何らかの理由で歯を失ってしまったときの選択肢として、入れ歯を考えている方もいらっしゃると思います。入れ歯は作って終わりではなく、正しいお手入れや保管方法によって長く使うことができます。こちらの記事では入れ歯を保管するための重要なポイント、正しい保管方法、日頃のお手入れの手順や道具について解説します。また、入れ歯の種類やどのような方が入れ歯に向いているのかなどについてもまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
入れ歯について
入れ歯は失った歯を人工的に補うものです。入れ歯を装着することによって、見た目や咀嚼(そしゃく)機能、発音などが改善され、口元の自信を取り戻すことができます。 ここでは、入れ歯にどのような種類があるのか、どのくらいの期間使うことができるのかについてまとめました。
- 入れ歯にはどのような種類がありますか?
- 入れ歯には部分入れ歯と総入れ歯があります。入れ歯は人工歯と歯茎のようなピンク色の土台(義歯床)からできています。大きく分けて2種類あり、残存歯が1本までなら部分入れ歯、すべての歯がない場合は総入れ歯です。
部分入れ歯は、残っている歯にクラスプと呼ばれる金具をかけて固定する方法です。支えとなる歯を少し削るだけで済みますが、負担がかかってしまい次第に歯が揺れてくる可能性があるというデメリットがあります。 総入れ歯は、義歯床がプラスチックでできているレジン床義歯、とチタンなどの金属でできている金属床義歯に分けられます。レジン床は保険適用ですが、強度の面から厚くする必要があるため、装着した際に喋りにくさを感じることもあるようです。金属床には耐久性がありますが、金属アレルギーの場合は残念ながら使えません。
- どのような方が入れ歯に向いているか教えてください
- 入れ歯を支えるための歯茎や顎の骨がある程度健康であれば、入れ歯に向いていますし、多くの歯を失ってしまった場合にも入れ歯は機能的かつ経済的な選択肢です。失った歯を人工的に補う場合に入れ歯ではなくインプラント治療もありますが、骨の状態や健康状態によってインプラント治療が難しい方も入れ歯に向いているでしょう。
- 入れ歯はどのくらいの期間使うことができますか?
- 入れ歯の平均寿命は約4~5年程で、プラスチックの入れ歯は3~5年、金属製の入れ歯は5年以上使えます。ただし、日頃のお手入れや取扱い方によって異なり、患者さんのなかには10年以上同じ入れ歯を使っている人もいるようです。
- 入れ歯を作り直した方がよいのはどのようなときですか?
- 入れ歯が破損してしまい修理が困難な場合や、人工歯の嚙み合わせ部分がすり減ってしまうなど入れ歯そのものが寿命の場合、歯を支える歯槽骨がやせてしまったり新たに歯を失ってしまったりして入れ歯の形が合わない場合は、入れ歯を作り直した方がよいでしょう。
入れ歯を保管するための重要なポイント
入れ歯を外した際にそのまま放置してしまうと破損や変形の危険があり、これが口腔内での違和感や咀嚼機能、発音に影響を及ぼすこともあります。ここでは入れ歯を保管するためのポイントとして、保管方法やどのような場所が保管に適しているのかを解説します。
- 入れ歯の保管方法について教えてください。
- 入れ歯の保管方法は、水道水につけた状態で保管する水中保管と、入れ歯専用の洗浄剤を溶かした液体のなかで保管する洗浄液中保管の2種類があります。
保険適用の入れ歯は、レジンというプラスチックでできており、乾燥すると変形したり割れやすくなったりします。そのため入れ歯を保管する際には液体のなかにつけておきましょう。 一部の保険適用外の入れ歯には、吸水性が低く壊れにくいものもあります。壊れにくいタイプの入れ歯は液体につけずに乾燥保管することもできますが、患者さん自身で入れ歯の材質を判断することは難しいため、保管の方法についてはクリニックで確認してください。
- 入れ歯を保管するにはどのような場所が適していますか?
