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ラミネートベニアの適応症例は?治療ができないケースやメリット、デメリットも解説

ラミネートベニアの適応症例は?治療ができないケースやメリット、デメリットも解説

美しい歯並びは印象を大きく左右します。ラミネートベニアは、薄い陶材を歯の表面に貼り付けて、歯の色や形を理想的に整える方法です。

前歯の見た目を改善する治療法として注目を集めています。

本記事ではラミネートベニアの種類から適応症例、治療できないケース、メリットやデメリットまで詳しく解説します。治療を検討している方はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

ラミネートベニアの種類

歯の治療

ラミネートベニアは、使用する素材や装着方法によって大きく3つのタイプに分けられます。

患者さんの歯の状態や希望する仕上がりにあわせて、適切なタイプを選択することが重要です。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

フルラミネートベニア

フルラミネートベニアは、歯の表面全体を覆うタイプです。歯の前面を約0.5mm削り、その上に陶材を接着します。

歯の色や形を大きく変えたい場合に適しており、変色が強い歯や歯の形態に問題がある場合に効果的です。削る量が多いため、処置後の違和感は少なく済みます。

耐久性にも優れ、適切なケアを行えば10年以上持続可能です。ただし健康な歯質を削る必要があるため、その点を十分に考慮して選択する必要があります。

パーシャルラミネートベニア

パーシャルラミネートベニアは、歯の一部だけを覆うタイプです。歯の一部に限局した変色や欠損がある場合に有効で、健康な歯質をなるべく残せます。

削る量が少ないため、歯への負担が小さく済む利点があります。ただし接着面積が小さいため、接着力や耐久性はフルタイプに比べるとやや劣る点があるため注意が必要です。

また、技術的な難易度が高く、歯科医師の高い技術が求められます。適応症例を適切に選ぶことで長期的な成功につながります。

ノンプレップラミネートベニア

ノンプレップラミネートベニアは、歯を削らずに装着するタイプです。超薄型の陶材(約0.3mm程度)を歯の表面に直接接着します。

歯を削らないため痛みがなく、治療後に元の状態に戻すことも可能です。特に若い患者さんや、健康な歯を削りたくない方に適した方法です。

ただし直接貼り付けるため、仕上がりがやや厚みを持つ可能性があります。また接着強度に関してもやや劣るため、噛み合わせや生活習慣に注意が必要です。

適切なケースで使用すれば、審美性と保存性を両立できる選択肢となります。

ラミネートベニアの適応症例

歯の模型を持つ手

ラミネートベニアはさまざまな審美的問題を解決できる治療法です。歯の見た目に関する悩みに対応できますが、すべての症例に適用できるわけではありません。

どのような症例に向いているのか、具体的に解説します。

歯の着色や変色

歯の着色や変色は、ラミネートベニアが特に効果を発揮する症例です。テトラサイクリン系抗生物質による着色や加齢による黄ばみ、喫煙やコーヒーなどによる外因性着色に対して高い効果を示します。

歯のホワイトニングでは改善が難しい内因性の着色にも対応可能です。薄い陶材で歯を覆うため、元の歯の色を完全に隠蔽できます。

また陶材自体が変色しにくい性質を持つため、長期間美しい白さを維持できる利点もあります。着色の程度や原因によって、必要な厚みや適切なタイプが異なるため、歯科医師との相談が重要です。

すきっ歯

歯の模型を使って説明

すきっ歯(歯間離開)の改善にもラミネートベニアは効果的です。前歯の間に隙間がある場合、その隙間を埋めるように陶材を設計して、理想的な歯並びを実現できます。

歯列矯正治療と違い短期間で治療が完了する点がメリットです。ただし隙間の大きさによっては、歯が不自然に太く見えないよう慎重な設計が必要です。

通常は両側の歯に装着して、バランスのよい見た目を実現します。すきっ歯の原因や程度によって適切な治療法が異なるため、事前の精密な診査が欠かせません。

前歯の歯列不正

軽度から中等度の歯列不正もラミネートベニアで改善できます。歯並びが少しガタガタしている場合や、軽度の叢生(歯が重なっている状態)にも対応可能です。

ただし歯の位置が大きくずれている場合は、歯列矯正治療との併用を検討する必要があります。実際の歯の位置を変えるわけではなく、見かけ上の歯並びを整える方法です。

そのため、重度の不正咬合には適していません。適切な症例を選べば、短期間で審美的な改善が得られる点が魅力です。

形態不良の歯

鏡で歯の状態を確認

先天的な形態異常や磨耗により理想的な形ではない歯も、ラミネートベニアで修正可能です。矮小歯(通常より小さい歯)や円錐歯(先端が尖った形の歯)などの形態異常に対して、理想的な形状に整えられます。

