セラミックは陶材の一種で、透明感や色の再現性の高さから歯科治療にも用いられます。
歯の色は白ですが、一概に白といっても明度や彩度で配色が変わるため、色見本のシェードガイドを使うことが少なくないでしょう。
この記事では、セラミックの色の種類・各素材の違い・治療がやり直しになる条件・かかる費用を解説します。
セラミックの色の種類
セラミックとは陶器素材であり、水分の吸収がなく変色しにくい素材です。この素材で、むし歯や外傷で欠けた箇所を補う治療をセラミック治療と呼びます。
セラミックは透明感や色の再現性が高いため、審美性にこだわる方に知られている素材です。
セラミックは歯に用いられるため基本的に白色ですが、一概に白といっても明度と彩度によりさまざまな配色が存在するため見分けがつかないでしょう。
そこで、セラミック治療では色見本のシェードガイドで色合わせを行い、患者さんが納得する白色を選ぶのです。
シェードガイドは多くの製品がありますが、ドイツVITA社のクラシカルシェードガイドが広く知られています。
クラシカルシェードガイドは16色調のシェードガイドで、AからDのアルファベットで彩度を表し1から4の数字で明度を表現します。
基本的に、1に近い程明るく4に近い程色味が強くでるでしょう。
色調彩度はA系統・B系統・C系統・D系統がそれぞれ赤茶系・赤黄系・グレー系・赤グレー系と分類され、明度と組み合わせることでA1・A2・A3・A3.5・A4・B1・B2・B3・B4・C1・C2・C3・C4・D2・D3・D4の16種類の白色が用意されています。
患者さんの状況と照らし合わせてシェードガイドから歯科医師が色を選びますが、一般的に日本人の平均的な歯の色はA3もしくはA3.5といわれています。
セラミックの素材選びのポイント
セラミックの素材選びのポイントは以下です。
- 審美性の高さ
- 経年劣化に対する強さ
- 変色や着色をするかどうか
- 衝撃への強弱
- 素材の硬さ
素材の硬さセラミック素材には、オールセラミック・ハイブリッドセラミック・e-max(二ケイ酸リチウム)・ジルコニアセラミックなどの種類があり、それぞれ上記のポイントについて解説します。
オールセラミックは審美性が高く、ご自身の歯と遜色ない透明感と色艶を持っています。
ただし、ガラスのように衝撃に弱く、歯が欠ける恐れがあるため奥歯には不向きです。また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方も注意が必要となっています。
ハイブリッドセラミックはセラミックとプラスチックを合わせた素材です。
一方でレジンが混合されているため耐久性に劣り、表面がザラつくことで汚れの蓄積を促すでしょう。
経年劣化による変色がありますが、ほかの素材よりも安価であるため審美性にこだわらない方におすすめです。
e-max(二ケイ酸リチウム)はガラスセラミックスを強化した素材で、ほかの素材より透明感が高く審美性に優れている点が特徴です
オールセラミックよりも強度が高く審美性にも優れていますが同様に衝撃に弱い面があります。透明感が高いため、土台の変色が目立つことがあります。
ジルコニアセラミックは、ほかの素材よりも強度が高い点が特徴の素材です。
オールセラミックと同様に経年劣化による変色がなく汚れもつきづらく、金属以上の強度があり、奥歯の治療に用いられることも多いです。
セラミック治療で自然な色を選ぶためのポイント
一概に白といってもさまざまな配色が存在します。セラミックでは、自然な白色を選ぶためのポイントがいくつかあります。
この章では、セラミック素材の色を正しく選ぶための方法とヒントをご紹介します。
蛍光灯の下で色を確認する
色は、光の方向と量と質が一定ではないときに色が変化したように感じることがあります。
歯科医師からは、色の判断において光が重要な要素であること、蛍光灯や電球などの光源によって見え方が変わることを説明されます。
経年劣化の少ない材料を選択する
経年劣化しにくい材料には、オールセラミックやe-max、ジルコニアセラミックが挙げられます。どちらも着色しにくい特徴を持ちます。
ただし、オールセラミックはすべて陶器素材のセラミックを使用しているため衝撃に弱く、奥歯や歯ぎしりの癖がある方には推奨できません。
一方ジルコニアセラミックは強度が高い素材で奥歯や歯ぎしり癖がある方にも適した素材ですが、ジルコニアセラミックのみのものは、審美性でオールセラミックに劣ります。
歯科医師に判断を仰ぎ、適した素材を選びましょう。
技術力と経験のある歯科医院で治療する
歯科技工所は作製する方によって仕上がりが異なるため、歯科医院によってセラミックの良し悪しも変わります。 技術力の高い歯科技工所と連携している歯科医院を選びましょう。
ホワイトニング後の歯の色を考慮する
セラミックの色を真っ白くしたい場合は、それに合わせてホワイトニングが複数回必要となります。歯を削らずに過酸化水素による化学的な漂白をします。
過酸化水素は扱いに注意が必要なので、ホワイトニングは環境の整った場所で歯科医師の監視のもと行われるでしょう。その色に近い白色をシェードガイドから選びます。
ドイツVITA社のクラシカルシェードガイドを使用した日本人の平均的な歯の色はA3かA3.5なので、それよりも明るいA2やA1が候補となるでしょう。
専属歯科技工士に立ち会ってもらう
セラミックが必要になると、歯科医師は患者さんのお口の型を採取して歯科技工所に情報を送ります。送られた情報をもとに歯科技工士はCAD/CAMでセラミックを作製します。
