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むし歯が歯の中を侵食するとどうなる?原因と治療についても解説

むし歯が歯の中を侵食するとどうなる?原因と治療についても解説

むし歯になりかけていても、ほとんどの方は気付きません。そのうちにどんどん歯の中へ侵食していき、気付いたら歯に穴が開いていた経験がある方も少なくないでしょう。

むし歯を初期のうちに発見できれば、治療のために歯を削らなくても済む可能性があります。

この記事では、むし歯が進行する過程や症状・原因などを解説します。治療法・予防方法に関しても紹介するので、むし歯がある方もない方も参考にしてください。

むし歯が歯の中を侵食する過程

むし歯

むし歯はどのように進行していきますか?
むし歯は歯の表面を覆うエナメル質が、歯垢のなかにいるミュータンス菌が出す酸によって溶かされる(脱灰)ことから始まります。ただ、脱灰は唾液中のカルシウムを取り込み自然に修復(再石灰化)されます。脱灰と再石灰化は日常的に繰り返されますが、一定の条件下で修復が追いつかず崩壊して穴が開いた状態がむし歯です。
いったん崩壊すると自然な修復は期待できず、治療しない限り歯の中へ向かって侵食が進みます。エナメル質の下には象牙質があり、ここは酸に弱い性質のため侵食・崩壊が進みやすい部位です。
さらに侵食が進み中心部の歯髄(神経・血管がある部位)にまで到達すると、この段階では強い痛みが生じます。根元まで侵食が進むと治療は難しくなり、最終的には抜歯です。
むし歯の初期症状について教えてください。
むし歯の初期とは、歯の表面を覆うエナメル質が酸によって侵された状態です。エナメル質には神経が通っていないため、酸で侵された場合でも痛みや痒みなどの症状はありません。ただ、歯の質に変化がおこり、これは目視できます。
カルシウムとリンで構成されたアパタイトと呼ばれる結晶構造により、歯の表面はツルツルで透明感があります。この結晶に酸が作用し続けると結晶が崩れ、透明感がない白色の斑点(脱灰)ができるそうです。
通常は再石灰化で修復されますが、再石灰化が遅く修復が間に合わない場合は不透明な部分が残ります。小さな白い斑点や線が目視できる状態で、穴が開く一歩手前です。ある程度の大きさがあれば、舌触りでもわかることがあります。
むし歯が内部に侵食していくとどのような影響がありますか?
むし歯の進行状況は以下のとおり5段階に分けて表示されます。

  • CO(シーオー):エナメル質がわずかに溶かされた初期段階
  • C1:エナメル質に穴が開く
  • C2:象牙質まで侵食
  • C3:歯髄まで侵食
  • C4:歯根に到達

COでは無症状で、削らなくても回復が可能です。C1ではエナメル質に穴が開きますが、神経がないため症状はありません。
C2になると象牙質が侵されます。ここには知覚神経があるので、甘味・酸味・冷たさなどが染みる場合がありますが、強い痛みはありません。
C3は神経や血管がある歯髄が侵されるほか、歯根膜炎がおこる場合もあります。この段階では激しい痛みが特徴です。
C4では上部構造が崩壊して歯髄が壊死するため痛みは解消します。ただ、歯根に達した菌が血管から拡散し、ほかの臓器に病気をおこす場合があります。

むし歯の治療法・治療後の注意点

治療開始

むし歯の初期治療について教えてください。
初期のむし歯はエナメル質がわずかに溶かされた状態で、むし歯になりかけた段階ともいえます。この状態では自然修復の可能性はありますが、積極的に修復を進める方が効果的です。
その方法ですが、再石灰化を促すフッ素化合物の塗布や侵食を抑制するキシリトールを使って、再石灰化と脱灰の抑制を促します
また、原因菌のミュータンス菌を含む歯垢を残さないため、ていねいな歯磨きも必須です。いずれも自己判断では難しく、歯科医師の指導を受けることが大切になります。
初期のむし歯では症状が出ないため、早期に発見するには歯のチェックが重要です。白い斑点がないか、磨き残しの歯垢がないかを定期的にチェックする習慣をつけてください。
軽度のむし歯は治療が必要ですか?
進行度がC1やC2、つまりエナメル質や象牙質に穴が開いたむし歯の多くは、軽度とはいえ治療が必要です。初期のように自然治癒は望めません。ただ、C1でも穴が浅い場合は削らずに予防処置で経過観察する場合があります。
多くの治療では侵食された部分を削り、穴に詰め物を入れる方法が一般的です。軽度の場合詰め物に使われる材料は、セラミックスの粒子をプラスチックで固めたコンポジットレジンがよく使われます。小さい穴では1回の通院で終了になることもありますが、穴が大きく型取りが必要な場合でも2~3回で終わる治療です。
むし歯の症状が重度の場合はどのような治療が必要ですか?
進行度C3では重度の分類になり、神経がある歯髄まで侵食が進んでいます。治療は菌が入った歯髄を取り除き、感染治療をしてから金属の詰め物を入れる方法が基本です。
菌が根元まで入っていない場合は、途中まで削って防腐剤を入れます。歯髄全体が感染していれば、すべて取ったうえで根管治療できれいにして詰め物またはかぶせ物を入れる治療です。
さらに進んだC4では、根だけが残った状態になります。こうなると治療方法は抜歯しかありません。なくなる歯が2本以内で両側に歯があればブリッジで対応できますが、3本以上ではインプラントか入れ歯になります。
むし歯を治療した後の注意点を教えてください。
むし歯の治療は受けた後にも注意すべきことがあります。主な事項を挙げておきましょう。

