歯科医院での治療において積極的に取り入れられている手法のひとつが、セラミックを用いた治療です。
保険内の診察から自費診療まで幅広く対応しているセラミックは自然な白色で、お口のなかでしっかりと馴染み、治療箇所が目立ちにくくなる点がメリットです。
ただし、扱い方によってはセラミックの寿命が縮んで天然の歯にまで影響が及ぶ危険もあります。
歯を長持ちさせるには、歯科医院での定期メンテナンスや毎日のホームケアを疎かにできません。
本記事ではセラミック治療の安全性、素材やメリット・デメリットを解説します。
セラミック治療の安全性は?
- セラミック治療の安全性について教えてください。
- セラミックの安全性の確保には素材の選び方・治療の流れ・アフターケアなどさまざまな要素が重要です。セラミックは圧縮強度に優れ、咬合圧への耐久性があります。強い力がかかる奥歯でも機能して表面が滑らかで、汚れが付きにくく衛生面にも優れているのが利点です。日常生活での破損リスクも低く、安全性が高いといわれています。
治療中は痛みの管理と安全対策が徹底されており、不安なく治療を受けられるでしょう。自家骨に近い機能を持つ材料として、低結晶性ハイドロキシアパタイトとⅠ型コラーゲンとのナノ複合体が開発されました。操作性や弾力性に優れ複雑な形状の骨欠損部に対応でき、手術現場での加工も容易です。
リン酸八カルシウムとコラーゲンの複合体も、歯科口腔外科領域で優れた骨再生能が認められ治験が開始されています。すでに臨床現場でも使用され、有効性と安全性で評価を得ているといえるでしょう。
- セラミック治療では歯を削りますか?
- 治療内容によって削る量は異なりますが、セラミック治療では歯を削ることがあります。正確には、セラミック治療の前にむし歯の治療を行い、むし歯部分を削って準備を行います。
前歯のセラミック治療の1つが、ラミネートベニア修復です。ラミネートベニア修復は、歯の表面を削ってネイルチップのようにセラミックを貼り付ける治療法です。
- 将来問題が出てくることはありませんか?
- 将来問題が生じるかどうかは、適切なケアをしているかや歯ぎしり・食いしばりの癖の有無で変わってくるでしょう。セラミックの歯の寿命は10~15年程度といわれています。原因は噛み合わせが悪い・磨き残しがある・歯ぎしりや食いしばりの癖があるなどです。
メンテナンスを怠るとむし歯や歯周病・セラミックの破損・周囲の歯や顎関節に影響を与えるなどのリスクが生じます。定期メンテナンスや歯科医師による指導点を意識して、歯磨き・就寝時装着のナイトガード(マウスピース)を使用しましょう。適切なケアを行うことで、セラミックの歯を長持ちさせられるでしょう。
- セラミック治療で使用される素材の安全性を教えてください。
- 使用されるセラミック素材は厳しい品質基準と認証をクリアし、安全性の高さが保証されています。生体適合性が高くアレルギーのリスクが低いとされています。
例えば、オールセラミックはセラミックのみで作られた素材です。保険治療での補綴物と比較するとコストがかかりますが、長期的に見た機能性や耐久性を兼ね備えており、コストパフォーマンスの高い素材です。前歯のような目立ちやすいところにはオールセラミック、奥歯には強度のより高いジルコニアがおすすめです。
また、内側が金属で、外側がセラミックのメタルボンドも挙げられます。金属は強度が高いため、奥歯の使用に向いています。
セラミック治療の種類や使用される素材
- セラミック治療とはどのような治療ですか?
