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むし歯の症状とは?初期症状や進行度による変化・治療法を解説

むし歯の症状とは?初期症状や進行度による変化・治療法を解説

むし歯の症状というと、歯の痛みや歯の一部が黒くなるというような変化を思い浮かべる方が多いと思います。もちろんこうした症状もむし歯によって生じるものの一つですが、むし歯は進行度によっても症状が異なり、初期症状の場合は痛みがない場合もあります。
この記事においては、むし歯の進行状況に応じた症状や治療法などを解説します。

むし歯の進行度と症状

むし歯の進行度と症状 むし歯は、お口のなかにいる細菌が、糖分などを栄養として酸性の物質を作り出し、その酸によって歯が溶かされることで発生する病気です。 むし歯は痛いものというイメージを持つ方が多いと思いますが、実は初期症状の段階では痛みがなく、症状が進行するにしたがって痛みなどのさまざまなトラブルが生じます。
まずはむし歯の進行による症状の変化について紹介します。

むし歯の初期症状(CO・C1)

むし歯は、症状の進行に応じてCOとC1からC4という分類がされています。
CはCaries(カリエス)という、むし歯を表す言葉の頭文字で、そこに進行度に応じた言葉や数値が追加されているというものです。 COのOは、ゼロではなくアルファベットのオーで、Observation(オブザベーション)という、観察を意味する言葉の頭文字です。COはむし歯になるかどうか、観察が必要な状態という意味で、歯の表面にあるエナメル質が酸によって溶かされやすくなっている状態です。
歯は酸にさらされるとカルシウムやリンなどが溶け出して脆くなりますが、唾液に含まれるカルシウムやリンが時間経過とともに再び歯に取り込まれ、修復されていく機能があり、これを再石灰化と呼びます。COの段階は一時的に歯が溶けているものであり、再石灰化によって修復が可能な状態であるため、適切なケアを行えば、健康な歯に戻せる可能性があります。 一方で、再石灰化による歯の修復が間に合わない場合は、歯の表面にあるエナメル質が溶かされてしまい、穴が開いた状態になります。この段階がC1と呼ばれるものです。
C1の状態まで進行すると、溶かされた歯が自然に修復されることはないため、元の状態に戻すためには歯科医院での治療が必要です。
ただし、C1の段階は歯の表面にあるエナメル質の一部が溶けているだけであるため、痛みなどが生じることはありません。治療を行う場合は、表面を少し削ってむし歯に感染している部分を除去し、その穴を歯科用のレジンなどで埋めて再感染を予防します。

C2段階のむし歯の症状

C1がエナメル質までのむし歯であるのに対し、C2はそれよりも歯の内側にある、象牙質とよばれる部分まで歯が溶かされ、むし歯が進行している状態です。
C2段階のむし歯もC1と基本的に同じで、むし歯特有の強い痛みなどの症状はありませんが、象牙質はエナメル質よりやわらかく、溶けやすい性質があるため、C2以降は症状の進行が早くなります。
また、象牙質は細い管が無数にあるような構造をしているため、この管から歯の神経に刺激が伝わることで、しみるような痛みを生じる場合があります。
冷たい水や食事をお口に含むと痛みが生じるような場合は、むし歯がC2まで進行している可能性があると考えるとよいでしょう。

C3段階のむし歯の症状

象牙質より内側の、歯髄と呼ばれる場所までむし歯の感染が進行すると、C3と呼ばれる状態になります。歯髄は歯の神経が集まっている場所で、神経に対して直接酸による刺激が加わるため、この段階になると強い痛みなどの症状が引き起こされます。C2の場合は食事などのタイミングで一時的に痛みが現れますが、C3の段階は常に痛みがあり、十分な睡眠などがとれなくなる場合もあります。
また、歯髄がダメージを受けて神経細胞が壊死すると黒く変色することから、歯の色全体が黒ずむような症状が現れます。
歯髄に感染が広がっているため、治療の際には歯の神経を除去する治療などが必要となる場合があります。

C4段階のむし歯の症状

C3までむし歯が進行しても放置し続けると、根管という歯の根っこ部分にまで感染が広がり、C4と呼ばれるむし歯の最終段階へと到達します。
C4のむし歯は常に歯の神経が刺激を受けているため、強い痛みの症状が昼夜を問わず持続しますが、放置し続けると神経が死滅し、痛みを感じなくなる場合があります。ただし、痛みがなくなってもむし歯の原因である細菌感染が解消しているわけではないので、細菌は時間経過とともに、歯ぐきの内部や隣の歯などに感染を広げていきます。
ほかの歯に感染した場合は、再度C1からC4へとむし歯が進行して強い痛みが引き起こされますし、歯ぐき内部に感染した場合は、細菌が作り出す膿によって歯ぐきが内部から圧迫され、強い痛みなどの症状が生じる可能性もあります。
なお、C4段階のむし歯は歯の大部分が溶かされている状態で、場合によっては歯の保存が困難であり、抜歯による治療が必要になる可能性があります。

