コンフォート入れ歯とは、これまでプラスチックを使用していた入れ歯の歯茎部分に生体用シリコンを使用した補綴装置です。保険診療の入れ歯と比べると機能性に優れており、入れ歯での生活が楽になります。
例えばグッと噛んだときの歯茎への衝撃をやわらげ、従来の入れ歯と比べて痛みや外れやすさを軽減する効果があります。
また、噛む動作をしっかり行えるため、お顔の筋肉が鍛えられたり脳の活性化につながったりするのも大きなメリットです。
一方で費用面やメンテナンスのしやすさなど、まだまだデメリットも多くあるのが現状です。
この記事ではコンフォート入れ歯の費用やメリット、デメリットを解説します。入れ歯を選ぶうえで参考になれば幸いです。
コンフォート入れ歯の費用
コンフォート入れ歯を検討するときに費用面を考えることはとても重要です。従来の入れ歯と比べて負担が少なく使いやすいコンフォート入れ歯ですが、それだけに費用も高額になります。
ここではコンフォート入れ歯を検討するときの費用の目安や費用を抑えるための工夫、保険適用の有無を解説します。
コンフォート入れ歯の費用の目安
コンフォート入れ歯にかかる費用ですが、総入れ歯にする場合で上下どちらかで550,000円(税込)前後が目安です。
当然ながら本数が少ないほど、費用は安くなります。1~3本の連続した狭い範囲なら140,000~200,000円(税込)の費用となります。
それ以上の範囲となると4~13本の範囲で500,000円(税込)前後が目安です。
また、両奥2本のように施工のしづらい部分になると、それだけで500,000円(税込)前後の費用がかかります。
コンフォート入れ歯の費用を抑えるための工夫
保険適用のきく入れ歯と比べて高額な費用のかかるコンフォート入れ歯ですが、医療控除やローンをうまく使うことで費用を抑えることができます。
例えば医療費控除を使って費用の一部を所得税や住民税から還付する方法があります。
また一括で支払うのではなくローンを使用すれば何年にもわたって医療費控除の適用をうけ、より費用を抑えることも可能です。
ここからはコンフォート入れ歯の費用を抑える工夫を詳しく解説します。
コンフォート入れ歯の保険適用について
使用できる素材に制限のないコンフォート入れ歯は保険の適用外です。そのため保険の適用があれば3割の費用負担で済むところをすべて自費でまかなう必要があります。
また、安価なプラスチックだけでなくシリコンなどの素材を使用しているため、基本的な原価も保険適用のきく入れ歯と比べて高額です。
コンフォート入れ歯は医療費控除の対象になる?
コンフォート入れ歯を作成する費用は医療費控除の対象になります。
医療費控除とは支払った所得税の額を上限として所得税が還付される制度です。
1年間に支払った医療費の合計が100,000円以上の場合、医療費控除の対象になります。コンフォート入れ歯を作成する場合、その時点で100,000円以上の費用がかかるケースがほとんどですので、問題なく控除の対象になります。
ただし、所得が2,000,000円未満の場合は所得の5%を超えていることが条件になるので注意が必要です。
また保険金で補填される金額は計算の対象外となり、支払った医療費から差し引かれて計算されます。
仮に所得金額が4,000,000円・コンフォート入れ歯の費用が500,000円(税込)だった場合、所得税から80,000円・住民税から40,000円の計120,000円が還付される計算です。
ローンを使用すれば複数年にわたって控除を受けることも可能です。この場合その他の医療費もかかっていることが条件になります。
例えばコンフォート入れ歯の費用が500,000円(税込)を2年のローンで支払い、それ以外に年間の医療費が100,000円かかっていた場合の計算です。
この場合は年間350,000の医療費に対して所得税から50,000円・住民税から25,000円の還付が2年間あるため、合計で150,000円の還付が受けられる計算になります。
コンフォート入れ歯の種類
コンフォート入れ歯は補填する歯の本数によって3つの種類を使い分けます。
いずれも従来の入れ歯と比べて歯茎への負担が少なく、硬いものでも痛みなくしっかり噛めるようになるのが特徴です。
