抜歯後の痛みは、抜歯をしたことのある方なら、ほとんどの方が経験しているでしょう。
通常、抜歯後の痛みは2日程度でおさまることがほとんどです。しかし、痛みが長引くことや、まれに強くなる場合もあります。
ドライソケットという症状が発生した場合、通常より強い痛みが出るといわれています。
本記事では、抜歯後の痛みが続く期間、ドライソケットや対処法、抜歯後の日常生活での注意点についても解説しています。
抜歯後に痛みがある原因やドライソケット
- 抜歯が必要になるのはどのようなケースですか?
- 抜歯が必要になるのは、次のようなケースです。以下は、2018年の全国抜歯原因調査の結果です。
- 歯周病(37%)
- むし歯(29%)
- 破折(18%)
- その他(8%)
- 埋伏歯(5%)
- 歯列矯正(2%)
破折とは、歯の割れ・欠け・ヒビが入ることを指します。破折の原因の多くは、外傷などの大きな力によるものではなく、むし歯が原因で神経をとった歯の場合がほとんどです。
破折もむし歯由来のものと考えると、抜歯の原因の47%をむし歯が占めることになります。抜歯が必要になるのは、むし歯と歯周病が主な原因と考えていいでしょう。その他にも、歯列矯正のための抜歯・親知らずの抜歯などがあります。
- 抜歯時は麻酔をしていても痛みを感じますか?
- 抜歯時は麻酔をするので、基本的に痛みを感じることはありません。麻酔自体もなるべく痛みが少ない方法でを行ってくれるクリニックもあります。麻酔の注射が不安な方には、表面麻酔を行います。麻酔の注射を打つ部位(歯茎)にあらかじめ麻酔薬を塗って表面の感覚を麻痺させる方法です。
また、治療中に痛みを感じる場合は麻酔が足りていない可能性があるので、歯科医師や歯科衛生士に伝えることが重要です。麻酔が切れると当然痛みが出てきます。麻酔が切れる前に痛み止めを服用して対策することもあります。
また、どうしても抜歯に恐怖心がある場合は吸入鎮静法や静脈内鎮静法といった麻酔を選択することができるので、事前に相談するとよいでしょう。
- 抜歯後に痛みが続く原因を教えてください。
- 抜歯後に痛みが続く原因は以下のようなものがあります。
- 歯茎を切開したり骨を削ったりした場合
- 抜歯した傷口に細菌感染・腫れがある場合
- ドライソケットの場合
喫煙により、傷の治りが悪くなることが知られています。また、飲酒・長風呂・激しい運動は、血流がよくなって出血することがあるため抜歯後は控えることが大切です。
- ドライソケットとはどのような状態ですか?
- 抜歯をした歯が埋まっていた穴に、血餅(けっぺい)という血のかたまりができます。この血餅が傷口に蓋をしている間、約2〜3週間で徐々に歯肉が修復され、傷口が塞がります。
血餅がしっかり形成されない場合や取れてしまった場合に、顎の骨が露出する状態がドライソケットです。
骨が露出している状態では、露出した骨に直接刺激が加わるため、響くような痛みを感じます。この痛みは、通常抜歯の痛みが落ちつく3〜5日頃から強い痛みが出始め、約2週間痛みが続きます。抗生剤と痛み止めを服用しますが、治らない場合は歯科医師に相談することが重要です。
抜歯をした後に痛いのはいつまで?
- 抜歯後の痛みはいつまで続きますか?
- 通常、抜歯後の痛みは1〜2日程度続きます。ほとんどの場合、この2日間で痛み止めの服用は不要になることがほとんどです。しかし、抜歯後に痛みが長引く場合、その原因により痛みが長引く期間は異なります。親知らずのような大きな歯を抜く際、歯茎を切開したり骨を削ったりする場合があります。
この場合、骨に負担がかかりやすく約1週間、痛みが続く場合があるでしょう。また、抜歯した傷口に細菌感染や腫れがある場合も、痛みが1週間程度続くことがあります。ドライソケットになった場合は、2週間程度痛みが続くことも少なくありません。
いずれの場合も、痛みが長引く時は、処方された抗生物質と痛み止めを服用します。
- 一度痛みがおさまっても再度痛くなることはありますか?
