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CAD/CAM冠とは?CAD/CAM冠のメリット・デメリットについて解説

CAD/CAM冠とは?CAD/CAM冠のメリット・デメリットについて解説

ひと昔前までは、奥歯の治療では銀歯を入れるのが一般的でしたが、今はCAD/CAM冠(キャドキャムカン)という白い被せ物を使うことができます。銀歯と比較すると見た目が自然であるため、患者さんの満足度も高くなっていることでしょう。ここではそんなCAD/CAM冠の特徴や適用範囲、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。むし歯治療の後に銀歯ではなく白い被せ物を入れたいと考えている方は参考にしてみてください。

CAD/CAM冠とは

CAD/CAM冠とは

CAD/CAM冠とは、コンピューターで設計し、専用の機械で削り出す白色の被せ物です。保険が適用されるため、患者さんは1〜3割負担で治療が受けられます。まずはそんなCAD/CAM冠の適用範囲と使用される素材を確認していきましょう。

CAD/CAM冠の適用範囲

CAD/CAM冠に健康保険が適用されるようになったのは、2014年からです。当初の保険適用は一部の歯に限られていたのですが、現在は1番から7番までのすべての歯を保険で治療できるようになりました。ただし、CAD/CAM冠の大臼歯への適用は残存歯と冠の素材により、一定の条件を満たす必要があります。

CAD/CAM冠で使用される素材

CAD/CAM冠で使用される素材はハイブリッドセラミックです。ハイブリッドセラミックとは、歯科用プラスチックであるレジンとセラミックを混合した材料のことをいいます。特徴としては、レジンより見た目が自然で耐久性が高いですが、標準的なセラミックよりも審美面、機能面、強度が劣るものです。レジンとセラミックの中間的な性質を備えたのがハイブリッドセラミックです。

ただし、CAD/CAM冠に使用されるハイブリッドセラミックは、自費診療で活用されているハイブリッドセラミックとは、少し性質が異なります。CAD/CAM冠用のハイブリッドセラミックの材質はレジンの成分が多く、プラスチックに近い素材となります。自費診療とまったく同じものではないことは理解しておきましょう。

CAD/CAM冠の治療方法

CAD/CAM冠の治療方法

次に、CAD/CAM冠の治療方法を解説します。

カウンセリング

CAD/CAM冠の治療を行う際には、カウンセリングが実施されます。この段階では、患者さんの歯の状態や治療の希望を確認し、CAD/CAM冠が適しているかを判断します。CAD/CAM冠に関する疑問や不安がある場合、この時点できちんと解消しておきましょう。

歯の形成

次に、CAD/CAM冠を装着するために、治療対象となる歯を形成します。むし歯がある場合は、その部分をしっかりと除去し、冠が適切にフィットするように歯の形を整えます。歯質が十分に残っていない場合は、コアと呼ばれる人工の土台を作ることがあります。

型取り・作製

歯の形成が終わったら、型取りを行い模型を作成します。その情報をデジタルデータに変換して、CADソフトに入力します。CAD/CAM冠の設計はコンピューターで行い、ミリングマシンと呼ばれる機械で冠を作製します。

設置

完成したCAD/CAM冠を患者さんの歯にセットします。この工程では、歯と冠の接合部がしっかりとフィットするように調整を行いながら、専用の接着剤を用いて固定します。また、噛み合わせが自然で違和感がないかを確認して調整を行います。正確なセットが、長期的な使用において快適さを維持するために重要なポイントです。

CAD/CAM冠のメリット

CAD/CAM冠のメリット

CAD/CAM冠による治療では、次に挙げるメリットが得られます。

保険診療で受けられる

CAD/CAM冠のメリットの一つは、保険診療で受けられる点です。通常、審美性を追求したセラミックの被せ物は自費診療で高額になることが一般的ですが、CAD/CAM冠は特定の条件下では保険適用が可能です。患者さんは高額な自費診療を避けつつ、治療を受けることができます。特に、奥歯の治療などで金属の被せ物を選ばなくても、自然な見た目を保ちながら治療を進められる点が魅力です。

