歯周病やむし歯を発症すると、治療で痛い思いをするだけでなく、長期にわたる通院が必要になったり、歯そのものを失ったりすることがあるため、できるだけ予防したいものです。
その際に検討されるのが、歯科医院での予防治療です。この記事では、予防治療の診療内容や自宅で手軽に行えるセルフケア方法などを解説します。予防治療に関心のある方や歯周病やむし歯の予防を自分で行いたい方は参考にしてみてください。
予防治療の診療内容
歯科医院における予防治療ではどのような診療を行うのかについて解説します。
- 予防治療ではどのような診療を行いますか?
- 歯科医院の予防治療では、以下の診療を行います。
◎PMTC(歯のクリーニング)
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯のクリーニングのことをいいます。歯科衛生士がクリーニング専用の器具を使って、歯の表面に付着した歯垢やバイオフィルム、ステインなどを除去します。
自費診療では、アミノ酸の微粒子を高圧で歯面に吹き付けるエアフロー(ジェットクリーニング)も受けられます。
◎スケーリング(歯石の除去)
スケーラーという器具を使って、硬い歯石を削り取る処置です。手で動かす手用スケーラーと電動の超音波スケーラーを使い分けながら、歯磨きでは取り除けない歯石をきれいに除去します。
◎フッ化物の歯面塗布
高濃度のフッ化物が配合されたジェルを歯面に塗布する予防処置です。市販の歯磨き粉に配合されているフッ化物の約6倍のジェルが使用できます。
◎TBI(歯磨き指導)
TBI (Tooth Brushing Instruction)とは、患者さんそれぞれの歯並び・噛み合わせに適した歯磨きの方法を歯科衛生士が指導する予防診療です。
- 予防治療と定期検診は異なるものですか?
- 予防治療と定期検診は、似たものとしてとらえられがちですが、厳密には異なります。予防治療は、歯周病やむし歯を予防することを前提とした歯科診療であり、原則として健康保険が適用されません。
一方、定期検診は、歯周病やむし歯などの病気を早期に発見することを主な目的としているため健康保険が適用されます。 歯科の定期検診は特殊で、むし歯の検査や歯周組織検査といった検診だけでなく、歯のクリーニングやスケーリング、歯磨き指導なども行います。保険診療で行えるこれらの処置は、自費診療の予防治療よりも、診療時間や使用できる器具や薬剤に制限がかかるため、結果にも違いが見られます。
- クリーニングとスケーリングの違いを教えてください
- クリーニングは、歯の表面に付着したステイン、バイオフィルム、歯垢をブラシやラバーカップで取り除く処置です。それに対してスケーリングは、歯垢が石灰化を受けて石のように硬くなった歯石をスケーラーで取り除く処置を指します。
どちらも細菌の温床を取り除くことになるため、歯周病やむし歯を予防する効果が期待できますが、除去する対象がまったく異なる点に注意が必要です。
予防治療に通うメリット・デメリット
予防治療に通うメリットとデメリットについて解説します。
- 予防治療に通うメリットは何ですか?
- 歯周病やむし歯の予防のために歯科医院へ通うと、次のようなメリットがあります。
- 歯周病やむし歯を予防しやすくなる
- お口の異常を早期に発見できる
- 歯科治療の痛みを軽減できる
- 医療費の抑制につながる
- 見た目がきれいになる
予防治療のメリットは、歯周病とむし歯を予防しやすくなることです。これらの病気は、自然治癒しないことに加えて進行すると歯を失うことにもつながります。
また、歯科医師による口腔内診査を定期的に受けていれば、歯周病やむし歯に加えて、詰め物や被せ物の不具合、口腔粘膜の異常なども早期に発見ができるでしょう。
また、医療費の抑制にもつながります。むし歯は進行する程、治療にかかる費用も高くなります。歯周病が重症化すると、1本あたり数万円から数十万円かかる補綴治療が必要となります。さらには、口腔環境が悪くなることで、胃腸に過剰な負担がかかり、食生活にも制限が加わることで、全身の健康状態まで悪くなることも珍しくないのです。
予防治療でお口の健康を維持できれば、こうした負の連鎖反応を入口の部分で阻止することができるため、結果として生涯医療費の抑制にもつながります。
- 予防治療の効果を享受するにはどの頻度で通うべきですか?
- 一般的には、3~6ヵ月に1回くらいの頻度で歯科医院を受診するとよいでしょう。
歯周病やむし歯のリスクが高い人やお口のなかに入れ歯やブリッジ、インプラントなどが入っている人は、3ヵ月に1回くらいの頻度での定期検診がおすすめです。
- 予防治療を受診するとどのような病気のリスクが減るのか教えてください
- 細菌が定着しにくい口内環境を築きやすくなるため、歯周病やむし歯のリスクが減少します。その他にも、口内炎や口腔カンジダ症、顎関節症などのリスクも減らせます。
- 予防治療に通うデメリットは何かありますか?
- 予防治療にも費用が発生します。保険診療の定期検診であれば、3割負担で1回あたり3,000円程度の支払いですが、自費診療の予防治療は、選択肢した処置や歯科医院によって費用も異なります。
予防治療の効果を長く続かせるため取り入れたいセルフケア
歯科医院の予防治療によって得られた効果を長く維持するためのポイントやセルフケアの方法を紹介します。
- 効果を維持するために毎日の歯磨きで気をつけるべきポイントは何ですか?
- 歯磨き指導で学んだ方法を毎日の歯磨きで実践するようにしましょう。一般的な指導では、次のようなポイントがあります。
- 1本1本、歯を丁寧に磨く
- 歯と歯茎の境目は毛先を45度に傾けて磨く
- 歯を磨く順番を決める
- 1日1回はプラークフリーな状態を作る
- 歯と歯の間の汚れは専用の器具を使って清掃する
歯科衛生士による指導では、この他にも患者さんの歯並びや歯磨きの状況に応じた方法で行われます。
- デンタルフロスや歯間ブラシは毎日使用すべきか教えてください
- 歯と歯の間の汚れは、デンタルフロスや歯間ブラシといった補助的清掃器具を用いなければ取り除けないため、基本的には毎日使用する方がよいでしょう。
- むし歯対策としてマウスウォッシュやフッ素入り歯磨き粉は取り入れるべきですか?
- マウスウォッシュやフッ素入り歯磨き粉の使用で、むし歯予防効果も高くなります。マウスウォッシュは、口腔内の細菌全体の活動を抑えられるため、歯周病や口内炎にも予防効果が期待できます。フッ素入り歯磨き粉は、歯の再石灰化を促し、酸への抵抗力を高めてくれるためおすすめです。
編集部まとめ
予防治療の診療内容やメリット・デメリット、自宅で行えるセルフケア方法について解説しました。予防治療には、PMTC、スケーリング、TBI、フッ化物の歯面塗布などがあげられ、歯周病やむし歯を予防する効果が期待できます。 こうした歯科医院での予防治療とセルフケアを実践することで、歯周病やむし歯を予防する効果がさらに高くなることでしょう。
参考文献