夜間に突然、歯の痛みに襲われた経験はありませんか?日中は問題がなかったのに、寝る前や深夜に急に痛みが強くなり、どう対処すればよいのか不安になることがあります。そのようなときに、何をすればよいのかを知っておくことは大変重要です。本記事では、以下について詳しく解説します。
- 夜間に歯が痛くなる原因
- 自身でできる対処法
- 夜間に歯が痛くなった場合にやらない方がいいこと
本記事を読めば、痛みが起こった時に冷静に対処し、適切な対処ができるようになるでしょう。痛みが続くときの不安を軽減し、夜を過ごすための参考にしてください。
夜間に歯が痛くなる原因
夜間に歯が痛くなる理由として考えられる原因はいくつかあります。理由を理解し、適切な対処法を知っておくことで、痛みの軽減に役立てられます。以下に、代表的な原因を詳しく紹介します。
頭部に血液が流れやすくなる
夜間に歯が痛くなる原因の一つとして、横になることで頭部への血流量が増えることが挙げられます。立っているときは重力によって血液が全身に均等に流れますが、横になると重力の影響が減り、頭部への血液の流れがよくなります。
その結果、歯の周囲の血管が拡張し、炎症や痛みを感じやすくなります。なかでもむし歯や歯周病などの炎症がある場合、血流の増加が炎症をさらに悪化させ、夜間に痛みを強く感じることがあります。
入浴や飲酒で血流がよくなる
入浴や飲酒により血流がよくなることは、主に血管の拡張と自律神経の影響に関連しています。温かいお湯に浸かることで体温が上昇し、血管が拡張され、全身の血流が活発になります。
この作用により、筋肉の緊張が緩和され、リラクゼーション効果も得られます。飲酒では、アルコールが血管を拡張させるため、末梢血流が増加します。また、アルコールは自律神経に影響を与え、リラックス状態にします入浴と飲酒はいずれも血行を良くし、リラックス効果を高める重要な要因となります。
副交感神経が優位になる
副交感神経が優位になる原因は、リラックスや休息する環境や状況に関係しています。例えば、夜間に照明が暗くなると、体は自然にリラックスモードに入り、体内の交感神経の活動が抑制されて副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が低下し、体が休息モードに移行します。
また、食後に消化活動が活発になると、副交感神経が優位になりやすくなります。さらに、温かいお風呂に入ることや深呼吸などのリラックス法も、副交感神経を優位にさせる要因です。
夜間に歯が痛くなった場合に考えられる病気
夜間に歯が痛くなる原因として、上記で挙げた理由のほかにも、いくつかの病気が考えられます。病気は、痛みの原因が歯の状態だけでなく、内部の病理的な問題に起因している場合があります。
以下に、主な症例をそれぞれ紹介し、それぞれの症状や原因を説明します。
歯髄炎(しずいえん)
歯髄炎の原因は、主に深いむし歯や歯の外傷によるものです。むし歯が進行すると、細菌が歯髄に侵入し炎症を引き起こします。
また、外傷による歯の損傷も歯髄にダメージを与え、炎症が発生します。歯髄炎の主な症状は、夜間に増すズキズキとした強い痛み、温かいものや冷たいものへの過敏反応があります。
さらに、歯茎の腫れや膿の形成も見られることがあり、炎症が進行すると痛みが断続的になることがあります。
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
根尖性歯周炎の原因は、主に歯髄炎が進行し、歯の根の先端部分(根尖)に炎症が広がることによります。細菌が歯の内部から根管を通って根尖に達し、そこで炎症を引き起こします。この状態が長期間続くと、歯の周囲の骨が溶解し、根尖部に膿がたまることもあります。
根尖性歯周炎の症状には、歯を押すと痛みが生じたり、歯茎が腫れたりする場合があります。
また、痛みが持続的で、ズキズキとした強い痛みを伴うことが多いようです。根尖性歯周炎は、放置すると慢性化し、症状が悪化する可能性があります。
咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)
咬合性外傷は、歯や歯周組織に過度の力が加わることによって生じます。この力は、主に歯ぎしりや食いしばり、不正な噛み合わせ(不正咬合)から来て、歯やその周囲の組織が繰り返しダメージを受け、炎症や痛みが発生します。
特に早朝にかけて痛みが出るようです。症状には、歯や歯茎に痛みがあり、噛んだときに鋭い痛みや不快感を感じることが多いようです。
