歯がむずむずとかゆい原因は、むし歯かもしれません。
初期のむし歯は痛みを生じなくても、神経を刺激してかゆみがでる場合があります。
また、歯のかゆみを生じる病気はほかにもあり、放置すると歯を失ってしまうことも少なくありません。
本記事では、むし歯で歯がかゆくなる原因や治療法を解説します。
お口の健康を保つために、小さな異常も見逃さないよう、正しい知識を身につけましょう。
むし歯で歯がかゆくなる?
歯や歯茎がかゆくなる原因は、歯肉炎や歯周炎によるものがほとんどですが、むし歯によって歯がかゆくなるケースもあります。
歯のまわりがかゆく、むずむずする感じが続く場合には、何らかの異常を疑って早めに歯科医院を受診しましょう。
歯は常に脱灰と再石灰化を繰り返しており、溶けた部分は再石灰化によって修復されていきます。
初期のむし歯であれば、削らなくてもクリーニングだけで治療できるケースも少なくありません。
むし歯はできる限り発生前に予防し、発生しても早めに対処することが歯の寿命の延伸につながります。
歯のむずむずしたかゆみの原因
むし歯のような痛みがなくても、歯の周りがかゆくなったり、むずむずしたりするのにはさまざまな原因があります。
かゆみは放置すると痛みに進行していく場合があるため、早めに歯科医院を受診しましょう。
また、歯がかゆくなる原因を患者さん自身でも把握しておけば、不安なく治療に臨めます。
歯がむずむずとかゆくなる原因は、主に以下の4つです。
- 歯の表面の酸蝕
- ストレス
- 歯の食いしばり・歯ぎしり
- 磨き残し
それぞれの内容を解説します。
歯の表面の酸蝕
むし歯の原因菌が作り出す酸で歯の表面が溶けていくことを、酸蝕といいます。
歯の表面が溶けると、歯のなかの神経が敏感になり、かゆみやむずむずを感じることがあります。
むし歯がさらに進行すると、神経が刺激されて痛みが生じるため、歯を削る治療が必要です。
また、細菌が周りで増殖していき、歯肉炎や歯周炎となるケースも少なくありません。
ストレス
慢性的なストレスが続いていると、唾液の分泌量が減少し、お口の中が乾燥しやすくなります。
乾燥によってお口の粘膜が弱くなり、むずむずしたかゆみが生じる場合もあります。
粘膜が乾燥すると免疫機能が低下し、細菌が侵入して感染症にかかりやすくなるため、注意が必要です。
慢性的なストレスはさまざまな身体の不調の原因となるため、心あたりがある場合には、ストレスケアに努めましょう。
歯の食いしばり・歯ぎしり
歯の食いしばりや歯ぎしり癖がある場合、歯の周りが炎症を起こしてかゆみを生じる場合があります。
食いしばりは、日中に歯を食いしばってしまう癖のことで、歯ぎしりは睡眠中の歯ぎしり癖のことを指します。
どちらも歯や歯茎に大きな負担をかけ、かゆみが進行して痛みや歯の損傷となるため治療が必要です。
睡眠中の歯ぎしりは、本人が気付いていないことも少なくありません。
歯のかゆみだけでなく、顎の疲れや奥歯のすり減りがある場合には、歯ぎしりしている可能性があります。
一緒に寝ている家族などがいない場合には、スマートフォンアプリなどで歯ぎしりを調べてみましょう。
磨き残し
歯磨きの磨き残しがある場合、歯の隙間に挟まった食べかすがかゆみを引き起こすこともあります。
歯並びが悪くなっている場合、歯の隙間や臼歯の奥に食べかすが残りやすく、お口のなかに違和感が残る場合が少なくありません。
磨き残しが続くとむし歯の原因菌が繁殖し、むし歯や歯周病へと進行していきます。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやヘッドの小さい歯ブラシを利用して、磨き残しを防ぎましょう。
また、定期的に歯科医院でのクリーニングを受けることで、セルフケアでは取り切れない汚れを除去できます。
歯のかゆみへの対処法
歯のかゆみが生じたときの、自分でできる対処法を解説します。
歯や歯茎はデリケートな器官であり、日常的なケアが欠かせません。一度失った歯は再生しないため、異常を感じたら早めに対処しましょう。
歯のかゆみを感じたとき、取るべき対処法は主に以下の5つです。
- かゆみをそのままにしない
- 歯磨きを丁寧に行う
- フロスなどで口腔衛生を保つ
- 食事体系を見直す
- 定期的に歯科医院を受診する