またすべての制作工程を歯科技工士によるオーダーメイドで行うため、一人ひとりのお口に合った入れ歯に仕上がります。
ここからはコンフォート入れ歯の種類を解説します。
コンフォート・ソケット
コンフォート・ソケットとは1本の歯から最大で連続する3本の歯の範囲までの抜けてしまった歯を補う治療法です。
歯を埋め込むインプラント治療の場合、歯茎の中にネジを埋め込むためおよそ半年の期間を必要とします。コンフォート・ソケットの場合、取り扱い歯科医院でお口の中を型取りし部品を作るだけですので2週間ほどで治療できるのが特徴です。
また、抜けた歯の両側にある歯を支えにするブリッジ治療と比べた場合、健康な歯を傷めずに済むのがメリットです。
ブリッジ治療の場合、支えになる両端の歯を大きく削る必要があります。一方でコンフォート・ソケットの場合は両端の歯を露出させ歯茎にかぶせるだけで済むので歯を削る必要がほとんどありません。
これも材料にシリコンを使用し、歯茎にかかる圧力を軽減できているからです。
コンフォート・コネクト
コンフォート・コネクトは3本以上の歯が抜けたときに使用できる部分入れ歯です。コンフォート・ソケットと違い、歯の抜けが飛び飛びであっても使用可能で、歯の抜けた位置に関わらず最大で13本の歯に対応しています。
一般的な入れ歯と比べた場合、入れ歯の目立たなさが特徴です。一般的な入れ歯の場合は残っている歯に金属のばねを絡ませ固定する方法を取っています。
そのため歯を見せたときに金属のばねが一緒に見えてしまい、見栄えがよくありません。
コンフォート・コネクトの場合は歯茎にかぶせたときに特殊なシリコンによって吸着し、目立ちにくいように金属や樹脂で固定の補助をするので口元が目立ちません。
また、一般的な入れ歯の場合は固定する金属のばねの反動で痛みがあったり、入れ歯が動いたりしたときにばねが絡んだ健康な歯も一緒に引っ張り傷めてしまうデメリットがあります。
コンフォート・コネクトの場合は歯茎の粘膜に近い特殊シリコンを使用し、歯茎にかかる圧力を軽減するだけでなく硬いものもしっかり噛めるようになります。
コンフォート・コンプリート
コンフォート・コンプリートとは歯をすべて失ったときに使用する総入れ歯です。
特殊なシリコンで歯茎全体を吸着し圧力を軽減し、一般的な総入れ歯で多く見られる噛んだときの痛みをやわらげます。
またシリコンの適度な弾力と吸着性により入れ歯と歯茎の間の密閉性を生み出すことで隙間をなくし、総入れ歯にありがちなゆるみやがたつきを緩和します。
同時に入れ歯と歯茎の隙間に食べかすが入り込むことを防げるので、口腔内をきれいに保つことができるのが特徴です。
コンフォート入れ歯のメリット
コンフォート入れ歯は入れ歯をしていることを知られたくない方や、食事のときに痛みに悩まされている方にとって有効な補綴装置です。
また保険診療の入れ歯を使用し、ゆがみやぐらつきが気になるたびに買い換えているような方にとってもメリットが大きいです。
ここではコンフォート入れ歯を使用した場合にどのようなメリットがあるのかを解説します。
目立ちにくい
コンフォート入れ歯では従来の入れ歯にあるような金属のばねは使用しません。
基本的な固定は特殊シリコンによる吸着性によって行い、歯茎の裏側を通る薄い金属のブリッジや樹脂によって固定の補助をするので大きくお口を開けても入れ歯が目立ちにくい仕様です。
入れ歯が目立つのが嫌で大きくお口を開けられない不安も軽減されます。
痛みが少なく噛みやすい
歯茎にあたる部分に特殊シリコンを使用しクッション性を強くして、歯茎にかかる圧力を軽減して痛みを減らしています。
そのため硬いものでもしっかり噛んで食事ができるので食べるものを選びません。
安定感があり外れにくい
コンフォート入れ歯はお口の形に合わせてオーダーメイドで丁寧に作られており、特殊シリコンの弾力性が歯茎と入れ歯をしっかり安定させます。
このため噛むときに発生する顎の動きにも入れ歯がずれず、好きなものを食べることが可能です。
長持ちしやすく臭いが少ない
入れ歯の寿命とはどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省によると保険診療で入れ歯を作る場合、入れ歯の制作は最低でも6ヶ月以上の期間を開けて行うこととされています。