むし歯に関連する全身の疾患・症状のリスク

むし歯に関連する全身の疾患・症状のリスク むし歯は、歯の痛みだけではなく、全身の疾患や症状につながるリスクがある病気です。
むし歯によって生じる可能性があるトラブルについて紹介します。

頭痛などの痛み

むし歯は神経を刺激して強い痛みなどの症状を引き起こしますが、痛む場所によっては頭痛などとして痛みを感じる可能性があります。
また、細菌が頬骨の内側にある上顎洞と呼ばれる副鼻腔の一部に入ってしまうと、そこで炎症を引き起こし、頭痛や鼻水などの症状につながることもあります。
そのほかにも、むし歯による歯の痛みを回避しようとして噛み合わせが変化することで、咬筋などの緊張が生じ、これによって緊張性頭痛の症状が現れる場合もあります。

敗血症などの重篤な感染

敗血症は、血液内に細菌が入り込み、細菌によって作られた毒素が運ばれることで、多臓器不全をはじめとした重篤な症状を引き起こす疾患です。
むし歯を放置し続けると、細菌が顎の血管から血管内に入り込んでしまい、敗血症へとつながる可能性があります。

感染性心内膜炎などの心臓疾患

むし歯が進行し血管内に入り込んだ細菌が、心臓に付着して感染を広げてしまうと、心内膜炎などの心臓疾患を引き起こす場合があります。
感染性心内膜炎は全身の倦怠感や発熱からはじまり、息切れや呼吸困難といった症状につながり、場合によっては脳梗塞や動脈瘤などの合併症を引き起こします。

口腔衛生の悪化による誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食事などを飲み込む際に、飲み込んだものが食道ではなく誤って肺の方に入ってしまい、それによって肺に細菌の感染が生じるというものです。特にご高齢の方や寝たきりの方に生じやすく、肺炎とならんで日本国内における死因の上位となっています。
誤嚥性肺炎はむし歯がない方でも生じますが、むし歯があると、お口のなかに細菌が多い状態であるため、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

むし歯のセルフチェック方法

むし歯のセルフチェック方法 むし歯は、できる限り早期に見つけ、症状が進行していないうちに治療することが大切です。早期発見のためには早めに歯科医院を受診することが大切ですが、場合によっては自分で見つけることができる可能性もあるので、まずはセルフチェックをしてみましょう。

目視による見た目のチェック

むし歯は、細菌が作り出す酸によって歯が溶かされる病気であり、見た目にもさまざまな変化が現れます。
歯は健康な状態であれば透明感がありますが、初期段階のCOの場合、歯のミネラルが溶け出すことで、歯が白く濁った状態となります。いつもと比べて透明感が失われ、白く濁った見た目になっている場合は、歯が溶けていると考えてよいでしょう。
さらにむし歯が進行すると、エナメル質が溶かされて穴が開いた状態になります。小さい穴の場合は見た目の変化がわかりにくいので、舌や歯ブラシでなぞってみて、穴がないかどうか確認するのもよいでしょう。
むし歯によってできた穴に詰まった食べかすが変色したり、口腔内で作られた硫化鉄が象牙質に付着するなどして、黒い点のように見える場合もあります。

痛みなどの症状のチェック

むし歯が象牙質まで進行すると、冷たさなどの刺激で痛みを感じやすくなるため、それまでは何ともなかったのに、急に冷たいものなどを食べるとしみるような痛みが現れるようになったという場合は、むし歯が進行している可能性があります。
また、常にズキズキとした歯の痛みが継続している場合は、むし歯が歯髄にまで進行している可能性が高いでしょう。

そのほか、むし歯を疑うサイン

いつもと同じように歯のケアをしているのに、フロスが引っかかったり、切れたりしやすい場合は、歯と歯の間にむし歯ができている可能性が考えられます。また、食べ物が挟まりやすくなったり、噛み合わせが悪化したりする場合もあります。
むし歯は、歯の裏や歯と歯の間といった見えにくい場所に生じやすいので、何か違和感があれば一度歯科医院を受診するようにしましょう。

むし歯の早期発見や早期治療が大切な理由

むし歯の早期発見や早期治療が大切な理由 むし歯の治療は、早期発見や早期治療がとても大切です。その理由は下記のとおりです。

痛い思いをしなくてすむ

上述のとおり、むし歯は初期症状であれば痛みがなく、早期に治療を終えてしまえば辛い思いをする必要がありません。
エナメル質までなど、感染が浅いむし歯であれば、治療の際に麻酔を利用する必要もないため、麻酔注射による痛みも経験しないで済む可能性があります。