また、歯の動揺や歯周ポケットの形成が進行する場合もあります。歯や歯周組織が持続的に負荷を受け続けると、歯根膜や歯周靭帯が損傷を受け、歯が揺れたり、歯周病のリスクが高まることがあります。
不正咬合が長期間にわたって放置されると、これらの症状がさらに悪化し、歯の喪失につながる可能性もあります。
智歯周囲炎(ちししゅういえん)
智歯周囲炎の原因は、親知らず(智歯)が正常に萌出しないことに起因します。親知らずが部分的にしか生えず、歯茎に覆われた状態が続くと、その隙間に細菌や食べ物のカスが溜まりやすくなり、炎症を引き起こします。
症状には、歯茎の腫れや痛み、悪臭が生じ、さらに炎症が進行すると膿が溜まったり、顎や顔の腫れを伴うことがあります。
また、開口障害や発熱が見られることもあります。これらの症状は親知らずが正しく生えない状態で放置された場合に悪化しやすく、日常生活に支障をきたすことがあります。智歯周囲炎は、早期に適切な対策を講じないと症状が悪化する可能性が高いです。
歯のヒビ
歯のヒビの原因は、さまざまな要因によって引き起こされます。まず、歯ぎしりや食いしばりなど、持続的な過度の力が歯に加わることで、歯のエナメル質や内部の組織に微細な亀裂が入ることがあります。
また、硬いものを噛んだり、急激な温度変化(熱いものを飲んだ直後に冷たいものを飲むなど)も、歯にヒビを生じさせる原因となります。症状には、噛んだときの鋭い痛みや、ある方向に圧力をかけた際の不快感があります。
さらに、ヒビが深くなると、歯髄への刺激が増し、持続的な痛みや過敏症状が現れることがあります。歯のヒビは、早期に発見されないと、亀裂が広がり、歯の強度が著しく低下し、歯の破損や抜歯が必要になることがあります。
自身でできる対処法
夜間に歯が痛くなり、痛みが引かずに眠れない時や痛みに耐えられない場合、自身でできる対処法をいくつか知っておくと便利です。
以下に紹介する方法を試すことで、一時的に痛みを和らげる手助けとなるかもしれません。
患部を冷やす
夜間に歯の痛みが発生した際、患部を冷やす方法は、自宅でできる効果的な対処法の一つです。患部を冷やすことで、血管が収縮し、炎症や腫れを軽減します。歯痛が炎症によるものであれば、冷却によって炎症を抑え、痛みを和らげられます。
冷たいタオルやアイスパックを痛む部分に当てることで、痛みを感じる神経の働きが鈍り、一時的に痛みが緩和されます。
冷却法は、急な痛みの緩和策として有効であり、寝る前や痛みが強くなる時間帯に使用するのがおすすめです。
ただし、冷やす時間は20分程度にとどめ、凍傷を避けるために直接皮膚に氷を当てないよう注意が必要です。また、冷やした後に痛みが再発する場合もあるため、その後の対応も考慮に入れることが大切です。
市販の痛み止めを服用する
夜間に歯の痛みが生じた際、市販の痛み止めを服用する方法は、痛みを一時的に緩和する効果的な対処法です。
痛み止めには、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどがあり、これらは鎮痛作用を持ち、炎症を抑える効果もあり、痛みの原因となる炎症が軽減され、痛みが和らぎます。
また、痛み止めは速やかに作用し、睡眠を助けられます。市販薬は即効性がありますが、長期間の使用や過剰摂取は避けるべきです。痛み止めの効果は数時間持続するため、寝る前に服用することで夜間の痛みを抑え、快適に眠れる可能性が高まります。
身体を起こす
夜間に歯の痛みが強くなる場合、身体を起こす方法は効果的な対処法の一つです。横になっていると、重力の影響で血液が頭部に集まりやすくなり、痛みが増すことがあります。
身体を起こして座るか、少し高めの枕を使って上半身を高くすると、血流が分散し、痛みが軽減されることがあります。また、身体を起こすことで、歯の周囲の圧力が軽減され、痛みが和らぐ可能性もあります。
お口の中を清潔にする
夜間に歯の痛みが生じた場合、お口の中を清潔に保つことは効果的な対処法の一つです。食べ物のカスやプラークが歯や歯茎に残っていると、細菌の繁殖を促し、炎症や痛みを悪化させることがあります。
なかでも、むし歯や歯周病が原因の痛みでは、口腔内の清潔さを保つことが症状の悪化を防ぐ重要な手段です。
寝る前に丁寧に歯を磨き、デンタルフロスを使用して歯間の汚れをしっかりと取り除くことで、細菌の繁殖を抑えられます。 また、抗菌効果のあるマウスウォッシュを使用すれば、口腔内の細菌をさらに減少させられます。
口腔内を清潔に保つことは、痛みを和らげるだけでなく、さらなる炎症や感染を防ぐためにも有効です。また、定期的に口腔ケアを行うことで、夜間の痛みが繰り返し起こるのを防ぐ効果も期待できます。
