「まだ30代なのに入れ歯になったら恥ずかしい」のように、入れ歯は高齢者がつけているイメージを持つ人は少なくありません。
2022年度の歯科疾患実態調査でも、喪失歯数が歳を重ねるごとに増えていることがわかります。
しかし、さまざまな事情により、若くても入れ歯を使用している人もいるのです。
本記事では入れ歯を始める年齢や理由、タイミングと流れ、注意点をまとめています。入れ歯について知りたい人は、ぜひ本記事を読んでみてください。
入れ歯は何歳から?
- 入れ歯は何歳から使用できますか?
- 基本的に入れ歯治療には年齢制限はありません。入れ歯は高齢者が使用するイメージがありますが、永久歯が生えていない乳幼児を除いて、必要があれば誰でも作成・使用できます。
- 入れ歯を入れている人の平均年齢はいくつですか?
- 75歳以上の方の半数以上が入れ歯を使用しています。入れ歯使用者は60歳以上から増えてきますが、35~39歳で入れ歯を入れている人もいます。入れ歯は、高齢者だけが使うものではありません。
- 若いうちから入れ歯を入れるメリットはありますか?
- 若い人が入れ歯を入れるメリットは以下のとおりです。
- 歯茎がしっかりしているため、入れ歯の安定性が高い
- 喪失歯の隣の歯を必要以上に削らなくてよい
- 取り外し可能なため、掃除しやすい
- 保険適用内のため、ほかの治療よりも低コストで対応できる入れ歯がある
- バネや金属を使わず、見た目で入れ歯だとわかりにくいものがある
- 歯を喪失しても入れ歯治療により笑顔で生活できる
- 残っている歯の本数に関係なく入れ歯を入れられる
入れ歯の平均年齢を知ると、入れ歯を作るのに抵抗がある若い人がいることでしょう。しかし、若いうちから入れ歯を入れるメリットもあるのです。少しでも興味を持ったら、歯科医師に相談しましょう。
入れ歯を始めるタイミングと流れ
- どのような症状が出たら入れ歯を始めるべきですか?
- 歯を失ってしまった場合、治療の選択肢の1つとして入れ歯治療があります。
喪失歯の原因として多いのは、歯周病・むし歯などです。歯周病やむし歯などが悪化するとほかの歯にも影響がおよび、さまざまな治療を受けても改善しない場合に抜歯が行われます。
抜歯後に歯が抜けたまま放置しておくと、歯並びが悪くなったり、嚙む力が弱くなったり、残りの歯に負担がかかったりすることがあります。失った歯を補うことで、健康な口腔機能を続けられるように目指しましょう。
- 入れ歯作成までの流れを教えてください。
- 入れ歯は1~3ヵ月程度の治療期間が必要です。歯科医院によって異なりますが、基本的な入れ歯作成の流れは以下のとおりです。
- 口腔内の状態を確認しカウンセリングを行う
- 歯と歯茎の型取りを行う
- 噛み合わせの型取りを行う
- 仮の入れ歯を試し入れする
- 最終的な入れ歯を装着し、調整する
適切な治療方法は、患者さんによって変わります。カウンセリングでは、現在治療中の病気・今までの治療内容・今後の生活スタイルなど患者さんのご希望を確認します。
そのうえで、具体的な治療方法や入れ歯作成にかかる費用・期間などを説明し、入れ歯作成の意志確認をされることになるでしょう。自分の希望や不安なことがあれば、歯科医師に伝えるようにしてください。
むし歯や歯周病などがある場合は、治療後に入れ歯作成となることもあります。レントゲン撮影などの画像検査・口腔内の状態を確認してから型取りを行いますが、患者さんに合った入れ歯をより精密に作るため、何度も型を取る場合があります。よく噛めて痛くなりにくい、そして外れにくい入れ歯を作るために精密な型取りが必要なのです。
型をもとに仮の義歯を作り、患者さんが自然に噛めるように入れ歯の歯並びを調整します。仮の入れ歯で問題がなければ、最終的な入れ歯を患者さんのお口に入れ、噛み合わせや発音、審美性などのチェックおよび調整を行います。違和感や問題がなければ完成です。
入れ歯を使い始めたばかりだと、違和感が拭えない場合がありますが、徐々に慣れることがほとんどです。歯科医院によって対応が異なるため、不安な点があれば歯科医師に確認するようにしましょう。
- 入れ歯には定期的な調整が必要ですか?
