歯の隙間が空いている、いわゆるすきっ歯のお悩みはないでしょうか。
前歯の隙間が気になり、コンプレックスになるケースもあるといいます。
歯科医院で歯の隙間を治療するならば、時間とコストがかかる歯列矯正が必要なのでは、とイメージする方も少なくないでしょう。
しかし、セラミックを用いた時間とコストを抑えられる治療法もあり、歯の隙間に悩む患者さんの選択肢となっています。
今回はセラミック治療を中心に、歯の隙間治療について解説します。
セラミックで歯の隙間を埋められる?
- 歯と歯の間に隙間ができる原因を教えてください。
- 歯と歯の間に隙間がある状態を、一般的にはすきっ歯と呼びますが、歯科医療の世界では空隙歯列(くうげきしれつ)と呼びます。なかでも上顎の正面に並ぶ2本の前歯の間に隙間が空いた状態は、正中離開(せいちゅうりかい)と呼ばれ差別化されています。空隙歯列や正中離開の原因はさまざまです。以下で例を挙げます。
- 先天的な遺伝
- 舌のくせ
- 指しゃぶりのくせ
- 口呼吸
- 歯周病による歯の移動
- 顎と歯のバランス不良
- 上唇小帯(じょうしんしょうたい)の発育
上記のような原因が組み合わさり、歯と歯の隙間が生じます。歯の隙間を放置していると、以下のようなデメリットが生じてしまいます。
- 見た目のコンプレックスになる
- 発音がしづらい
- 歯科疾患リスクが上がる
歯の隙間が原因で見た目や機能面でもお困りでしたら早めの治療をおすすめします。
- セラミック治療とはどのような治療ですか?
- セラミック(セラミックス)を用いた歯科治療をセラミック治療と呼びます。セラミックとは人工歯として用いられる陶器でできた素材で、治療歯の表面を覆う冠(クラウン)に適した素材として定着しています。プラスチック素材のレジンよりも色調が天然歯に近く、劣化しにくい点が優れているポイントです。また金属アレルギーのリスクがない点もメリットのひとつです。一方でもろさがデメリットですが、前歯や小臼歯部分に用いるには問題ないとされています。
- セラミックで歯の隙間を埋められますか?
- お口の条件が合えばセラミックを用いて、歯の隙間を埋めることは可能です。治療法は大きく分けてラミネートベニアとオールセラミッククラウンの2つです。歯の隙間が小さく前歯がしっかり残っている場合は、ラミネートベニアで治療するのが一般的となっています。ラミネートベニアでは、ネイルチップのような形状の、薄いセラミック素材を歯の表面に貼り付けます。歯の表面のみを削るため、麻酔が不要で治療に時間がかかりません。一方で歯の隙間が大きく前歯が欠けているなど、表面的な治療では対応が難しい場合は、オールセラミッククラウンが選択肢に入ります。人目に触れる前歯であっても見劣りしない、自然な美しい歯並びを作ることが可能です。ほかにもオールセラミックブリッジといった治療法で、歯科医師は患者さんのお口に合ったさまざまな方法を提案しています。自身の歯並びをセラミック治療で改善できるか気になる方は、以下の記事を参考にして歯科医院に相談してみましょう。
- セラミック治療以外で歯の隙間を目立たなくする方法はありますか?
