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入れ歯はどのくらいもつ?合わなくなる原因やお手入れのポイントを解説

入れ歯を入れると即座に噛む力が回復し、それが永久に続くと思っていませんか。もしそうだったらよいのですが、入れ歯は人工歯であり消耗品です。いつかは作り直しが必要になるかもしれません。

東京医科歯科大学歯学部附属病院の調査では、保険適用で製作した入れ歯の80%は、約3年から4年で作り直しが必要だったという報告もあります。

そこで今回の記事では、入れ歯はどのくらいもつのか・どうしたら長く使えるのかというお悩みにQA方式で回答していきます。ぜひ最後までお読みください。

入れ歯はどのくらいもつ?

入れ歯

入れ歯のメリットを教えてください。
入れ歯のメリットは、以下のようなさまざまなものがあります。
  • 噛む機能・発音・見た目の回復
  • 治療期間が短い
  • 治療コストを抑えられる
  • 外科手術が不要である
  • 着脱可能である

入れ歯は欠損した歯を補い、食べるために重要な道具です。治療期間が短く、型を取るだけで簡単に作れるのもメリットでしょう。保険適用の入れ歯もあるので、製作費用およそ5,000円~15,000円位とコストを抑えつつ見た目の回復・発音の改善などを図れます。インプラントのように外科的処置がないため、全身疾患がある患者さんにとってぴったりな治療といえるかもしれません。着脱が可能なので、就寝時など自分で外して掃除しやすいのもメリットです。

入れ歯のデメリットを教えてください。
入れ歯は、以下のようなデメリットがあります。
  • 痛みが起こる場合がある
  • 違和感に慣れる必要がある
  • 定期的な調整が必要になる
  • 自分の歯やインプラントよりは噛む力が少ない

装着直後は、義歯がお口のなかの粘膜に過度に当たることによる痛みが発生しやすい状態にあります。異物感・喋りにくい・食べにくいといったデメリットがあり、お口を大きく開けると人に気付かれたりするのではないか、との心配もあるでしょう。慣れるまでは何度か調整が必要で、「すぐに何でも噛めるようになりたい」と思っている方には向いていないかもしれません。さらに、定期的な点検とメンテナンスが必要になり、歯周病の患者さんとは相性が悪いので、入れ歯を入れる前に治療を完了する必要があります。また、入れ歯の噛む力は、自分の歯やインプラントには敵いません。取り外しができるだけに外れやすいという欠点もあり、噛み心地・安定性もインプラントやブリッジに比べると劣ってしまいます。

入れ歯の治療の流れを教えてください。
入れ歯を作る工程は、保険診療と自由診療で違いがあります。一般的な入れ歯治療の工程は、カウンセリング・検査・型取り・噛み合わせと歯並びの確認・調整・セットという流れになります。自由診療の場合は歯型採取をより精密に行うため、以下のようになります。
  • カウンセリング
  • 口腔内の診査・治療計画・見積もり
  • 既製トレーによる歯型採取(概形印象)
  • 個人トレーによる歯型採取(精密印象)
  • 噛み合わせの確認(咬合採得)
  • 人工歯の試適・調整
  • 入れ歯の完成

このような長い工程を経て入れ歯を作るため、入れ歯が完成するまでは約1ヵ月かかります。

入れ歯はどのくらいもちますか?
一般的に、保険診療で作ったレジン製の部分入れ歯の使用年数は、約3年~5年と言われています。自費の入れ歯は患者さんの口内環境にもよりますが、強度の高い素材を選択できることから、約5年~15年と寿命が長い傾向があるでしょう。ただし、定期検診を受けて入れ歯のお手入れをきちんとしている方は、保険適用の入れ歯でも10年以上使用している方もいらっしゃいます。入れ歯の寿命は材質や技術もさることながら、お手入れとお口の状態が大きく影響するのです。

入れ歯が合わなくなる原因や壊れる原因

女性の歯

入れ歯が合わなくなる原因を教えてください。
入れ歯は、骨や粘膜が変化したり歯茎が痩せたりして、合わなくなってしまうことがあります。入れ歯が痛くて食事ができない・会話がしにくいといった症状がある場合、入れ歯を外して歯科医院で受診するようにしてください。合わない入れ歯を使い続けることで、周りの歯や粘膜に障害が出てくることがあります。また、部分入れ歯の金具が緩んできた場合には、入れ歯がガタついたり外れたりすることがあるでしょう。プラスティックの部分は削って調整ができますが、金属の場合は預かって修理が必要なこともあり、作り直しが必要な場合もあるかもしれません。このようなトラブルを避けるため、定期検診を受け、入れ歯も定期的にメンテナンスしてもらいましょう。
入れ歯が壊れる原因を教えてください。
入れ歯が壊れる原因には、以下の3つが考えられます。
  • 落下による衝撃
  • 入れ歯が合っていない
  • 材質的な強度の限界
  • 煮沸消毒や熱湯で洗浄する

