つに考えられています。
- 詰め物の接着剤はどのぐらいの期間効果がありますか?
- 歯科接着用セメントにはさまざまな種類があり、厚生労働省の医薬品含有歯科接着用レジンセメントについては、連結は長期的(永久)との記載があります。これを踏まえると、セラミック製の詰め物や被せ物の寿命は、一般的に約10年です。
ただし、これらは平均的な使用年数であり、日々の口腔ケア・生活習慣などによって変わることもあるでしょう。接着剤に関しても約10年を目安に考えるのが一般的です。
歯科医院では詰め物の歯科用接着剤の持続時間は、一般的に約4〜7年とされています。口腔の状態やセルフケアの違いによって、10年以上持続する場合もあれば、短くなる場合もあるでしょう。しかし、接着持続時間の延長には限界があり、構造や強度も経年劣化していきます。
そのため、歯科医院を受診して、セラミックの詰め物の接着状態を定期的に確認してもらいましょう。
- 詰め物をしていてもむし歯になりますか?
- セラミックは一般的に二次カリエスのリスクが低い素材といわれますが、詰め物と歯の間のわずかな隙間から細菌が侵入して、むし歯になることがあります。セラミックの詰め物や被せ物をする際には歯を削りますが、セラミックが取れたままの歯は象牙質や神経がむき出しになっていることがあるため、むし歯になるリスクが高くなるのが特徴です。
また、治療後のセルフケアを怠ると、むし歯になるリスクが高まります。詰め物の下の歯がむし歯になると、セラミックと歯の形が合わなくなって取れてしまうことがあります。
セラミックの詰め物が取れたときの治療方法
- セラミックの詰め物が取れたら別の歯医者でも治療可能ですか?
- 別の歯医者でも治療は可能です。ただし、同じ歯医者で治療する方が、治療費を安く抑えられる場合があります。
自由診療のセラミックの詰め物の場合、歯科医院によっては保証を付帯していることがあります。保証期間中であれば、治療費が免除されたり、半額になったりする場合があります。保証の内容は歯科医院によって違うので、別の歯医者で治療する前によく確認しましょう。
また詰め物を作り直す際、同じ歯科医院であれば以前の歯科技工士に依頼でき、制作時間が短縮されることもあります。
- 治療できない場合もあるのでしょうか?
- 接着剤の劣化によってセラミックが取れた場合は、歯科用セメントを付け替えることで対応可能なため、治療できないケースはほぼありません。ただし、セラミックが取れた部分の歯にむし歯がある場合は、さらに歯を削るなどの治療が必要です。そうなると、詰め物や被せ物の形も変わるため、再び型を取って作り直さなくてはならない場合もあるでしょう。
また、折れたり欠けたりして破損した場合は作り直しが必要です。取れかけた状態で自分の歯で強く噛んで変形させてしまった場合や、紛失してしまった場合も、新しく作り直す必要があります。
- 被せ物の修復に保険が適用されない期間があるのは本当ですか?
- 健康保険で作成した被せ物には、被せてから最低2年間は作り直しができないというルールがあります。このルールは、むし歯や歯周病がある歯に被せ物をしても長持ちしないという事態を防ぐためのものです。また、被せたからには2年間は最低でも持たせる責任があるという健康保険の考え方に則るものです。
ただし、セラミックの詰め物は自由診療となるので、このルールは適用されません。また、被せ物を行った歯科医院には、2年間はしっかりと使用できる被せ物を補填する義務があります。
そのため、土台から壊れた場合は無償で作り直す必要があるのは事実です。ただし、別の歯科医院で修復を依頼する場合には、保険が適用されることもあります。
セラミックの詰め物が取れたときの対処法
- セラミックの詰め物が取れたときの対処法を教えてください。
- 取れてしまったセラミックの詰め物は、再装着が可能な場合があります。取れた詰め物は捨てず、流水で洗浄した後、清潔な容器やビニール袋に入れて保管しましょう。そのうえで、なるべく早くかかりつけの歯科医院に連絡しましょう。
セラミックの詰め物が取れたことを告げると、優先的に治療を受けられる可能性が高くなります。ただしセラミックが欠けたり割れたり破損した場合は、そのまま再度接着することは難しく、多くの場合は作り直しが必要になります。
セラミックの詰め物を治療した際に発行された保証書をしっかり確認し、できるだけ早めに治療を受けた同じ歯科医院で対応してもらうようにしましょう。
- 食事をするときの注意点を教えてください。
- 歯に神経が残っている場合は、食事するたびにしみたり冷温水痛と呼ばれる痛みが出やすくなったりするでしょう。そのため、セラミックが取れた側での食事が困難となります。歯医者に行くまでは、冷たいもの・熱いものの飲食は控え、詰め物が外れた側の歯で硬いものを噛まないように意識しましょう。
また、就寝中にセラミックが取れた場合、気道に入る危険性もあります。食事中に取れた場合は、間違って飲み込まないよう注意しましょう。
- セラミックの詰め物が取れたら早めに歯医者に行くべきですか?
- セラミックの詰め物が取れた部分には、細菌が繁殖しやすい環境ができます。そのため、セラミックが取れた歯が新たにむし歯になることもあるかもしれません。
また、何も症状がないからと放置していると、隣の歯が倒れこんできて現存の詰め物が被せられなくなってしまう恐れもあります。特に神経を抜いた歯はもろくなっているので、大きく歯が欠ける危険性もあります。
また、細菌が繁殖すると、不快な臭いの原因になります。セラミックが取れたまま放置せず、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
編集部まとめ
今回はセラミックの詰め物が取れたときの対処法を解説しました。
セラミックは歯科補綴物のなかでも耐久性や強度に優れ、変色もほとんどないとされているうえに、隙間ができにくいため再びむし歯になりにくい素材です。色が白くて見た目がよいだけでなく、自分の天然歯の色をかなり高い精度で再現できるというメリットもあります。
もし取れてしまった場合でも、早い段階で対処すれば、つけ直しが可能なケースが多いでしょう。保証内容を確認のうえ、なるべく早く歯科医院を受診して治療してもらうことをおすすめします。
また、記事内でご紹介したように、セラミックが取れた歯はむし歯になりやすい状態です。歯医者を受診するまでは、食事にも気をつけ、できる限りお口の中も清潔に保ちましょう。
普段から口腔ケアに気をつけて、少しでも長く大切に使うことが大切です。
参考文献