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むし歯を放置するとどうなる?放置した場合の症状や治療方法を解説

むし歯を放置するとどうなる?放置した場合の症状や治療方法を解説

風邪やインフルエンザは、自宅で安静に過ごすことで徐々に改善していきますが、むし歯はそうではありません。むし歯も風邪やインフルエンザと同様、感染症の一種ではあるものの、放置していても自然に治ることはないのです。これは歯に感染したむし歯菌を身体の免疫力で取り除くことができないからです。それだけにむし歯を治療せず放置するのは絶対にNGといえます。ここではそんなむし歯を放置した場合に生じる症状や合併する病気、むし歯を治療する方法などを詳しく解説します。

むし歯になる原因

むし歯になる原因
はじめに、むし歯になる原因について確認しておきましょう。

◎根本的な原因はむし歯菌への感染
むし歯の根本的な原因は、むし歯菌(ミュータンス菌など)の感染です。この菌は、食べ物の糖分を利用して酸を生成し、その酸が歯のエナメル質を溶かします。特に、子どもの歯はまだ成長段階にあり、エナメル質が弱いため、むし歯菌による影響を受けやすいです。また、親御さんからの口移しや食器の共有によって、むし歯菌が移ることもあります。感染したむし歯菌は、歯の表面にしっかりと付着し、時間が経つと歯にダメージを与えます。

◎歯垢や歯石の堆積がむし歯のスタート地点
むし歯菌が活動しやすい環境を作るのが、歯垢や歯石の堆積です。食事後、適切な歯磨きが行われないと、歯垢が歯に付着し、それが固まることで歯石が形成されます。歯垢や歯石が放置されると、むし歯菌がそこに住み着き、さらに酸を作り出して歯を侵食していきます。特に、噛み合わせの悪い部分や歯並びが不均一な箇所では、歯垢が溜まりやすく、むし歯のリスクが高まります。歯石は一度形成されると、歯磨きだけでは取り除けないため、定期的な歯科検診とクリーニングが重要です。

むし歯の進行度

むし歯の進行度
次に、むし歯の進行度について解説します。むし歯を放置していると、以下に挙げるような4つの段階を経て重症化していきます。

初期のむし歯

初期のむし歯は、歯の表面に小さな白い斑点や小さな穴が現れる段階です。この状態は、まだエナメル質が溶け始めたばかりで、痛みはほとんど感じられません。むし歯がこの段階で発見されれば、フッ素塗布や適切な歯磨きによって進行を止め、自然治癒する可能性もあります。もうすでに穴があいている場合は、歯を削らなければならないかもしれません。どちらにしても定期的に歯科検診を受けることで、この初期段階のむし歯を早期に発見しやすくなります。

中程度のむし歯

中程度のむし歯になると、エナメル質を越えて象牙質にまで侵食が進んでいます。この段階では、冷たいものや甘いものに対して敏感になることが多く、歯に痛みを感じることがあります。むし歯が中程度に進行した場合、放置せずに早期の治療が必要です。適切な治療によって、むし歯の進行を止めることができ、歯の機能を維持することが可能です。

重度のむし歯

重度のむし歯は、象牙質を越えて歯の内部にある歯髄(神経)にまで達した状態です。この段階になると、強い痛みが生じるだけでなく、歯髄が感染し、膿が溜まることもあります。噛み合わせに影響が出ることもあり、放置すると歯の保存が難しくなることがほとんどです。根管治療が必要となり、場合によっては抜歯が避けられないこともあります。

歯根だけ残ったむし歯

むし歯がさらに進行し、歯冠部分がほとんどなくなり、歯根だけが残った状態を指します。こうなると、歯を保存することはとても困難で、多くの場合、抜歯が必要になります。放置すると、歯根周囲の骨にも悪影響を及ぼし、隣接する歯にも影響が出る可能性があります。患者さんがこのような状態になる前に、早期の治療と適切な予防が重要です。

むし歯は放置すると進行し、治療が困難になるため、早期の発見と適切な対応が歯を守るための鍵となります。

むし歯を放置したときの症状

むし歯を放置したときの症状
むし歯があるにも関わらず治療を受けずに放置していると、次に挙げるような症状が現れます。一見するとむし歯とは関係がないように思える症状も含まれていますが、きちんとした因果関係があるため、十分な注意が必要です。