また加齢による切端の磨耗や、不均一な歯の長さなども美しく修正可能です。治療前に模型やデジタルシミュレーションで最終的な形を確認できるため、患者さんの希望に沿った形態に仕上がります。

微妙な形の調整が可能なため、自然で調和のとれた美しい歯並びを実現できる特徴があります。

欠けた歯

軽度から中等度の歯の欠けにもラミネートベニアは有効です。前歯の切端が欠けた場合や、小さなチップ(欠け)がある場合に適しています。

欠けた部分を陶材で修復し、元の形態を回復させる方法です。ただし欠けが大きい場合や、歯の強度が著しく低下している場合は、クラウン(差し歯)などのほかの治療法が適切なこともあります。

少ない歯質削除で審美性を回復できるため、保存的な治療を希望する方にはよい選択肢となります。欠けの原因や大きさによって適応が異なるため、歯科医師による診断が重要です。

ラミネートベニアの治療ができないケース

歯科助手と患者さん

ラミネートベニアは万能な治療法ではなく、適応できない症例があります。治療の成功や長期的な予後を考えると、適応症をしっかり見極めることが重要です。

以下では、ラミネートベニアが適さないケースについて解説します。

出っ歯

出っ歯(上顎前突)の場合、ラミネートベニアでの治療は難しい場合が少なくないです。歯が前方に突出している状態に陶材を貼り付けると、さらに前方感が強調されてしまいます。

また前歯に過度の力がかかりやすく、破折や脱離のリスクが高まります。このような場合は、歯列矯正治療で歯の位置を改善してからラミネートベニアを検討するか、別の治療法を選択する方がよいでしょう。

出っ歯の程度や原因によって適切な治療法は異なるため、歯科医師との詳細な相談が必要です。

奥歯

ラミネートベニアは基本的に前歯(切歯や犬歯)に適用される治療法です。奥歯(小臼歯や大臼歯)には適していません。

奥歯は強い咬合力を受けるため、薄い陶材では十分な強度を確保できないことが理由です。

また奥歯は審美的な影響が少ない部位のため、通常はラミネートベニアよりも機能性を重視したインレーやクラウンなどの治療が選択されます。

奥歯の審美性を改善したい場合は、セラミックインレーやオールセラミッククラウンなどの選択肢が適しています。

むし歯や歯周病がある場合

歯が痛い女性

活動性のむし歯や進行した歯周病がある場合、まずはこれらの疾患を治療する必要があります。ラミネートベニアを装着する前に、口腔内を健康な状態に整えることが長期的な成功の鍵です。

むし歯がある場合は適切な修復処置を行い、歯周病がある場合は歯周基本治療を完了させてから審美治療を検討します。健康な土台がなければ、どのような美しいラミネートベニアも長持ちしません。

また歯周病で歯肉が退縮している場合、審美的な仕上がりが難しくなるため、事前の評価と治療計画が重要です。

エナメル質が十分でない場合

ラミネートベニアの接着強度は、エナメル質の量と質に大きく依存します。エナメル質が薄い場合や、酸蝕症などでエナメル質が損傷している場合は、十分な接着力が得られないリスクがあります。

特に歯ぎしりや食いしばりがある方は、エナメル質が薄くなっていることが多く注意が必要です。このような場合は、フルカバレッジのクラウンなど別の治療法を検討することがあります。

エナメル質の状態は外見だけでは判断できないため、事前の詳細な検査が重要です。

歯ぎしりや食いしばりが強い場合

強い歯ぎしりや食いしばりの習慣がある場合、ラミネートベニアに過度の力がかかり破折のリスクが高まります。

陶材は美しい見た目を持つ反面、強い衝撃や継続的な力に弱い性質があります。夜間の歯ぎしりが顕著な場合は、ナイトガードの併用が必要です。

また極端に強い歯ぎしりがある場合は、より強度のあるクラウンを選択することも検討します。治療前に咬合状態や顎関節の評価を行い、適切な治療計画を立てることが大切です。

噛み合わせや歯並びに問題がある場合

歯の模型と歯科医師

重度の不正咬合や、深い噛み合わせ(オーバーバイト)がある場合もラミネートベニアには適していません。不適切な噛み合わせの状態で装着すると、過度の力がかかり破折や脱離のリスクが高まります。

