セラミックは見た目が美しく、金属アレルギーの心配も少ないことから、多くの方に選ばれている歯の治療方法です。
しかし、せっかく高額な費用をかけて治療を受けたのに、セラミックが割れてしまうというトラブルも少なくありません。
特に、ある特徴を持つ方はセラミックが割れやすくなる傾向があるため注意が必要です。
本記事では、セラミックが割れやすい方の特徴や原因だけでなく、割れないようにするための予防策について解説します。
また、セラミックが割れてしまった場合の治療の保証制度や再治療にかかる費用の目安についても紹介します。
セラミックが割れやすい原因

セラミックは天然歯に近い見た目と優れた耐久性を兼ね備えていますが、強い衝撃や不適切な使い方が原因で割れてしまうことがあります。
特に、以下のような原因が重なると破損のリスクが高まります。
- 歯ぎしりや食いしばりの癖がある
- 硬いものを食べることが多い
- 噛み合わせが悪い
- 歯科医院での定期メンテナンスを怠っている
これらの点について、次の見出しで詳しく解説していきます。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、セラミックが割れるリスクが高くなります。歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに強い力が歯にかかる行為です。
そのため、天然歯より硬い反面、脆い性質を持つセラミックはダメージを受けやすくなります。
特に睡眠中は自覚がないことがほとんどのため、自分にその傾向があるかわからない方も少なくありません。
また、ストレスが原因で食いしばりが起こることもあるため、普段の生活習慣も影響します。
歯のすり減りや違和感がある場合は、歯科医院でチェックを受けてみるとよいでしょう。
硬いものを食べることが多い
日常的に硬いものをよく食べている方は、セラミックへの負担が大きいため、破損するリスクが高くなります。
セラミックは見た目に優れた素材ですが、急激な強い力が加わると欠けたり割れたりすることがあります。
特に氷や飴、ナッツ類などの食品は、噛んだときに強い圧力が集中するため注意が必要です。また、食事中にうっかり硬い異物をかんでしまった場合もセラミックには負担がかかります。
なるべくやわらかいものからお口に運ぶようにする、強く噛まないように意識するといった心がけも大切です。
セラミックの寿命を延ばすためには、日常の食習慣を見直すことも重要な対策となります。
噛み合わせが悪い
噛み合わせが悪い状態では、歯にかかる力が一部に集中しやすいです。その結果、セラミックに想定以上の圧力が加わり、欠けやひび割れが起こることがあります。
特定の歯だけが強く当たる状態や、上下の歯がずれて接触している場合など、目立った症状がなくても負荷はかかり続けます。
特に、以前から顎に違和感がある、食事中に咬みにくさを感じているといった方は注意が必要です。
噛み合わせは歯への負担だけでなく、顎関節の負担にもつながり、顎関節症や頭痛を引き起こす原因にもなります。
セラミックを装着する際は、噛み合わせをしっかり調整することが大切です。
すでに治療済みの方でも、不快感がある場合は歯科医院でチェックを受けましょう。早めの対応が、破損の予防につながります。
歯科医院での定期メンテナンスを受けていない
セラミックを長く使い続けるためには、歯科医院での定期メンテナンスが欠かせません。
装着直後は問題がなくても、時間の経過とともにセラミックと歯の間に隙間ができたり、噛み合わせが微妙にずれたりすることがあります。
また、口腔内の環境変化によってむし歯や歯周病が進行すると、セラミックの土台そのものが弱くなってしまいます。
トラブルを防ぐためにも、少なくとも半年に一度は通院することが望ましいです。
セラミックが割れないようにするための予防法

