セラミックは、歯の自然な色や質感を再現できる素材として歯科治療で用いられており、さまざまな種類があります。
本記事ではセラミックにはどのような種類があるのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- セラミックとはどのような歯科材料なのか
- セラミックの特徴
- 銀歯やレジンとの違い
セラミックにはどのような種類があるのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
歯科用セラミックの種類や違いについて
- セラミックとはどのような歯科材料ですか?
- セラミックは、金属とは異なる無機物を高温で焼き固めて作られた、硬くて摩耗しにくい歯科材料です。歯科で使われるセラミックはファインセラミックスと呼ばれ、陶器よりも硬さや透明度が高く、自然な見た目に仕上がります。主な原料には以下のようなものがあります。
- 長石系ガラスやニケイ酸リチウムガラス(e.max)
- 酸化ジルコニウム(ジルコニア)
- 酸化アルミニウム(アルミナ)
これらを単体または組み合わせて成形した歯科用セラミックは、クラウン(被せ物)やブリッジ、ラミネートベニアなど、見た目に配慮した治療に幅広く使用されています。
- セラミックの特徴を教えてください
- セラミックの特徴は以下のとおりです。
- 生体親和性が高い
セラミック(ファインセラミックス)は身体になじみやすく、人工関節や医療機器にも使われています。 - 自然な見た目
光を透過する性質があり、自然な歯の透明感や色合いを再現できます。周囲の歯と調和した美しい仕上がりが期待できます。 - 高い強度と耐久性
なかでも、ジルコニアセラミックは金属に匹敵する硬さを持ち、割れや欠けにくく、長期間の使用に耐えられます。
- 生体親和性が高い
- 歯科用セラミックにはどのような種類がありますか?
- 歯科治療で使用されるセラミックは、主に以下の4つに分類されます。
- オールセラミック
金属やプラスチックを使わず、セラミックで作られています。天然歯に近い透明感と自然な見た目が特徴で、前歯など目立つ部分の治療におすすめです。ただし、強い衝撃や長期間の歯ぎしりには割れる可能性があるため注意が必要です。 - ジルコニアセラミック
とても硬く耐久性があり、素材で、人工ダイヤモンドとも呼ばれます。噛む力が強い奥歯に推奨しており、金属アレルギーの心配も少ないとされています。一方で、透明感はやや劣るため、審美性を重視する場合はほかのセラミックと併用されます。 - ハイブリッドセラミック
セラミックとプラスチックを組み合わせた素材で、柔軟性があり噛み合わせの調整がしやすいとされています。保険適用される場合もあり、費用が抑えられます。ただし、長期間の使用で変色や強度低下が起こることがあるため、耐久性や審美性を重視するならほかの素材がおすすめです。 - メタルボンド
金属のフレームにセラミックを焼き付けた素材で、強度が高く奥歯の治療に推奨されています。見た目は美しいですが、金属アレルギーのリスクや、金属部分が見える可能性があります。
- オールセラミック
- どの歯科用セラミックがおすすめですか?
- 歯科用セラミックは種類によって特徴が異なるため、患者さんのご希望や治療の目的に合わせて選ぶことが大切です。
- 審美性を重視する方:オールセラミック
透明感が高く、天然歯に近い自然な仕上がりを再現できます。見た目を大切にしたい方や前歯の治療におすすめです。 - 費用と機能のバランスを重視する方:ハイブリッドセラミック
セラミックとプラスチックを組み合わせた素材で、適度な耐久性と柔軟性があります。保険適用となるケースもあり、費用を抑えたい方におすすめです。 - 強度を重視する奥歯の治療:メタルボンド
金属のフレームで補強された高強度な素材で、噛む力が強くかかる奥歯におすすめです。ただし、金属アレルギーのある方には不向きです。 - 金属アレルギーがある方・高い強度を求める方:ジルコニアセラミック
とても硬く、耐久性が高い素材です。金属を使わず、奥歯にも使用できるため、アレルギーが心配な方にもおすすめです。
- 審美性を重視する方:オールセラミック
セラミックとほかの素材との違い
- セラミックと銀歯の違いを教えてください
- セラミックと銀歯には、見た目や機能性、費用面でいくつか大きな違いがあります。
- 見た目の違い
セラミックは、天然歯に近い色や透明感があり、周囲の歯と自然に馴染みます。
銀歯は金属特有の光沢があり、笑ったときや話すときに目立ちやすい傾向があります。 - むし歯の再発リスク
セラミックは歯にしっかり接着され、隙間ができにくいため、むし歯の再発リスクが抑えられます。
銀歯は時間の経過とともに接着部分に隙間ができやすく、二次むし歯の原因になることがあります。 - 耐久性と破損リスク
銀歯は金属のため強度が高く、噛む力が強い奥歯に推奨されています。
セラミックは硬い素材ですが、強い衝撃で欠ける可能性があります。 - 金属アレルギーと歯茎への影響
セラミックは金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、歯茎が黒ずむリスクもありません。
銀歯は金属アレルギーや、歯茎の変色につながる可能性があります。 - 費用の違い
銀歯は保険適用で安価です。
セラミックの多くが自費診療となり、費用が高めです。
- 見た目の違い
- セラミックとレジンの違いを教えてください
- セラミックとレジンには、以下のような違いがあります。
- 耐久性の違い
レジンはプラスチック素材のためやわらかく、経年によって摩耗や欠けが起こりやすい傾向があります。
セラミックは硬くて丈夫で、長期間の使用でも変形や摩耗が起こりにくいとされています。 - 変色のしやすさ
レジンは使用とともに着色しやすく、時間が経つと見た目に影響が出ることがあります。
一方セラミックは変色に強く、美しさを長く保てます。 - 審美性(見た目)
セラミックは天然歯のような透明感や色合いを再現でき、見た目の自然です。
レジンは色調再現に限界があり、特に前歯のような目立つ部位では審美面でやや劣ります。 - 費用・保険適用
レジンは保険適用されることが多く、費用を抑えて治療できます。
セラミックは、自費診療となり費用は高くなりますが、その分耐久性と美しさも高いです。
- 耐久性の違い
- CAD/CAM冠はセラミックとどのように異なりますか?
