セラミック治療とは、歯の治療においてセラミックで作られた被せ物や詰め物を使用するという治療法です。
従来の銀歯やプラスチックでの詰め物や被せ物とは異なり、色合いが自然なことや金属アレルギーの人でも使用できるという特徴があります。
一方、セラミック治療で痛みを感じることもあるでしょう。セラミック治療の流れやメリット・デメリット、痛みの原因について解説します。
セラミック治療の流れ
セラミック治療は、歯を切削・仮歯の作製・装着・型取り・セラミックの作製と装着という流れで行われます。
治療期間中は仮歯を装着し、日常生活に支障がないかを確認します。実際にセラミックを装着した際のトラブルを回避するために欠かせない工程です。
仮歯の使用に問題がなければ歯型を採取し、セラミックの形や色を確認し決定します。これらの情報から歯科技工士がセラミックの作製を行います。
セラミックの完成後、実際に接着装着して見た目および噛み合わせに問題がないかを確認し、セメントで合着すれば治療は完了です。
どの治療を選択しても、数ヵ月に一回の定期的なメンテナンスが必要です。大まかな治療の流れは同様であるものの、むし歯や歯周病の治療やセラミック治療の箇所、形や色の要望などによって異なる施術が行われます。
セラミック治療では、神経の治療や、広い範囲の歯を削る必要があるなどのリスクが存在します。削った歯はもとに戻すことはできないため、治療の流れを理解することや医師との相談が欠かせません。
治療前のカウンセリング
治療前のカウンセリングでは、セラミック治療についての説明を受け、そこから要望や不安を伝えていきます。
実際にセラミック作製に移る前に口腔内の状況やむし歯・歯周病の有無を確認し、治療を行う必要があるのかという確認もこのタイミングで行います。
セラミック治療では治療法や使用する素材、値段や治療期間など人によって異なる部分が多く存在するため、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解したうえで治療方針を決定していくことが必要です。
また、治療のなかでのわからない点や不安が治療中の痛みや精神的なストレスにつながるため、納得した状態で治療に望むことが重要です。
検査・治療・型取りと作成
はじめに、セラミック治療の方針を決めるため以下のような検査を行い
- 視診
- 触診
- レントゲン撮影
- 口腔内写真撮影
上記では、むし歯や歯周病があるかの確認も行い、セラミック装着後にむし歯が発生しないように事前に治療を行います。
検査後には、歯の型取りが行われ、セラミックを被せるための土台となる歯の神経治療も行われる場合があります。
土台作り・仮歯をセット
検査後は、セラミックをかぶせるための土台を作っていきます。歯並びを治したい部分の歯の傾きやねじれ、位置などを考慮した土台をつくりましょう。セラミックをかぶせたとき歯並びが良くなるように、土台の向きを調整しながら歯を削っていきます。
土台ができたらすぐにセラミックが入るわけではありません。セラミックができるまでの間は仮歯で過ごすことになるでしょう。
噛み合わせに歯並びに違和感がないか、仮歯の状態で確認しながら、数日間過ごす必要があります。
セラミック製の詰め物・被せ物をセット
仮歯で数日間過ごして問題がない場合は、セラミックの被せ物を作っていきます。セラミックの被せ物ができあがるまでには1〜3週間程かかります。
装着した際の噛み合わせや仕上がりに問題がないかの確認を行い、微調整を行って歯科用セメントで合着することでセットが完了です。
定期メンテナンス
日頃、口腔内のセルフケアを行っているつもりでも、意外な場所に磨き残しが生じやすいです。気付かないまま放置すると、セラミックの劣化が進んでしまいます。
セラミックはメンテナンスを怠ると、汚れが蓄積するだけでなく隣合う健康な歯にまで影響を及ぼす可能性があります。むし歯や歯周病につながり、口腔内全体の状態が悪くなってしまうかもしれません。
定期的にメンテナンスを受けることで、自分では落とし切れない歯垢のクリーニングを受けられるとともに、歯磨き指導も行ってもらえます。