- 入れ歯作成直後は、違和感を覚えることが少なくありません。歯科医院で定期的な調整が必要です。入れ歯装着後の違和感を覚えなくなったら、3~6ヵ月ごとに定期検査を受け、入れ歯や口腔内の状態を確認してもらいましょう。
その他、残っている歯のチェックや食生活へのアドバイスを行う歯科医院もあります。健康なお口の環境を維持するために、定期的なメンテナンスは欠かさないようにしましょう。
- 入れ歯のメンテナンスと長持ちさせる方法を教えてください。
- 入れ歯は、食後と就寝前にメンテナンスを行います。食後は入れ歯を外し、歯磨き粉を使わずに歯ブラシで丁寧に汚れを落としてください。
就寝前は食後と同じようにお手入れした後、入れ歯専用の洗浄剤などで洗浄と殺菌を行い、水かぬるま湯で十分に洗い流しましょう。
乾燥を防ぐため、専用のケースに入れて水に浸した状態で保管することが多いですが、歯科医師の指示にしたがってください。
入れ歯を長持ちさせるためには、食生活の見直しも有効です。甘いものばかり食べたり飲んだり、左右どちらか決まった方ばかりで噛んだりすると、口腔内環境や噛み合わせを悪化させる恐れがあります。入れ歯の負担軽減のためにも口腔内の健康を保つよう心がけましょう。
入れ歯の注意点
- 入れ歯の費用相場を教えてください。
- 入れ歯の費用は、歯科医院や保険適用の有無・素材の種類によって異なります。アクリルレジンというプラスチックの樹脂製の入れ歯は、保険適用です。
部分入れ歯の場合、金属を使って歯列に入れ歯を固定するため、見た目に違和感があったり劣化が早かったりなどの問題があります。
3割負担の場合、部分入れ歯は約5,000円〜20,000円、総入れ歯は1,0000~20,000円が費用相場です。
保険適用外の入れ歯には、シリコン・金属床・チタン・白いプラスチック製の留め具など、選択肢の幅が広がり自分の好みに合った入れ歯を作ることができるのがメリットです。保険適用の入れ歯に比べると、審美性が高い入れ歯を手に入れることもできるでしょう。
部分入れ歯(片顎)は200,000~600,000円(税込)、総入れ歯は500,000~1,000,000円(税込)が費用相場です。
保険適用外の場合高額なのがデメリットですが、高額な治療費もローン分割払いを取り扱う歯科医院があるため、治療する歯科医院を選ぶ際のポイントとして参考にしてください。
- 入れ歯の装着感に違和感がある場合はどうすればよいですか?
- 違和感がある場合は、歯科医院で調整してもらいましょう。初めは入れ歯の装着感に違和感を覚える人は少なくありません。違和感とは、歯や歯茎が締め付けられるような感覚がある・話しにくい・嘔気があるなどです。
違和感には個人差があるため、実際に入れ歯をつけてみないとどのような違和感が現れるかはわかりません。入れ歯をつけていると徐々に違和感は薄れて、入れ歯に慣れていきますが、自己判断はせずに歯科医院に相談してください。
- 入れ歯による口腔内トラブルについて教えてください。
- 合わない入れ歯の使用や調整不足が原因で起こる口腔トラブルは、以下の症状です。
- 歯茎と入れ歯がフィットしない
- 噛むたびに痛みがある
- しゃべりにくい
- 吐き気がある
- 入れ歯が外れやすい
- 合わない入れ歯を使用すると、歯や歯茎を傷つけてしまう
歯科医院で相談せずにそのまま我慢して過ごしていると、頭痛や肩こりなど健康面にも悪影響を及ぼします。
編集部まとめ
入れ歯は高齢者だけのものではなく、若い人でも使用している人がいます。費用や素材によって作れる入れ歯が異なります。
入れ歯だとわからない自然な見た目にできる可能性もあります。
1人で悩まずに、まずは自分の希望や予算などを含めて歯科医院に相談しましょう。
自分にぴったり合う入れ歯を作ることで、日常生活に支障なく自分らしく過ごせます。入れ歯作成後は、定期的なお手入れや通院を忘れないようにしてください。
参考文献