初めて入れ歯を作る方は、いろいろな疑問や心配があるかもしれません。
この記事では、入れ歯治療の流れをステップごとに詳しく解説し、型取りの目的や、より快適に治療を受けるための重要なポイントをご紹介します。
入れ歯治療の流れ
- 入れ歯治療はどのような流れで行われますか?
- 入れ歯治療は、数日間かけて行われます。
まず、入れ歯の適用を判断するために検査を行います。
レントゲン撮影などにより、顎の形や、骨の強度、歯肉の厚みなど、入れ歯を装着して問題ないかを確認します。
検査の結果は数日後にわかることが多く、1〜2週間後などに再度来院して医師から伝えられます。 次に、入れ歯を入れるにあたっての治療計画と、治療費用の見積もりを行います。
入れ歯治療が完了するまでの流れや必要手順、そして入れ歯の種類によっての費用の違いなどをカウンセリングして決めていきます。
入れ歯は保険適用のものがありますが、患者さんの希望や顎の状態などによっては保険適用のものではなく自費診療の入れ歯がおすすめされることもあるため、綿密に打ち合わせることが大切です。当日に即決するのではなく、いったん判断を保留してよく検討してから、次の受診時に正式に治療を依頼することもできます。 そしていよいよ入れ歯の治療が始まります。
まずは型取りです。入れ歯を入れる箇所に、専用のねり状の薬剤を貼り付け、しばらくおくと、歯型が取れます。
歯型は入れ歯を作る専門家である歯科技工士に送られ、その後およそ3〜4週間で入れ歯ができあがり、歯科医院に届きます。
歯科技工士が常駐している歯科医院であれば、すぐに入れ歯の作成に取りかかれるため、時間を短縮可能です。 入れ歯が届いたら、歯科医院に患者さんが来院して、装着をし、ズレや噛み合わせを調整して、顎の形に適合させていきます。
歯科医院での調整でうまくいかない場合は、再度歯科技工士が修正を行います。 このように修正や調整などを経て、患者さんが装着して問題ない状態になれば完成です。
- 型取りにはどのような目的がありますか?
- 入れ歯の型取りの目的は、歯やお口の中の正確な形状を記録して歯科技工士に伝え、患者さんのお口の中にフィットする入れ歯を制作することです。
歯科技工士は多くの場合で歯科医院に常駐しておらず、歯科医院から遠隔地で作業するため、歯並びや噛み合わせ、顎の骨の状態を型取りによって正確に把握し、それを反映した入れ歯を設計し制作する必要があります。
- 咬合採得(こうごうさいとく)とは何ですか?
- 咬合採得とは、歯の噛み合わせの位置関係を記録するための検査です。
咬合床(こうごうしょう)と呼ばれる装置や、シリコンや軟化したワックスなどを使用し、噛んだ状態を記録することで、患者さんがどのような顎の位置で噛んでいるのかを確認します。
型取りで採取する歯型には唇や顎のズレなどが反映されず、患者さんの実際の噛み合わせがわからないため、咬合採得で噛み合わせのデータを取り、しっかりとした噛み合わせの実現を目指します。
- 保険診療と自由診療で治療の流れは変わりますか?
- 基本的には、保険診療と自由診療で治療の流れが変わることはありません。
保険診療と自由診療とで異なる点は、主に入れ歯の材質や形状です。
総入れ歯の場合、保険診療ではすべてを樹脂で作りますが、自由診療の場合は金属床やシリコン、マグネットなど、さまざまな材質を使用したものがあり、形状もさまざまなものがあります。
ただし、自費診療の場合は入れ歯作製における工程も歯科医院が独自に決められるため、歯科用CTなどの先進的な機器を利用した検査や、マイクロスコープを使用した調整など、より精密な入れ歯を作るための対応が行われる場合があります。
- 入れ歯が完成したら歯科医院への通院は不要ですか?
- 入れ歯が完成しても歯科医院への通院は必要です。
まず、入れ歯は、経年変化がありますが、定期的なメンテナンスで歯科医院に行くことで適宜調整を行い、より長く快適に使い続けることができます。
そして、保険診療の入れ歯の寿命はおよそ7年程度と言われているため、いずれは作り直しなどの必要が生じます。
また、入れ歯はむし歯ができないから歯科医院に行く必要がないと思う方は多いようですが、むし歯はできなくても入れ歯をしているお口の中にトラブルが起きる可能性はあります。
例えば、入れ歯によって歯茎の肉が薄くなったり、部分的に力が強くかかる箇所で炎症が起きたりといった、入れ歯特有の口腔内トラブルもあります。
定期的に歯科医院に行って定期検査を実施することで、より快適に過ごすことができます。
入れ歯治療におけるトラブル
- 入れ歯治療はなぜ時間がかかるのでしょうか?