むし歯や歯周病を早期発見でき、被害が拡大する前に治療が可能です。噛み合わせの確認により、セラミックの交換時期を決めやすい利点もあります。
症状がなくても、3〜4ヵ月に1回はメンテナンスを行うのがおすすめです。お口の健康に気を配ると、セラミックの寿命も長くなるでしょう。
セラミック治療の治療期間
セラミックの製作は1本につき1週間〜3週間、セラミックによる歯列矯正を行う場合は1ヵ月〜2ヵ月程かかります。加えて、むし歯や歯周病などの治療が必要な場合や複数本の歯に対してセラミック治療を行う場合には、その分の治療期間が必要になります。
口腔内の状態や希望の仕上がりによって治療期間は大きく異なるため、治療スケジュールをきちんと確認して治療法を選ぶことが重要です。
セラミックによる治療期間は、治療内容や本数に応じて変動します。そのため、患者さんによって治療期間は変わると覚えておきましょう。
治療期間の目安は、一般的に1本につき1〜3週間程です。複数本の治療になると、治療完了までに1〜3ヵ月程かかるでしょう。
患者さんは治療に入る前に歯科医師によるカウンセリングや検査を受け、口腔内の状態および仕上がりの希望から使用するセラミックを検討します。
治療計画や費用について十分な説明を受け、患者さんの納得のうえ治療が開始されます。
セラミック治療のメリット
セラミック治療は、従来の金属製やプラスチック製の詰め物とは異なり、変色しにくく見た目がよいことが特徴です。
しかし、セラミック治療=見た目がよいというだけではなく、素材の耐久性や歯の健康面でのメリットもあります。
見た目が美しい
セラミック治療の大きなメリットの一つに、見た目が美しいことが挙げられます。金属製の詰め物のように治療箇所が目立ちにくく、天然の歯に近い色合いで作製が可能です。
また、形の調整もできるため、部分的にセラミック治療を行っても違和感のない自然な仕上がりになります。
素材が長持ちする
例えば、セラミッククラウンは、陶材であるセラミックを使用しています。セラミックは従来の治療法であるプラスチックや金属製の詰め物と比較しても変色しにくく耐久性があるため、適切なケアを行うことで長期間の使用が可能です。
セラミックのなかでもジルコニアと呼ばれる素材は、強度が高く割れにくいという特徴を持ちます。ジルコニアは人工関節に使用される程の強度があり、この強さを生かして強い力のかかる奥歯のセラミック治療を可能にしました。
むし歯のリスクが減る
従来の銀歯による治療では、銀が傷つきやすく汚れが付きやすいことや酸化や腐食が進行しやすいという点からむし歯になりやすいとされています。
一方、セラミックは表面がなめらかで歯に汚れがつきにくく、変形や成分が溶け出すことがないため、むし歯のリスクを大幅に減らすことが可能です。
加えて、セラミックはほかの歯や歯茎との相性もよいため、歯や歯茎の健康の維持に優れているといえます。
セラミック治療のデメリット
セラミック治療には、審美性が高いことや長持ちするというメリットがある一方、治療を行ううえでのデメリットも存在します。メリット・デメリットを比較したうえで、慎重に検討を行いましょう。
歯を削る量が多い・神経治療が必要
セラミックを長持ちさせるためには、厚みのある形への形成が必要です。そのため、土台となる元の歯を多く削る場合があります。
むし歯の場合は削り取らなければなりませんが、見た目の改善のためにセラミックを被せる審美治療の場合は、健康な歯を削る必要があります。
歯は一度削ってしまうともとに戻らないため、少なからず歯にダメージを与えることになるでしょう。
また、歯を削ることで、むし歯になりやすくなったり、神経に近づくことで痛みを感じやすくなったりするというリスクも考えられるでしょう。歯を削った際に歯の痛みが続く場合には、神経を抜く治療が必要になる可能性があります。
神経を抜くと歯に栄養が行き届かなくなり、もろくなりやすくなるため、医師と十分に相談して決定することが重要です。
保険が適用されない
金属製やプラスチック製の詰め物が保険適用されるのに対して、セラミック治療の多くは、自由診療として扱われます。
そのため、治療内容や治療箇所によって高額な費用がかかることが想定されます。