自然な色調に仕上がる

CAD/CAM冠は、審美性も期待できる治療法です。歯の自然な色調に近づけることができるため、お口を大きく開けることにもためらいがなくなるでしょう。

金属アレルギーの心配がない

金属アレルギーの心配がない点も、CAD/CAM冠の特徴です。従来の金属製の被せ物は、金属アレルギーのリスクを伴うことがありますが、CAD/CAM冠は主にレジンやセラミック素材を使用しているため、金属アレルギーの心配がありません。そのため、金属アレルギーを持っている患者さんにとって、適切な選択肢となります。

対合歯にも優しい

CAD/CAM冠は、対合歯(噛み合う相手の歯)にも優しい素材です。金属製の被せ物に比べてやわらかい素材でできているため、咀嚼時の負担が軽減され、対合歯への負担を抑えることができます。特に、噛み合わせが悪い場合でも、硬すぎる素材によって対合歯が削れる心配が少なく、歯全体の健康維持に役立ちます。これは患者さんにとって、長期的な口腔内の健康を守る重要な要素です。

CAD/CAM冠のデメリット

CAD/CAM冠のデメリット

CAD/CAM冠による治療には、以下に挙げる3つのデメリットを伴います。

傷がつきやすく割れやすい

CAD/CAM冠は、素材自体は主にレジンというやわらかいものが使われています。そのため、長期間の使用により、小さな傷がつくことがあります。この傷が蓄積してしまうと、CAD/CAM冠の耐久性が低下してしまい割れやすくなるのです。特に、硬い食べ物を頻繁に食べる方や、歯ぎしりの癖がある患者さんは注意が必要です。

また、レジンは経年的な劣化が進みやすい材料なので、装置としての寿命が標準的なセラミック程は長くないのもあります。CAD/CAM冠で使用する素材はハイブリッドセラミックですが、保険診療ではレジンの成分が多く含まれたものしか選べないのです。

適用できない可能性がある

CAD/CAM冠は保険適用されるためコスト面でのメリットが大きいものの、すべての患者さんに使用できるわけではありません。治療する歯の部位や残った歯の状態によっては、銀歯の方が適していることもあるのです。特に、噛み合わせに影響を与える部分や、ほかの治療法との兼ね合いが難しい場合には、CAD/CAM冠を使用できないことがあります。事前に歯科医との十分なカウンセリングが重要です。

歯を削る量が増える

CAD/CAM冠の装着には、ほかの治療法と同様に歯を削る工程が必要です。しかし、場合によっては、ほかの素材よりも多くの量を削らなければならないことがあります。これは、CAD/CAM冠をしっかりと設置するために一定のスペースが必要なためです。特に、健全な歯質が多く残っている患者さんにとって、削る量の多さは負担となることがあります。もし、削りすぎた場合は、歯の耐久性が低下して将来的な治療が難しくなるリスクもあるため、治療前の十分な説明と理解が重要です。

このように、CAD/CAM冠にはデメリットもいくつか伴うため、治療法を選択する際には慎重に検討する必要があります。歯の修復治療で何を優先するのか。その条件によっては、自由診療のセラミックが推奨されることも少なくないのです。

CAD/CAM冠とセラミックの違い

CAD/CAM冠とセラミックの違い

CAD/CAM冠とよく比較されるものに自由診療のセラミックがあります。ここでは保険診療のCAD/CAM冠と自由診療のセラミックを審美面と機能面、費用面の3つから比較したいと思います。

審美面

CAD/CAM冠は、一般的には審美性よりも機能性を重視した治療法です。CAD/CAM冠は主にレジン素材で作られており、自然な色合いを再現することはできますが、セラミックの美しさにはおよびません。一方、セラミックは光沢や光の透過性に優れており、見た目は天然歯に近いものとなります。特に、前歯や笑ったときに目立つ部分に使用するときは、セラミックがより優れた選択肢となることが少なくありません。

また、セラミックは経年劣化しにくく、色の変化が少ないという特徴があります。CAD/CAM冠は長期間使用すると表面が摩耗したり、コーヒーやタバコなどの着色汚れが付きやすくなったりするため、定期的なメンテナンスが必要です。

