入れ歯をすると、喋りにくくなったり発音しにくくなったりすることがあります。入れ歯特有の悩みですが、まずその理由を考えてみましょう。
そのうえで、入れ歯で喋りにくくなったり発音しにくくなったりしたときの対処法を紹介します。
喋りやすい入れ歯の種類や保険診療で喋りやすい入れ歯を作れるのか、喋りやすい入れ歯の費用相場などについて解説していますので、参考にしてみてください。
入れ歯を入れると喋りにくい、発音しにくい理由
- 入れ歯を入れると喋りにくい、発音しにくい理由を教えてください。
- 入れ歯を入れると喋りにくくなる・発音しにくくなる理由は舌との関係にあります。入れ歯はいわばお口の中の異物であり、舌を動かすのに邪魔になったり違和感を覚えたりすることがあるのです。その結果、舌が動かしにくくなり、喋りにくい・発音しにくいという症状が出てきます。
もう一つの理由は入れ歯の高さにあります。人工歯の部分が高く作られていると、「さしすせそ」や「たちつてと」の音が発音しにくくなるものです。また、土台部分が高いと、「らりるれろ」の音が発音しにくくなるでしょう。
- 入れ歯を作ってから慣れるまでにはどのくらいかかりますか?
- 入れ歯の仕上がりにもよりますが、異物感や発音に関しては2週間~1ヶ月程度で慣れるといわれています。頬や舌を噛むなどの症状も次第になくなっていくでしょう。
初めて入れ歯を作ったときは慣れずに発音しにくいこともあるかもしれませんが、時間の経過とともにうまくできるようになります。ただ、どうしても慣れないというケースもあるため、その場合は、歯科医院で入れ歯の形態修正などの調整を行ってもらうこともできます。
- 入れ歯が合っているかどうか、自分で確認する方法はありますか?
- 入れ歯が合っているかどうか確認したい場合には、次のような点をチェックしてみましょう。
- 話をしていて入れ歯が外れるか
- 会話中にカタカタ音がするか
- 入れ歯を外したときに入れ歯と粘膜が接している部分がどうなっているか(食べかすが多くついていれば、その入れ歯は合っていない)
- お口を開けると、上の入れ歯が落ちるか
- お口を開けけると、下の入れ歯が浮き上がるか
- 入れ歯を入れてもすぐに外したくなるか
- 入れ歯を入れて、機嫌が悪くならないか
以上のような点をチェックすると、入れ歯が自分に合っているのか合っていないのかがわかるでしょう。
入れ歯を入れると喋りにくい、発音しにくい場合の対処法
- 入れ歯で喋りにくい、発音しにくい場合に自分でできる対処法はありますか?
- 入れ歯を入れて喋りにくいときや発音がしにくい場合、いくつか自分でできる対処法があります。まず声を出して話をする練習をしてみましょう。特に入れ歯を入れて発音しにくくなる「さしすせそ」、「たちつてと」を鏡を見ながら発声してみましょう。
練習で慣れてくると、発音しやすくなることがあります。唾液腺マッサージも効果的です。唾液の分泌が促進されると、うまく喋れるようになることがあります。ただし、自分で合わない入れ歯を調整するのは難しいことも多いため、必要に応じて歯科医院に相談し適切に対処してもらいましょう。
- 入れ歯に慣れるための発声練習について教えてください。
- 入れ歯に慣れてうまく喋れるようになるために、次のような発声練習をしてみましょう。
- 新聞や本などを声を出して読んでみる
- 発音しにくいサ行やタ行の言葉を鏡の前で発声してみる
入れ歯を入れた状態で発声練習を繰り返せば、次第に慣れていき、発音もしやすくなるでしょう。
- 歯科医院ではどのような対処をしてもらえますか?
- 喋りにくい入れ歯は歯科医院で調整してもらいましょう。調整方法には次のようなものがあります。
- 噛み合わせの調整
- 義歯床の調整
- クラスプ(ばね)の調整
- 厚みや辺縁の調整
義歯床とは、歯のない部分に乗せる入れ歯のピンク色の土台のことです。クラスプは部分入れ歯を固定する金具です。歯科医師がこれらの調整をすることで、喋りやすい入れ歯になるようにします。
- どのくらいの頻度で入れ歯を調整してもらえばよいですか?
