部分入れ歯は、タイプによって見た目が大きく違うのをご存知ですか?
歯を失ってしまっても、見た目の問題で部分入れ歯を嫌がる患者さんは少なくありません。
しかし、部分入れ歯であっても目立ちにくく、バレないタイプも多く開発されています。
ご自身にとって適切な治療方法を選択するためにも、部分入れ歯の種類や特徴を知っておきましょう。
本記事では、部分入れ歯の見た目が悪くなる原因や改善方法などを解説します。
部分入れ歯は見た目でバレる?
歯を失った部分を補う治療を補綴治療(ほてつちりょう)といい、部分入れ歯は代表的な補綴治療のひとつです。
補綴治療として広く使われている部分入れ歯ですが、見た目を気にされる患者さんは少なくありません。
他人から見て部分入れ歯だとバレてしまうと、恥ずかしいと感じてしまうのも無理はないでしょう。
部分入れ歯が見た目でバレてしまう原因は、主に以下の2点です。
- クラスプ(バネ)が目立つことでバレる可能性
- 歯肉部分の色の違いでバレる可能性
それぞれの内容を解説します。
クラスプ(バネ)が目立つことでバレる可能性
部分入れ歯は、人工歯・人工歯を支える義歯床・隣の歯に引っかけるクラスプの3つの部品で構成されています。
クラスプはバネとも呼ばれますが、このクラスプが金属製だとお口のなかで目立つため、バレる原因になりやすいでしょう。
前歯はもちろんですが、奥歯であっても、お口を開けた際に金属製のクラスプが目立つことは少なくありません。
クラスプが目立ちにくいタイプの部分入れ歯であれば、バレる可能性はかなり小さくなります。
歯肉部分の色の違いでバレる可能性
人工歯の土台となり、歯茎と密着する部分を義歯床といいます。
義歯床と歯肉の色が違いすぎると、見た目に違和感があり、他人から見てバレる原因となります。
歯と同じように、歯肉の色も個人差があるため、製作の際に色を合わせるのが重要です。
義歯床は部分入れ歯の部位によっては見えにくくなるため、事前にシミュレーションで見た目を確認しておくとよいでしょう。
保険適用の部分入れ歯と自費の部分入れ歯の違い
歯を失った際の部分入れ歯は、基本的に保険適用の治療です。
しかし、部分入れ歯にも素材や形状などでさまざまな種類があり、保険適用外のタイプも多くあります。
見た目や機能性の問題から、保険適用外の部分入れ歯を選ぶ患者さんも少なくありません。
保険適用の部分入れ歯と、保険適用外の部分入れ歯にどのような違いがあるかを解説します。
保険適用の部分入れ歯の見た目の特徴
保険適用の部分入れ歯は、義歯床がレジンというプラスチックの素材で作られ、クラスプは金属製です。
レジンは色合いの調整がしやすいため、義歯床の色は歯肉に近づけられますが、銀色のクラスプはどうしても目立ってしまいます。
部分入れ歯の見た目を気にされる方は、ほとんどが金属製クラスプの見た目を気にされているでしょう。
また、レジンの義歯床は耐久性を出すために厚みが必要で、部位によっては不自然に見えることもあります。
分厚い義歯床は咀嚼時の違和感にもつながり、レジンは熱伝導が悪いために食べ物の熱が伝わりにくいこともデメリットです。
自費の部分入れ歯の見た目の特徴
保険適用の部分入れ歯を自費で製作する場合は、さまざまな選択肢のなかから適切なものを選んでいきます。
クラスプが目立ちにくいノンクラスプデンチャーやホワイトクラスプデンチャーのほかに、クラスプが必要ないコーヌスクローネデンチャーや磁性アタッチメントデンチャーなどが代表的です。
見た目で部分入れ歯だとはほとんどわからず、バレる心配がないため、人と会うのも億劫ではなくなったという方もいるでしょう。
義歯床は金属製のものがあり、レジン製に比べて耐久性が高いため、厚みを大幅に薄くできます。
金属製義歯床は歯の裏側に隠れるようになっているため、見た目でもバレにくく、食べ物の熱が伝わっておいしく感じられるようになるのもメリットです。
義歯床の厚みは増しますが、義歯床とクラスプが一体化したシリコンデンチャーも開発されています。
費用相場の違い
部分入れ歯が保険適用になる場合は、自己負担額を大幅に抑えられます。
部位によりますが、保険適用の部分入れ歯1本あたりの自己負担額は9,000円(税込)程が相場です。
保険適用外の部分入れ歯はさまざまな選択肢があるため、素材や部位によって費用は大幅に異なります。
