歯を手軽に白く美しい状態にする治療の一つに、ラミネートベニアがあります。
特に、前歯の見た目を整えたいという場合にはとても利用しやすい方法で、歯の見た目を白くするだけではなく、歯と歯の隙間が空いているような状態の改善も期待できます。
この記事では、ラミネートベニアのメリットやデメリット、治療の際の注意点などについてご紹介していきます。
ラミネートベニアで前歯がきれいに見える?
ラミネートベニアとは、セラミックなどで作られた薄く白いチップを、歯の表面に貼り付けるという歯科の審美治療の一つです。
チップはセラミック・シェルなどとも呼ばれ、歯の表面全体を覆う、貝殻のような形状をしています。
歯を白くする方法としては歯の着色汚れを除去するクリーニングや、歯の内部にまで薬剤を浸透させて色調を明るくするホワイトニングがあります。しかし、こういった方法で歯を白くするにはある程度治療を繰り返していく必要があり、そもそも理想通りの白さの実現が難しい可能性もあります。
一方で、ラミネートベニアは人工的に作られたチップを取り付けるだけで行えるため、短期間で治療が可能であり、理想とする歯の白さを実現しやすいという治療法になっています。 ラミネートベニアは主に前歯の見た目を整える方法として用いられ、1番手前の歯から、3本目の歯にあたる犬歯までに実施されます。
それより奥歯側では基本的に使用されず、これは奥歯は歯にかかる負担が前歯よりも強いため、ラミネートベニアでは割れてしまったり、取れてしまったりするリスクが高いことなどが理由として挙げられます。
ラミネートベニアによる前歯治療のメリット
ラミネートベニアによる前歯の治療には、単純に歯を白くすることができるというだけではなく、そのほかにもさまざまなメリットがあります。
ラミネートベニアによる前歯の治療のメリットをご紹介します。
すぐに白い歯が手に入る
ラミネートベニアの治療において、やはり特に大きなメリットは、すぐに白い歯が手に入るという点です。
白い歯を手に入れるための治療法にはホワイトニングなどの方法もありますが、こういった治療はすぐに白い歯が手に入るのではなく、時間をかけてゆっくりと白くしていく流れとなります。
ラミネートベニアであれば、歯の形に合わせた白いチップを作成し、それを歯科医院で取り付けるだけという工程で治療が完了するため、素早く白い歯を手に入れることができます。
例えば結婚式までに歯を白くしたいなど、大切なイベントに合わせて見た目を改善したいという方も、ラミネートベニアの治療であれば対応ができるのではないでしょうか。
軽度の隙っ歯を改善できる
歯に白いチップを貼り付けることで行うラミネートベニアの治療は、白さだけではなく、ある程度の歯並びを改善させることができます。
対象となるのは軽度の隙っ歯で、歯と歯の間が空いてしまっているような歯並びの方に対し、その隙間を埋めるような形でラミネートベニアを取り付けることで、歯の隙間を改善させることができます。
隙っ歯は見た目の問題だけではなく、歯の間に食べものが挟まりやすくなったり、間から空気が漏れることで発音に影響を及ぼしたりするため、これを改善することでQOLの向上も期待できます。
矮小歯を改善できる
矮小歯とは、何らかの理由で小さく生えてしまった歯のことです。遺伝やビタミンD不足による影響などが要因と考えられていますが、原因は明確になっていません。
特に前歯に生じることが多く、ラミネートベニアで治療をする範囲と重なります。
矮小歯は噛み合わせにも影響が出やすく、矮小歯があるとその部分の歯が充分に咀嚼に使用しにくくなるため、ほかの歯ばかりを使うようになって、偏った噛み癖などがでる要因となります。
また、矮小歯は隣り合う歯との隙間が大きくなりやすいため、上述の隙っ歯も生じやすくなります。
矮小歯については被せ物による治療が一般的に行われていますが、そこまで極端に小さい歯ではないという場合には、ラミネートベニアによる治療も一つの選択肢となります。
ラミネートベニアでは噛み合わせの改善までは難しいものの、隙っ歯の状態を修正することはできるため、発音などに対する好影響も期待できます。
汚れが付着しにくい
ラミネートベニアは、主にセラミック素材で作成された薄いチップを歯に取り付ける方法で行われます。
セラミック素材の歯は、理想的な白さや天然の歯に近い透明感を演出できるというメリットだけではなく、表面が滑らかで汚れが付着しにくいという性質を持っています。
