セラミックの歯は10〜15年程度持つといわれていますが、保険適用の銀歯とはどのくらい寿命が異なるのでしょうか。また、長持ちさせる方法はあるのでしょうか。
本記事ではセラミックの歯と銀歯の寿命について、以下の点を中心にご紹介します。
- セラミックの特徴
- セラミックと銀歯の寿命はどう違うのか
- セラミックを長持ちさせるポイント
セラミックの歯と銀歯の寿命について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
セラミック治療とは
セラミック治療とは、むし歯や外傷で損傷した歯を、セラミック製の詰め物や被せ物で修復する治療法です。自然な見た目と透明感のある白さを再現しやすく、特に前歯など目立つ部位に用いられます。
セラミックは陶磁器やガラスなどを含む無機質素材で、銀歯や保険適用のレジンよりも変色や劣化が起こりにくく、長期間美しさを保ちやすいのが特長です。 ただし、保険適用外となるため、費用が高くなる点には注意が必要です。
【種類別】セラミックの特徴と寿命
セラミックにはさまざまな種類があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。 ここでは、主な5種類のセラミックを紹介します。
オールセラミック
オールセラミックは、すべてが陶器素材で構成された補綴物で、天然歯のような透明感と美しさを求める方に推奨されています。なかでも、変色しにくく、汚れもつきにくいため、前歯など審美性が重視される部位によく使用されます。
ただし、強度はやや低く、強い衝撃が加わると破損することがあるため、使用部位には注意が必要です。寿命は8〜10年程度とされ、適切なケアで美しさを長く保てます。
e-max
e.maxはニケイ酸リチウムガラスを主成分とするガラス系セラミックで、詰め物にも被せ物にも使用可能とされています。高い透明感と自然な白さが特長で、見た目の美しさを重視する方に推奨されています。
ただし、その透明感ゆえに、土台の歯の色が仕上がりに影響する場合があります。なかでも、ラミネートベニアのように歯の表面だけに貼る治療や、土台の歯に変色がないケースでの使用が推奨されます。寿命は10〜15年程度とされています。
ジルコニア
ジルコニアは二酸化ジルコニウムから作られたセラミック素材で、「人工ダイヤモンド」とも呼ばれる程高い強度を持ちます。その耐久性と耐摩耗性の高さから、主に奥歯の治療や噛み合わせの強い方、歯ぎしりをする方に推奨されています。
一方で、ジルコニアは天然歯よりも硬いため、噛み合う歯を傷つける可能性がある点には注意が必要です。
寿命は15〜20年程度とされており、長期的な使用が期待できます。色は真っ白に近く審美性もありますが、オールセラミックやe.maxよりもやや透明感に劣るといわれています。ただし、近年では透明感にグラデーションを持たせたタイプのジルコニアも登場しているため、希望に合った素材を選ぶためにも、事前に歯科医師へ相談しましょう。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、セラミックとプラスチック(レジン)を組み合わせた素材で、費用を抑えつつ白い歯を実現したい方におすすめです。 一方、歯科技工士による手作業のものは自費診療となります。なお、保険が適用される歯の部位や治療は厚生労働省の基準を満たす必要があり、認められた歯科医院でのみ対応可能とされています。
レジンを含むため、透明感や耐久性はオールセラミックよりもやや劣り、表面に汚れが付着しやすい傾向もあります。経年による変色やむし歯再発のリスクもあり、寿命は7〜8年程度とされています。
メタルボンド
メタルボンドは、金属のフレームにセラミックを焼き付けた被せ物で、強度と審美性を兼ね備えながら、費用を抑えられる素材です。ただし、金属を使用するため、金属アレルギーがある方には注意が必要です。
保険適用外ですが、銀歯やCAD/CAM冠よりも天然歯に近い見た目が得られるのが特長です。強度が高く、奥歯など噛む力が強くかかる部位にも使用できますが、角度によっては金属が透けて見えたり、歯茎が黒ずんで見えることがあります。
周囲の歯に自然に馴染む白さを重視する方には、オールセラミックなど別の素材を検討するのもおすすめです。メタルボンドの寿命は8〜10年程度とされています。
