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即時義歯のメリット・デメリット|抜歯当日に入れる入れ歯の治療の流れや費用を解説

即時義歯のメリット・デメリット|抜歯当日に入れる入れ歯の治療の流れや費用を解説

もし歯を失ってしまっても、入れ歯やインプラント治療で人工歯を入れて機能や審美性を取り戻すことができます。

しかし、抜歯してすぐには入れ歯やインプラントを入れられないことをご存じでしょうか。

治療直後は歯がないまま生活をすることになるため、不便な思いをする方も少なくありません。

そのような患者さんの不安や不便を解消するために、即時義歯を入れるという選択肢があります。

今回は即時義歯のメリットとデメリットを紹介します。

抜歯当日に入れる即時義歯とは

考える女性

即時義歯とは、抜歯当日に取り付けられる入れ歯です。

抜歯治療より前に型取りして準備しておけば、入れ歯やインプラント治療の準備期間中にも歯がない状態で過ごす必要がなくなります。

即時義歯は、抜歯する歯がまだ生えた状態で型取りして作成する入れ歯であるため、歯の機能や審美性を完全に回復させることは期待できません。

抜歯治療後に口腔内との兼ね合いを確認しながら、調整しなおす前提で作製します。

即時義歯をそのまま入れ歯として使い続けるほか、インプラントや抜歯後に型取りする入れ歯が完成するまでの一時的な仮の入れ歯に使うケースも少なくありません。

似た言葉に義歯・治療用義歯・仮歯がありますが、これらとは明確に役割が違います。

義歯とは、失った歯の代わりにする人工歯の総称です。入れ歯と同義で使われるケースが少なくありません。

治療用義歯とは、入れ歯を作る際の参考にするために、患者さんの口腔内に実際に入れて過ごしてもらう入れ歯です。

即時義歯とは異なり、抜歯後に時間を置いて、状態が落ち着いた歯茎で型取りします。そして最終的に作製する入れ歯設計のモデルとするため、細かく慎重に調整を重ねます。

仮歯とは治療で入れた歯の土台に取り付けておく、仮の被せ物です。即時義歯とは違い、土台がある前提で取り付けられる簡易的な人工歯です。

即時義歯のメリット

オッケーサインの女性

即時義歯を入れることを選択すると、具体的にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

治療期間が短縮できる

即時義歯を選び、治療開始前に入れ歯の型取りをしておくと治療期間を短縮可能です。

一般的な入れ歯を作る際は、抜歯の治療が終わって1ヶ月程度の時間を置いてから型取りをします。

歯を抜いた直後は歯茎にまだぽっかりと穴が空いており、実際に入れ歯を入れる際の歯茎とは状態が大きく違うためです。

また入れ歯の作製には2ヶ月程度は時間を要します。つまり抜歯から患者さんにピッタリの入れ歯を入れるまでには3ヶ月程度はかかるのが一般的です。

しかし即時義歯を作る際は、まだ歯が生えている状態で型取りして、抜歯後の状態を予測しながら治療開始前に即時義歯を完成させてしまいます。

つまり即時義歯を選ぶと、歯茎の治癒を待ち、入れ歯を作製する約3ヶ月分の治療期間を短縮できることになります。

歯の機能を維持できる

即時義歯ならば、抜歯したその日に人工歯で機能性を補うことが可能です。

一般的な治療法では、抜歯から人工歯を入れるまでの期間、機能性が失われてしまいます。歯がない状態、歯の機能がない状態ではさまざまなデメリットが生じます。

例えば、歯並びが悪くなったり噛み合わせが悪くなったりすることもあるでしょう。抜歯して空いたスペースに隣の歯がずれこんできたり、噛み合っていた歯が伸びてきてしまったりすることもあります。