- セラミック治療は、むし歯治療後の詰め物や被せ物の材質に、銀歯や入れ歯を使用せず、セラミックという素材を使用する治療です。セラミック治療のなかには、銀歯からセラミックに変える審美治療もあります。審美目的の治療は保険適用外となるため、費用が高額になることに注意しましょう。ご自身が満足できるよう担当の歯科医師とよく相談してください。
セラミック治療の魅力は天然の歯に近い自然な美しさにあり、患者さんが素材を選べる点もおすすめです。前歯など見た目のコンプレックスの解消が患者さんを笑顔にし、心をも美しく前向きに変えてしまう例は少なくありません。
以下では治療の種類や使用される素材を紹介しましょう。一つひとつの特徴を知り、納得できる素材をご自身で選ぶことがポイントです。治療を検討されている方は参考にしてみてください。
- セラミック治療の種類を教えてください。
- セラミック治療の種類は以下のとおりです。
- クラウン(被せる・被せ物)
- インレー(詰める・詰め物)
- ラミネートベニア(貼る・貼り付ける)
- ダイレクトボンディング(充填する)
- ファイバーコア(土台を立てる)
クラウン・インレー・ラミネートベニアは、セラミック使用です。ダイレクトボンディングは、セラミック粒子配合の高品質なコンポジットレジンを使用しています。ファイバーコアは、グラスファイバーとレジンによるものです。
- セラミック治療で使用される素材にはどのようなものがありますか?
- セラミック治療で使用される素材はさまざまであり、患者さんの噛み合せや口腔状況、希望でどの素材を使うか決めます。使用素材は以下のとおりです。
- メタルボンド
- ハイブリッドセラミック
- ジルコニアセラミック
- ジルコニア
- e-max
- ラミネートベニア
メタルボンドは内側が金属で外側がセラミック、ハイブリッドセラミックはレジンとセラミックの混合物、ジルコニアセラミックは天然歯のような色と強度となります。ジルコニアは天然ダイヤモンドに次ぐ硬度、e-maxは世界で先進的なセラミック材料、ラミネートベニアはネイルのように歯の見た目を改善する素材です。
- それぞれの素材の特徴を教えてください。
- メタルボンドは強度がオールセラミックより強く審美性に優れます。ハイブリッドセラミックはセラミックの硬さと樹脂の粘り強さを併せ持つ素材です。ジルコニアセラミックはジルコニアが強度を補強し、通常のセラミックより強固なものになります。ジルコニアは軽くお口への負担が軽減され、鉄などの金属より硬く幅広い症例に対応できる素材です。
e-maxは高い強度と均一性を持つ審美性の高いガラスセラミックスとなります。ラミネートベニアは歯の表面を0.3~0.5mm程度削り歯の色の薄い板を貼り付け、審美性を改善できるのが特徴です
セラミック治療のメリット・デメリット
- セラミック治療のメリットを教えてください。
- 患者さんの意識と歯科医師の技術、相互理解で理想の治療が成立するといっても過言ではないでしょう。治療のメリットだけでなくデメリットも理解したうえで、患者さんにとってよりよい治療を選んでいただきたいです。治療を受けるか悩んでいる方は参考にしてください。
セラミック治療で後悔しないために大事なポイントを説明しましょう。メリットは以下のとおりです。- 天然歯とほぼ変わらない
- 汚れが付きにくい
- むし歯や歯周病になりにくい
- 金属アレルギーや歯茎の黒ずみの心配がない
口元の美しさは心の健康に影響を与えます。毎日のホームケアと定期メンテナンスも欠かせません。銀歯や歯科用プラスチックと比べ、歯垢が付きにくいです。金属は唾液に長くさらされると溶け出しアレルギーを引き起こしますが、その心配もありません。
- セラミック治療のデメリットを教えてください。
- デメリットは以下のとおりです。
- 割れることがある
- 歯を削る量が多い
- 自費診療のため費用が高額
- 長く使用すると歯の色が違って見える
硬いものにぶつけたり歯ぎしりなどダメージの蓄積に注意してください。歯を削る量が多いのはセラミックの弱点の割れやすさを補うため、修復物にある程度の厚みが必要だからです。保険診療の銀歯より費用の負担が大きく、よく考えることをおすすめします。
治療時は周りの歯の色と合わせますが、長く使用すると歯の色が違って見えるでしょう。調整可能ですがまったく同じ白さにするのは難しいです。
編集部まとめ
歯科治療の領域でも使用されているセラミック治療の安全性に言及しました。
メリット・デメリットはありますが優れた素材だとおわかりいただけたでしょう。
歯科医療は日々進歩しています。治療法や素材を患者さんが選択できる時代になりました。治療の主役は患者さんです。
自分に自信が持てるようになった患者さんの明るい笑顔は、歯科医師とスタッフの方々の励みとなるでしょう。
そのような患者さんが一人でも多く増えることを願っています。本記事がセラミック治療でお悩みの方の一助となれば幸いです。
参考文献