- 抜歯後に一度痛みがおさまっても再度痛くなることがありますが、主な原因は次の2つです。
- ドライソケット
- 術後感染
ドライソケットの場合、抜歯後1週間たっても痛みがほとんど治まらない、または日を追うごとに痛みが増してくることがあります。また、術後感染は、抜歯後の穴に細菌が入り込んで感染症を起こすことです。
抜歯後に強い痛みが続く、発熱があるなど気になる症状がある場合は、歯科医院に相談する必要があります。どちらの場合も、痛み止めと抗生剤で治療をします。重症化を防ぐためにも早めの処置が大切です。
- 痛みだけではなく腫れや出血がある場合はどうすればよいですか?
- 個人差はありますが、抜歯当日や翌日より、2〜3日後の方が腫れます。その後、徐々に腫れは引いてくることがほとんどです。骨を削らずに抜歯した場合は、あまり腫れません。しかし骨を削ったり歯茎を切開したりして抜歯した場合は腫れやすくなります。腫れても冷やす必要はありません。
冷やしすぎると血流が悪くなるため傷の治りが悪くなります。抜歯後は、安静にし、仕事や運動など無理をせず十分に睡眠を取ることが大切です。次に出血が続く場合です。抜歯後は、丸めたガーゼを15〜20分間噛んで圧迫して止血します。
ガーゼの大きさが合っていない場合や位置がずれてしまうと止血できず、再び出血することがあります。自宅で再び出血してしまった場合は、抜歯後に歯科医院で止血したように、ガーゼを噛んで止血することが重要です。傷口より少し大きめに硬く丸めて、しっかりと20分程度しっかり噛みしめて圧迫させます。
抜歯後に痛みが続く場合の対処法
- 抜歯後に痛みが続く場合の対処法を教えてください。
- 抜歯後に痛みが続く場合は、指示通りに処方された痛み止めを服用します。ほとんどの場合、3日〜1週間程度で痛みは治まります。痛みが続く場合の日常生活における注意点は以下のとおりです。
- 喫煙を避ける
- 運動・入浴・飲酒を控える
- やさしく歯磨き・うがいをする
- 傷口に負担をかけない食事をとる
- 抜歯した歯の反対側で噛む
痛みが1週間以上続く場合は、ドライソケットの可能性があるため、歯科医院に再度相談する必要があります。
- 市販の痛み止めで対処しても大丈夫ですか?
- 抜歯後、市販の痛み止めで対処する場合もあります。市販の痛み止めは、大きく2種類に分類されます。
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):ロキソプロフェンやイブプロフェンなど
- アセトアミノフェン
どちらの薬も歯科医院で処方薬として使用される成分です。15歳未満はNSAIDsを服用できないため、アセトアミノフェン配合の薬を選びましょう。ただし、注意が必要な方もいるので、市販の痛み止めで対処する場合は購入時に薬剤師に相談することが大切です。
- 痛み止めの成分によりアレルギー症状を起こしたことがある方
- 痛み止めやかぜ薬を服用してぜんそくを起こしたことがある方
- 心臓病・腎臓病・肝臓病・胃・十二指腸潰瘍喘息の治療を受けている方
- 貧血や血が止まりにくいなど医師から指摘を受けている方
- 妊婦・授乳婦
- 高齢者
服用後に体調不良を感じた場合は、すぐに服用を中止し医師・薬剤師に相談する必要があります。
- 再度歯科医院を受診する目安を教えてください。
- 痛みが1週間以上続く場合は、ドライソケットの可能性があるので、再度受診する必要があります。ドライソケットの場合、痛みは2週間程度続くことがほとんどです。
完全に痛みが治まるのに1ヶ月以上かかることもあります。痛み止めと抗生剤を服用しても症状が治まらない場合は、掻把(そうは)という処置を行います。汚れを取り除いて傷口を清掃し、骨が露出している部分から出血させて、血餅の生成を促す治療です。
編集部まとめ
抜歯後の痛みは、2日程度でおさまることがほとんどです。歯茎を切開したり骨を削ったりした場合などでも1週間以内におさまります。
1週間以上痛みが続く場合は、ドライソケットを疑います。その場合、治療が必要なことがあるため、痛みが続く場合や強くなる場合は早めに歯科医院に相談しましょう。
痛みが続く場合は、指示された方法で痛み止めを服用します。
また、抜歯後の生活も痛みに影響します。抜歯後の注意事項をしっかり守り、傷口を清潔に保つことが重要です。
喫煙・飲酒・長風呂・激しい運動は、抜歯後は控えます。仕事や運動など無理をせず、安静にし十分に睡眠を取るようにしましょう。
参考文献