汚れが付着しにくいため、清潔に保ちやすく、かつ着色による変色などが生じにくいので、白く美しい状態を長く維持しやすいという点がメリットです。
ラミネートベニアのデメリット
ラミネートベニアの治療は上記のようにさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在しています。
治療を検討する際には、しっかりとデメリット部分も理解して、適切な治療を選択するようにしましょう。
健康な歯を削る可能性
ラミネートベニアは歯の表面に薄いチップをはり付ける方法で行いますが、歯にそのままチップをはり付けてしまうと、その分歯が盛り上がった状態となってしまいます。
歯の状態によっては多少盛り上がっても特に問題ない場合がありますが、唇に内側から歯があたりやすくなってしまうなどの変化につながるため、チップの厚みの分、歯の表面を薄く削って治療を行う場合があります。
削る分量は歯の健康を損なわない程度の薄さで、知覚過敏などの症状につながる可能性は高くないとはいえますが、むし歯などの病気でもない健康な歯を削るため、一つのリスクとして考えておいた方がよいでしょう。
歯には肌のような再生能力がなく、一度削ってしまうと完全に元の状態に戻せなくなるため、歯を削るという点は特に注意が必要です。 なお、歯の状態などによっては削らずにラミネートべニアの治療が行えることもありますので、歯は削りたくないけれどラミネートベニアの治療が気になるという方は、削らない治療に対応している歯科医院で相談してみるのもよいのではないでしょうか。
出っ歯など治療を受けられない可能性
出っ歯は、歯科用語で上顎前突と呼ばれる状態で、上の前歯が前方に突き出したような状態を指します。
出っ歯は骨格による原因の場合や、歯の傾きによる原因などがありますが、いずれの場合でも歯が前方に出ていて、上唇に触れているような状態です。
そのため、ラミネートベニアで治療を行うと出っ歯の盛り上がりがより強調され、状態が悪化してしまう可能性があります。
出っ歯は見た目の問題だけではなく、お口がしっかりと閉まりにくくなることによって口呼吸の習慣につながりやすくなり、口内が乾燥しやすくなるといったリスクもある状態です。
口内が乾燥すると免疫力の低下によりむし歯や歯周病といった症状も発生しやすくなるので、治療によって出っ歯の状態が悪化する可能性がある場合には、ラミネートベニアの治療は推奨されません。
ラミネートベニアが割れる可能性
ラミネートべニアで取り付けるチップの素材であるセラミックは、いわゆる陶器と同じ素材であり、とても頑丈な性質があります。
ある程度力をかけても曲がったり変形したりしにくいので、ラミネートベニアだけではなく、インレーやクラウンといった歯科治療にもセラミックはよく利用されます。
しかし、丈夫であるといっても、壊れる可能性がないわけではなく、強い力が加わると破折(割れてしまう)可能性があります。
特に、ラミネートベニアはとても薄いチップで治療が行われるので、クラウンなどの治療と比べて割れてしまうリスクが高いといえるでしょう。
ラミネートベニアが割れてしまった場合、チップは再利用が困難なため、再度チップを作成して治療を行う必要があります。
なお、チップが割れてしまうとその隙間から細菌が入り込んで、目に見えない箇所でむし歯が進行してしまうなどのトラブルにつながる可能性もありますので、割れたまま放置はしないようにしましょう。 また、チップが割れるまではいかなくても、歯にかかる力によって、チップが取れてしまうというリスクもあります。
ラミネートベニアはクラウンによる治療などと比べて接着面が小さいため、接着力が弱い治療法です。
チップが取れてしまった場合は、とれたチップを清潔な状態に保って、治療を受けた歯科医院に持っていくとよいでしょう。
治療後に違和感が生じる可能性
歯の表面に薄いチップを貼り付けることで、歯の形状が変化するため、多少なりとも違和感が生じる可能性があります。
治療後の違和感はある程度時間が経過すれば慣れていくため、長期的にはあまり気にならなくなるといえますが、違和感によってお口の動きなどに変な癖がついてしまうと、それが噛み合わせの悪化などにつながる可能性もあるといえるでしょう。
色の違いが気になる可能性
ラミネートベニアは、チップをはり付けている歯だけが白くなる治療であり、それ以外の歯はそのままの色です。