セラミックと銀歯の寿命の違い
銀歯とセラミックでは、素材の特性から寿命に差があります。
銀歯の平均寿命は5〜7年程度とされています。 お口の中の環境により、平均寿命よりも早く外れてしまう場合もあれば、10年以上使える場合もあります。
また、経年劣化による変形や腐食により、むし歯の再発や歯茎の黒ずみ(メタルタトゥー)、金属アレルギーを引き起こすこともあります。 そのため、約半数の方は10年以内にやり直しが必要となる可能性があります。
一方、セラミックは10〜15年程度と長期間使用できるとされています。 また、セラミックは10年以内にやり直しとなる確率はわずか6%程度といわれています。 しかし、定期的な検診やケアを怠った場合、むし歯や歯周病を招き、交換が必要となる可能性があります。
銀歯よりセラミックが長持ちする理由
ここでは、セラミックの歯が銀歯より長持ちするとされる理由を、さらに詳しく解説します。
汚れがつきにくい
セラミックは表面がなめらかで、汚れやプラークが付着しにくい特長があります。そのため、むし歯や歯周病のリスクを抑えられ、詰め物や被せ物も長持ちしやすくなります。
一方で、銀歯は時間の経過とともに劣化しやすく、素材と歯の間に隙間ができやすくなります。その隙間に汚れがたまることで、再びむし歯が発生することがあります。
なかでも、神経を取って被せ物をしている歯は、内側からむし歯になりやすいため、汚れの付きにくさは詰め物や被せ物の寿命に大きく影響します。こうした点からも、セラミックは見た目だけでなく、機能面でもよい素材といえるでしょう。
変形・劣化しにくい
セラミックの歯では、変形しにくい型取り材が使用され、接着剤にも口腔内で劣化しにくい素材が採用されています。その結果、歯との適合性が高くなり、隙間や段差ができにくい点が特長です。
一方、銀歯では詰め物や被せ物自体に問題がなくても、接着剤の劣化が原因で交換が必要になるケースがあります。また、セラミックは素材自体も変形しにくく、唾液や温度変化による劣化も起こりにくいため、銀歯よりもむし歯の再発リスクが低く、長く使用しやすいとされています。
見た目だけでなく、精密性や長期的な安定性の面でもセラミックは優れた選択肢といえるでしょう。
金属アレルギーの心配がない
お口のなかは常に唾液にさらされているため、金属イオンが溶け出しやすい環境にあります。そのため、銀歯は金属イオンの影響により、金属アレルギーを引き起こしたり、歯茎が黒ずむ「メタルタトゥー」と呼ばれる現象が起こることがあります。
万が一、銀歯が原因で金属アレルギーを発症した場合は、銀歯を取り外して治療する必要があります。
一方、メタルボンド以外のセラミックの歯は金属を含まないため、アレルギーの心配が少なく、取り除く必要もありません。こうしたリスクの低さから、銀歯よりもセラミックは長く安定して使用しやすい素材といえるでしょう。
セラミックを長持ちさせるには
セラミック治療を長持ちさせるには、素材の特性を活かすだけでなく、日々のセルフケアや歯科医院での適切なサポートが欠かせません。
ここでは、セラミックを長く美しく保つためのポイントをご紹介します。
経験豊富な歯科医院で治療を受ける
セラミック治療の仕上がりや寿命は、歯科医師や歯科技工士の技術や経験によって左右されることもあります。
セラミックは歯の削り方や精密な型取りが求められる治療であるからこそ、経験と専門性のある歯科医院での治療が望ましいでしょう。気になるクリニックのホームページなどから、医師の経歴や症例を確認してみましょう。
また、技術力だけでなく設備の質も治療の完成度に関わるため、設備面に力を入れている医院を選ぶことも大切です。
毎日の口腔ケアを丁寧に行う
セラミックは汚れがつきにくい素材ですが、油断は禁物です。歯とセラミックの境目に汚れがたまると、むしや歯周病を引き起こし、再治療の原因となります。
歯磨きは毎食後に行い、歯ブラシに加えて歯間ブラシやデンタルフロスも活用しましょう。 日々の丁寧な口腔ケアは、セラミックだけでなく自身の歯の健康維持にもつながり、結果として長持ちにつながります。
歯ぎしりや食いしばりの対策をする
耐久性のあるセラミックですが、歯ぎしりや食いしばりによる強い力が加わると、割れや欠けの原因になります。
