入れ歯が合わないと、違和感を覚える場合も少なくありません。この場合、入れ歯を薄くすることは、違和感を軽減する有効な手段のひとつです。
合わない入れ歯を使い続けることにより、話しづらさや食事中の不快感など、日常生活に支障をきたします。
本記事では、入れ歯の違和感の原因や合わない入れ歯のデメリット、入れ歯を薄くする方法などを解説します。
入れ歯が合わないとお困りの方の参考になれば幸いです。
入れ歯の違和感の原因
- 入れ歯にはどのような種類がありますか?
- 入れ歯には、大きく分けて2種類あります。
- 部分入れ歯
- 総入れ歯
部分入れ歯は、むし歯や歯槽膿漏、外傷などにより失われた歯や歯肉などを補うために用いる取り外し可能な装置です。残っている歯にかけるバネのような留め金(クラスプ)、人工の歯(人工歯)、歯肉に接触する床(義歯床)からできています。また、歯と入れ歯に付ける雄雌の装置(アタッチメント)を使用する場合もあります。
総入れ歯は、すべての歯がなくなってしまった場合に用いる装置です。人工の歯(人工歯)と歯肉に接触する床(義歯床)からできています。総入れ歯は、患者の歯茎の形状や噛み合わせ、口腔内の動きに合わせて精密に作製されますが、使用を重ねるなかで顎の骨や歯茎が変化することで、合わなくなってしまうこともあるでしょう。
適合が悪くなると脱離しやすくなったり、発音が不明瞭になったり咀嚼時に痛みが出るなどの不具合が生じることがあります。そのため、口腔内の状態に合わせて定期的な調整や作り直しを行うことが重要です。
- 総入れ歯の違和感の原因を教えてください。
- 総入れ歯を使用していると、入れ歯が外れやすくなることや、入れ歯が歯茎にあたり痛みが出ることがあります。このような入れ歯の違和感の原因は、主に以下の3つです。
- 歯茎や顎の骨が痩せている
- 入れ歯の劣化や変形
- 入れ歯の噛み合わせが不適切
歯の喪失や歯周病、骨粗しょう症などが原因で、歯槽骨と呼ばれる顎の骨が減り歯茎が瘦せてしまいます。入れ歯は歯科用レジンというプラスチック素材で作ることが一般的です。プラスチック素材なので日常的な使用で劣化、破損、すり減りが起こります。これが原因で噛み合わせが悪くなることや違和感が増すことがあります。
- 総入れ歯が厚すぎるとどのような症状が出ますか?
- 総入れ歯が厚すぎることで出現する症状は、以下のとおりです。
- 食べ物を噛むと痛い
- 味や温度を感じにくい
- 話しづらい
合わない入れ歯を使用している場合、歯茎などに圧力がかかり痛みや炎症が出やすくなります。保険適用の入れ歯はプラスチック(レジン)製で厚みが出やすく、味や温度が口腔内の粘膜まで十分に伝わらないため感じにくくなることも少なくありません。総入れ歯が厚すぎると舌が動くスペースが狭くなり、言葉を明確に発音するのが難しくなることや、発音が不明瞭になるケースもあります。
- 部分入れ歯の違和感の原因を教えてください。
- 部分入れ歯の場合、入れ歯を固定するために歯に引っかけるバネ(クラスプ)が原因であることが少なくありません。クラスプが強く締まりすぎていると入れ歯を外すときなどに痛みを感じます。また、歯茎や顎の骨が痩せてしまうと、歯と歯茎にかかる負担が大きくなります。
- 入れ歯を薄くするメリットを教えてください。
- 入れ歯を薄くすると、お口に入れたときの違和感が少なくなることが、大きなメリットです。ほかにも入れ歯を薄くするメリットは、以下のような点があります。
- 話しやすい
- 噛んだり飲み込んだりしやすい
- 味や温度を感じやすい
以上のように入れ歯を薄くすれば日常生活を送るうえで、さまざまなメリットを享受できます。
合わない入れ歯のデメリット
- 合わない入れ歯を使い続けるとどのようなデメリットがありますか?