基本的に外部の歯科技工所に依頼しますが、場合によっては院内に設置した技工室で専属の歯科技工士が作製する歯科医院もあるのです。
こうした歯科医院では歯科医師だけでなく歯科技工士が患者さんに立ち会うため、セラミックをスピーディに作製できるでしょう。
また、設備によってはセラミックの修復もその場でできるため、治療の幅が広がります。
色見本と比較して自然な色を選択する
歯は外側からエナメル質・象牙質・歯髄の3層構造でできており、それぞれの層の厚さや色で歯全体の色が決まります。つまり一概に白といっても、人によってその色はさまざまです。
もし白い歯を希望するのであれば、複数回のホワイトニングと同時にセラミック治療もできます。その場合、どの程度まで白くするのか歯科医院と綿密に話し合いましょう。
セラミック治療がやり直しになるケース
歯科医師に厳密に相談をしても、完成品に納得できないこともあるでしょう。そのため、歯科医院でやり直しとなる場合があります。
この章では、セラミック治療がやり直しになる理由について解説します。
周囲の天然歯と色が合っていない
歯科医師はシェードガイドを用いて周囲の歯に合う色を見つけ出します。しかし治療する前は納得していても、治療後に色が合わないケースもあるでしょう。
これには光の影響などが考えられますが、本当にセラミックが合っているかどうかは実生活でしかわからないため仕方がありません。そのため、歯科医院によっては治療後の保障があるため、相談してみましょう。
歯の大きさ・形状が合っていない
自然な透明感や立体感がないため、完成したセラミックがのっぺりすると患者さんが相談するケースがあります。解決するには、歯科技工士との連携が重要となるでしょう。
歯全体のバランスを見てグラデーションを作り、適切な素材を選びます。透明感を強く出せる素材はe-maxですが、土台の変色に強い影響を受けるでしょう。
経年劣化
セラミックは陶器素材であるため基本的には経年劣化しづらいですが、素材によっては劣化することもあります。セラミックのなかでも、ハイブリッドセラミックのようにレジンを混ぜた耐久性に劣る素材は、治療後に経年劣化に悩むことがあるでしょう。
また特定の素材に限らず、食いしばりや歯ぎしりの癖がある方は負荷をかけることで素材が割れたり欠けたりして、経年劣化を促進するでしょう。
歯茎の痩せに伴う見た目の悪化
セラミック治療後から時間が経過すると、加齢によって歯茎が痩せたり黒く変色する場合があります。セラミックと歯の境目が見えていることで審美性に影響を及ぼします。
セラミックの破損
セラミックのなかでも、オールセラミックやe-maxは審美性が高いですが、陶器素材であるため衝撃に弱いことが欠点です。そのため、過度な負荷をかけるとセラミックが欠けたり割れたりするでしょう。
また特定の素材に限らずとも強度には限度があるため、奥歯や歯ぎしり癖のある方が使用することでセラミックが破損することがあるため注意しましょう。
むし歯の再発
セラミックは汚れが蓄積して、ほかの歯との境目からむし歯になる恐れがあります。この場合は、ほかの素材に取り替える必要に迫られることがあります。
表面がざらつき汚れが蓄積しやすい場合は、通常の歯よりも汚れが溜まりむし歯になりやすくなるため注意しましょう。
セラミックの色が合っていない場合の改善法
セラミックの色が合わない問題を解決するためには作り直しが必要なため、歯科医院に相談するようにしましょう。
歯科医院はこのような悩みのために保証を用意しているケースがあります。治療後すぐに相談するなら追加費用は不要かもしれません。
このようにどうしても一度目の治療が合わないケースは出てきます。セラミックの形や質感だけでなく、色に満足できない患者さんもいらっしゃるでしょう。
もし歯科医院に相談する場合は、カウンセリングがある病院の受診をおすすめします。加えて、専属の歯科技工士がいる歯科医院だと希望がよりしっかりと伝わるでしょう。
セラミック治療のやり直しにかかる費用
作製されたセラミックに納得できない場合はやり直しになりますが、保証の有無によって値段が大きく変わります。
保証がある場合
治療終了5年未満は無料で再治療を請け負ってくれる医院もあります。
治療後10年以上経過すると保証はなくなることが一般的です。また症例や治療の条件によっては、保証の年数が短くなるケースもあるため参考程度に考えましょう。
加えて、定期的なメンテナンスを怠る場合も保証が受けられないため注意しましょう。
保証がない場合
保証期間が終了した場合やメンテナンスを怠った場合には保証がなくなることがあります。その場合は、治療費が再度全額かかることになるため注意しましょう。
一般的な価格はオールセラミックが100,000〜150,000円(税込)程度、ハイブリッドセラミックで50,000円(税込)程度が相場です。
まとめ
この記事ではセラミックの色の種類や素材の違い、さらにセラミック治療がやり直しになるケースを解説しました。
セラミックは陶材で、むし歯や外傷で欠けた歯に使う治療をセラミック治療といいます。透明感や歯の色の再現性が高いことから審美性にこだわる方に知られている素材です。
セラミックは白色ですが、一概に白といっても明度と彩度によってさまざまな配色が存在するため、シェードガイドと呼ばれる色見本で歯科医師と相談しながら決めるでしょう。
セラミック治療に満足できない場合はやり直しが可能ですが、治療後の経過年数に応じて保証割合が変わるため注意しましょう。
参考文献