セラミックを長く使い続けるためには、日々の予防対策が欠かせません。治療後に適切なケアを続けることで、破損のリスクを抑えることができます。
以下のような予防法を実践することで、セラミックのトラブルを防ぐことが可能です。
- マウスピースを使用する
- 硬いセラミックの素材を選ぶ
- 噛み合わせを改善する
- 定期的にメンテナンスに通う
これらについて、次の見出しで詳しく解説していきます。
マウスピースを使用する
セラミックの破損を防ぐ方法として、マウスピースの使用が効果的です。
特に、睡眠中に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方には、ナイトガードと呼ばれる専用のマウスピースが推奨されます。
このマウスピースは歯の表面を保護する役割があり、無意識に加わる強い力からセラミックを守ります。
個人の歯の型をとるため、装着時の違和感も少なく、継続的に使用しやすい点もメリットです。
市販品ではなく、歯科医院で作製されたものを使用することが理想的です。日々のケアに取り入れることで、セラミックを長持ちさせることが期待できます。
硬いセラミックの素材を選ぶ
セラミックにはいくつかの種類があり、使用部位や目的に応じて適切な素材を選ぶことが大切です。
特に割れにくさを重視する場合は、ジルコニア系セラミックが有効とされています。ジルコニアは、強い力にも耐えやすく、すり減りにも強い性質です。
そのため、噛む力が集中しやすい奥歯などへの使用に適しています。ここ数年の間に、より長持ちしやすいように改良された製品も登場しています。
一方で、見た目の自然さを重視したい前歯などには、透明感のあるガラス系セラミックが使われることがほとんどです。
ただし、割れやすい傾向があるため、選ぶ際は注意しましょう。
セラミックの素材は見た目だけでなく、力のかかり方や使用環境に応じて歯科医と相談しながら選ぶことが重要です。
噛み合わせを改善する
噛み合わせのバランスが崩れていると、特定の歯に強い力がかかりやすくなります。
セラミックは強度のある素材ですが、圧力が一点に集中すると欠けたり割れたりすることがあります。
治療の後に少しずつ噛み合わせがずれることもあるため、歯科医院で定期的にチェックと調整を受けることが重要です。
また、片側の歯ばかりで噛む習慣がある方は、圧力のかかり方に偏りが出やすくなります。必要があれば、噛み合わせを整える治療を検討するとよいでしょう。
こうしたケアは、セラミックの破損リスクを減らすだけでなく、天然の歯や顎の健康維持にもつながります。
定期的にメンテナンスに通う
セラミックを長持ちさせるには、治療後も定期的に歯科医院へ通うことが大切です。
見た目に異常がなくても、経年によって接着剤の劣化や噛み合わせの微調整が必要になることがあります。
また、セラミックの周囲に汚れがたまると歯茎が炎症を起こし、土台となる歯の状態が悪化する恐れもあります。
そうした変化は自覚しにくいため、定期的なチェックが欠かせません。
トラブルを未然に防ぐためにも、半年に一度の通院が推奨されます。
セラミックが割れたときの対処法

セラミックが割れてしまったときは、自己判断で対応せず、なるべく早く歯科医院を受診することが大切です。
見た目に異常がなくても、内部にヒビが入っていたり、接着がゆるんでいたりすることがあります。
まずは、破損したセラミックの破片が残っていれば、清潔に保管しておきましょう。欠けた部分が保存されていれば、場合によっては修復に活用できることもあります。
破片はティッシュなどで包み、小袋などに入れて持参するとよいでしょう。無理にもとに戻したり、自分で接着剤を使ったりするのは避けましょう。
次に、応急的な対応として破損した歯では物を噛まないようにし、刺激の少ない食事を心がけましょう。
冷たい飲み物や刺激の強い食べ物は、歯にしみることがあるため控えるようにします。歯科医院では、状態を確認したうえで、再接着や再製作といった治療方針が検討されます。
破損の程度や治療からの経過期間によっては、保証制度や保険が適用される場合もあるため、まずは治療を受けた医院に連絡してみることが重要です。
早めの対応により、再治療の負担や費用を抑えることができます。
セラミックが割れたときの注意点
セラミックが割れてしまったときは、慌てて行動してしまいがちですが、適切な対処をしないと状況が悪化することがあります。
特に、破損した部分に刺激を与えたり、自己判断で応急処置を行ったりするのは避けるべきです。
- 自分で接着しない
- 割れた部分を触らない
- 割れた部分で硬いものを噛まない
それぞれの注意点について、次の見出しで詳しく解説していきます。
自分で接着しない
セラミックが外れた際に、市販の接着剤や瞬間接着剤で自分でつけ直すのは避けるべきです。
こうした製品はお口のなかで使用することを前提としておらず、有害な成分が含まれている場合があります。
例えば、歯ぐきや舌の粘膜に炎症を起こすことや、誤って飲み込んでしまうリスクもあるため注意が必要です。
また、自分で接着すると位置がわずかにずれ、そのまま使い続けると噛み合わせが合わなくなることがあります。
ずれた箇所にすき間が生じると、食べかすや菌が入り込みやすくなり、歯のトラブルにつながる恐れもあります。
セラミックが取れたときは、破損の有無を確認し、外れた物は清潔に保管しておきましょう。歯科医院へ持参し、適切な対応を受けることが大切です。
割れた部分を触らない
割れた部分を無意識に指や舌で触ると、ヒビの広がりや傷口への細菌感染のリスクが高まります。
細菌が深部に入り込むと、歯の神経に炎症が起こり、痛みやさらなる破損に進行しやすくなります。
清掃や応急処置の際には、やわらかい歯ブラシを使って優しく洗い、なるべく触らないことが大切です。
割れたセラミックの破片があれば、無理に取ろうとせず、清潔なガーゼなどに包んで歯科医院に行きましょう。
まずは歯科医師に見せ、状態を評価してもらうことが迅速な対処法につながります。
割れた部分で硬いものを噛まない
セラミックが割れてしまった場合、破損した部分で物を噛むのは避けるようにしましょう。
特に硬い食べ物を噛むと、割れた箇所にさらなる力が加わり、完全に欠けてしまったりする恐れがあります。
また、割れた断面が鋭利になっていることもあり、舌やほほの内側を傷つけてしまうリスクもあります。
応急的な対応としては、反対側の歯で噛むように意識し、なるべくやわらかいものを中心とした食事を心がけましょう。
刺激の少ない状態を保ちつつ、歯科医院での処置を待つことが、悪化を防ぐために有効です。
セラミックが割れたときの保証