- 合わない入れ歯を使い続けるデメリットは、以下のとおりです。
- 痛みや炎症を引き起こす
- 口内炎や歯肉炎ができる
- 歯茎に潰瘍が生じる
- 噛み合わせが悪くなる
- 顎の骨が痩せて入れ歯を支えられなくなる
- 残っている歯に悪影響を及ぼす
- オーラルフレイル(お口の機能の衰弱)を引き起こす
- 全身の健康に悪影響が及ぶ
合わない入れ歯を使うと食事のときに、痛くて噛めない、話しづらい、外れやすいなどさまざまな症状が起こります。合わないまま使い続けていると、歯茎を傷つけてしまい、噛み合わせが悪くなるトラブルにつながります。また顎関節への負担、頭痛や肩こり、集中力の低下や気分が落ち込むなど身体全体にまで悪影響を及ぼす可能性があり注意が必要です。
- 厚みのある総入れ歯を使用する場合の注意点を教えてください。
- 厚みのある総入れ歯を使用すると、口腔内の粘膜部分が覆われるため、味覚や温度の感覚が鈍くなる場合があります。保険適用の入れ歯はプラスチック素材(レジン)で作られるため、厚みが出ます。温熱刺激や食品の質感刺激が低下するだけでなく、発音障害が起こることも少なくありません。入れ歯の装着により口腔内が狭まり舌の動きが制限され、味覚の低下を感じることもあります。
入れ歯を薄くしたいときにできること
- 入れ歯を薄くする方法を教えてください。
- 入れ歯を薄くする方法は、以下のとおりです。
- 適切な厚みに削る
- 金属床義歯にする
素材がプラスチック(レジン)でできている入れ歯の場合、適切な厚みに削ることで、入れ歯を薄くできます。また、金属床義歯は金属を使用することで入れ歯を薄くし、お口に入れたときの違和感も少なくなります。
- 保険診療の範囲で入れ歯を薄くできますか?
- 保険診療で作る入れ歯の多くが、プラスチックでできているレジン床義歯です。入れ歯が割れることを防ぐために厚みを持たせる必要があります。入れ歯の厚みが原因で、お口のなかで違和感を覚えることや発音すること、食べ物の飲み込みに影響が出ることがあります。特に痛みは頻繁にみられる症状です。痛みなどがある場合は、適切な暑さに削る調整が必要です。
- 入れ歯の厚みが気になる方に向いている入れ歯の種類を教えてください。
- 入れ歯の厚みが気になる方には、以下のような入れ歯がおすすめです。
- 金属床義歯
- アタッチメント義歯
- テレスコープ
- インプラント義歯
- シリコン義歯
- ノンクラスプ義歯
なかでも、よく使用されているのが金属床義歯です。金属を使用しているため割れにくく、薄くできます。薄くすることで違和感も少なくなり、温度の感覚も感じやすくなります。チタン製の場合、軽く、アレルギーが出にくいのが特徴です。アタッチメント義歯は、バネの代わりに磁石(磁性アタッチメント)の力で入れ歯を安定させます。入れ歯の針金が気になる場合に使用される方法です。
テレスコープ義歯は、残っている歯を削り、その上に金属製のカバーを設置して固定する入れ歯です。インプラント義歯は、インプラント治療と組み合わせることで外れにくくなり違和感が減少します。シリコン義歯は、歯茎に触れる部分がシリコン素材でできており装着感がよくなり痛みの軽減が可能です。ノンクラスプ義歯は部分入れ歯の金属製のバネ(クラスプ)を使用せず、歯茎と同じ色の義歯床で歯茎を覆うように固定するため、自然な見た目になります。
編集部まとめ
入れ歯は、毎日の生活を支えるのに重要な役割を果たします。入れ歯の違和感は、日常生活の質を大きく左右する問題です。
ほんの少しの違和感でも我慢せず、歯科医院で相談することが、快適に過ごすための一歩になります。
合わない入れ歯を使い続けることで、痛みや発音の問題だけでなく顎の骨の変化や全身の不調にまでつながることもあります。
入れ歯を新しく作成した後も、入れ歯の厚みなどにより痛みが出ることがあります。人によりますが4~6回の調整が必要な場合も少なくありません。
入れ歯が厚すぎて痛みや違和感を覚える方には、適切な厚みへの調整や、素材や構造を工夫した入れ歯への変更の検討が有効です。
本記事では、入れ歯の違和感の原因や薄くする方法、選べる入れ歯の種類などを詳しく解説しました。
入れ歯が合わないことでお悩みの方は、一度歯科医師に相談し、自分に合った快適な入れ歯に調整してもらうことをおすすめします。
参考文献