歯並びや噛み合わせに問題があると、お顔の形にも影響が出るケースがあります。

患者さんの生活に支障がある問題では、発音や食事の問題が挙げられるでしょう。特に食事は、消化吸収にも影響があるため、健康維持の妨げにもつながります。

歯の機能維持は、健康維持のために重要です。即時義歯ならば歯の機能性を維持できます。

自然な見た目を維持できる

即時義歯では、見た目を損なわずに治療が可能です。

歯が失われた状態、特に人目につく前歯が失われた状態は患者さんにとってストレスになるケースが多いです。

歯がないことで人からどう見えているのか、どう評価されるのかと審美的、心理社会的な不安を抱くことが多いといいます。

即時義歯で治療すれば、抜歯後にすぐ人工歯を入れられるため、歯がないまま次回の治療を待つ必要がありません。

特に人と会う機会が多い、働き盛りの若い患者さんに支持されているメリットです。

部分入れ歯・総入れ歯に対応できる

部分入れ歯

即時義歯は、部分入れ歯タイプと総入れ歯タイプのどちらにも対応できます。

部分入れ歯とは、口腔内に残っている健康な歯に金具を引っかけて取り付ける入れ歯です。

小さくて済むため低コスト、かつ自然な印象で治療ができます。ただし、入れ歯を取り付ける健康な歯が残っている必要があります。

総入れ歯とは、口腔内に健康な歯が残っていない場合にすべての歯の機能を補う入れ歯です。

全体の機能を回復できる反面、見た目や使い心地の違和感があるため、患者さんが慣れるまで時間がかかります。

このように部分入れ歯と総入れ歯は構造や対応範囲が異なりますが、即時義歯は構造や対応範囲に関係なく部分入れ歯と総入れ歯のどちらのケースにも対応可能です。

即時義歯のデメリット

歯が痛い

即時義歯の治療では、歯がない期間ができないため、患者さんにとっては不便や不安が少ない治療法です。しかし一方で、一般的な入れ歯やインプラント治療にはないデメリットもあります。即時義歯の治療を検討しているならば、デメリットも理解しておきましょう。

歯肉の状態に合わせて調整が必要

即時義歯は、お口に入れた後に調整しながら、患者さんにピッタリの状態を目指す前提で作られます。

そのため即時義歯を入れた後も、調整のために通院する必要があります。その間、即時義歯の使い心地に違和感が出る可能性は否定できません。

即時義歯を調整しなければならないのは、抜歯後の歯茎が動くためです。抜歯直後の歯茎は、歯がなくなった状態に適応しながら治療ダメージから回復していきます。

すると、抜歯直後はある程度フィットしていた即時義歯が、だんだん合わなくなってしまいます。このズレを調整するために、継続的に通院しなければなりません。

痛みが発生する可能性

即時義歯は、抜歯直後の患部に当たるため、痛みが発生する可能性があります。

痛みのほかにも、腫れ・出血・あざ・不快感が一時的に強く出るリスクを理解しておきましょう。

また即時義歯を取り付けて数日〜数週間は、発音する際と食事する際に違和感が出ることも予想できます。

違和感は、慣れることで時間とともに解消していくでしょう。

作り直しが必要になる可能性

即時義歯は、最終的に作り直しが必要になるケースもあります。その場合は追加で作り直しのコストがかかることを理解しておきましょう。

即時義歯を作製する際は、まだ歯が残っている状態で型取りしなければなりません。つまり治療前のお口の状態から、抜歯して歯茎が治癒した状態を予想して作製していることになります。