軽くマッサージする
夜間に歯の痛みが生じた際、自身でできる対処法の一つとして、痛む部分やその周囲の軽いマッサージがあります。
マッサージは、筋肉の緊張を和らげ、血流を改善すれば、痛みを一時的に緩和する効果が期待できます。
具体的には、指先で痛みを感じる部分の頬や顎の筋肉を優しく円を描くようにマッサージすると、緊張した筋肉がリラックスし、血行がよくなり、痛みが軽減されることがあります。
また、マッサージは副交感神経を刺激し、リラクゼーション効果ももたらします。ストレスや緊張が原因で痛みが増している場合に有効です。
夜間に歯が痛くなった場合にやらない方がいいこと
先程は夜間に歯が痛くなったときに実践するべき対処法をお話ししましたが、逆に避けるべき行動もあります。
これらの行動を避けることで、痛みの悪化や回復の遅れを防げます。間違ってもやらないように、これからご紹介する点も知っておきましょう。
患部を刺激する
夜間に歯が痛くなった場合、患部への刺激は避けるべきです。理由は、刺激を与えることで炎症がさらに悪化し、痛みが増幅される可能性が高いためです。
例えば、痛みを感じる歯を指で押したり、舌で触れたりすると、炎症が進行し、歯茎や歯根周辺の組織がより敏感になり、痛みが増すだけでなく、患部の腫れが悪化し、さらなる合併症を引き起こすこともあります。
なかでも、むし歯や歯周病が原因の痛みの場合、患部を刺激すると細菌の感染が広がり、炎症が一層深刻化するリスクがあります。こうしたリスクを避けるためにも、痛みがある場合には患部に触れず、冷却や鎮痛剤の使用など、炎症を抑える方法の優先が重要です。
喫煙
夜間に歯が痛くなった際、喫煙を避けるべき理由は、タバコが痛みを悪化させる可能性があるからです。喫煙により血管が収縮し、患部への血流が減少すると、治癒が遅れる可能性があります。
また、タバコに含まれる有害物質が口腔内の炎症を悪化させ、痛みが増す原因になります。さらに、喫煙は口腔内の防御機能を低下させ、感染症のリスクを高めることから、痛みがある場合は避けるべきです。
喫煙は一時的にストレスを和らげるように感じられるかもしれませんが、実際には歯や歯茎の状態を悪化させ、痛みをさらに強く感じる結果を招くことがあります。
また、ニコチンが血液循環を阻害し、免疫反応を抑えるため、炎症が引き続き進行し、治癒を遅らせることになり、痛みが長引き、さらなる口腔内の問題を引き起こすリスクが高まります。
血行をよくする行動
夜間に歯が痛くなった際、血行を良くする行動は避けるべきです。例えば、熱いお風呂に入ったり、運動をしたりすると、体全体の血流が増加し、炎症を起こしている歯の周囲にも血液が集まりやすくなります。
この結果、炎症が悪化し、痛みが増す可能性があります。 また、血行が良くなると、神経がより敏感になり、痛みを強く感じるようになります。そのため、痛みがあるときには身体を温める行動や、運動などの血行をよくする行動は控えるのが望ましいです。
夜間に歯が痛くなった場合は夜間診療を受診
夜間に歯が痛くなった場合、早急な夜間診療の受診が重要です。その理由はいくつかあります。
まず、歯の痛みはむし歯が進行して歯髄炎や根尖性歯周炎を引き起こしている可能性が高く、痛みが急激に悪化する場合が多いためです。なかでも歯髄炎は夜間に痛みが増しやすく、放置すると痛みがさらに強くなる可能性があります。
さらに、痛みを放置すると炎症が広がり、歯茎や顎の骨にまで影響を及ぼし、場合によっては呼吸困難を引き起こす危険性もあります。夜間の診療であれば、痛みを和らげる応急処置や必要に応じた投薬が行われるため、迅速な対処ができます。
また、夜間診療では応急処置が中心となりますが、翌日以降にかかりつけの歯科医で継続的な治療を受けることで、根本的な解決を図れます。このため、夜間に痛みが発生した場合には、迷わず夜間診療を受けることが勧められます。
まとめ
ここまで夜間の歯の痛みについてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
- 夜間の痛みが続く場合は、自身でできる適切な対処法を行う
- してはいけないことはしないように適切に対処できるように心がける
- 痛みが続く場合や症状が悪化する場合は、夜間診療の受診を検討する
夜間の歯の痛みの原因と対処法をお伝えしました。これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。