セラミックの歯を被せたら、歯茎に痛みや黒ずみができたといった経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
セラミックは安全性が高い治療で歯茎への影響は少ないですが、治療法などによっては歯茎が炎症したり黒ずみが生じることもあります。
この記事では、セラミックによる歯茎のトラブルがなぜ起こるのかなどについて解説します。
セラミックが歯茎に与える影響
セラミック治療による歯や歯茎への影響は、原因によってタイプが異なります。
まず、よくあるケースは治療部位にずーんと響くような鈍い痛みが生じるもので、歯の治療によって組織がダメージを負うことで引き起こされます。これは、組織の回復とともに痛みが軽減していきます。
また、冷たいものなど、刺激があるものをお口に含んだときに、知覚過敏のような痛みがでるようになる場合もあります。これは、治療直後は神経が過敏になりやすいことから生じるもので、この場合も一定期間が経過すれば治まることが多いです。 一方で、セラミックによる治療後の噛み合わせが合っていないような場合には、噛んだときに歯茎に痛みを感じるような状態となり、治療後の時間経過に伴って痛みが強くなっていくこともあります。 ほかに、セラミック治療の土台に金属を使用することで歯茎が黒くなることがあります。詳細は、以下で詳しく解説します。
セラミックによる治療で歯茎が黒くなる原因と対策
セラミックを使用して治療を行った後の変化として、歯茎が黒くなるという状態が生じることがあります。なぜ歯茎が黒くなるのか、そして黒くなってしまった場合にはどのように対処するべきなのかについて解説します。
歯茎が黒くなる原因
セラミックを使用した治療で歯茎が黒くなる原因は、下記のようなものが考えられます。
土台に使用した金属のイオンによる変色
歯の神経を除去する根管治療を行ってから被せ物をする場合、しっかりと土台の強度を保つため、金属を使用する場合があります。
この場合、被せ物はセラミックで作っていても、土台に使用されている金属のイオンが時間経過とともに唾液中に溶けだしてしまい、金属イオンが歯茎を黒く変色させてしまう可能性があります。
被せ物に金属を使用しているケース
土台ではなく、そもそも被せ物に金属を使用している場合も、やはり金属イオンが溶けだして、歯茎を黒く変色させてしまう可能性があります。
セラミックを使用した被せ物のなかでは、メタルボンドと呼ばれるものなどがこれに該当します。
変色している歯が見える
治療後に歯茎が変色してしまったというケースではなく、歯肉退縮などによって、変色していた歯の根っこが見えてくるという場合でも、歯茎が変色したように見えることがあります。
歯の根っこが直接見えていなくても、歯茎が薄くなることで、変色している歯が透けて見えてしまい、これによって歯茎が黒くなったように感じます。
もともと歯茎が黒ずんでいた
セラミックによる治療を行った直後から歯茎が黒ずんだように感じる場合は、実はもともと歯茎が黒ずんでいたという可能性があります。
歯茎そのものの色は変わらなくても、セラミックによる治療で上に被せる歯が白くなることで、元々の歯茎の色とのコントラストが強くなり、歯茎が黒ずんで見えやすくなるというものです。
装着の際に歯茎を傷つけた
セラミックの歯を装着してから数日後に歯茎や歯が黒ずんできたと感じる場合は、治療の際に出血があり、歯肉に傷がついて一時的な変色が起こっていることも考えられます。
歯茎が黒くなった時の対処方法
セラミックによる治療を行った後で歯茎が黒くなってしまった場合は、原因を改善する必要があります。 変色した歯の根っこが見えることで黒く見える場合は、根っこの漂白をして着色を除去するなどの方法で黒ずみを改善することが可能です。 対処法は黒ずみの原因によって異なるため、歯科医師の診療を受けて、黒ずみが発生してしまった原因に応じた対策を行うことが大切です。 また、根っこの漂白を行うためにはせっかく作ったセラミックの歯を壊して再治療になる可能性が高いため、再治療まで行うかどうかはよく検討した方がよいでしょう。
レーザー治療で黒ずみを取り除くことも可能
金属イオンなどによって歯茎が黒ずんでしまった場合や、そもそも歯茎が黒ずんでいた場合は、レーザー治療を利用することで、歯茎の黒ずみの軽減が期待できます。
レーザーの光で歯茎の着色の原因であるメラニンを除去することで、歯茎を健康的なピンク色に変えていくことが可能です。
ガムピーリングなどと呼ばれ、歯科用のレーザーを導入している歯科医院で提供されていている場合がありますので、気になる方は治療を受けてみるとよいでしょう。
セラミック治療で歯茎が黒くならないための予防法
セラミック治療で歯茎が黒くなってしまうことを防ぐためには、金属製の材料を使用しないで治療を受けるようにしましょう。金属製のパーツが使用されていると、溶けだした金属イオンによって歯茎が変色してしまう可能性があります。
ただし、金属を使用してもしなくても、自由診療であればそれほど費用差は生じません。金属製のパーツが使用されていると、溶けだした金属イオンによって歯茎が変色してしまう可能性があります。古い保険治療のメタルコアが残ったまま被せ物だけを交換したりすれば、変色のリスクは高まりますので、よく相談してから治療を進めましょう。
また、治療部位の出血などを防ぐことも大切なので、歯茎の出血を引き起こしやすい歯周病は、セラミック治療を受ける前にしっかり治しておきましょう。
セラミック治療で歯茎が腫れたり下がったりする?