不完全な型取りから、歯科医師や歯科技工士の経験で手探りで作られるため、実際に取り付けてみるとうまく噛み合わない部分が出てきます。

即時義歯は、問題が軽微な場合には修理や調整を行うことで対応が可能です。しかし重大な問題がある場合は、作り直しが必要になるケースもあるでしょう。

即時義歯による治療の流れ

歯科治療中の女性

即時義歯を選択した際の治療の流れを確認しておきましょう。

近年では即時義歯の作製補助にも、先進的なデジタル技術が活用されつつあります。

今回は従来の方法と、先進的な方法の両方を紹介します。

型取り

型取り

抜歯治療開始の3日〜1週間前に型取りを行います。

従来の方法では印象材を使います。印象材は、歯茎の形を確認するための粘土状の材料です。

専用のトレーに印象材を平たく盛り付け、歯茎全体を押し付けて型取りします。ただし、歯茎が弱っている場合は、印象材に歯がくっついて抜けてしまうリスクがあります。

デジタルの方法ではこのリスクがありません。デジタルの場合、口腔内スキャナーでお口をスキャンして、歯茎のデータを取得します。

義歯の作製

次に義歯の作製を行います。従来の方法では歯科技工士が作製を担当していました。

まず型取りした型に蝋を流し込み、蝋でできた入れ歯を作ります。その後、口腔内の変化を予想しながら形成します。

調整ができたらプラスチックで作り直して即時義歯の完成です。

デジタルで作製する場合は、まずCAD(computer-aided design)ソフトで取り込んだ口腔内のデータをもとに即時義歯の設計を行います。

設計ができたら、CAM(computer-aided manufacturing)と呼ばれる3Dプリンターのような技術で即時義歯を作製します。

抜歯・義歯の装着

抜歯治療を行い、直後に作製しておいた即時義歯を取り付けます。

取り付けてすぐは痛みや違和感がありますが、審美性や機能はすぐに回復できます。

義歯の調整

歯医者の外観

即時義歯を取り付けた後は、定期的に通院して調整をしてもらいます。歯科医院で調整するのは以下のようなポイントです。

  • 口腔内に当たって痛いところ
  • 噛み合わせが合っていないところ
  • 歯・歯茎・骨と合っていないところ

特に抜歯治療後のダメージから回復している期間は、歯茎が動きやすく重点的な調整が必要です。

抜歯のダメージから完全に回復するために必要な期間は、一般的に6〜9ヶ月程度は必要と考えられています。

即時義歯を入れるのにかかる費用

費用が気になる

即時義歯を入れるのにかかる費用は、総入れ歯の場合と部分入れ歯の場合で異なります。

総入れ歯の場合、100,000~200,000円(税込)程度です。部分入れ歯の場合は、80,000~200,000円(税込)程度となります。

即時義歯の治療は基本的に保険適用可能です。

即時義歯の材料によって保険適用か否かが変わります。しかし多くのケースで修理しやすいプラスチック素材を用いるため、保険適用となるのが一般的です。

即時義歯で失敗しないための歯科医院選びのポイント

歯科治療

ここまで即時義歯のメリットとデメリットを解説してきました。

即時義歯での治療を受けてみたいと考えている方も少なくないのではないでしょうか。

以下では、即時義歯治療を受ける際に注目したい、歯科医院選びのポイントを解説します。

参考にして、後悔のない即時義歯治療を受けられるようにしましょう。

義歯治療の知識と経験が豊富

即時義歯の治療には、豊富な知識と経験が必要です。

即時義歯は、情報の不十分な状態で型取りして、口腔内に入れてから本格的に調整していく義歯です。

そのため正確な型取りをして作製する一般的な入れ歯作りよりも困難な作業となります。

即時義歯の治療を受ける際は、不十分な情報を補える豊富な知識と経験のある歯科医院を選ぶことをおすすめします。

以下のような歯科医院を選びましょう。

  • 義歯作りに力を入れている
  • 時間をかけても質のよい入れ歯を作ってくれる
  • 正しく入れ歯用の素材を使っている
  • 日常生活への影響を考えてくれる

多くの患者さんは、歯科治療でもスピード感を重視しますが、質のよい即時義歯を入れたいならば作製の時間はしっかり取ることをおすすめします。

歯科技工士が常駐

質のよい義歯を作ってもらいたいならば、歯科技工士が常駐している歯科医院を選びましょう。

歯科技工士とは、入れ歯・歯の被せ物・歯の詰め物・歯列矯正装置などの作製や加工、修理などを担当する医療技術専門職です。

高度な精密技工技術を持ち、患者さん一人ひとりのお口に合う入れ歯や被せ物を作っています。

歯科技工士は、歯科医師の指示書にしたがって即時義歯を作製します。

そのため、歯科技工士と歯科医師が連携しやすい環境にあれば、質の高い即時義歯が完成しやすいといえるでしょう。

歯科義歯治療を受ける際は、歯科技工士が常駐していたり、歯科技工所が併設していたりする歯科医院を選びましょう。

まとめ

笑顔のカップル

即時義歯は抜歯が必要な治療をした後に、人工歯を入れる必要がある際の選択肢のひとつです。

一般的な入れ歯やインプラント治療では、抜歯した後、歯茎の状態が落ち着くまで数日時間を置かなければなりません。

しかし即時義歯は、抜歯した直後に人工歯を取り付けることが可能です。

抜歯当日に人工歯を入れられるのは、抜歯治療を行う前に歯茎の型取りを行い、抜歯当日までにおおよその形で入れ歯を作製するためです。

すぐに人工歯を入れられるため、治療直後も見た目と機能性を損なわずに過ごすことができるメリットがあります。

このメリットは、患者さんを歯がない姿で過ごす不安感や不便さからも守っています。

一方で正確な型取りで作っていないことで生じるデメリットも無視できません。

歯茎は抜歯後に治癒して形が変わっていってしまうため、徐々に即時義歯が合わなくなります。そのため定期的な調整が必要です。

また、治療直後に患部に触れるように即時義歯を取り付けるため、痛みが生じるケースもあります。

メリットとデメリットをよく理解したうえで、即時義歯治療を検討する場合は、歯科医院選びにも気をつけましょう。

即時義歯治療には豊富な経験と知識に加え、高い技術力が必要です。

義歯作製に強い、歯科技工士常駐の歯科医院をおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳歯科医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳歯科医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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