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下の歯並びが悪いのはなぜ?その原因や放置するリスク、歯科医院での治療法を解説

下の歯並びが悪いのはなぜ?その原因や放置するリスク、歯科医院での治療法を解説

歯並びの悩みというのは、人によって大きく異なります。例えば、悪い歯並びによって口元が突出していたり、笑ったときにデコボコの歯列が目立ったりするなどの症状で悩んでいる方などさまざまです。なかでも、日本人に少なくないのが下の歯並びが悪いケースです。上の歯並びはある程度きれいなのに、下の歯並びだけ悪くて困っている。ここではそんな下の歯並びが悪いことで悩んでいる方に向けて、その原因や放置するリスク、歯科医院での治療法をわかりやすく解説をします。

下の歯並びが悪い状態とは

下の歯並びが悪い状態とは はじめに、下の歯並びが悪い状態について解説します。

叢生(そうせい)

叢生とは、いわゆる乱ぐい歯です。1歯1歯が別々な方向を向いており、全体を見るとデコボコになっています。下の前歯の叢生は、笑ったときや口を大きく開けたときに目立ちやすく、口元のコンプレックスになっている方も少なくありません。日本人にも少なくない歯列不正で、カメラで接写される機会のある政治家やタレントなどの著名人にも叢生のケースがよく見られます。

すきっ歯

専門的には空隙歯列(くうげきしれつ)と呼ばれる歯並びで、歯と歯の間に不要なすき間が存在しています。叢生は、文字どおり叢(くさむら)のような形で歯が密集しているのに対し、すきっ歯は空いているスペースが目立つ歯並びであることから、対極的な歯列不正ともいえるでしょう。スペースが余っているのであれば、メリットの方が大きいように感じますが、実際はそうではありません。私たちの歯は、隣同士が適切な距離で接触している状態が理想であり、近づきすぎても離れすぎても弊害が生じるからです。

出っ歯

出っ歯とは、上の前歯が前方に突出している歯並びを指し、専門的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれることから、下の歯並びが悪いこととは直接的に関連はありません。ただ、下の前歯が極端に出ていたり、上下の前歯がともに前方へと突出していたりする場合は、口ゴボの症状が現れやすいです。口ゴボは、口元の突出感が強い症状で、前歯の歯並びが深く関係しています。口ゴボと出っ歯は混同されやすいですが、厳密には異なりますので、その点はご注意ください。

受け口

受け口は、下の前歯や顎が前方に出ている歯並びで、専門的には下顎前突(かがくぜんとつ)といいます。上下の前歯の位置関係が反対になっている場合は、反対咬合(はんたいこうごう)と呼ぶこともあります。受け口の症状が強いと顎がしゃくれて見えたり、発音に影響が生じたりすることから、歯列矯正で改善したいと希望する人は少なくありません。

下の歯並びが悪くなる原因

下の歯並びが悪くなる原因 次に、下の歯並びが悪くなる原因について解説します。

下顎が小さい

悪い歯並びの原因で重要となるのが顎の大きさです。例えば、下顎が小さい場合は、親知らずを除く14本の永久歯をきれいに並べるためのスペースが不足することから、下の歯並びが悪くなりがちです。主に叢生は下顎が小さいことによるスペース不足が根本的な原因となりやすいです。

ただし、受け口に関しては、下顎が小さいことで下の前歯が前方に逸脱することで、その症状が認められることもあれば、逆に下顎が大きいことでも突出感が認められることもあります。受け口は歯科医院で精密検査を受けなければ、根本的な原因を突き止めることが難しいとされています。

また、すきっ歯でも下顎が大きいことが根本的な原因となりやすいです。下顎が標準よりも大きいとスペースが余るため、歯と歯の間に不要なすき間が生じてしまうのです。

歯が大きい

顎のサイズが正常であっても、個々の歯が大きい場合も下の歯並びを悪くする原因になりえます。例えば、下顎の中切歯(ちゅうせっし)や側切歯(そくせっし)が大きいと、14本の永久歯をきれいに並べるためのスペースが不足することから、受け口や口ゴボ、叢生などの症状が現れやすいです。歯の大きさは後天的な要因よりも、遺伝をはじめとした先天的な要因に左右されやすいため、患者さん自身が対策するのは難しいといえます。