歯に強い痛みが生じる

むし歯を放置すると、初期段階ではほとんど感じられない痛みが、次第に強くなってきます。むし歯が進行するにつれて、エナメル質を越え、象牙質、さらには歯髄にまで達すると、冷たいものや甘いものに敏感になり、さらに強い痛みを引き起こします。歯髄が感染すると、持続的な痛みや拍動するような痛みが生じ、日常生活にも支障をきたすことがあります。このような痛みは、放置せずに早期に治療を受けることで、歯の機能を保ちつつ症状を改善することが可能です。

歯肉や顔まで腫れてしまう

むし歯が進行して歯の根元にまで感染が広がると、歯肉が炎症を起こし、腫れが生じます。この炎症がさらに進行すると、歯肉だけでなく、顔全体にまで腫れが広がることがあります。特に、膿が溜まると強い痛みを伴い、噛み合わせにも影響を与えることがあります。患者さんがこのような状態になると、日常生活に大きな支障が出るだけでなく、場合によっては緊急治療が必要となることもあります。

歯並びが悪くなる

むし歯を放置した結果、歯が崩壊したり抜け落ちたりすると、隣接する歯がその空間に移動し、歯並びが悪くなることがあります。歯並びが乱れると、噛み合わせが悪くなり、さらにほかの歯にも過度な負担がかかるようになります。これは、噛む力のバランスが崩れるだけでなく、顎関節症や頭痛、肩こりなど、全身的な影響を引き起こすこともあります。患者さんや親御さんがむし歯を放置せず、早期に治療を受けることが重要です。

口臭の原因になる

むし歯を放置すると、歯の内部で細菌が増殖し、それが原因で口臭が発生します。むし歯が進行すると、歯の組織が腐敗し、さらに強い口臭を引き起こすことがあるのです。このような口臭は、歯磨きやマウスウォッシュだけでは解消できず、むし歯の治療を行わなければ改善されません。口臭は他人に不快感を与えるだけでなく、患者さん自身の生活の質を低下させる要因にもなり得ます。早めに歯科医院を受診し、むし歯の治療を行うことで、口臭の原因を取り除くことができます。

むし歯が引き起こす病気

むし歯が引き起こす病気
むし歯を放置していると、次に挙げるような深刻な病気を引き起こすことがあります。

偏頭痛や顎関節症

むし歯を放置すると、噛み合わせが悪くなり、それが原因で偏頭痛や顎関節症を引き起こすことがあります。これはむし歯によって歯が崩壊したり、抜け落ちたりすると、噛む力のバランスが崩れ、顎に過度な負担がかかるためです。さらには顎関節に影響を与え、顎関節症を引き起こし、頭痛を誘発することもあります。特に、長期間放置されたむし歯は、患者さんにとって深刻な健康問題を引き起こすリスクが高まります。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

むし歯が進行すると、口腔内の衛生状態が悪化し、口内の細菌が増殖します。これらの細菌が唾液や食べ物とともに誤って肺に入ることで、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。特に、高齢者や免疫力が低下している患者さんは、むし歯が原因で誤嚥性肺炎を発症しやすくなるため注意が必要です。誤嚥性肺炎は、重篤な病気であり、場合によっては命に関わることもあるため、むし歯を放置せず、早期に治療することが重要です。

副鼻腔炎(ふくびくうえん)

むし歯が進行して上顎の奥歯に影響を及ぼすと、副鼻腔にまで感染が広がり、副鼻腔炎を引き起こすことがあります。副鼻腔炎は、鼻詰まりや顔面の痛みを引き起こすだけでなく、慢性化すると全身の健康にも悪影響を与えることがあります。

骨髄炎(こつずいえん)

むし歯が進行し、歯の根元や顎骨にまで感染が広がると、骨髄炎を引き起こすことがあります。骨髄炎は、骨の内部に感染が広がる病気で、強い痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。とりわけ免疫力が低下している患者さんや、お子さんがむし歯を放置すると、骨髄炎に発展するリスクが高まります。この病気は、治療が遅れると骨の破壊が進み、重篤な後遺症を残すこともあるため、早期の対応が不可欠です。

むし歯を放置することは、これらの深刻な病気を引き起こす可能性があります。患者さんや親御さんは、むし歯の早期発見と適切な治療を通じて、これらのリスクを未然に防ぐことが大切です。

放置したむし歯の治療方法

放置したむし歯の治療方法 放置したむし歯の治療方法は、進行度や口腔内の状態に応じて変わります。

詰め物や被せ物

むし歯が進行し、歯の表面に穴が開いたり、欠けたりした場合、詰め物や被せ物を用いて修復することが一般的です。詰め物は、小さなむし歯に対して適用され、歯の一部が失われた場合に使用されます。一方、被せ物は、むし歯が広範囲に広がり、歯の形状や強度が失われた場合に適用されます。被せ物は、歯全体を覆うため、噛み合わせを正常に保ち、歯を長期的に保護する役割を果たします。適切な材料や治療方法を選ぶことで、患者さんの歯をできるだけ長く健康に保つことが可能です。