一方、歯科医院や治療法によっては、条件を満たすことで保険が適用される場合もあるようです。治療を受ける歯科医院で確認を行いましょう。
セラミックは、ホワイトニングで色を白くできないため、セラミック治療後に歯全体のホワイトニングを行うと隣の歯と違う色になってしまう可能性があります。
セラミック治療の前にホワイトニングを済ませ、その色味に合わせたセラミックの色味の調整が可能です。しかし、天然歯はホワイトニング後に色が戻って来ることがあるため、セラミックの歯と色の違いが出るケースが発生してしまいます。
例えば、なるべく白い歯にしたいという患者さんのご希望で、天然歯よりもやや白いセラミックを被せる場合があります。前歯の場合は色に注意して選ばないと、両隣の天然歯との間に色の違いが起こり、セラミックの歯が目立ってしまうかもしれません。白すぎるセラミックを選ばないようにしましょう。
セラミック治療における痛みの原因と対処法
セラミック治療は、歯を削る量が多かったり、仮歯の期間があったりと口腔内の変化が大きい治療だといえます。
治療の際に痛みを感じる場合もある一方、痛みの原因や対処法を理解しておくことが痛みを感じたときに落ち着いて対処することにつながります。
麻酔注射の痛み
麻酔注射をする際には、注射針が皮膚に刺されるときと、麻酔液が注入されるときに痛みを感じることがあります。特に、口腔内に炎症がある場合普段よりも痛みを感じやすくなります。
麻酔注射の痛みを軽減させるためには、表面麻酔法を取り入れることが効果的です。
表面麻酔法では、麻酔注射を行う前に歯茎の表面に麻酔を塗って感覚を麻痺させることで、麻酔注射の痛みを和らげるための麻酔としての役割を果たします。
また、電動式注射器や従来の注射よりも痛みの少ない機器によっての麻酔が可能な場合もあります。痛みに不安がある場合は、医師に事前に麻酔についての相談をしておくことが必要です。
歯を削るときの痛み
歯を削るときに痛みを感じる場合、歯を削る箇所が神経部にまで達していることが考えられます。また、歯を削るときに麻酔をしていても、麻酔が効くまでの間に治療を始めてしまったことで痛みを感じている可能性があります。
ほかにも、口腔内の傷やむし歯などによりもともと痛みを感じている場所に刺激が加わることで痛みが増幅していることも原因の一つです。歯を削っているときに痛みを感じた場合は、速やかに申し出ることで対処可能です。
痛みの強さによっては、麻酔の調整や治療法を変更することで痛みを和らげることができます。
ストレスや不安による痛み
セラミック治療への不安や恐怖があると、痛みに対して敏感になることがあります。
この痛みは治療に対する不安や恐怖といった心の状況が身体に影響を受けているものであるため、精神的な不安を取り除くことが痛みの軽減につながります。
治療前にセラミック治療に関する説明を十分に聞いて、医師と十分にコミュニケーションを取ることで不安を解消することが重要です。
セラミック治療は長期間の通院が必要になる場合もあるため、信頼できる歯科医院を選ぶことで精神的な負担を減らすことにつながります。
まとめ
セラミック治療は、従来の金属製やプラスチック製の詰め物による治療法とは異なり、劣化しづらいセラミックを使用する治療法です。
セラミック治療後は定期的なメンテナンスを行い、むし歯や歯周病を防ぐことで、健康的な口内環境の維持が可能になります。
形や色が自然でほかの歯と馴染むことや汚れが付きにくく歯の健康を維持しやすいというメリットがある一方、保険適用外のため高額な費用がかかることや、セラミックを被せる歯を削る必要があるというデメリットがありました。
セラミック治療の際に感じる痛みは、主に麻酔注射や歯を削ることや、治療への恐怖や不安が主な原因です。主治医に相談することで、痛みの少ない医療機器に変更したり、不安を打ち明けることで痛みの軽減につながる可能性があります。
セラミック治療のメリットやデメリットを十分に理解し、ほかの治療法と比較して決定することが、納得のいく治療法選びにつながります。また、自分にとって負担の少ない通い続けることのできる治療法を選ぶことが重要です。
参考文献