ノンクラスプデンチャーや金属床の場合、1本あたりの費用相場は100,000~200,000円(税込)で、タイプによってはさらに高額となることもあります。
歯科医院によっては扱っていないタイプもありますので、どのような補綴治療が適切かは、まず歯科医師にご相談ください。
部分入れ歯の見た目をよくする方法
部分入れ歯の見た目がどうしても気になる場合は、保険適用外であっても目立ちにくい部分入れ歯を選んだ方が満足度は高いでしょう。
お口の見た目は一度気になりだすと、他人と会話する際にも気になってしまってコミュニケーションを阻害します。
大きな悩みとなって精神的な不調となるケースもありますので、部分入れ歯の見た目は軽視しないでください。
見た目のよい部分入れ歯には、主に以下のようなタイプがあります。
- バネがないノンクラスプデンチャー
- バネが白いホワイトクラスプデンチャー
- 磁石で着脱するアタッチメントデンチャー
それぞれの内容を解説します。
バネがないノンクラスプデンチャー
部分入れ歯で特に目立つ部品は金属製のクラスプであるため、クラスプを使用しないノンクラスプデンチャーであれば見た目はかなり改善されます。
ノンクラスプデンチャーは樹脂素材の義歯床とクラスプが一体化しており、クラスプも歯肉に近い色のため目立ちにくくなっています。
レジン製の義歯床に比べて厚みが薄いため、お口のなかでの違和感がすくなく、目立ちにくいのがメリットです。
一方で、義歯床とクラスプがすべて樹脂素材の場合は強度が不足して、破損したり残っている歯の負担が大きくなったりするリスクがあります。
クラスプのみが樹脂製で、義歯床は高強度の金属床を用いたノンクラスプデンチャーは、強度と審美性が両立した優れた部分入れ歯です。
デメリットは費用面で、保険適用外であるため高額となります。
ノンメタルクラスプデンチャーの1本あたりの相場は、200,000~500,000円(税込)です。
バネが白いホワイトクラスプデンチャー
ホワイトクラスプデンチャーは、クラスプが白い樹脂製で、歯の色に近いのが特徴です。
患者さんの歯に色に合わせてクラスプを製作し、見た目ではクラスプと歯が一体化しているため目立ちにくくなります。
インプラント治療の一時的な仮歯では、人工歯とクラスプが一体化して義歯床がないホワイトデンチャーが使われる場合もあります。
現在使用中の部分入れ歯の金属製クラスプを、ホワイトクラスプに交換できる場合もあるため、費用を抑えられるでしょう。
金属製のクラスプに比べて強度が劣るため、クラスプ自体を分厚くしなければならず、使用感は劣ります。
ホワイトクラスプデンチャーは保険適用外であるため、費用相場は170,000~230,000円(税込)です。
磁石で着脱するアタッチメントデンチャー
部分入れ歯は、残っている歯にクラスプをかけて固定する方式が一般的ですが、歯根に土台を埋め込んで入れ歯を固定する方法もあります。
磁性アタッチメントデンチャーは、残っている歯に金属製の土台を構築し、入れ歯に埋め込まれた磁石の力で固定します。
クラスプを使わないため見た目からは部分入れ歯とはほとんどわからず、クラスプ周囲に汚れがたまるリスクもありません。
似たタイプで、コーヌスクローネデンチャーは、構築した土台に入れ歯をはめ込んで固定する部分入れ歯です。
コーヌスクローネデンチャーはドイツで普及しているため、ドイツ式入れ歯とも呼ばれますが、こちらもクラスプを使わないため見た目がよくなります。
磁性アタッチメントは、しっかりはめ込んで固定するコーヌスクローネよりも脱着時の負担が少なく、複雑なクラスプがないため洗いやすいさがメリットです。
磁性アタッチメントデンチャーは症例によって保険適用となる場合があるため、歯科医師にご相談ください。
部分入れ歯と総入れ歯の見た目の違い
部分入れ歯と総入れ歯の大きな違いは、残っている歯にかけるクラスプの有無です。
部分入れ歯で特に目立つ部分がクラスプであるため、クラスプを用いない総入れ歯の方が目立ちにくいといえるでしょう。
しかし、高齢の方の場合は、総入れ歯だと年齢の割に歯がきれいすぎることが違和感になる場合もあります。
部分入れ歯はクラスプが目立ちにくいタイプや、クラスプがないタイプであれば目立ちにくく、見た目では入れ歯とバレにくくなります。
自分の歯がわずかしか残っていない場合は、あえて抜歯して総入れ歯やインプラントにする患者さんも少なくありません。