就寝中に無意識に歯ぎしりや食いしばりが起きる場合は、マウスピース(ナイトガード)の装着がおすすめです。また、日中の食いしばり癖(TCH)にも注意が必要です。
歯ぎしりや食いしばりの癖はストレスが原因となっていることもあり、生活習慣の見直しも大切です。 過剰な咬合力を避けることが、セラミックの寿命を延ばす鍵となります。
噛み合わせを改善する
噛み合わせが乱れていると、一部の歯だけに過度な力がかかり、セラミックの破損や脱離の原因となることがあります。
噛み合わせは加齢や歯ぎしり、食いしばりの影響で変化しやすいため、適切な調整が重要です。噛み合わせを整えることで、セラミックだけでなくほかの歯への負担も軽減できます。
歯科医院での定期的なチェックと調整によって、噛み合わせによるトラブルを予防し、セラミックを長持ちさせましょう。
定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける
セラミックの美しさと機能を長く保つには、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。歯石の除去やセラミックと歯の適合状態、噛み合わせの確認など、セルフケアだけでは補えない部分をチェックしてもらいましょう。
歯科医院でのメンテナンスはトラブルの早期発見や再発防止にもつながるため、3〜6ヶ月に1回を目安に通院することが推奨されています。 セラミックを長持ちさせるには、丁寧な管理が必要です。
セラミックの交換のタイミング
セラミックは耐久性のある素材ですが、永久に使えるわけではありません。見た目に異変がない場合でも、トラブルの兆しがあると交換が必要になることがあります。
ここではセラミック交換の目安についてご紹介します。
セラミックが欠けたり割れたりしたとき
セラミックは硬くて摩耗しにくい反面、強い衝撃には弱く、転倒や硬い食べ物の噛みしめなどによって割れたり欠けたりすることがあります。
破損した状態で使い続けると、噛み合わせが悪くなったり、舌や粘膜を傷つけたりする恐れがあります。セラミックの破損が確認された時点で交換が必要です。
見た目や機能性に支障をきたさない軽微な破損であっても、念のため歯科医師に相談することが大切です。
むし歯が再発したとき
セラミック自体はむし歯になりませんが、被せ物や詰め物の下にある歯はむし歯になる可能性があります。特にセラミックと歯の境目は汚れがたまりやすく、ケア不足や定期検診を怠ることでむし歯が再発することがあります。
むし歯が内部で進行すると、詰め物を外して治療する必要があり、セラミックの再利用は難しいため交換となります。
むし歯は早期発見・早期対応が大切であり、症状がない場合でも定期的なチェックが予防につながります。
噛み合わせが悪くなったとき
加齢や生活習慣によって歯並びや噛み合わせは徐々に変化します。セラミックを装着した当初は適合していても、歯茎の退縮や歯のすり減りなどによって噛み合わせがズレることがあります。
このズレが生じると、セラミックに過剰な力がかかったり、噛み合わせが合わなくなった部分に汚れが溜まって、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
違和感を覚えたら早めに歯科医院で相談し、必要に応じてセラミックの交換を検討しましょう。
まとめ
ここまでセラミックの歯と銀歯の寿命についてお伝えしてきました。
セラミックの歯と銀歯の寿命について、要点をまとめると以下のとおりです。
- セラミックは自然な見た目と耐久性を備えた素材で、変色しにくい。メタルボンド以外のセラミックは素材に金属が含まれないため、金属アレルギーの心配がない
- 銀歯はの寿命は5〜7年程度とされているが、セラミックは10〜15年程度と長持ちしやすい傾向にある
- 丁寧な歯磨きや歯間ケアに加え、歯ぎしり対策や定期検診の受診が重要で、噛み合わせの調整もセラミックの寿命延長につながる
セラミックと銀歯の寿命は5〜10年程差が出ることがありますが、いずれも丁寧な口腔ケアや、定期的な歯科検診が、歯の寿命を延ばすことにつながります。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。