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入れ歯で口臭が発生しやすくなる理由とは?入れ歯の臭いを防ぐ方法や正しいお手入れ方法を解説

入れ歯で口臭が発生しやすくなる理由とは?入れ歯の臭いを防ぐ方法や正しいお手入れ方法を解説

入れ歯を使っていくなかで口臭が気になることはありませんか?毎日歯磨きと入れ歯の手入れをしているつもりなのになぜか臭い。そこには何らかの理由があるはずです。入れ歯は歯科のなかでも特殊な取り外し式の装置であることから、さまざまな理由で口臭が発生しやすくなっているのです。ここではそんな入れ歯で口臭が発生しやすくなる理由と入れ歯の臭いを防ぐ方法や正しいお手入れ方法について詳しく解説します。入れ歯で口臭が気になっている方は参考にしてみてください。

入れ歯で口臭が発生しやすくなる理由

入れ歯で口臭が発生しやすくなる理由 はじめに、入れ歯で口臭が発生しやすくなる6つの理由を解説します。

食べカスや汚れが溜まる

入れ歯は、人工歯と義歯床(ぎししょう)留め具であるクラスプから構成されており、ほかの装置よりもサイズが大きくて構造も複雑です。そのため、入れ歯には食べカスや汚れが溜まりやすく、不潔になりやすい点に注意しなければなりません。

特に保険診療の入れ歯は、人工歯と義歯床がプラスチックで作られており、汚れや臭いの物質を吸着しやすくなっています。食後に入れ歯を洗浄せず、食べカスや汚れが溜まっていると悪臭を放つようになります。また、入れ歯を装着している状態だと、残った歯や舌の表面などにも汚れが溜まりやすく、口臭が強くなる原因になります。

細菌や真菌が増殖している

食べカスや汚れが溜まった入れ歯と残存歯には、それをエサとして細菌や真菌が増殖します。細菌や真菌は、生命活動を営む過程で悪臭を放つ物質を産生することで、口臭の原因になります。

そのなかでも特に注意が必要なのが歯周病菌です。P.g菌に代表される歯周病菌は、食べカスに含まれるタンパク質をエサにして、代謝の過程でメチルメルカプタンという揮発性のガスを産生します。このガスは腐った玉ねぎのような強烈な臭いを放つことから、口臭を強くする主な原因になっています。ちなみに歯周病菌は、歯面や歯周ポケットの中だけでなく、入れ歯の表面でも繁殖します。

入れ歯が破損して合っていない

入れ歯は、使用中に破損したり変形したりすることがあります。入れ歯の形に異常が生じると、形やサイズがお口に合わなくなり、摩擦で粘膜を傷つけやすくなります。その傷口に炎症や細菌の繁殖が起こり、口臭が発生することもあるのです。

破損によって合わなくなった入れ歯は、咀嚼運動を妨げるため唾液の分泌量を低下させてしまいます。唾液には、自浄作用や抗菌作用、殺菌作用などがあるため、分泌量が減ってしまうと汚れが停滞したり、細菌が繁殖したりします。その結果、口臭も強くなります。

入れ歯そのものが臭う

入れ歯は、プラスチックや金属、特殊な樹脂などで作られているので、独特な臭いがすることもあります。それを口臭と感じる方もいるかもしれません。もちろん、入れ歯そのものが不潔になっていて、悪臭を放っている場合もあります。

長い年月使用し続けている

どのようなものでも長い年月使い続けていると劣化していくものです。口腔内は高い湿度と持続的な摩擦によって過酷な環境となっています。このような環境下で使用する入れ歯は、劣化する速度も早くなってしまいます。

保険診療で作る入れ歯は、ほとんどがプラスチックで構成されており、2〜3年も使い続けていれば、変色や摩耗、変形などが起こります。表面にも無数の傷がついており、臭いの物質をさらに吸着しやすくなるでしょう。そうした古い入れ歯は臭いやすくなります。

入れ歯の手入れが不十分

入れ歯の手入れを適切な方法と頻度で行っていない場合も口臭の原因となります。1日数分から数十分しか使用しない歯ブラシでさえ、使った後に洗ったり、乾かしたりしないと悪臭を放つようになります。

一方、入れ歯は日中のほとんどの時間を口腔内に装着しているだけでなく、食べかすや汚れがたまりやすい構造となっていることから、手入れが不十分だと臭くなります。入れ歯で口臭が発生している場合は、まず入れ歯の手入れの状況を確認することが大切です。

