奥歯にセラミッククラウンを使用する際、セラミックの耐久性と審美性には注意が必要です。セラミックのクラウンが割れる原因は何か、またそれを防ぐための対処法は存在するのでしょうか?
本記事では奥歯のセラミックはなぜ割れるのか、以下の点を中心にご紹介します。
- 奥歯のセラミックが割れる原因
- 奥歯のセラミックが割れたときの対処法
- 奥歯におすすめのセラミック
奥歯のセラミックが割れる原因などを理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
奥歯のセラミックは割れやすい?
奥歯にセラミックを使用することは、その美しさから魅力的に感じられます。しかし、奥歯は噛む力が強く働くため、セラミックが割れるリスクがほかの部位よりも高まります。セラミックは審美性がある一方で、陶器のような材質のため、強い衝撃や圧力には弱いという性質があります。
しかし、現代の歯科技術には、セラミックの弱点を補う方法があります。例えば、より強度の高いセラミック材料の使用や、クラウンの下に金属を用いることで、割れに対する耐性を高める方法です。耐久性を上げると、奥歯でもセラミックの審美性を享受できるでしょう。
そのため、割れやすいという懸念はあるものの、適切な材料選定と技術的な工夫により、奥歯のセラミックは現実的な選択肢となっています。
セラミックが割れる原因
それでは、セラミックが割れる主な原因はどのようなものでしょうか。以下に詳しく解説します。
歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、セラミッククラウンが割れる一因です。
この習慣がある方は、睡眠中にも無意識に強い力を歯に加えています。通常、人体の体重の約2〜3倍もの負荷が歯や顎の骨にかかるとされており、この負荷がセラミックの割れや欠けにつながる場合があります。
セラミックは硬い材質のため衝撃には弱く、不均一な力が加わると破損のリスクが高まります。このような状況を防ぐためには、ナイトガードの使用がおすすめです。ナイトガードは、歯ぎしりや食いしばりによる過度な力から歯を保護し、セラミックの寿命を延ばす役割を果たします。
メンテナンス不足
セラミッククラウンの破損の一因として、メンテナンス不足が挙げられます。
セラミック治療後は、セラミックの状態を長期間維持するためにも、定期的な歯科診療が必須です。メンテナンスを怠ると、時間とともに噛み合わせの問題が生じ、これが原因でセラミックに不均等な力がかかり割れることがあります。
適切なメンテナンスは、セラミックの寿命を延ばすことにつながります。定期的なクリーニングや検診により、早期に問題を発見し、セラミッククラウンの破損リスクを低減しましょう。治療後の定期的な通院は、セラミッククラウンの美しさと機能性を長く保つために欠かせません。
硬いものをよく食べる
セラミッククラウンは見た目の美しさと耐久性で選ばれますが、硬い食べ物を頻繁に食べる習慣がある場合、割れるリスクが高まります。セラミックは硬い素材ですが、突発的な強い衝撃には弱く、なかでも奥歯に使用している場合、硬い食べ物を噛むことでクラウンに過度の負荷がかかり、割れやひびが入る可能性があります。
硬い食べ物を食べる際には、セラミックを入れていない側で噛む、または極端に硬い物を避けるなどの注意が必要です。常にセラミックの状態をチェックし、異常が見られた場合は早めに歯科医師に相談することが望ましいです。
奥歯のセラミックが割れたときの対処法
奥歯のセラミックが割れてしまった場合は、どのような処置が必要になるのでしょうか。以下に説明します。
割れたセラミックは戻さない
奥歯に使用されるセラミックが割れた場合、決して自身の力で元の位置に戻そうとしないでください。セラミックは専門的な接着剤で固定されており、家庭用の接着剤などを使用してしまうと、口内で安定せず、取れやすくなるだけでなく、割れた破片がお口の中を傷つける原因にもなりかねません。
さらに、誤って飲み込む危険性もあります。また、家庭用接着剤は体に悪影響を及ぼす可能性があるため、使用は避けるべきです。割れたセラミックがある場合は、速やかに歯科医師の診察を受け、適切な治療を行うことが必要です。歯科医院では、専用の接着剤を用いて適切な治療が受けられます。