親知らずなど他の歯の影響

下の親知らずの生え方や埋まり方によっては、下の歯並びが悪くすることがあります。例えば、下の親知らずが手前の歯(第二大臼歯)を圧迫すると、さらに手前の歯が押し込まれていきます。その影響が前歯部にまで及ぶと叢生や受け口などの症状を引き起こすことがあります。そのため生え方や埋まり方の悪い親知らずは、抜歯が推奨されることも少なくありません。

口呼吸や頬杖、歯ぎしりなどの悪習慣

下の歯並びは、口呼吸や頬杖をつく癖、歯ぎしりといった悪習慣で悪くなることもあります。

◎口呼吸
口呼吸をしていると、口腔周囲筋が弛緩した状態となり、前歯に適切な圧力がかかりにくくなります。特に子どもの頃の口呼吸は、顎の骨の発育にまで悪影響をおよぼして、歯並びを悪くする原因になりえるため注意が必要です。具体的には、口腔周囲筋を適切に使えなくなることが顎の発育を遅らせ、スペース不足を招きます。その結果として下の前歯が前方に逸脱したり、前歯部が全体的にデコボコになったりするのです。

◎頬杖をつく癖
頬杖をつく癖は、一見するとリラックス効果が期待できる悪くない習慣に見えますが、このとき顎にはとても大きな負担がかかっています。体重の約10%を占めるといわれている頭部の重さを左右の顎のどちらか一方で支えることになるため、歯列にも大きな影響がおよびます。これと同じメカニズムで、うつ伏せ寝も下の歯並びを悪くする原因となることから、心あたりのある方は今からでも改善をしましょう。

◎歯ぎしり
歯ぎしりや食いしばりは、ブラキシズムと呼ばれる歯並びを悪くする習慣です。とりわけ夜間に起こる歯ぎしり・食いしばりは、成人男性の場合で100kg程度の圧力が歯や顎にかかるといわれており、数時間にわたって続くことがあります。下の前歯は歯根が短く、歯のサイズも小さいことから、歯ぎしり・食いしばりによる影響で歯並びが悪くなります。

下の歯並びが悪いのを放置するリスク

下の歯並びが悪いのを放置するリスク 続いては、下の歯並びが悪い状態を何もせず放置するリスクについて解説します。

むし歯と歯周病の可能性

下の歯並びに乱れがあると、歯ブラシが行き届かずに磨き残しが多くなります。歯垢や歯石が堆積し、細菌が繁殖することでむし歯や歯周病のリスクが高まります。下の歯並びが叢生の方は、リスクの高さはさらに増してしまいます。デコボコの歯並びは、歯ブラシによる歯磨きだけではプラークフリーな状態を作ることは難しく、デンタルフロスによるフロッシングも欠かせません。

ドライマウスと口臭の可能性

下の歯並びの状態によっては、口呼吸が促されることがあります。例えば、下の前歯が前方に出ていて口を物理的に閉じることが難しいケースでは、ドライマウスが誘発されます。口腔内は湿度100%の状態が基本であり、口呼吸によってドライマウスが常態化すると、口内細菌の活動が活発化して口臭が生じやすくなります。同時に、細菌感染症であるむし歯や歯周病のリスクも上昇します。唾液には自浄作用・抗菌作用・殺菌作用・緩衝作用・歯の再石灰化作用などが期待できることから、ドライマウスで唾液が減弱すると、口腔環境に多大な悪影響がおよんでしまうのです。

身体の不調の可能性

歯並びの乱れには、必ず噛み合わせの異常を伴います。そもそも歯並びは上下できれいに並んでいることが前提なので、下の歯並びだけでも乱れがあると、上の歯並びとの噛み合わせにも自ずと問題が生じます。具体的には、咀嚼能率の低下、特定の歯に大きな負担がかかる、顎関節症を発症するなどは、噛み合わせの異常に伴う問題としてイメージしやすいかと思います。

噛み合わせの異常に伴う問題は、口腔内やその周囲だけにはとどまりません。悪い噛み合わせによって咀嚼筋が過剰に緊張したり、口腔周囲組織の血行が悪くなったりすると、首のこりや肩こり、頭痛などを引き起こすことがあります。ひいては精神的なストレスや疲労が蓄積して、自律神経失調症を患う方もいます。いわゆる不定愁訴(ふていしゅうそ)に悩まされている場合は、もしかしたら下の歯並びの異常が関係しているかもしれません。

歯並びの悪化を予防する方法

歯並びの悪化を予防する方法 このように、歯並びが悪くなる原因は多岐に渡り、放置することでさまざまなリスクが生じます。それだけにできれば歯並びが悪くなるのを防ぎたいものです。ここでは歯並びの悪化を予防する方法を紹介します。

