歯科医院で行われる入れ歯やブリッジ、インプラント、差し歯といった治療での人工歯を作る材料として、耐久性があり審美性にも優れていることから推奨されることも多いセラミックですが、長持ちするとは聞くものの、実際どの程度の期間利用が可能なのかと疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
この記事では、セラミックの歯が実際にどのくらいの寿命となるのかなどについて、詳しくご紹介いたします。
セラミックの歯の寿命について
- セラミックの歯は一生もつのですか?
- セラミックの材質はとても硬く、強い力をかけても簡単に壊れることがないため、入れ歯や差し歯といった治療でよく利用されます。
しかし、耐久性に優れているとはいっても完全に劣化しないというものではありませんので、セラミックで治療をしたら、一生維持ができるかというとそうとはいえません。
やはり日々使用されるなかで徐々にダメージが蓄積されて劣化する可能性はありますし、また、セラミックの歯自体の寿命は残っていたとしても、加齢によって歯茎が下がったり、顎関節の骨が減少するなど口腔環境が変化すれば同じ歯を一生使い続けることができなくなります。
- セラミックの歯の平均寿命はどのくらいですか?
- セラミックの歯が治療からどの程度の寿命かについては、はっきりとそれを示すデータがありません。
しかし、実際に治療を行っている歯科医院での情報によれば、セラミックの歯は適切にケアが行われていれば10年以上は持つと考えられています。
保健診療で利用されることの多い銀歯の場合、その寿命は2~5年程度といわれていますので、これを比較するとセラミックの歯の寿命がとても長いことがわかります。
ただし、上述のとおり、セラミックの歯そのものは劣化していなくても、歯を支える組織が弱くなったり、口腔内環境の変化によって入れ歯やブリッジといったセラミックの歯を変更しなくてはいけないケースなどがあるため、場合によっては10年などの期間を待たず、使用ができなくなってしまう場合もあります。
- セラミックの種類によって寿命は異なりますか?
- 歯科治療で用いられるセラミックには、さまざまな種類があります。
まずはポーセレンやイーマックスといったものに代表されるスタンダードなセラミックで、歯の自然な透明感に近いものが作れるため、審美性を重視した治療で用いられます。
ただし、セラミック素材のなかでは割れやすい分類となるため、奥歯のように強い力がかかる部分の歯としては不向きで、審美性が重要であり、かつ強い力がかかりにくい前歯をオールセラミックで作る場合などに適しています。
割れやすいとはいっても耐久性は昔よりも向上しているため、きちんとケアすれば長い期間使うことができます。歯の耐久性を向上するためのものとして、歯にかぶせる軸の部分を金属で作り、その上にセラミックを焼き付けるメタルボンドという種類がありますが、こちらは金属が使われているため、オールセラミックよりも耐久性は強く、より長く使いやすい歯といえます。
しかしながら、内側が金属であるため自然な透明感が出にくい点や、金属部分が変形や変色をしてしまうなど、劣化によって使えなくなってしまう場合があるため、適切にケアが行なえないと上述のオールセラミックよりも寿命が短くなる可能性もあります。耐久性が高いセラミックではジルコニアという人工ダイヤモンドを使用したものがあり、ダイヤモンドは世界一硬い物質と言われているとおり、耐久性が強く、奥歯のような強い力がかかりやすい部位の治療にも適しています。 なお、ジルコニアの歯はその耐久性から寿命が特に長持ちさせられるといえますが、歯の透明感などはスタンダードなセラミックに劣るため、前歯の治療にはあまり使われず奥歯での治療で利用されることが一般的です。 また、世界一硬いとも言われるダイヤモンドと同じ性質のジルコニアは、硬すぎる側面もあり、噛み合わせの歯が摩耗してしまうといったトラブルから作り直しなどが必要になるケースもあります。
また、最近はセラミックとレジンの混合物であるハイブリットセラミックを使用した症例も増えています。
ハイブリッドセラミックはレジンとセラミックの中間であるため、レジンよりも長持ちしやすく、審美性が高いといったメリットが得られる素材です。 スタンダードなセラミックと比べると耐久性や審美性がやや劣るものとなりますが、ハイブリッドセラミックは保険適用のブロックを使用したキャドキャム冠であれば、保険適用で安価に作ることができるという点が治療でのメリットとなっていて、高額で手が出しにくいセラミックによる歯科治療の難点を解消できる可能性があります。
セラミック歯の交換目安について
- どのようなときにセラミック歯の交換をするべきでしょうか?