割れたセラミックを持って早めに歯科医院を受診する
奥歯のセラミックが割れた場合、割れた破片は適切に保管し、早めに歯科医院を受診することが重要です。割れたセラミックは、取り出して清潔な水で洗い流し、小さな袋や容器に入れて保管してください。この際、破片をなくさないように注意しましょう。
歯科医院には、この破片を持参することで、修復が可能かどうかを評価し、再利用による治療が行える場合があります。再作成に比べて修理の方が費用を抑えられる可能性があるため、割れたセラミックは捨てずに、すぐに医師による診察を受けることをおすすめします。
刺激の強い食品を控える
奥歯のセラミックが割れた場合、神経が残っていると、歯がとても敏感になります。そのため、セラミックを再修理または再装着するまでの間、刺激の強い食品の摂取は控えることが重要です。
冷たいもの、熱いもの、辛いもの、さらには糖度の高いものなど、歯に刺激を与えやすい食品は避けるようにしましょう。これらの食品は、割れた部分から直接歯の神経に影響を与え、痛みや違和感を引き起こす原因となります。セラミックの修理が完了するまで、これらの食品は極力摂らないようにすることが推奨されます。
口腔内を清潔に保つ
奥歯のセラミックが割れた場合、口腔内を清潔に保つことがとても重要です。割れた部分や露出した象牙質は、プラークの蓄積が起こりやすく、むし歯のリスクを高めます。これを防ぐに、割れた箇所を中心に、丁寧な歯磨きを行いましょう。使用しているセメントの残留部分も清掃対象となり、これらのエリアを清潔に保つことで、さらなる損傷や感染を防げる可能性が高まります。
また、定期的な歯科医院での検診を受けると、小さな問題を早期に発見し、大きなトラブルを避けることにつながります。早めの対処が、将来的な治療の負担を軽減し、健康な口腔環境を維持する鍵となります。
奥歯の詰め物について
奥歯の詰め物はセラミック以外にもいくつか選択肢があります。以下にご紹介します。
セラミック
奥歯の詰め物にセラミックを使用する場合、審美性と機能性が高いことが魅力です。セラミックは白い陶製の材料で、自然な歯と調和する白さを実現し、お口を開けたときに人工物であることが目立ちにくいとされています。
また、セラミックは金属と異なり、高い耐熱性を持ち、錆びたり膨張したりする心配がないとされています。硬度がダイヤモンドに近く、耐摩耗性もあるため、形状の安定と長期間の耐久性が期待できます。
ただし、衝撃には弱く、自費診療のためコストが高くなる可能性もあります。それでも、セラミックの美しさと機能性は、魅力的な選択肢といえるでしょう。
銀歯
奥歯の詰め物として利用される銀歯は、コスト効率の良さから保険適用治療で選ばれます。詰め物の場合、約3,000円、被せ物であれば約4,000円で治療が可能な場合があります。この低コストは患者さんにとって大きなメリットですが、銀歯にはいくつかの欠点も存在します。
銀歯は劣化しやすく、使用しているうちに歯との間に隙間や段差が生じる場合があります。隙間が生じると汚れが蓄積しやすくなり、結果としてむし歯や歯周病のリスクが高まります。さらに、金属イオンの溶出による金属アレルギーのリスクも無視できません。なかでも長期間使用する場合、体内への金属イオンの蓄積が問題となることがあります。
また、審美性に関してもセラミックと比較すると劣るため、見た目を重視する方には不向きかもしれません。しかし、噛む力が強く働く奥歯には、高い強度から銀歯が選ばれるケースも少なくありません。
奥歯におすすめのセラミック
奥歯で使用できるセラミックには大きくわけて2種類あります。以下で見ていきましょう。
メタルボンド
奥歯におすすめのセラミックとして、メタルボンドクラウンがあります。外見はセラミックですが、その内部には金属フレームが使用されており、これが高い耐久性を実現しています。この構造により、メタルボンドは通常のセラミックよりも噛む力に強く、長期間の使用に耐えられるとされています。
ただし、金属が露出する可能性があり、場合によっては歯茎が黒ずむことがあるため、見た目の変化には注意が必要です。また、金属アレルギーのリスクも考慮する必要があります。しかし、外見の美しさと清潔性は、銀歯に比べれば格段に高いでしょう。コストは高めですが、耐久性と美観を求める場合にはおすすめです。