歯や神経を残しやすい

むし歯は、症状の進行とともに感染が広がり、その分、治療によって歯を削らなければいけない範囲も広がります。
神経まで感染している場合は、神経の一部または全部を除去する必要が生じる場合もあります。神経を除去してしまうと、その歯が痛みを感じることができなくなるため、再感染が生じた際になかなか気が付かなくなり、むし歯が重症化するリスクが高まります。
早期にむし歯を見つけることができれば、感染箇所が小さいため歯を削る量も少なくすみ、健康な状態を維持しやすいといえます。

治療の選択肢が広い

むし歯が初期の症状であれば、レーザーによる治療など、より身体への負担が少ない治療を選択することもできます。
むし歯が進行するほど治療の選択が狭まり、最終的には抜歯しか選択肢がないという状態になってしまうので、できる限り早く治療を受けるようにしましょう。

むし歯の治療方法

むし歯の治療方法 むし歯の治療は、下記のような方法によって行います。

むし歯を削る治療

むし歯治療の基本は、感染部位を物理的に除去し、むし歯の進行を止めるというものです。
むし歯は口腔内にもともと存在している常在菌が作り出す酸が直接的な原因であるため、薬などによる殺菌が行いにくく、直接感染部位を削る治療が中心です。
歯を削った後は、削った場所に細菌が感染することや、噛み合わせの悪化を防ぐために、歯科用レジンや銀歯、セラミックなどによる補綴治療が行われます。

歯を削らない・削る量を最低限にするむし歯治療

むし歯の感染が狭い場合は、ドリルなどで削るのではなく、レーザーの熱で感染部位の細菌を死滅させる方法や、特殊な薬剤で殺菌する治療が可能な場合もあります。
また、同じ削る方法であっても、歯科医院によってはマイクロスコープなどを活用することで、できる限り感染していない部位を削らないような治療が行われている場合もあります。

進行したむし歯に対する根管治療

むし歯が歯髄や歯の根っこ(根管)にまで進行している場合、根管内部の感染を解消するため、根管治療や歯内療法と呼ばれる治療が行われます。
この治療は、歯の神経を取り除いたうえで、根管を広げ、専用の器具で内部を徹底的に掃除し、さらに殺菌力が高い薬剤を使用してむし歯の原因菌を除去するという方法で行います。

抜歯後の噛み合わせを補う治療

むし歯を削って治すことが困難な場合は、抜歯が選択されます。抜歯をすると噛み合わせが悪くなり、ほかの歯への負担が大きくなるため、入れ歯やブリッジ、インプラントといった治療で噛み合わせを補います。

むし歯の予防方法

むし歯の予防方法 むし歯は、症状が進行してから治療するのではなく、早期の治療や、進行を防ぐための予防がなによりも大切です。
むし歯の感染や進行を予防するためには、下記のような点に注意しましょう。

歯磨きなどの日常的なセルフケアを行う

むし歯の予防は、やはり歯磨きなどの日常的なケアが大切です。お口のなかに食べ残しなどがあるとむし歯が進行するので、何かを食べたら早めに歯磨きを行うようにしましょう。
またむし歯は、歯と歯の間などの歯磨きがしにくい部位に生じやすいので、歯ブラシだけではなくフロスまでしっかりと行うことが大切です。

キシリトールを摂取する

キシリトールは、むし歯の原因となる細菌の働きを弱め、むし歯になりにくい口腔環境を作るために有用な成分です。
キシリトールが配合されたガムを噛むなど、積極的に取り入れるとよいでしょう。

定期的に歯科検診やメンテナンスを受ける

セルフケアを丁寧に行っていても、歯並びなどによってはどうしても磨き残しができてしまい、歯垢や歯石として蓄積されてしまう可能性があります。
むし歯を予防するためには、定期的に歯科検診をうけて、専門性の高いクリーニングで汚れを徹底的に除去することが有効です。
また、定期的に歯科検診を受けることで、万が一むし歯ができてしまっていた場合でも、早期発見と早期治療が可能なので、負担の少ない治療を受けやすいといえます。

予防のための処置を受ける

歯科医院では、むし歯になりやすい奥歯の溝をレジンで埋めるシーラントという処置や、歯の再石灰化を促進するフッ素塗布など、予防のための処置が提供されています。
特に、自分でのケアが苦手なお子さんなどの場合は、こうした処置を受けておくことでむし歯を予防しやすいといえるでしょう。

まとめ

まとめ むし歯は、細菌の感染が深くなるにつれて、痛みや変色、場合によっては全身疾患など、さまざまな症状が生じる病気です。
トラブルを防ぐためには予防や早期発見、早期治療が大切なので、定期的に歯科検診を受けるなどして、むし歯が進行しないうちに治すようにしましょう。

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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