機能面

CAD/CAM冠は、レジンとセラミックの混合素材で作られているため、噛み合わせに優しく、対合歯にかかる負担が少ないというメリットがあります。しかし、強度や耐久性に劣るため、強い力が加わる奥歯や、歯ぎしりのある患者さんには向いていない場合があります。また、CAD/CAM冠はセラミック歯よりも外れやすく、再治療になるリスクがあることも知っておきましょう。

一方、セラミックはとても硬く、耐久性に優れています。特に、ジルコニアといわれる素材は金属に匹敵する硬さを備えていることから、強い噛み合わせや長期間にわたる使用でも、割れたり摩耗したりしにくいという特徴があります。その反面、硬すぎるセラミックは、対合歯を摩耗させるリスクがCAD/CAM冠より高いです。そのため歯科医師と相談したうえで、慎重に選択する必要があります。

費用面

CAD/CAM冠の大きな利点は、保険適用のため、自費診療よりも低コストで受けられることです。奥歯の治療など、見た目よりも機能性を重視する部位において、費用を抑えながら審美性の高い被せ物を作成できることは、患者さんにとって大きなメリットです。保険適用の場合、一般的には1万円程度で治療が受けられます。

一方、セラミックは基本的に保険が適用されないため自費診療となります。治療費は歯科医院によって異なりますが、セラミックの被せ物の場合、1本あたり5万円から15万円程度が一般的です。費用面ではセラミックの方が高額になりますが、審美性や耐久性といった長期的にはコストパフォーマンスを考慮すると、そこまで高額とは思わない方もいます。

総合的に、CAD/CAM冠は保険適用の範囲内で優れた選択肢といえますが、審美性や耐久性、そして費用面を考慮すると、セラミックが適している場合もあります。そのため患者さんのニーズや優先順位に応じて、どちらを選ぶべきかを歯科医師とよく相談することが重要です。

CAD/CAM冠を提供するクリニックの探し方

CAD/CAM冠を提供するクリニックの探し方

CAD/CAM冠を提供する歯科医院を探す際には、いくつかのポイントがあります。その一つは、CAD/CAM冠の治療は、厚生労働局に申請された施設でしか提供できないことです。CAD/CAM冠を希望する場合は、適切な許可を得た信頼できる歯科医院を選ぶことが必要です。ここでは、クリニックを探す際の具体的な方法を解説します。

【探し方1】ホームページを閲覧する

探したい地域の歯科医院のホームページを閲覧することをおすすめします。多くの歯科医院は、ホームページで提供している治療法について詳しく説明しており、CAD/CAM冠が受けられるかどうかも記載されている場合が多いです。ホームページを探す際には、CAD/CAM冠や、保険適用などのキーワードで検索することで見つけやすくなります。

さらに、治療の流れや費用、また患者さんからのコメントや治療例も参考になります。特に、症例写真や治療の詳細な説明が掲載されているクリニックだと相談もしやすいでしょう。

【探し方2】電話で問い合わせる

実際に歯科医院に電話で問い合わせてみましょう。ホームページだけでは十分な情報が得られない場合、より具体的な治療内容や費用、予約の可否などについて確認することができます。例えば、「CAD/CAM冠の保険適用について教えてほしい」や「銀歯以外にはどのような治療の選択肢がありますか?」など、具体的な質問を用意しておくとよいでしょう。

電話応対からも、クリニックの対応力や親切さを判断する材料になります。こちらからの疑問や質問に優しく対応してくれるクリニックかどうかを確認することができるでしょう。電話での問い合わせは、特に初めて受診する患者さんにとって、不安なく治療を受けるための重要なステップとなります。

このように、ホームページの確認と電話での問い合わせを組み合わせることで、適切なクリニックを見つけることができます。CAD/CAM冠を受けるためのクリニック選びは、患者さんにとって大切な治療の一環ですので、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要です。

まとめ

今回は、CAD/CAM冠の特徴や適用範囲、メリットとデメリットを解説しました。CAD/CAM冠は保険診療で入れられる白い被せ物で、現在はすべての歯が対象となっています。金属アレルギーのない白い歯を安価に入れられる治療法ではありますが、残念ながら万能ではありません。銀歯よりも歯を大きく削らなければならなかったり、経年的な劣化が進みやすかったりするなどのデメリットも伴うため、治療法を選択する際には慎重に検討する必要があります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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