オールセラミック
奥歯に使用するセラミック材料として、オールセラミックも選択肢のひとつです。この材料は100%セラミックで作られており、美しさと機能性がセラミックのなかでも高いとされています。
オールセラミックに使用される材料にもいくつかの種類があります。例えば、ジルコニアセラミックやニケイ酸リチウムガラスセラミック、アルミナセラミックなどです。そのなかでも、耐久性の求められる奥歯の治療には、ジルコニアセラミックが選ばれます。
以前はオールセラミックの脆さが問題視されることもありましたが、現在では技術の進歩により強度が向上した、ファインセラミックとよばれる強化型セラミックが作られました。
ジルコニアセラミックも強化型セラミックのひとつで、材料に使用されるジルコニアは人工ダイヤモンドとしての特性を持ち、とても硬く耐久性が高い傾向があります。奥歯の強い咬合力にも耐えるとされており、割れにくさではほかのセラミック材料を上回ります。
また、金属を含まないため、金属アレルギーの心配がなく使用できます。その見た目はオールセラミックに比べ透明感は劣りますが、奥歯には十分な美しさを提供します。
ただし、より高価になりやすく、通常のセラミックよりもコストが高くなることがデメリットです。
しかし、審美性を重視すると同時に、長期間の使用に耐えうる材質を求める方には、検討の余地がある選択肢です。
金属アレルギーがある場合の注意点
金属アレルギーを持つ方が歯科治療で人工物を選択する際には、特に注意が必要です。奥歯の治療においては、一部のセラミック製品にも金属が含まれていることがあります。
例えば、メタルボンドはその名のとおり、フレームに金属を使用しているため、金属アレルギーのある方には適していません。これに対し、オールセラミックはその名前のとおり100%セラミックで作られており、金属を含まないため、アレルギー反応のリスクは低くなります。
金属アレルギーの方が歯科材料を選ぶ際は、治療前にアレルギーの有無を歯科医師に伝え、適切な材料を選択するようにしましょう。オールセラックのなかでもジルコニアを使用したセラミックは耐久性がより高く奥歯にも適しており、見た目も美しいため、審美性と機能性を兼ね備えた理想的な選択肢となります。
ほかのオールセラミックも同様に耐久性と美観を備え、金属アレルギーのリスクがないとされています。コスト面との兼ね合いもありますが、将来的な口腔状態も加味したうえで、医師と相談して検討しましょう。
セラミック治療の保証
セラミック治療を受けた際、歯科医院では特定の保証が提供される場合があります。この保証は、一定期間内に発生したセラミックの不具合を無料または低価格で修正する内容が多いです。保証期間は、3年〜5年程度が多く、場合によっては10年までの長期保証を提供する医院もあります。
ただし、保証が適用されるのは、適切な使用と定期的なメンテナンスが行われている場合に限られます。歯科医院によっては、患者さんが定期検診を受けていない、あるいは保証書の紛失などがあると、保証が無効になることがあります。
また、事故や外傷、日常の歯のメンテナンス不足による損傷は、保証の対象外となる傾向が多いとされています。
セラミックが割れた場合、新品のセラミックに交換する可能性が高いですが、費用は歯科医院によって異なります。そのため、治療前には保証の有無や期間、適用される条件を詳しく確認することが重要です。保証がない場合、ほかの歯科医院での治療を検討することも一つの選択肢です。
まとめ
ここまで奥歯のセラミックは割れるかについてお伝えしてきました。奥歯のセラミックは割れるかの要点をまとめると以下のとおりです。
- 奥歯のセラミックが割れる原因は、歯ぎしりや食いしばり、メンテナンス不足、硬いものをよく食べることなどが挙げられる
- 奥歯のセラミックが割れたときは、決して自身で治療しようとせず、割れたセラミックを持参し速やかに歯科医院の受診が重要
- 奥歯におすすめのセラミックは患者さんによってそれぞれだが、金属アレルギーがある場合は注意が必要である
奥歯のクラウン選びにおいて重要なポイントを押さえ、より長持ちさせるために、割れる原因と対策法を理解することが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。