それぞれの内容を解説します。
かゆみをそのままにしない
歯のかゆみが一時的なものではなく、慢性的に続く場合は、何らかの炎症を起こしている可能性が高いでしょう。
かゆみを放置すると痛みへと進行し、歯を削ったり歯の神経を取ったりする治療が必要になる場合もあります。
削った歯や除去した神経は再生しないため、そこまで症状が進行する前に対処しましょう。
歯磨きを丁寧に行う
磨き残しの食べかすや一時的な炎症でかゆみが生じている場合、丁寧な歯磨きで治まるケースも少なくありません。
歯の表面が少し溶けても、唾液の再石灰化作用によって再生します。表面の酸蝕も、軽度であれば歯を削る治療は必要ありません。
毎日の歯磨きを丁寧に行い、むし歯の進行を防ぐことが重要です。
また、歯磨きには歯茎のマッサージ効果もあるため、歯茎の炎症を治めるためにも有効です。
歯茎の血行を促進し、炎症物質を洗い流して、新鮮な酸素と栄養を供給しましょう。
フロスなどで口腔衛生を保つ
歯の隙間などにたまった汚れを落とすには、歯磨きだけでは不十分です。
歯の隙間を掃除するフロスや歯間ブラシを活用し、口腔衛生を保ちましょう。
歯の隙間に食べかすが残ったままだと、むし歯や歯周病の原因菌が繁殖し、口腔内の環境が悪化します。
口臭や歯肉炎の原因となりますので、歯磨きだけでなく、フロスや歯間ブラシによるケアも毎日欠かさず行いましょう。
食事体系を見直す
慢性的に歯のかゆみが続く場合や、むし歯になりやすい場合には、食事の見直しも重要です。
むし歯の原因菌を繁殖させる、砂糖の多い菓子や清涼飲料水を控えて、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
歯のかゆみやむし歯を予防する食事で重要なのは、よく噛んで唾液の分泌量を増やすことです。
唾液には殺菌作用や歯の再石灰化作用があり、唾液の分泌量を増やすことが歯の健康維持につながります。
また、噛むことが歯茎や歯槽骨への刺激となり、血行を促進して健康維持に役立ちます。
食物繊維の豊富な食べ物や、砂糖を使用していないガムなどを活用して、唾液の分泌量を増やしましょう。
定期的に歯科医院を受診する
歯のかゆみを感じたら、まずは早めに歯科医院を受診することが重要です。
かゆみの原因を特定し、必要があれば治療やクリーニングを受けましょう。
また、普段から定期的に歯科健診を受けることが、歯肉炎やむし歯の予防にも有効です。
歯ブラシやフロスによるセルフケアだけでは落としきれない汚れをクリーニングしてもらい、お口の健康を保ちましょう。
また、定期検診では歯周ポケットの深さや歯垢の残りやすい場所などもわかります。
重点的に磨くべき場所や、自分で磨くのが苦手な場所を把握できれば、毎日の歯磨きもより効率的になるでしょう。
歯のかゆみがある場合の治療法
歯がかゆい原因がむし歯である場合は、できる限り早期に治療が必要です。
むし歯の治療は歯を削るイメージがありますが、表面のエナメル質が酸蝕しているだけの初期であれば、削らずに治療できる場合もあります。
表面の歯垢を除去し、歯の再石灰化を促す薬剤を用いて、溶けた部分を再生させる治療です。
歯の表面が再生すれば、神経への刺激が減ってかゆみも治まる可能性が高いでしょう。
歯に穴が開いてむし歯が象牙質まで達している場合は、歯を削る治療が必要です。むし歯が大きいほど削る部分も大きくなるため、治療のたびに自分の歯質が少なくなってしまいます。
むし歯が神経や歯の根元に達している場合には、神経を除去して歯の内部を洗浄する根管治療が必要です。
根管治療では歯を大きく削り、除去した神経は再生しないため、歯の強度が大きく損なわれます。大きな治療が必要になる前に、早めの治療を心がけましょう。
歯のかゆみで考えられるほかの病気
歯がかゆい・お口のなかがむずむずする症状は、むし歯以外の病気でも出ることがあります。
慢性的にかゆみやむずむずが続く場合は、早めに歯科医院を受診して原因を特定し、適切な対処を行いましょう。
歯のかゆみが続く場合に考えられる病気は、主に以下の4つがあります。
- 歯周病
- 智歯周囲炎
- 扁平苔癬
- アレルギー
それぞれの内容を解説します。
歯周病
慢性的な歯のかゆみやむずむずが続く場合に、まず考えられるのは歯周病です。