入れ歯

むし歯を放置したことによって歯を失った場合は、入れ歯を用いることが治療の選択肢のひとつとなります。入れ歯は、失った歯の機能と見た目を補うために使用される取り外し可能な装置です。部分入れ歯は、数本の歯を失った場合に使用され、全体入れ歯はすべての歯を失った場合に適用されます。入れ歯は、ほとんどが低コストで、さまざまな患者さんに適応できますが、噛み合わせの調整や定期的なメンテナンスが必要です。また、使用者の快適さや適応に個人差があるため、治療後のフォローアップが重要です。

ブリッジ治療

ブリッジ治療は、むし歯で失った歯を補うために、隣接する健康な歯を利用して人工の歯を固定する方法です。ブリッジは、失った歯の両側にある歯を支えにして固定され、自然な見た目と機能を回復します。特に、1本から数本の歯を失った場合に適用されることがあります。ブリッジ治療は、隣の歯に負担をかけるため、噛み合わせや歯の健康状態に注意が必要です。患者さんの歯の状態や生活習慣に合わせて、適切な材料や設計が選ばれることが望ましいです。

インプラント治療

インプラント治療は、むし歯で歯を失った場合の治療方法として、先進的な選択肢です。インプラントは、チタン製の人工歯根を顎骨に埋め込み、そのうえに上部構造を固定する治療法です。インプラントは、自然な歯と同じようにしっかりと固定され、噛み合わせや見た目の点でも優れています。また、隣接する健康な歯に影響を与えず、長期間にわたって機能を維持できる点が特徴です。しかし、治療には手術が必要であり、費用が高額になる場合があります。患者さんの全身状態や顎骨の状態を考慮したうえで、インプラント治療が適用されるかどうかを判断します。

むし歯を放置し続ける影響

むし歯を放置し続ける影響 むし歯を治療せずに放置し続けると、次のような影響が生じます。

治療しないとむし歯菌が残り続ける

歯の表面や根管内に感染したむし歯菌は、身体に備わっている免疫力で排除することができません。感染した歯質を削ったり、根管内を消毒したりしなければ、むし歯菌は残り続けるのです。その結果、上段で解説した深刻なトラブルを引き起こします。

むし歯の進行を防ぐ方法

ここでは、むし歯の進行を防ぐ方法・発症を予防する方法を簡単に紹介します。

歯垢や歯石の除去

むし歯の進行を防ぐためには、定期的な歯垢や歯石の除去が欠かせません。歯垢は、食べ物の残りや細菌が結合して形成され、むし歯の原因となる酸を生み出します。歯垢が放置されると、やがて歯石となり、歯ブラシでは取り除けなくなります。歯科医院での定期的なクリーニングを受けることで、歯垢や歯石をしっかりと除去し、むし歯のリスクを軽減できます。

フッ素配合の歯磨き粉を使用

フッ素は、歯のエナメル質を強化し、むし歯の進行を防ぐ効果があります。フッ素配合の歯磨き粉を使用することで、歯の表面にフッ素が浸透し、むし歯菌が酸を生成するのを抑制します。特に、お子さんや患者さんには、日常的にフッ素入りの歯磨き粉を使う習慣をつけることが推奨されます。

口内の乾燥を予防

口内が乾燥すると、唾液の分泌が減少し、むし歯菌の活動が活発になります。唾液は、口内を洗浄し、酸を中和する役割を持っているため、口内の乾燥を防ぐことがむし歯予防につながります。患者さんは、水分を十分に摂ることや、必要に応じて口腔保湿ジェルを使用することで、口内の乾燥を防ぎ、むし歯の進行を防ぐことができます。

まとめ

今回は、むし歯を放置した場合の症状や治療方法を解説しました。むし歯は自然にならない病気なので、放置していると徐々に進行していきます。末期に至ると歯がボロボロになって保存が難しくなり、抜歯を余儀なくされます。ケースによっては、誤嚥性肺炎や副鼻腔炎、骨髄炎といった深刻な病気を引き起こすこともあるため、放置せずにきちんと治療を受けましょう。むし歯の治療方法は患者さんの歯の状態によって変わることから、まずは歯科医師に診てもらうことが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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