入れ歯を汚れたまま放置するリスク

入れ歯を汚れたまま放置するリスク 入れ歯の手入れが不十分で、汚れたまま使い続けると、口臭が発生する以外にもいくつかのリスクが生じます。

【リスク1】残存歯がむし歯になる

入れ歯は、プラスチックやセラミックで作られた人工歯なので、汚れを放置してもむし歯になることはありません。しかし残った歯は、汚れた入れ歯で繁殖した細菌による感染で、歯周病やむし歯を引き起こすことがあります。

【リスク2】口腔内にカビが生える

不潔な入れ歯の表面では、カビである真菌が繁殖して、口腔内にも広がります。その結果、口腔粘膜の炎症やただれなどを引き起こすのです。専門的には口腔カンジダ症と呼ばれるもので、汚れた入れ歯を使い続けることが原因となりやすいです。

【リスク3】誤嚥性肺炎を発症する

誤嚥性肺炎とは、唾液や食物に付着した細菌を誤って気道へと取り込むことで発症する肺炎で、汚い入れ歯を使い続けることが原因にもなります。高齢の方は、全身の免疫力が低下していることも踏まえ、不潔な入れ歯をそのまま使い続けることはせず、適切にケアすることが大切です。若い方で入れ歯を使っているケースも同様です。

【リスク4】入れ歯が傷つきやすくなる

入れ歯の手入れが不十分だと、入れ歯に傷がつきやすくなります。食べ物のカスや汚れが固まり硬くなってしまうと、物理的に入れ歯を傷つけてしまうことがあります。 傷ついた入れ歯は、さらに汚れも付着しやすくなりますし、場合によって形がかわってしまいお口に合わなくなってしまうリスクにもつながりかねません。

【リスク5】歯周病や口内炎になる

不潔な入れ歯を使用し続けると、歯周病や口内炎のリスクが高まります。手入れが不十分な入れ歯は、食べカスや汚れを栄養として、細菌が増殖しやすくなってしまいます。

なかには、歯周病に関わる細菌も増殖してしまうことがあります。細菌が増殖した入れ歯を使用し続けると、健康的な歯茎や口腔内にも影響が出てしまい、歯周病や口内炎のリスクを高めてしまいます。

入れ歯の臭いを防ぐ方法

入れ歯の臭いを防ぐ方法 次に、入れ歯で口臭が発生するのを防ぐ方法を解説します。次の2つの方法を実践するだけでも、目に見える効果が現れることでしょう。

正しい方法で毎日の手入れと洗浄する

入れ歯の臭いを防ぐうえで大切なのは、正しい方法で入れ歯の手入れと洗浄を行うことです。これを毎日行うことで、入れ歯による口臭のほとんどは予防ができます。入れ歯の正しい手入れの方法は、後段で詳しく解説しますが、歯科医院で教えてもらうこともおすすめです。

クリニックでメンテナンスを受ける

入れ歯が完成した後も、3〜4ヵ月に1回くらいの頻度でメンテナンスを受けていれば、入れ歯の破損や変形、不潔になっていることなどを早期に発見できます。また、正しい入れ歯のお手入れ方法も定期的に学べるため、メンテナンスを重ねていくことで入れ歯の衛生状態も良好に維持しやすくなることでしょう。

入れ歯の正しいお手入れ方法

入れ歯の正しいお手入れ方法 続いては、入れ歯の正しいお手入れ方法について解説します。入れ歯による口臭が気になる方は、まず以下に挙げる3つの方法を実践できているかどうかを確認してみてください。

入れ歯は毎日洗う

1日使った入れ歯でも、患者さんの食生活やお口の環境、入れ歯の設計などによっては汚れが目立ちにくいこともあります。一見すると、衛生的な状態が維持されているので、わざわざ洗浄する必要はないと、2日に1回くらいのペースで洗えば十分と感じる方もいるかもしれません。その考え方は基本的に間違いであると指摘しておきます。

もし、水しか口にしていない日でも、入れ歯にはたくさんの細菌や真菌が繁殖しています。微生物の存在は肉眼では確認できないため、目に見える汚れがなくても洗浄が必要です。

口腔細菌というのは食事をしていなくても徐々に増えていくものです。そのため、口腔に密着している入れ歯も細菌の温床となることはいうまでもありません。毎食後に入れ歯を洗い、就寝前には入れ歯洗浄剤に浸けておくことが大切です。