- 入れ歯の適切な調整頻度は入れ歯や患者さんの状態によっても変わりますが、3ヶ月~半年に1回程度です。しかし、喋りにくい入れ歯で、なかなか慣れない場合は、早めに調整してもらうことができます。
喋りやすい入れ歯はある?
- 喋りやすい入れ歯の種類を教えてください。
- 喋りやすい入れ歯の種類には次のようなものがあります。
- 金属床義歯
- ノンクラスプ・デンチャー
- その他の特殊な自由診療の義歯
金属床義歯とは、歯茎に触れる部分が金属で作られている入れ歯です。金属で作られていることで強度があり、薄くすることができます。そのため、違和感は少なく、発声もしやすいです。ただし、保険適用外の入れ歯であるため、全額自己負担で製作することになります。
保険診療で作る入れ歯はレジン床義歯といって、歯茎に触れる部分はレジン(プラスチック)製です。こちらは金属製よりも強度が弱く、厚く大きめに作らなければいけません。そうなると、お口のなかで違和感が生じやすくなり、喋りにくくなるでしょう。
そのため、喋りやすい入れ歯が欲しければ、費用がかかっても金属床義歯を歯科医院で作ってもらうほうがおすすめです。ノンクラスプ・デンチャーという種類も喋りやすい入れ歯です。ノンクラスプ・デンチャーは金属の留め金(クラスプ)がない入れ歯で、硬くなく心地よい装着感になっています。
喋るときも違和感が生じにくいです。ノンクラスプ・デンチャーは金属アレルギーの方も不安なく使用できます。特殊な自由診療の義歯は軽くて小さい入れ歯で、違和感が少なくなっているものがあります。口蓋が抜けていて、舌房も広くなっているので喋りやすいです。長時間装着していても、圧迫感がありません。さらに上顎は歯茎に当たる口蓋の部分が取り除かれているので、食事もしやすくなっています。
- 喋りやすい入れ歯は保険診療で作れますか?
- 前項で取り上げた喋りやすい入れ歯は保険診療適用外となっています。金属床義歯もノンクラスプ・デンチャーも特殊な自由診療の義歯も同じです。
そのため、全額自己負担で製作してもらわなければならないため、費用が高額になりがちです。その理由を特殊な自由診療の義歯の場合で説明します。特殊な義歯は作って、患者さんに装着するだけで終わる入れ歯ではありません。義歯ができた時点ではまだ完全に完成したわけではなく、その後患者さんのお口に合わせるための調整作業に手間をかけます。
製作と調整には高度な技術が必要であり、それを保険でカバーしようとすると、サービスが落ちる恐れがあるのです。そのため保険診療適用外となっています。そうなると、患者さんの負担も大きくなりますが、上記の3種類のなかでは、金属床義歯のコバルトクロム床義歯が少し価格が安くなっています。
- 喋りやすい入れ歯の費用相場を教えてください。
- 喋りやすい入れ歯のうち、金属床義歯の入れ歯の費用は総入れ歯か部分入れ歯か、使用する素材によっても変わります。一例を示しておくと、総入れ歯で380,000円(税込)程度、部分入れ歯で270,000~330,000円(税込)程度です。
ノンクラスプ・デンチャーの費用は100,000~500,000円(税込)程度です。特殊な自由診療の義歯の費用は330,000~770,000円(税込)程度となります。なお、ここで示したのは一例であり、歯科医院によっても費用は異なります。
いずれも保険診療適用外となっている治療のため、各歯科医院で料金を自由に決められるようになっているためです。患者さんにとっては費用負担が大きくなりますが、喋りやすさを優先する場合、ある程度の費用負担は避けられないでしょう。
編集部まとめ
今回の記事では、入れ歯を入れると喋りにくくなる理由、喋りにくい場合の対処法などの解説をしました。
入れ歯はお口のなかにとっての異物であり、慣れるまで少し時間がかかります。
その際には、喋りにくい言葉を練習したり唾液トレーニングをしたりして、改善を図れる場合もあるでしょう。ただ、それでも改善が見られない場合は、歯科医院で入れ歯の調整をしてもらう必要があります。
参考文献