- 入れ歯は衝撃や温度変化の少ない場所に保管し、落下による破損に注意する必要があります。急激な温度変化は入れ歯を変形させる可能性があるので、直射日光や暖房器具の近くなど温度変化の激しい場所での保管は避けた方がよいでしょう。また、衝撃を与えると入れ歯や保存容器が破損する恐れがあるため、落下に気を付けて平らな場所で保管してください。なお、入れ歯の保存容器は、誤って捨てたり子どもやペットに触られたりするリスクを減らすために、色付きの容器がおすすめです。
- 睡眠中の入れ歯の保管方法はどのようにすればよいですか?
- 睡眠中は基本的に入れ歯を外して歯茎や顎を休めておきましょう。保管する際には保存容器に入れて水や洗浄液につけておきます。
ただし、多くの歯を失っている方や歯ぎしりのある方はお口のなかを傷付けてしまう恐れがあるため、睡眠中も入れ歯をしておくようにすすめられる場合が少なくありません。
- 入れ歯を長期間保管することは可能でしょうか。
- 入れ歯を長期間保管することは可能です。長期保管する前に汚れや食べかすなどをきれいに取り除き、保存容器のなかで水や入れ歯専用の洗浄液につけて保管しましょう。もちろん直射日光や高温多湿を避けた場所に置いておきます。
入れ歯のお手入れ方法とは
入れ歯も自分の歯と同じように日頃のお手入れが必要です。入れ歯を掃除しないと細菌が繁殖しやすくなり、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクも高まります。ここでは入れ歯のお手入れの正しい手順や道具について、また入れ歯はどれくらいの頻度で洗う必要があるのかについて解説します。
- 入れ歯をお手入れする正しい手順を教えてください。
- 入れ歯のお手入れの手順は、まず入れ歯を外し流水で食べかすや汚れを洗い流します。このとき落として破損したり排水口に流したりしないように、下に水を張った洗面器などを置くとよいでしょう。次に入れ歯専用のブラシで洗いますが、歯磨き粉などは研磨剤が入っているので、水だけで優しく磨きます。仕上げは、流水でしっかり流しましょう。また、入れ歯用の泡洗浄剤もあるのでそちらも入れ歯用歯ブラシと併用するとより効果的です。
- 入れ歯は熱湯で洗ってもよいですか?
- 保険適用の入れ歯はレジンと呼ばれるプラスチックで作られていて、高温に弱い性質があります。入れ歯を熱湯で洗うとレジンが変形しやすくなるため避けた方がよいでしょう。
- 入れ歯を洗うときに必要な道具を教えてください。
- 入れ歯を洗う際に必要な道具は、入れ歯用ブラシと専用の洗浄剤です。入れ歯用ブラシには、入れ歯専用ブラシや入れ歯の金具を磨く専用ブラシなどがありますが、使い古した自分の歯ブラシでも代用できます。部分入れ歯と総入れ歯では材質に違いがあるので、それぞれに適した専用の洗浄剤を選ぶようにしてください。部分入れ歯には金属が使用されているので、総入れ歯用の洗浄剤を使うと金属が変色する恐れがあります。
- 入れ歯はどのぐらいの頻度で洗う必要がありますか?
- 入れ歯は毎日洗うことが推奨されています。毎食後流水で軽く洗い流し、就寝前には入れ歯を外して専用ブラシで丁寧に洗浄しましょう。
編集部まとめ
ここでは、入れ歯の種類や耐用年数について、また入れ歯の保管方法のポイントやお手入れの正しい手順、気を付けることなどについてまとめました。入れ歯は作って装着すれば終わりではありません。入れ歯にはいくつか種類がありますが、その種類に関係なく日頃のお手入れを丁寧に行い、保管方法や保管場所に気を付けることで長く使うことができます。ぜひ今回の記事を参考にしてください。
参考文献