◎入れ歯は義歯ブラシで磨く

入れ歯は、義歯ブラシという入れ歯専用のブラシを使って磨きましょう。歯を磨くための歯ブラシで磨くと、入れ歯を傷つけるおそれがあります。また、義歯ブラシで磨いた後は、常温の水かぬるま湯で汚れを洗い流すようにしてください。ちなみに、義歯ブラシでは歯磨き粉を使う必要はありません。

入れ歯専用の洗浄剤を使用

入れ歯のお手入れは、義歯ブラシによる機械的な清掃に加えて、入れ歯専用の洗浄剤を使った清掃も必要となります。入れ歯はとても複雑な構造をとっていることから、義歯ブラシだけでは、歯垢や食べカスなどをきれいに取り除けないことがあります。また、歯面と同様に入れ歯の表面にはバイオフィルムが形成されるため、薬剤を利用することで効率よく除去できるようになります。

◎入れ歯洗浄剤も毎日使う

入れ歯の洗浄剤は毎日使います。入れ歯は、矯正装置とは異なり食事中も使用するものなので、徹底して洗浄する必要があるのです。具体的には、1日が終わって眠る前に入れ歯洗浄剤を使うとよいでしょう。

入れ歯の洗浄にかかる時間は数分から数十分程度です。しかし、就寝中は入れ歯を口腔内から外し、乾燥しないように保管しなければならないことから、そのまま一晩浸け置いてておけばよいでしょう。

汚れが付きやすいところを丁寧に洗う

入れ歯は、口腔内よりも複雑な形をしていることから、一般的な歯磨きよりも丁寧な清掃が求められます。

まず、入れ歯には汚れが付きやすいところとそうではないところがあります。汚れが付きやすいのは、人工歯やクラスプの付け根、歯茎と密着する部分などです。そうした部分は義歯ブラシの角度や動かし方を工夫しながら、丁寧に磨く必要があります。

逆に、義歯床の表側のツルツルとした部分は、汚れがあまり付かないことから、必要以上にゴシゴシと磨く必要はありません。強圧で磨くことで汚れは取り除きやすくなりますが、義歯の表面を傷付けてしまい、汚れや臭いの物質を吸着しやすい状態を招きかねないのです。そうした入れ歯の特性は、個々の設計によっても大きく変わるため、細かい清掃方法は治療を受けた歯科医院で指導を受けるようにしてください。

入れ歯のお手入れでやってはいけないこと

入れ歯のお手入れでやってはいけないこと 入れ歯をお手入れする際にやってはいけない行為について解説します。以下に挙げる3つのことを行うと、入れ歯の劣化を促進して口臭が発生しやすくなります。

熱湯で消毒する

入れ歯は、今現在の患者さんの口腔内にぴったり適合するように調整されています。それを熱湯で消毒すると、入れ歯表面に付着した微生物を効率よく取り除けますが、装置の変形を招いて適合性が低下します。深刻な例では、入れ歯の形が大きく変わって作り直しを余儀なくされることもあるため、入れ歯に煮沸消毒という方法をとることはNGといえます。

入れ歯を乾燥させる

プラスチックやシリコンで作られた入れ歯は、乾燥すると変形や変質することがあります。これも入れ歯の適合性を低下させる原因となるため、口腔内から取り外した際には必ず水に浸けるなどの処置を講じましょう。

歯磨き粉や歯ブラシで洗う

入れ歯を歯ブラシと歯磨き粉で磨くと、表面に傷がついてしまいます。特に研磨剤入りの歯磨き粉を使った手入れは、滑沢に仕上げられた義歯床の表面をボロボロにする危険性があるため、使用を控えるようにしてください。入れ歯を洗う場合は、入れ歯専用の義歯ブラシのみで十分です。

まとめ

今回は、入れ歯で口臭が発生しやすい理由とそれを防ぐ方法、入れ歯の正しいお手入れ方法について解説しました。入れ歯で口臭が発生する主な原因としては、食べカスや汚れが溜まっている、細菌が繁殖している、入れ歯が破損している、入れ歯のお手入れが不十分であることなどが挙げられます。こうした原因は、正しい方法で毎日のお手入れと洗浄を行い、定期的なメンテナンスを受けることで防ぎやすくなりますので、入れ歯による口臭に悩んでいる方はぜひ実践してみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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