むし歯の治療と聞くと、歯を削って銀歯を詰める、あるいは銀歯を被せるというイメージを持つ方が少なくないでしょう。
しかし、近年は銀歯にしないむし歯治療が積極的に行われるようになってきました。それがセラミック治療です。
今回は歯のセラミック治療、およびセラミック治療したときにその費用を医療費控除できるのか解説します。医療費控除は節税につながる重要な制度ですので、ぜひこの機会に覚えてください。
歯のセラミック治療の種類やメリット・デメリット
- 歯のセラミック治療はどのような治療ですか?
- 歯のセラミック治療とは、むし歯や事故などで歯が欠けた場合、通常使われる銀歯ではなく、美しく丈夫で歯のほかの部分と色合いが似ているセラミックを使う治療法です。
銀歯の場合、歯の治療をしているとわかりますが、セラミック治療の場合は、素材が歯の色と似ているため、治療していると一見してわかりません。セラミック治療は審美治療の1つであり美しい歯の外見を維持したまま歯の治療ができます。
審美治療ですが、むし歯などの治療として行うものであることも忘れないでください。
- 歯のセラミック治療の種類を教えてください。
- 歯のセラミック治療にはラミネートベニヤ・メタルボンドクラウン・オールセラミッククラウンの3種類の治療方法があります。ラミネートベニヤは歯の表面を削り、付け爪のようにセラミックを貼り付けます。むし歯が浅い場合などに用いられます。
メタルボンドクラウンは歯全体を削り、その上から金属にセラミックをコーティングして作ったクラウンを被せる治療方法です。金属が軸になるため強度に優れます。
オールセラミッククラウンはその名前のとおりすべてセラミック素材のクラウンです。完全に元の歯と同化できる色合いで、透明性が高く審美性に優れています。
- メリットを教えてください。
- 歯のセラミック治療はなんといっても審美性に優れ、きれいな歯を作れることがメリットです。元の歯と見間違えるくらい白い歯にできます。白いきれいな歯を作れるので、むし歯がない人も、完全審美目的で行うこともあります。
- デメリットを教えてください。
- セラミック治療にはそれぞれにデメリットがあります。ラミネートベニヤは貼り付けたところが外れたり、割れたりすることがあります。
メタルボンドクラウンは金属を使用しているため、使っているうちに黒ずんだり色調がやや暗くなったりするのがデメリットです。金属が含まれているため、金属アレルギーの人は使えないのもデメリットです。
オールセラミッククラウンは金属による補強がないので、衝撃によって割れてしまう可能性があります。
どのセラミック治療にも共通するデメリットとしては、原則自費診療になるため、費用が高くなることがあげられます。通常の保険診療(銀歯)の場合、数千円で済む治療もセラミック治療を行うとその10倍以上かかってしまうこともあり、費用対効果をしっかり計算することが大切です。
歯のセラミック治療は医療費控除の対象?
- 歯のセラミック治療の費用相場はどのくらいですか?
- セラミック治療の種類によって異なりますが、クラウンを用いるセラミック治療(オールセラミッククラウン・メタルボンドクラウン)は1本につき80,000~150,000円(税込)程度、ラミネートベニヤの場合は1本あたり50,000~100,000円(税込)が一般的な相場です。歯全体ではなく歯1本の値段が数万円〜100,000円(税込)かかります。
- 保険は適用されますか?
- セラミック治療は原則自費診療で保険は適用されません。治療にかかった費用については全額自己負担になります。自費診療のため、診療報酬など統一的な価格ではなく、歯科医院の設定した価格になります。
しかし、平成26年から小臼歯に対するハイブリッドセラミッククラウンなどごく一部のセラミック治療には保険適用できるようになりました。それでも1本あたり10,000円(税込)前後が相場であり、また保険適用外のセラミック治療に比べると色調が劣ります。
銀歯と通常のセラミック治療の中間的なイメージです。
- 歯のセラミック治療は医療費控除の対象になりますか?
- 保険適用はできませんが、自費で支払ったものについて治療していれば医療費控除の対象になります。しかし、国税庁の通達にもあるように、著しく高いセラミック治療は医療費控除の対象とならない可能性があります。
上記の相場ならば医療費控除の対象になりますが、1本数十万円〜1000,000円(税込)するセラミック治療は医療費控除の対象にはならない可能性が高いでしょう。
また医療費控除は治療に対するものですので、むし歯もなく完全審美目的で行うセラミック治療は医療費控除の対象外になります。
医療費控除の手続きや注意点
- 歯のセラミック治療の医療費控除の手続き方法を教えてください。
- 医療費控除は確定申告で行います。年末調整では医療費控除はできませんので注意してください。
会社員の方は年末調整後、受け取ったその年の源泉徴収票をもとに翌年2月中旬〜3月中旬に確定申告をして医療費控除を受けます。自営業の方は事業所得などの確定申告と合わせて医療費控除を行います。
ふるさと納税を行っている人は、ふるさと納税の寄附金控除と同時に行うことになりますが、控除の項目が違うので注意しましょう。
- 医療費控除の計算方法を教えてください。
- その年(1月1日〜12月31日)に支払った全医療費(病院での診察・診療代・薬代・交通費など)を合算します。セラミック治療の医療費だけではなく、内科や外科などの医療費、薬局で購入した市販薬の費用も合計してください。
その医療費合計額-100,000円(税込)が医療費控除額になります。なお、所得(課税所得)が2000,000円(税込)未満の場合は医療費合計額-(合計×5%)が医療費控除額になります。医療費控除額の上限は2000,000円(税込)です。
歯科医院への交通費も医療費として計上できるため交通費も含めてください。ただし、電車やバスなど公共交通機関の使用が原則です。
高熱で動けない、事故で骨折した可能性があり歩けない、急病で一刻も早く病院へ行かなければならないなど、合理的な理由があればタクシー代も医療費控除の経費にできます。しかし、歯のセラミック治療についてはそこまでの緊急性は認められない可能性が高いです。
- 歯のセラミック治療の医療費控除の注意点を教えてください。
- 医療費控除の申請(還付申告)は5年間遡れますが、その年にかかった費用が対象になります。2021年500,000円(税込)、2022年450,000円(税込)、2023年400,000円(税込)セラミック治療でかかっても、それぞれの年の確定申告で医療費控除を行います。
合算して1350,000円(税込)分を2023年分から医療費控除できるわけではありません。繰り返しになりますが、医療費控除が適用されるのは治療に関わる部分、かつ適当とみられるセラミックを使ったものの場合です。
むし歯やけがもなく、完全審美目的の場合や、1本数十万円かかる超高級セラミックを使ったものは医療費控除の対象外になります。なんでも医療費控除が適用されるわけではないので、その点はご注意ください。
編集部まとめ
歯のセラミック治療は、治療と審美治療の中間的な位置づけになります。銀歯できれいに仕上がらない、歯が汚く見えてしまうのが嫌な場合は、ぜひ歯のセラミック治療を検討してください。
完全な審美目的ではなく治療であれば、保険適用ができなくても医療費控除が適用されます。医療費控除が適用されることで、多少なりとも所得税や住民税が減り、節税になります。
節税目的で歯のセラミック治療を行うのではなく、美しい歯を実現し、かつ税金も少し減らせる制度があると思うと特に感じるかもしれません。医療費控除を賢く利用して、素敵できれいな白い歯を実現させてください。
参考文献