- セラミック治療以外の方法で歯の隙間を治療する方法には、ダイレクトボンディングや歯列矯正があります。ダイレクトボンディングとはプラスチック素材であるコンポジットレジンで歯の隙間を埋める治療法です。コンポジットレジンは経年劣化で変色しますが、ほとんどのケースで歯を削らずに治療ができます。コストもセラミック治療程はかかりません。根本的に歯並びを改善したい場合は、歯列矯正がおすすめです。
歯の隙間をセラミックで埋めるメリット・デメリット
- 歯の隙間をセラミックで埋めるメリットを教えてください。
- 歯の隙間をセラミックで埋めると以下のようなメリットがあります。
- 見た目が天然歯に近い
- 銀歯のように金属アレルギーの心配がない
- 特にジルコニアは生体親和性が高い
- 汚れが付きにくい
- 耐久性に優れている
- 経年劣化が少ない
セラミックの特徴は見た目が美しい点と、長期間よい使用感を保てる点です。口元に自信を持ちたい患者さんには、セラミックを用いた治療をおすすめします。
- 歯の隙間をセラミックで埋めるデメリットを教えてください。
- 歯の隙間をセラミックで埋めると以下のようなデメリットがあります。
- 歯を削る必要がある
- もろいため奥歯の治療には向かない
- 歯ぎしりや噛み締めのくせがあると割れるリスクがある
- 被せ物を作るため治療に時間がかかる
歯科治療のメリットとデメリットのバランスを見極めるために注目したいのは、侵襲性と審美性や機能性のバランスです。侵襲とは、治療に伴って患者さんの身体へかかる負担のことです。2016年に国際歯科連盟が低侵襲治療の概念を提唱し、歯科医療の現場でも歯質や歯髄を保存してお口全体の機能を保持する治療が重視されるようになっています。歯の隙間治療を選択する際は、お口にどの程度負担がかかるのか、その負担に見合ったきれいな見た目や噛みやすさ、話しやすさが得られるのかを検討しましょう。
歯の隙間をセラミックで埋める方法
- 歯の隙間をセラミックで埋める方法を教えてください。
- セラミックは自然歯のような美しさと、長年安定して使用できる丈夫さ、生体親和性の高さを兼ね備えた素材です。セラミックは歯の隙間を埋める治療にも適した素材で、治療法にはいくつか選択肢があります。セラミックで歯の隙間を埋める代表的な方法は、ラミネートベニアです。お面を被せるように薄いセラミックで歯の表面を覆い、歯の隙間が埋まるように歯にボリュームを持たせます。しかしどのような歯並びにもラミネートベニアが適応できるわけではありません。歯の隙間が大きい場合や土台となる歯の角度・サイズ・強度などに問題がある場合は、オールセラミックといった方法があります。オールセラミックでは歯を大きく削る必要がありますが、理想的な角度・サイズの人工歯を入れられるため、審美性や機能性の改善に効果的です。
- どのような流れで治療が行われますか?
- ラミネートベニアの場合、まず歯の表面を薄く削ります。オールセラミックの被せ物をする場合は、歯を削る範囲が大きくなります。いずれの場合も被せ物が必要となりますので、歯を削って土台ができあがったところで歯型の採取が必要です。この歯型をもとに歯科技工士が被せ物を製作するのが従来の方法でした。近年ではセレックシステムと呼ばれるコンピュータシステムが普及しつつあります。セレックシステムでは光学カメラで歯型を取り、コンピュータが被せ物を設計し、製作するため短期間で被せ物を準備できるようになりました。最後に被せ物を土台となる歯に取り付け、治療は完了です。
- 治療には保険が適用されますか?
- セラミックを用いて歯の隙間を埋める治療は、見た目の美しさを追求する美容目的の治療とみなされるため、保険適用外の治療です。そのため、ラミネートベニアやオールセラミッククラウンは保険適用外の治療となります。セラミックを用いて歯の隙間を埋める治療は、自費診療で受ける必要があります。
- 治療の費用相場を教えてください。
- 治療費用の一般的な相場は、ラミネートベニアの場合は1歯あたり80,000~100,000円(税込)程度です。オールセラミッククラウンの場合は1歯あたり100,000~120,000円(税込)程度です。参考までに、レジンを用いるダイレクトボンディングの場合は1歯あたり10,000~50,000円(税込)程度だといわれています。
編集部まとめ
歯と歯の隙間、いわゆるすきっ歯は遺伝やお口周りのくせ、歯と顎のバランスなど複数の原因から生じます。
特に人目に触れる前歯に隙間があるとコンプレックスにつながりやすいため、患者さんにとっては深刻な問題でしょう。
歯と歯の隙間は、セラミックで埋めることで治療が可能です。
小さな隙間であればラミネートベニアでの治療がおすすめです。歯を薄いセラミックで覆いながら、歯の隙間を埋めます。
大きな隙間や複雑な口腔内環境でお悩みの場合は、オールセラミックでの治療をおすすめします。歯を大きく削りますが、自然で整った歯並びを構築可能です。
患者さんのお口の状態によって提案できる治療法はさまざまですが、見た目の自然さにこだわりたい場合はセラミックをおすすめします。まずは信頼できる歯科医院で相談してください。
参考文献