- セラミックの歯を使用している部分で痛みや違和感が生じるようであれば、歯の調整や作り直しなどが必要になる可能性があります。
歯の交換が必要かどうかは口腔内の状態をしっかり診査する必要がありますので、まずは治療を受けている歯科医院で相談してみましょう。
- 寿命がきているセラミック歯の交換をしないとどうなりますか?
- セラミックの歯が損傷してしまっていたり、噛み合わせとして合わなくなってしまっている状態を放置していると、損傷している部分にプラークなどが蓄積され、さらにそこで細菌が増殖して酸などを作り出すことで、むし歯や歯周病といったトラブルが進行していく可能性があります。
場合によっては目に見えない部分で症状が進行してしまい、気が付いたときには深刻な状態になってしまうということも考えられます。
また、セラミック歯の変形や口腔内の変化によって噛み合わせに合わない歯を使い続けると、周囲の歯への負担となって噛み合わせがさらに悪化していく要因となる場合もあります。
何かしらの異常を感じた場合は早めに歯科医院で相談するようにしましょう。
- セラミック歯の寿命が短くなることはありますか?
- セラミックの歯は日常での使われ方や、ケア方法によって寿命が短くなる可能性があります。
適切にケアを行なえば10年以上維持が可能といわれていますが、しっかりとケアがされていなければ数年間で寿命を迎えてしまう可能性もありますので、治療後に適切なケアを行うことが大切です。
セラミックの歯を長持ちさせる方法について
- セラミック歯の寿命を縮めてしまう要因はなんでしょうか?
- セラミックの歯は外部からの力に強く、酸などの影響も受けにくい性質を持ちますが、やはり硬いものをよく噛むなど強い負担となる行為が繰り返されれば、寿命が短くなる可能性があります。
寝ている間の歯ぎしりや食いしばりといったクセがある場合、奥歯にはとても強い力がかかるため、これもセラミックの歯の寿命を縮める要因となるでしょう。
また、日頃のケアが不十分な場合は歯垢や歯石がたまって歯の形などが変わり、結果としてセラミックの歯を使い続けられない状態となる可能性が考えられます。
- セラミック歯を長持ちさせる方法はありますか?
- セラミックの歯を長持ちさせるためには、やはり歯磨きなど日頃のケアを適切に行うことと、歯科医院での診察および専門的なケアを定期的に受診することが大切です。
セラミックの歯そのものがむし歯になるようなことはありませんが、土台となる歯や歯茎などは適切なケアが行われないとむし歯になったり、歯周病が進行してしまったりするので、適切なケアで口腔内環境を清潔に維持できるようにしましょう。
- 歯科医院でセラミック歯の寿命を伸ばすことはできますか?
- ブリッジや差し歯、インプラントといった治療でセラミックを使用している場合、専門的な歯のクリーニングによる口腔内環境の改善や、噛み合わせ改善のための治療などを行うことで、セラミックの寿命をより長持ちさせることができるでしょう。
また、歯ぎしりや食いしばりなどのくせがある場合は歯科医院の治療で改善させていくこともできるので、これによってセラミックの歯への負担を軽減して長持ちさせることができます。
編集部まとめ
セラミック素材はとても耐久性が高いため、適切にケアを行なえば10年以上など長期間に渡って維持することができます。
しかし、強い力がかかり続ければ劣化や損傷する可能性は高まりますし、しっかりと口腔環境のケアができていなければ、セラミックの歯に問題はなくても、噛み合わせなどが悪くなって交換や調整が必要になる場合もあります。
お口に合わない歯を使い続けると、余計なトラブルにつながってしまう可能性もありますので、何かしら異常を感じたらすぐに歯科医院に相談するようにしましょう。
参考文献