よくある破損理由には、流し台や洗面台などで洗浄中に落とす・テーブルから間違って落とすといった落下による衝撃があげられるでしょう。シンクに水を張る・水を張った容器の上で入れ歯を洗浄するなど、対策をしっかり取って予防してください。次に、そもそも入れ歯がお口のなかの粘膜と合っていない・噛み合わせが合っていないといった場合、お口のなかで動いて亀裂が入り破損することがあります。また、保険適用のプラスチックの入れ歯はどうしても弾力性に限界があるため、経年劣化とともに壊れやすいかもしれません。さらに、煮沸消毒や熱湯で洗浄することも入れ歯が壊れる原因になりますので、注意しましょう。

入れ歯の寿命を延ばす方法やお手入れのポイント

入れ歯洗浄液

入れ歯の寿命を延ばす方法はありますか?
入れ歯を長持ちさせるには、入れ歯を乾燥させないことが重要です。水またはぬるま湯に浸けて保管しましょう。また、常に口腔内と入れ歯を清潔に保つことで寿命が延びます。歯ブラシで食後すぐに洗浄し、夜寝るときは、入れ歯専用の洗浄液を併用しましょう。食事の後・寝る前には必ず入れ歯を外して清掃し、夜は洗浄液も併用してみましょう。お口に合った入れ歯を維持するため、定期的に歯科検診を受けることも寿命を延ばすポイントです。また、口腔内の健康のためにも、半年に1度は定期検診を受けてください。
入れ歯のお手入れのポイントを教えてください。
入れ歯のお手入れのポイントは、洗浄のタイミングと方法です。食後すぐ、自分の歯を磨くときに入れ歯を外して洗浄しましょう。研磨材の入った歯磨き粉を使うと、入れ歯の表面に傷をつけてしまう可能性があります。入れ歯は衝撃に弱く、落として割るリスクを避けるため、水を張った容器の上で洗浄しましょう。プラークや食べかすが残りやすいのは、入れ歯の歯間と裏側・部分入れ歯のフック部分です。流水のもと、入れ歯専用の歯ブラシか普段使っている歯ブラシで洗浄してください。就寝前は入れ歯洗浄液も併用しましょう。
就寝時には入れ歯を外した方がよいですか?
夜寝る前には、基本的には入れ歯を外した方がよいでしょう。なぜなら、寝ている間は唾液の分泌が減少して、お口のなかに雑菌が繁殖しやすい状態になっているからです。また、24時間入れ歯を装着していると、歯茎や顎への負担は大きくなります。圧迫されていた歯肉を休め、口腔内を清潔に保つためにも入れ歯を外し、歯ブラシで隅々までていねいに磨いておきましょう。外した入れ歯はきれいに洗浄して、水につけておいてください。 ただし、部分入れ歯を外すと歯ぎしりなどで歯列が動く・総入れ歯の高齢者が就寝時に気道を確保するなど、特別な理由がある場合はその限りではありません。かかりつけの歯科医師の判断を仰ぎましょう。
歯科医院で定期的に検診を受ける必要はありますか?
理想的には3ヵ月から半年に1度、入れ歯を作った歯科医院で定期検診を受けてください。お口のなかは常に変化し、歯茎は歳とともに年々痩せてきます。入れ歯に使用している人工歯も噛んでいるうちに磨り減って、だんだんと噛み合わせが合わなくなってくるでしょう。また長時間つけることで入れ歯自体に着色や、自分では気付かないうちに雑菌や汚れが沈着するかもしれません。入れ歯は体の重要な一部分を担いますから、ご自分の口内環境とともに定期的なメンテナンスを行いましょう。入れ歯のガタつきや外れやすくなる主な原因は、骨や粘膜など口腔内の状態が変化するためです。また、入れ歯は人工物なので、どのようによい材料を使って作ったとしても経年劣化は起こります。ガタついて合わなくなった入れ歯は、裏打ちをして修理したり、新しく作り直したりする必要があります。合わない入れ歯を使用し続けていると、粘膜を傷つけてしまったり、噛み合わせのバランスが崩れてしまったりします。定期的に歯科医院で受診し、お口のなかの入れ歯の適合具合を点検してもらってください。

編集部まとめ

歯の模型

今回は、入れ歯がどのくらいもつのか、合わなくなる原因やお手入れのポイントを解説してきました。

生まれつき歯が少ない方や弱い方、歯周病やむし歯・あるいは不幸にも事故で歯を失ってしまった方など、入れ歯が必要になるのはケースバイケースです。最近では見た目もきれいで、噛み合わせの違和感も少ない進化した入れ歯の治療方法も増えてきています。

しかし、どのような入れ歯であっても、人工歯である限りいつかは作り直さねばなりません。お口の状態が変化したり骨が痩せたりして、それまで使っていた入れ歯が合わなくなることもあるでしょう。放置すると、不必要な骨の吸収を引き起こすこともあります。

入れ歯は一度入れたら終わりではなく、歯科治療は一生続きます。毎日きちんとお手入れして、定期的な調整を欠かさず、少しでも長く愛用してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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