【方法1】歯並びを悪くする習慣を取り除く

歯並びの悪化を予防する方法として、悪い習癖や習慣の除去があります。口呼吸や頬杖をつく癖、歯ぎしり・食いしばりなどが習慣化している場合は、改善するよう努めましょう。頬杖をつく癖に関しては、今からでも意識することでやめられますが、口呼吸と歯ぎしり・食いしばりは、無意識に行っているため、改善するには歯科医師に相談することをおすすめします。

小児期に口呼吸や指しゃぶり、舌を前に突き出す癖などが認められる場合は、骨格の発育にまで影響するため、できるだけ早期に専門家のアドバイスを求めましょう。こうした口腔習癖は、専用の装置を使って改善することが可能です。

【方法2】歯並びを悪くする親知らずを抜く

親知らずの生え方や埋まり方が悪くて、歯並びを悪化させている場合は適切な時期に抜歯をしましょう。下の歯並びを悪くする可能性があるということは、手前の歯や周囲の組織にも何らかの問題を引き起こしていることが少なくありません。そうした親知らずは、保険診療で抜歯することができます。

【方法3】乳歯のケアを適切に行う

乳歯がむし歯になって早期に脱落したり、いつまで経っても抜け落ちなかったりする場合は、永久歯の歯列を乱す原因になるため、適切にケアしてください。乳歯のむし歯を予防することはもちろん、むし歯になってしまった場合は、早期に治療を受けましょう。永久歯への生え変わりがうまく進まない場合も、放置はせずに専門家の意見を求めることが大切です。永久歯の歯並びが悪くなるのを防ぐために、乳歯を抜歯することがあります。

歯科医院での悪い歯並びを治療する方法

歯科医院での悪い歯並びを治療する方法 悪い歯並びを歯科医院で治療する方法について解説します。ここでは歯列矯正にあたる、マウスピース型矯正・ワイヤー矯正・裏側矯正(舌側矯正)の3つを紹介します。

マウスピース型矯正

透明な樹脂製のマウスピース(アライナー)を使って歯並びを矯正する方法です。マウスピースは1日20~22時間装着し、1~2週間ごとに交換します。従来の歯列矯正とは異なり、矯正装置を患者さん自身が着脱できることから、食事がしやすい、歯磨きがしやすい、装置のケアがしやすいなどのメリットがあります。また、マウスピース型矯正装置は目立ちにくく、口腔内を傷つけるリスクもほとんどありません。ただし、ワイヤー矯正よりは適応範囲が狭く、歯を三次元的に動かすのはあまり得意ではないため、重症度の高い複雑な歯並びには向いていない方法です。下の歯並びが軽度の叢生・受け口・すきっ歯であれば、マウスピース型矯正で効率良く治せることでしょう。

ワイヤー矯正

金属製のワイヤーとブラケットを歯面に固定する治療法です。スタンダードな歯列矯正であり、適応範囲も広く、下の歯並びが悪い症例のほとんどに使えます。矯正装置を歯列の表側に固定することから、表側矯正とも呼ばれることがあり、装置が目立ちやすい、ワイヤーなどが粘膜を傷つけやすい、食事や歯磨きがしにくいなどのデメリットを伴います。

裏側矯正(舌側矯正)

金属製のワイヤーとブラケットを歯列の裏側に固定する治療法です。基本的なメカニズムは表側矯正と同じですが、裏側矯正は装置が目立ちにくいというメリットがあります。そのため審美性を重視する方には、裏側矯正が推奨されます。ただ、裏側矯正は専用の装置と技術を要するため、表側矯正より数十万円程度、費用が高くなります。また、裏側矯正を適切に行える歯科医師が限られるため、歯科医院選びが大切です。

まとめ

今回は、下の歯並びが悪い原因と放置するリスク、歯科医院での治療法について解説しました。下の歯並びが悪くなる原因としては、下顎が小さい、歯が大きい、親知らずによる悪影響、口呼吸や歯ぎしりなどの悪習慣が挙げられます。下の歯並びが悪い状態を放置していると、むし歯・歯周病リスクが高まる、ドライマウスが誘発される、身体の調子が悪くなるなどのリスクが生じるため、歯列矯正で改善するのが望ましいです。そんな下の歯並びが悪い症状に悩まされている方は、まず歯科医師に相談してみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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