  • 再石灰化を促すフッ素塗布:30分間は飲食しない・歯磨き励行・定期的に塗布
  • かぶせ物や詰め物:固まるまで30分は飲食しない・歯とのすき間は歯垢が溜まるのでていねいに歯磨き・3ヵ月~半年ごとの定期健診
  • 根管治療:神経を抜いた後は染みるので冷たいものを控える
  • 仮歯装着:型取りのときに装着した仮歯で硬いものを噛まない
  • 抜歯:数日間は硬いものを避け抜歯箇所とは反対側の歯で噛む
  • 局所麻酔:治療で麻酔薬を使った後1~2時間は飲食しない

むし歯治療の後は歯垢が溜まりやすくなるため、ていねいな歯磨きとともに定期的な健診をおすすめします。

むし歯の原因・予防法

模型を使って歯磨き指導を行う歯科医師

むし歯を引き起こす主要な原因は何ですか?
むし歯の主な原因は、細菌のストレプトコッカス・ミュータンス(=ミュータンス菌)です。食物に含まれるショ糖を原料にして粘性が強い歯垢を作り、そのなかで酸を出して歯を構成するカルシウムやリンを溶かします。
歯垢は白っぽい粘着物で、歯の表面や歯と歯茎との境目に溜まっているのが目視できるでしょう。これが常時溜まっている部分ではミュータンス菌が活動中で、むし歯になりやすい危険エリアです。
また、むし歯には歯の質も関係しており、酸に侵されにくい質の歯を持つ方は、ミュータンス菌とショ糖が少なくない口内環境でもむし歯になりにくいとされます。むし歯の原因に関しては、ミュータンス菌とショ糖と歯の質の3つの要因が関係し合っていると考えていいでしょう。
どのような症状が出たときに歯科医院で受診すればよいですか?
むし歯で受診するタイミングは、初期段階がベストです。COで無症状の状態なら基本的に治療の必要はありません。しかし、その状態で受診してフッ素塗布や歯垢除去・歯磨き指導を受ければ、再石灰化で回復が期待できます。
受診せず自分なりの判断で歯磨きしたとしても、歯垢の完全除去は困難で進行する可能性が増大するだけです。もう少し進行して、少しでも削ってしまうとそこからの再発リスクが発生します。
そのため、面倒でも定期的に検診して早期発見され、削らずに回復できればそちらのメリットが大きいはずです。
むし歯を予防するのに効果的な方法を教えてください。
むし歯を効果的に予防するには、むし歯をおこす3つの主要な原因をつぶすことです。つまり、ミュータンス菌を減らし、砂糖を摂取する頻度を減らし、歯の質を強くします。食べたら磨く歯磨きで菌の巣である歯垢を除去し、砂糖が少なくない間食も減らしてください。
再石灰化を促すフッ化物の塗布によって、ミュータンス菌への抵抗性が強化できます。そして、定期的な検診で初期段階のむし歯を早期発見すれば、削らずに原状回復も可能です。
また、歯科受診では歯垢除去や効果的な歯磨きの方法も習得でき、ミュータンス菌を減らすことにつながります。

編集部まとめ

レントゲンの説明をする歯科衛生士

むし歯はミュータンス菌が歯を侵食しておこり、最終的には歯がなくなるまで進行します。初期症状の発見は難しいものの、注意していれば見つけることが可能です。

むし歯の治療は初期・早期で侵食の程度が軽い程簡単で、初期のフッ素塗布から侵食につれ詰め物・かぶせ物・根管治療・入れ歯へと進行します。

むし歯の原因は菌と歯質と糖が関係し合うので、予防もこの3点がポイントです。よりしっかりとした予防法は定期的な検診なので、面倒でも足を運んで自分の歯を守ってください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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