歯茎のトラブルには、歯茎の黒ずみだけではなく、歯茎が腫れたり、歯肉退縮を起こして歯茎が下がってしまうという場合もあります。
歯茎が腫れたり下がったりする原因
セラミック治療によって歯茎が腫れたり下がったりするのは、以下が考えられます。
被せ物の高さが合わず炎症が起きている
セラミックの被せ物による治療を行う際、被せ物のサイズが大きすぎるなどで噛んだ際に歯茎に刺激が加わるような状態になっていると、その刺激が原因で歯茎に炎症が起き、腫れや痛みにつながる可能性があります。
逆に、被せ物が小さすぎると歯茎とセラミックの歯の間に隙間ができてしまい、ここに付着した汚れが原因で炎症が生じる場合があります。
噛み合わせが合っていない
セラミック治療後の噛み合わせが合っていない場合、噛んだときに歯茎へ強い負担がかかりやすくなるなどして、この刺激が原因で歯茎の腫れや痛みが生じる場合があります。
特に、食いしばりや歯ぎしりといった癖がある方は、歯や歯茎に負荷がかかりやすいといえます。
むし歯の再発
根管治療や、むし歯を削る治療が十分ではなく、歯に細菌の感染が残ってしまっていた場合は、セラミックの治療が終わった後に少しずつむし歯が進行していき、歯茎の腫れや痛みとなって再発してしまう可能性があります。
セラミック治療を行った歯の内側でむし歯が再発してしまうと、表面から症状を確認できないため、気がついたら症状が進行していることもあるでしょう。
また、根管治療で歯の神経を除去している場合は歯の痛みを感じないため、症状に気が付くのが遅れ、歯茎に膿がたまりはじめてから強い痛みとともにむし歯の再発に気が付くということも考えられます。
歯茎が腫れたり下がったりした時の対処方法
セラミック治療を行った歯の歯茎に腫れがでたり、歯茎が下がったりしてしまっている場合は、なるべく早く歯科医院を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。
セラミックの内部でむし歯が再発してしまっている場合、治療を受けるのが遅くなるほど、症状が悪化して治療が大変になってしまう可能性があります。
また、むし歯の再発などが起こっているわけではなくても、歯茎に腫れなどが生じているということは歯周組織に負担がかかりやすくなっているということです。
そのまま放置していても症状は改善しないばかりか、状態が悪化して腫れや痛みが強くなる可能性が高いので、なるべく早めに歯科医院で適切な対応を受けることが大切です。
歯茎のトラブルを起こさないために
セラミックによる治療で歯茎のトラブルを起こさないためには、下記のようなポイントに気を付けましょう。
じっくり相談できる歯科医院を選ぶ
歯茎の黒ずみや腫れといったトラブルを起こさないようにセラミックの治療を受けるためには、自分自身の歯の状態や目的にあった治療が受けられ、万が一トラブルが生じた際もすぐに相談できる歯科医院を選ぶようにしましょう。
歯科用CTなどの検査設備が揃った歯科医院で治療を受ける
精度が高く、しっかりと安全性に配慮された治療を受けるためには、検査設備が充実していることも大切です。
口腔内の状態を立体的に撮影できる歯科用CTが導入されている歯科医院などであれば、より詳しい検査を行ったうえで適切な治療を受けやすいといえるでしょう。
歯科用CTだけではなく、細かい部分までしっかりと確認しながら治療を行うためのマイクロスコープを使用しながらむし歯治療やセラミックの治療を行っているなど、精度の高い治療を提供している歯科医院で治療を受けると、トラブルの少ない治療が期待しやすいといえます。
治療後のメンテナンスもしっかり受ける
歯を良好な状態に保つためには、トラブルが進行してから対応するのではなく、トラブルが発生する前や、早めの段階で適切な対応を行うことが重要です。
セラミックの治療を受けた後も、定期的に歯科医院を受診して、きちんとメンテナンスを受け続けるようにしていれば、歯茎の黒ずみや腫れなどにも素早く気が付きやすく、状態が悪化する前に対応できる可能性が高まります。
定期的なメンテナンスは、治療を行った歯を良好に保つだけではなく、口腔内の健康を全体的に維持することにもつながります。
歯磨きなどのセルフケアをしっかり行う
セラミックによって治療を行った歯は、汚れが付着しにくく、変色などが起こりにくいというメリットがあります。だからといって歯磨きなどのセルフケアを行わないでよいというものではなく、歯や歯茎の健康を維持するためには、きちんとしたセルフケアで口腔内を清潔に保つことが大切です。
歯磨きをする際には、歯ブラシで歯の表面を掃除するだけではなく、歯と歯茎の間などの汚れが蓄積しやすい場所をきちんと清掃するように心がけましょう。
歯の汚れは歯間などに残りやすいので、フロスや歯間ブラシなども使用して、隅々まで汚れを除去していくことが重要です。
きちんと歯磨きができているかどうかがわからない場合は、歯科医院での歯磨き指導を受けると自分自身のお口の状態にあった歯磨き方法を、専門的な知識を持った歯科衛生士などから教えてもらうことができるので、積極的に利用してみるとよいでしょう。
まとめ
セラミック治療に限らず、歯科治療後は歯茎が黒ずむことや歯茎が腫れて痛むことがあります。 歯茎の黒ずみは、治療に利用される金属製パーツのイオンが溶けだしたり、歯茎からの出血が原因で発生する可能性があります。
歯茎の腫れは、セラミックの歯によって歯茎が刺激を受けることや、むし歯の再発などが原因として考えられます。 いずれの場合も、大きなトラブルに進展する前に歯科医院へ相談することが大切です。
歯茎の黒ずみや腫れなどのトラブルをできるだけ避けるためには、じっくり相談できる歯科医院を選び、自分の口腔内の状態に合った治療を受けるようにしましょう。
参考文献