万が一破損が生じた場合でも、保証の内容によっては無償または低額で再治療を受けられる場合があります。
以下では、保証に関する主な項目について解説します。
- 保証期間
- 保証内容
- 保証を受けられないケース
それぞれのポイントについて、次の見出しで詳しく紹介していきます。
保証期間
セラミックの保証期間は歯科医院によって異なりますが、一般的には6ヶ月から3年ほどに設定されているケースが見られます。
初期不良によるヒビや自然な欠けなどが、保証の対象となることがあります。
ただし、治療から日が浅い段階で割れた場合でも、保証の対象になるとは限りません。破損の原因や使い方によっては、対象外とされることがあります。
そのため、割れてしまったときは、まず通院先の歯科医院に保証の有無を確認することが大切です。また、定期的なメンテナンスの受診が保証の条件とされているケースもあります。
なかには、装着日ではなく定期検診を経てから保証が有効になる医院もあるため、治療前に内容をしっかり確認しておくことが大切です。
保証内容
保証の内容には、破損したセラミックの再装着や再製作などが含まれる場合があります。
装着から間もない時期に割れた場合や、普段の噛む力でヒビが入った場合には、追加費用なしで再治療を受けることが可能です。
医院によっては、一部のみ自己負担が発生するケースもあります。また、表面の小さな欠けやヒビに対しては、修理や研磨といった処置が可能なケースも少なくありません。
ただし、対応回数や条件には制限が設けられていることがあり、例えば1回目のみ費用が発生しないといった設定もあります。
あらかじめ、どのような状況が保証対象になるのか、歯科医師に詳細を確認しておきましょう。
保証を受けられないケース
保証制度には対象外となる条件もあり、すべての破損が補償されるわけではありません。例えば、事故による強い衝撃でセラミックが割れた場合は、対象外となることがあります。
定期検診を受けていない場合や、指定された間隔で通院していなかった場合も、保証の対象から外れる可能性があります。噛み合わせの乱れや使い方に問題があったと判断されたときも同様です。
また、治療後に別の医院で処置を受けた場合や人工の歯に自分で手を加えたときも、適用外になることがあります。
保証を受けるには、通院先の決まりを守ることが前提です。契約の際には、どのような条件で保証が使えなくなるのかも確認しておきましょう。
セラミックが割れたときの治療費用

セラミックが割れた場合、再治療には新たな費用が発生します。一般的にセラミック治療は自由診療に分類されるため、健康保険は適用されません。
再製作の費用は、使用する素材や治療内容によって異なりますが、1本あたり70,000円(税込)から150,000円(税込)程度が目安です。
なかでもジルコニアセラミックなど、強度や見た目に優れた素材を使用した場合は、費用が高くなる傾向があります。
セラミック治療は、歯科技工士による精密な加工や高度な技術を伴うため、ほかの補修治療に比べて料金が高めに設定されていることがほとんどです。
また、破損の程度によっては再接着では対応できず、新たに型取りからやり直す必要があります。
この場合、初回と同様の工程が必要になるため、再治療の費用は初回治療とほぼ同等になるのが一般的です。
保証制度がある場合は、一定条件のもと費用が軽減されるケースもあります。
ただし、保証が適用されないと全額自己負担になるため、事前に費用の目安や支払い方法について歯科医院に確認しておくことが大切です。
まとめ

セラミックは見た目の美しさや耐久性に優れた素材ですが、正しい使い方やケアを怠ると割れてしまうことがあります。
特に、歯ぎしりや硬い物を噛む癖、噛み合わせの不具合は破損のリスクを高める原因になります。
割れを防ぐためには、日常的な予防と定期的なメンテナンスが欠かせません。また、万が一割れてしまった場合は、適切な対処と保証制度の確認が重要です。
セラミック治療は決して安価なものではないからこそ、長く使うための正しい知識と習慣を身につけましょう。
参考文献