口腔機能を保つことは健康寿命の延伸にもつながるため、どのような治療が適切か歯科医師とよく相談しましょう。
歯を失ったまま放置するリスク
部分入れ歯は、歯を失った部分を補う治療です。
部分入れ歯の見た目が気になって、歯を失ったまま放置してしまう方は少なくありません。
入れ歯などの補綴治療をせずに、歯がないまま放置すると、お口だけでなく身体全体に悪影響がでる可能性があります。
歯を失ったまま放置した場合、懸念されるリスクは主に以下のようなものがあります。
- 歯並びが悪くなる可能性
- 顔貌が変わる可能性
- 噛む力が低下する可能性
それぞれの内容を解説します。
歯並びが悪くなる可能性
歯の一部が抜けたまま放置すると、隣の歯が傾いて移動してきたり、噛み合わせの歯が伸びてきたりする場合があります。
隣の歯が移動すると歯の隙間が大きくなり、食べ物が詰まりやすくなってむし歯のリスクが高まります。
噛み合わせの歯が異常に伸びてきてしまうことを挺出といい、挺出しすぎた歯は抜歯せざるを得なくなることも少なくありません。
の一部がなくなると、歯並び全体が乱れる可能性があり、残った歯の寿命も短くなってしまいます。
顔貌が変わる可能性
歯が抜けたまま放置していると、歯を支えていた歯槽骨が退縮していき、フェイスライン全体が変化する場合があります。
顎の骨が退縮して下顎が小さくなると、噛み合わせも変わるため、咀嚼時に違和感が生じることも少なくありません。
顎の骨が退縮すると顔面の皮膚が余るため、唇にしわができたり頬が垂れたりなど美容面での問題が生じることもあります。
噛む力が低下する可能性
歯は食べ物を噛み切ったりすり潰したりするのに不可欠であるため、歯を失うと咀嚼能力が低下する場合があります。
お口で十分に粉砕されていない食べ物が胃腸に入ると、消化に時間がかかり、消化器への負担が増大します。
十分に噛めていないことが、便秘や下痢など消化器の問題につながる場合もあるため、咀嚼能力は体調全般に影響する重要な機能です。
歯を失った場合の部分入れ歯以外の選択肢
失った歯を補う補綴治療には、部分入れ歯以外にもさまざまな選択肢があります。
部分入れ歯の見た目や使用感がどうしても気になる場合は、ほかの治療方法も検討しましょう。
部分入れ歯以外の補綴治療には、主に以下の2つがあります。
- インプラント
- ブリッジ
それぞれの内容を解説します。
インプラント
インプラントは、歯槽骨に土台を埋め込んで人工歯を支える治療方法です。
土台が骨に埋め込まれているため、安定性が極めて高く、自分の歯に近い感覚で使用できるのがメリットです。
部分入れ歯やブリッジのように、隣の歯に負担をかけることもありません。
デメリットは、インプラントを骨に埋め込む外科手術が必要な点で、糖尿病や高血圧症など全身の状態によっては手術ができないことがある点です。
インプラントは保険適用外となるため、1本あたり300,000~400,000円(税込)程の高額な費用がかかるのもデメリットです。
ひとまず保険適用の部分入れ歯をしてから、どうしても見た目や使用感が気になるようであれば、インプラントを検討するのもよいでしょう。
ブリッジ
ブリッジは、残っている歯に架橋して人工歯を支える治療方法です。
取り外し可能な部分入れ歯に比べて、架橋して固定するブリッジの人工歯はインプラントと同等の安定性が得られます。
義歯床と人工歯は一体化しているため、部分入れ歯のように金属部品が目立つこともありません。
メリットは、架橋するために残っている健康な歯を大きく削らなくてはいけない点で、支える歯の寿命も短くなる可能性があります。
ブリッジは保険適用となるため、自己負担額は大きく抑えられるのがメリットです。
部分入れ歯の見た目や使用感が気になり、保険適用を希望する場合には、ブリッジ治療を検討しましょう。
まとめ
部分入れ歯の見た目を改善する方法や、保険適用外の治療などを解説してきました。
歯を失ったまま放置していると、歯並びが悪くなったり、咀嚼能力が低下したりして大きな悪影響があります。
失った歯を補う補綴治療としては部分入れ歯が一般的で、保険適用であれば自己負担額も抑えられるでしょう。
どうしても部分入れ歯の見た目が気になる場合は、保険適用外で目立ちにくいタイプを選択することもできます。
目立つクラスプが必要ない磁性アタッチメントでも保険適用となる場合もあるため、まずは歯科医師にご相談ください。
参考文献