歯周病の症状は歯肉炎と歯周炎があり、歯の周りの歯肉に限定された炎症を歯肉炎・歯を支える骨や歯根膜にまで広がった炎症を歯周炎といいます。
歯周病は自覚なく進行していく場合がほとんどですが、歯肉の炎症によってかゆみやむずむずが生じることも少なくありません。
歯周病は放置しても自然治癒はせず、どんどん進行して歯を支える組織が破壊されていきます。
日本人が歯を失う原因の第一位は歯周病といわれており、自分の歯の寿命を伸ばすためにも、歯周病の早期治療は極めて重要です。
かゆい部分の歯茎が赤く腫れていたり、出血したりする場合には早めに歯科医院を受診しましょう。
智歯周囲炎
智歯周囲炎とは、智歯(親知らず)の周囲で起こる炎症の総称です。
親知らずは第二大臼歯の奥に生える第三大臼歯で、ほかの歯に比べて生え始める時期が極端に遅く、一般的には18~20歳で生えてきます。
すでに顎の骨の成長が終わって、ほかの歯が生え揃ってから生えてくるため、親知らずはまっすぐ正常に生えてることのほうが稀だとされています。
親知らずが横向きに生えたり、ほかの歯を押しのけて生えてくる場合、歯肉に炎症が起こることが少なくありません。
また、親知らずが生えてくるときには、歯肉にかゆみやむずむずが生じることもあります。
親知らずの生え方がいびつで智歯周囲炎を起こしやすい場合には、ほかの歯を守るためにも抜歯を検討しましょう。
扁平苔癬
扁平苔癬とは、お口のなかの頬粘膜に白いレース状の炎症が起こる口腔粘膜疾患です。
扁平苔癬の原因は詳しくわかっていませんが、歯科用金属アレルギー・遺伝的素因・自己免疫疾患・ストレスなどの精神的因子・代謝障害などが原因と考えられています。
歯の近くに扁平苔癬ができると、かゆみや痛みを生じ、飲食物がしみることも少なくありません。扁平苔癬が悪化すると、口腔がんに進行することがあります。
扁平苔癬の治療には、炎症を抑えるステロイド薬や、粘膜の健康を保つビタミン剤などが用いられます。金属アレルギーが疑われる場合には、お口のなかの歯科金属を除去する治療が必要です。
アレルギー
食物アレルギーによって、お口のなかにかゆみを生じることも少なくありません。アレルギーには即発型と遅発型があり、遅発型アレルギーは食事から数時間~数日後に症状が現れます。
アレルギー症状が軽度の場合、本人も食物アレルギーに気付いていないケースが少なくありません。
特定の食べ物を食べた後にお口のかゆみが生じる場合は、食物アレルギーを疑って皮膚科でアレルギー検査を受けてみましょう。
また、金属製の詰め物や被せ物を使用している場合には、金属アレルギーの可能性もあります。
歯科金属を長期間使用している場合、徐々に溶け出して身体に吸収された金属によって、数年かけてアレルギーを発症することも少なくありません。
歯科用金属アレルギーの検査は、歯科医院でも受けられます。
むし歯で歯がかゆい場合にしてはいけないこと
むし歯で歯がかゆい場合でも、かゆい部分を引っ掻いたり刺激したりしないようにしましょう。
かゆい部分を刺激すると、痛みによって一時的にかゆみがやわらぐことがあります。
しかし、根本的な原因は解決されず、粘膜が傷ついて炎症が悪化するため危険です。
また、傷口から細菌が侵入して感染症になる危険もあるため、歯ブラシで強くこすることも避けましょう。
どうしてもかゆみが辛い場合には、氷水をお口に含んで冷やすことで、症状がやわらぐことがあります。
また、歯科医院でお口につかえるかゆみ止めを処方してもらえる場合もあるので、早めに受診しましょう。
まとめ
むし歯で歯がむずむずかゆくなる原因と、主な治療法を解説してきました。
むし歯で歯の表面が溶かされたり、歯の周りで炎症が起きたりすると、神経が刺激されてかゆみを生じることがあります。
かゆみを放置すると進行して痛みとなり、歯を大きく削る治療が必要になってしまいます。
削った歯や除去した神経は再生しないため、むし歯は進行する前の治療が大切です。
また、かゆみを生じる原因は歯周病や扁平苔癬など、ほかの病気の可能性もあります。
歯周病は歯を失う原因となり、扁平苔癬はがんに進行する可能性もあるため、早期治療が極めて重要です。
慢性的に歯のかゆみなどの異常が続く場合には、早めに歯科医院を受診しましょう。
参考文献