- 入れ歯は、診査診断、型取り、入れ歯の制作、入れ歯の調整と、必要な手順が多い治療であることが特徴です。
また、それぞれの工程を歯科医院、歯科技工士が連携して行うため、その間のやり取りや、作業工程があり、どうしても日数がかかってしまうのです。 なるべく短期間で治療を終わらせたい方は、歯科技工士が常駐している歯科医院を選ぶと、入れ歯の作製にかかる時間を短く抑えやすいといえます。
- 型取りで苦しさや吐き気が出てしまう場合はどのように対処すればよいでしょうか?
- 型取りの器具を使うと苦しさや吐き気をしてしまうという方がいます。
これは嘔吐反射と言われるもので、喉や舌根に異物が触れることで反射的に起こる防御反応です。生理現象なので、我慢できない人がいるのは仕方がないことです。
嘔吐反射が強いという方は、歯科医院に相談し、対策してもらいましょう。小さな器具を使用してなるべく異物感を減らしたり、上体を起こした状態で型取りをして、なるべく器具が喉の方に落ちて行かないようにするといった方法などで対処できることがあります。
- 入れ歯ができるまでは歯がないまま過ごす必要がありますか?
- 入れ歯ができるまでは、基本的には歯がないままで過ごす必要があります。
ただし、歯がないと生活に支障が出てしまうことがありますので、そのような場合は保険適用ではありませんが、仮義歯と呼ばれる、本番の入れ歯ができるまでに使用する一時的な入れ歯が用意されることもあります。
入れ歯の型取りを快適に受けるために
- 型取りの際の嘔吐反射を防ぐ方法はありますか?
- 入れ歯の型取りで嘔吐反射が出やすくなる理由は、お口の奥に器具が入ることが刺激になるためです。少しでも快適に型取りを受けるために試せる方法をいくつかご紹介します。 まず、歯科医師や歯科衛生士に嘔吐反射が出やすいことを事前に伝えておくことが大切です。そうすることで、より慎重に、かつ患者さんのペースに合わせて型取りを進めてもらいやすくなります。 型取りの際には、鼻で呼吸をするように意識してみましょう。お口で呼吸をしようとすると、どうしても喉の奥が動きやすくなり、嘔吐反射を誘発しやすくなります。
また、型取り中は、何か一点に意識を集中させるのも有効です。例えば、目の前の壁の模様をじっと見つめたり、足の指を動かしたりすることで、お口の中への意識を紛らわせられることがあります。 リラックスすることも重要です。緊張すると、全身が過敏になり、わずかな刺激にも反応しやすくなります。深呼吸をしたり、肩の力を抜いたりすることを意識してみてください。 歯科医院によっては、嘔吐反射が出にくい特殊な材料やトレーを使用したり、違和感を感じにくい小さめの器具を使ったりと、短時間で型取りができるような工夫をしている場合がありますので、事前に確認してみるのもよいかもしれません。 もし、どうしても我慢できないほどの嘔吐反射が出る場合は、遠慮せずに歯科医師に伝えましょう。状況によっては、笑気麻酔を使用したり、別の方法を検討したりすることも可能です。
- 口腔内スキャナーで入れ歯の型取りを済ませることはできますか?
- お口のなかを機械で撮影するだけで手軽に型取りを行える口腔内スキャナーを、入れ歯の型取りに利用できる場合もあります。
ただし、入れ歯作製のための口腔内スキャナーによる型取りは現時点で保険診療の対象となっていないため、自費診療での対応となります。
また、入れ歯作製のための口腔内スキャナーの活用は、歯科医院によって異なり、対応しているクリニックでも総義歯のような大きな入れ歯作製には使えないといったケースなどがあるため、気になる場合は個々の歯科医院に、対応状況を問い合わせてみる必要があります。
編集部まとめ
入れ歯治療は、精密な型取りから始まり、患者さんに合った調整を経て完成します。
型取りは、理想の入れ歯を作るための重要なステップです。嘔吐反射が心配な方は、事前に歯科医師に相談し、リラックスして臨むことを心がけてみましょう。
口腔内スキャナーといった新しい技術も選択肢の一つです。 入れ歯が完成した後も、定期的なメンテナンスが入れ歯を長持ちさせる秘訣です。この記事を参考にし、より快適な生活のための入れ歯作成をしてみてください。
参考文献