- CAD/CAM冠は、セラミックとプラスチックを混ぜたハイブリッドレジンで作られており、金属を使わない白い被せ物です。強度は純粋なプラスチックより高いとされていますが、セラミックよりは耐久性や審美性はやや劣ります。一方、セラミックは天然歯に近い透明感と自然な色合いを再現でき、表面もなめらかで汚れがつきにくく、美しい状態を長く保てるのが特徴です。
費用面では、CAD/CAM冠は条件を満たすことで保険適用が可能となり、治療費を抑えたい方に推奨されています。セラミックは基本的に自費診療となるため費用は高くなりますが、見た目や耐久性が高いといえます。
セラミックを用いた治療について
- セラミックは具体的にどのような歯科治療に用いられますか?
- セラミックは、見た目の改善や機能回復を目的とした歯科治療で広く使われています。例えば、変色した歯を白く美しく整える際には、歯全体を覆うセラミッククラウンや、表面に薄く貼るラミネートベニアが用いられます。変色の範囲が広い場合はクラウン、部分的な変色や軽度の着色にはラミネートベニアが推奨されています。
また、むし歯や歯の欠損部の修復には、天然歯に近い見た目と耐久性を兼ね備えたセラミックインレー(詰め物)が使われます。
さらに、セラミック粒子を含む高品質なコンポジットレジンを使ったダイレクトボンディングという治療法もあり、歯を削る量を抑えつつ審美的な仕上がりが期待できます。
- セラミックとホワイトニングの違いは何ですか?
- セラミック治療とホワイトニングは、どちらも歯を白く美しく見せる方法ですが、施術方法や適応範囲に違いがあります。まず施術方法について、ホワイトニングは専用の薬剤を使って、歯の表面や内部の色素を分解し、歯本来の色を明るくする方法です。歯を削る必要はなく、歯科医院で行うオフィスホワイトニングや、自宅で行えるホームホワイトニングなどがあります。
一方、セラミック治療では、必要に応じて歯の表面を削り、セラミック製のクラウン(被せ物)やラミネートベニア(薄いシェル)を装着して、歯の色や形を覆って修正します。色調の改善だけでなく、歯の形や大きさの調整、欠損部分の補修にも対応できます。
適応範囲にも違いがあり、ホワイトニングは天然歯の軽度な黄ばみや着色に期待できますが、詰め物や被せ物がある歯には効果が期待できません。そのため、既存の補綴物がある場合や重度の変色にはあまり推奨できません。
一方の、セラミック治療は、補綴物がある歯や重度の変色に加え、歯の形の改善を希望する場合にもおすすめで、より幅広い症例に対応できます。
編集部まとめ
ここまでセラミックにはどのような種類があるのかについてお伝えしてきました。セラミックにはどのような種類があるのかについての要点をまとめると以下のとおりです。
- セラミックとは、金属とは異なる無機物を高温で焼き固めて作られており、硬くて摩耗しにくく、耐熱性や耐腐食性にもいい歯科材料のこと
- 歯科治療に使われるセラミック(ファインセラミックス)は、生体親和性が高いため、身体に馴染みやすいのが特徴
- セラミックは周囲の歯と調和した色味や透明感の実現が期待できる。一方、銀歯は光を反射しやすく、お口を開けた時に目立ちやすいのが特徴。また、レジンは色調の再現性に限界があり、セラミック程自然な美しさが期待できない
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。