見方を変えれば、保険診療の入れ歯は不注意などがなければ最低6ヶ月は使用可能と考えられます。つまり6ヶ月が最低限の保証期間です。
また半年ごとに制作してよいということは、その頃には劣化が始まっているととらえることもできます。
一方でコンフォート入れ歯の耐久性は2~5年です。
後で紹介する適切なケアが必要ですが、メンテナンス次第でコンフォート入れ歯は保険診療の入れ歯と比べてかなり長持ちします。
また材料が劣化しにくいため、保険診療の入れ歯と比べて匂いや着色はしにくくなっています。
このほかにも特殊シリコンによる歯茎との密着性があるため、口腔内に食べかすが残るケースが減り、口臭が発生しづらいのが特徴です。
外科手術が不要である
コンフォート入れ歯を制作するときに外科手術は必要ありません。
歯を大きく削る必要も、インプラント治療のように歯茎にネジを埋め込む穴を作る必要もないためです。
また外科手術の必要なインプラント治療がカウンセリングや造骨治療などの事前準備も含めて6ヶ月~12ヶ月の治療期間が必要になるのに対し、コンフォート入れ歯の作成期間はおよそ2週間ほどです。
歯科医院で口腔内の型取りをし、それをもとに歯科技工士がオーダーメイドで作成して完了となり、これは入れ歯作成のなかでは早い部類に入ります。
コンフォート入れ歯のデメリット
ここまでコンフォート入れ歯のメリットを解説しましたが、デメリットももちろん存在します。
まず一つ挙げられるデメリットとして、初めて入れ歯を使用する方には違和感が大きい点です。
コンフォート入れ歯は入れ歯に特殊シリコンを貼りつける構造上、多少の厚みが出てしまいます。厚みの分だけ口腔内が狭くなってしまうため、慣れるまで不快に感じる場合があります。
またとても大きなデメリットは、その高額な費用です。これは初期費用だけでなくその後のメンテナンスコストも同様です。
コンフォート入れ歯はクリネという専用の洗浄剤で毎日洗う必要があるため、その費用がかかります。
クリネは1ヶ月分で1,760円(税込)ですので年間に21,120円(税込)必要です。
一般の洗浄剤の費用が年間で3,200円(税込)ほどなので、年間で17,520円(税込)多くかかる計算になります。入れ歯は一生使うものなので、メンテナンスコストも考える必要があるでしょう。
コンフォート入れ歯のケア方法
コンフォート入れ歯にもご自身の歯と同じように食べかすや歯垢がつきます。
特にシリコン部分は汚れがつきやすく、カンジタ菌というカビの一種が繁殖しやすい特性があります。
これらをきれいに取り除いてあげることで匂いや劣化を抑えることができますが、デリケートな製品のため専用の洗浄用品が必要です。高額な商品ですので大切にケアをし、長く使えるようにしましょう。
ここではケアの方法を解説します。
入れ歯専用のブラシで磨く
まずは流水で入れ歯についた汚れを落とし、その後でやわらかい専用のブラシで優しく磨きましょう。
歯の部分や入れ歯の端まで丁寧に磨いてあげることがコツです。しっかりと汚れを落とすことで匂いのもととなる原因を取り除きます。
入れ歯洗浄剤で除菌する
続いて容器に入れ歯がしっかりと浸るだけの水を入れ、洗浄剤を入れます。容器はコップなどでも構いませんが、ほこりが入らないようにフタのできるものの方がよいでしょう。
就寝中に浸け置きする
就寝中に浸け置きをし朝に流水でもう一度洗います。
このときに優しくブラシで磨いてあげることで洗浄剤で浮き上がった汚れを落とし、より清潔な状態を保つことができるでしょう。
これで毎日のメンテナンスは終了です。
一日行うぶんには簡単ですが、毎日の積み重ねがコンフォート入れ歯を長く清潔に使い続ける重要なポイントになります。
まとめ
以上でコンフォート入れ歯の費用やメリット・デメリットの解説を終わります。
費用面や手間など気になる点もありますが、しっかり硬いものを食べたい方や噛んだときの痛みに悩まされている方にとってはよい入れ歯です。
歯を失った方にとって入れ歯は一生付き合うことになる大事な補綴装置です。
費用面も大切ですが、使って不快に感じるようではそれだけで毎日の生活がつまらないものになってしまいます。
この記事が入れ歯を選ぶときの参考になれば幸いです。
参考文献