また前歯が強く接触する深い噛み合わせでは、ラミネートベニアの厚みにより噛み合わせがさらに深くなる可能性があります。

このような場合は、事前に歯列矯正治療で噛み合わせを改善してからラミネートベニアを検討するのが理想的です。

治療の成功率と長期予後を高めるためには、総合的な口腔内評価が欠かせません。

ラミネートベニアのメリット

指を立てる歯科助手

ラミネートベニアは多くのメリットを持つ治療法です。歯を大きく削らずに審美性を向上できる点が特徴で、短期間で劇的な見た目の改善が可能です。

まず天然歯の保存性が高いことが挙げられます。クラウン(差し歯)と比較して削る量が少なく、健康な歯質を温存可能です。

フルクラウンでは歯を全周にわたって約1.0〜1.5mm削るのに対し、ラミネートベニアは唇側面のみ約0.3~0.7mm程度の削除で済みます。

また治療期間が短い点もメリットです。通常2~3回の通院で治療が完了するため、忙しい方にも適しています。歯列矯正治療のように数年かかることなく、短期間で歯並びの改善が実現可能です。

色調の安定性も優れています。高品質のセラミック素材は着色や変色に強く、長期間美しい白さを保ちます。

ホワイトニングと違い、定期的な再治療も必要ありません。また陶材表面は滑らかで汚れが付きにくく、プラーク(歯垢)の付着も抑えられます。

さらに審美性の高さも特筆すべき点です。透明感や質感が天然歯に近く、自然な美しさを実現できます。熟練した技工士の手により、隣接する天然歯と調和した色調や形態に仕上がります。

治療前にモックアップ(試適)で仕上がりをイメージできるため、希望どおりの結果を得やすいです。

ラミネートベニアのデメリット

処置をする歯科助手

ラミネートベニアにはメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。治療を検討する際には、これらの点も十分に理解しておく必要があります。

まず費用の面です。保険適用外の自由診療となるため、1本あたり数万円から十数万円の費用がかかります。複数の歯を治療する場合は総額が高額になることを考慮しなければなりません。

また、一度装着するともとに戻せない不可逆的な処置です。特にフルタイプやパーシャルタイプでは歯を削るため、後から天然歯の状態に戻すことはできません。そのため治療の決断には慎重な検討が求められます。

また色調の調整が後からできない点もデメリットです。一度装着したラミネートベニアの色は変更できません。

そのため、時間の経過とともに隣接する天然歯との色の差が生じる可能性があります。特に1~2本だけ治療した場合、数年後に天然歯が変色すると色調差が目立つことがあります。

ラミネートベニアの治療費用の目安

財布からお金を出す

ラミネートベニアは保険適用外の自由診療となるため、歯科医院によって費用に差があります。一般的な費用の目安は、1本あたり約70,000〜180,000円(税込)程度です。

使用する材料や技工所、歯科医院の方針によって価格が変動します。

高級感のある素材や、より高度な技術を要する症例では費用が高くなる傾向があります。

フルタイプとパーシャルタイプでは通常価格差があり、フルタイプの方がやや高額になる傾向です。ノンプレップタイプは歯を削らない分、やや安価な場合もありますが、医院によって異なるため注意が必要です。

治療本数も総額に大きく影響します。審美的な理由から、通常は上の前歯6本や8本などセットで治療します。この場合、総額で420,000〜1,440,000円(税込)程度の費用が必要です。

まとめ

患者さんに説明

ラミネートベニアは、前歯の審美性を向上させる優れた治療法です。フルタイプ・パーシャルタイプ・ノンプレップタイプの3種類があり、症例に応じて適切なタイプを選択できます。

歯の着色や変色、すきっ歯、軽度の歯列不正、形態不良、欠けた歯などに効果的です。

ただし、出っ歯や奥歯、むし歯や歯周病がある場合や、エナメル質が不足している場合、強い歯ぎしりや噛み合わせに問題がある場合などは対象外です。

これらの条件に当てはまる場合は、別の治療法を検討する必要があります。

メリットは、歯の削除量が少なく保存的なことがあります。また、短期間で治療が完了することや色調安定性が高いこともメリットの一つです。

そして、審美性に優れていることや、適切なケアで長期間使用できることなどが挙げられます。一方デメリットは、高額な費用がかかること、不可逆的な処置であることです。破折や脱離のリスクがあることや、色調調整が後からできないことなどもあります。

複数本治療する場合は総額が高額になります。治療を検討する際は、これらのメリットやデメリットを十分に理解し、信頼できる歯科医師と相談しながら決断することが大切です。正しい知識と適切な診断に基づいた治療選択が、長期的な満足につながります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

1981年日本歯科大学新潟歯学部卒業 / 1981年~1983年横浜 有楽歯科勤務 / 1983年広島市西区にて岸歯科医院開業 / 1998年中区へ移転、(医)ティース プラザ歯科開業,現在に至る / 所属協会・資格: / (公社)日本口腔インプラント学会 理事・指導医・認定医 / (公社)日本歯科先端技術研究所 指導医・認定医 / ピエールフォシャールアカデミー国際歯学会 会員 / 昭和歯科大学歯学部 外部講師 / その他:瀋陽医学院(中国) 客員教授 / ティースアート広島店

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