また、歯の表面側だけが白くなり、裏側については元々の歯の色のままとなっているので、お口を大きく開けたりすると、治療を受けている歯とそれ以外の歯、または歯の表と裏で、色の違いが気になってしまう可能性があります。
また、例えば喫煙をする方などの場合、色の変化は歯だけではなく歯茎にも生じている場合があり、歯茎が黒ずんだ印象になっているケースがあります。
こうした場合では、ラミネートベニアによって歯を白くすることで、余計に歯茎の黒ずみなどが目立ってしまう可能性も考えられます。
ラミネートベニアの治療の流れ
ラミネートベニアによる一般的な治療の流れとしては、まずはじめにしっかりとした検査で治療が適応可能かどうかを調べ、理想とする歯並びや歯の色を歯科医師と詰めていきます。
そして、治療の範囲や内容が詳細に決まったら、実際に治療を開始します。 治療を行う際は、最初に歯を薄く削ることから開始します。
ラミネートベニアの治療を行う歯の表面を0.3~0.5mmほど削り、チップを張り付ける土台を形成します。
歯を削る範囲はとくに神経なども通っていないため、痛みなどが出ることは通常はありません。
なお、症例や歯科医院によっては歯を削らないで治療が可能な場合もあります。 歯を削ったら、チップを作成するために歯型をとります。
そして、採取した歯型に合わせて歯科技工士がチップを作成していきます。
チップの作成には1週間から2週間程度かかる場合が多いですが、セレックなどを使用してより短期間でのチップ作成に対応している歯科医院もあります。 チップが完成したら、歯科用の強力な接着剤で歯の表面に取り付け、余分な接着剤を除去して治療は完成です。 ラミネートベニアのチップを作成する期間は待機時間となりますが、全体的に短い期間で治療を終えることができます。
ラミネートベニアを受ける際の注意点
ラミネートベニアの治療を受ける際には、下記のような点に注意が必要です。
歯磨きなどのケア
ラミネートベニアは汚れが付着しにくいセラミックによって作られていますが、だからといって歯磨きによるケアを怠っていると、蓄積された汚れによって菌が増殖し、歯周病などを引き起こす要因となります。
また、ラミネートベニアの場合は歯の表面だけがセラミックで覆われている状態なので、歯の裏側などは汚れが蓄積されやすい状態です。
歯がキレイに見えるからといって、歯磨きは怠らずにしっかりと行うようにしましょう。
なお、ラミネートベニアの治療を行うと歯と歯の隙間の状態なども変化しますので、歯科医院で治療後の歯並びにおける適切な歯磨き方法を確認し、しっかりとしたケアを行うことが大切です。
歯ぎしりによる影響
ストレスなどの影響で、無意識に歯をこすり合わせてしまうような癖が歯ぎしりです。
歯ぎしりはとても強い負担が歯にかかってしまいやすく、歯が削れるなどの原因にもなります。
ラミネートベニアの治療を受けている方の場合、歯ぎしりによって貼り付けているチップが割れたり取れたりしてしまう可能性もあるので、歯ぎしりの癖がある方は、合わせて治療を受けるとよいでしょう。
ホワイトニング治療の併用
ラミネートベニアは前歯の表面側しか対応できないため、治療後にほかの歯も白くしたいと考えてホワイトニング治療を受けようと考えるケースも多くあります。
しかし、ラミネートベニアの治療部分にはホワイトニングが効果を発揮しないため、後からホワイトニングをすると色が不均一となり、違和感につながってしまう可能性もあります。
そのため、歯を全体的に白くしたいということであれば、できれば先にホワイトニングの治療を行って、ある程度理想的な白さを実現してから、その状態で不自然にならないようなラミネートベニアの治療を行うようにした方がよいでしょう。
歯列矯正を行う場合の注意点
歯列矯正で使用する装置は、セラミックに取り付けることができないため、ラミネートベニアの治療を受けた後に歯列矯正を受けることはできません。
そのため、歯列矯正で歯並びの改善も考えている方は、ラミネートベニアの治療を受ける前に歯列矯正を行う必要があります。
まとめ
ラミネートベニアは、短期間で前歯を白くできるだけではなく、隙っ歯の改善なども目指せる治療方法です。
一方で、歯を薄くでも削る可能性があるなど、リスクも存在する治療法となっていますので、治療を検討する際にはしっかりとこうしたデメリット部分も意識して、長期的な視点で治療を選ぶようにするとよいでしょう。
参考文献