注目のトピック

歯医者

歯根嚢胞(しこんのうほう)とは?症状から治療法、予防法まで解説

歯根嚢胞(しこんのうほう)とは?症状から治療法、予防法まで解説

歯の病気が全身の健康に害を及ぼすことはご存知かもしれません。しかし、歯根嚢胞(しこんのうほう)という病名は聞き慣れない方もいるでしょう。

この病気は、初期にはほとんど自覚症状がないといわれており、知らないうちに進行してしまうのが特徴です。歯の痛みが生じてようやく異変に気付く可能性もあります。

しかし、日頃のケアと正しい知識を身につけることで、歯根嚢胞は予防できます。原因や予防策を理解し、健康な歯を保ちましょう。

歯根嚢胞の原因と症状

女性医師と患者

歯根嚢胞はどのような病気ですか?
歯根嚢胞とは、歯根にできる袋状のものです。この袋のなかには液体が溜まっており、炎症が長く続くことでできてしまいます。原因は、むし歯や外傷で歯の神経が死んでしまい、そこから細菌が入り込んで炎症を起こすことです。
この状態が長期間に及ぶことで、歯根嚢胞を発症してしまいます。顎の骨にできる嚢胞の約6割を占め、永久歯にできやすく乳歯には滅多にできないことが特徴です。歯根嚢胞を放置すると、嚢胞が大きくなってお顔や首が大きく腫れる場合があります。
重症化すれば呼吸困難や敗血症を引き起こすこともあり、治療に時間とお金を費やすことになるでしょう。気付きにくい病気ではありますが、原因や症状を知ることで早期発見や予防につなげることができます。
歯根嚢胞の原因を教えてください。
歯根嚢胞ができる原因は、むし歯が進行して歯の神経が死んでしまうためです。神経が死ぬと、その場所に細菌が入りやすくなり歯根の先に炎症が起きます。
炎症が続くと、膿が溜まり袋のようなものができてしまいます。また、過去に治療を行った歯でも再び細菌が入ったり外傷を与えたりすると同じように嚢胞ができるため、定期的に歯科医院でチェックを受けることが大切です。
特に、過去に歯の神経を治療したことがある方や、歯が欠けたり折れたりしている方は注意しましょう。こうした歯は細菌が侵入しやすく、炎症が起こることで歯根嚢胞のリスクが高まる恐れがあります。
歯根嚢胞になるとどのような症状が出ますか?
歯根嚢胞は、最初のうちは痛みや腫れといった症状がほとんどありません。そのため、自分では気付かないことがあり、歯の治療や痛みなどの異常が起きたときに見つかることもあります。
嚢胞に細菌が感染すると、強い痛みや歯茎の腫れが生じ、日常生活に支障をきたすことがあります。また病状が進行すると嚢胞が少しずつ大きくなり、骨が膨らんでくることもあるため、気になる方は定期的な検診やレントゲンのチェックを行うようにしましょう。
歯根嚢胞以外に膿が溜まる原因はありますか?
膿が溜まる原因は、歯根嚢胞だけではありません。ほかにも根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)や歯周病が原因です。根尖性歯周炎は、むし歯が進んで歯の神経が死んでしまい、その後に細菌が感染して歯根の先に膿が溜まります。歯周病は、歯茎と歯の隙間から細菌が入って、歯茎や骨に炎症を起こします。
どちらも初期段階では症状が出にくく、気付かないまま病気が進行することがあるので、むし歯や歯周病を防ぐことで膿が溜まる病気の予防にもつながるでしょう。具体的には、毎日の歯磨きに加えデンタルフロスや歯間ブラシを使用して歯と歯の間の汚れを取り除くことが大切です。
歯並びの悪い所や歯ブラシが届きにくい奥歯はブラッシングだけでは行き届きません。汚れが溜まると歯石となりむし歯や歯周病の原因になりますので、定期的に歯石除去やプロによるクリーニングを行いましょう。

歯根嚢胞の診断

入れ歯

歯根嚢胞の受診目安と診療科を教えてください。
歯根嚢胞は、むし歯が原因で歯の根元に膿の袋ができる病気です。痛みがないことがあり、定期検査やたまたまレントゲン検査を行ったときに見つかるケースもあります。
小さな歯根嚢胞の場合は近くの歯科医院で治療できることもありますが、大きい場合や治療箇所によっては歯科口腔外科などの病院を紹介されます。歯根嚢胞は無症状のまま進行することがあるため、違和感を覚えた際は早めに歯科医院を受診しましょう。
歯根嚢胞を放置するリスクを教えてください。
歯根嚢胞をそのままにしておくと、膿が広がることで顎の骨が破壊されたり、お顔や首が大きく腫れたりすることがあります。さらに症状が進行すると、お口が開かなくなり呼吸がしづらくなるケースもあり危険です。このような状態になると、入院して点滴治療や手術による膿の排出が必要になることがあります。
さらに、首に管を通して呼吸を補助する処置が必要になることもありますが、早めに治療をすれば軽症で済むことが多いです。
しかし、放置して体内で細菌が増殖し続けると全身の臓器が正常に働かなくなり、敗血症という重篤な状態に陥ることもあります。敗血症は死亡率が3割とされ迅速な治療が命を左右する状態です。このように重症化しないためにも、定期的な歯科検診を受けるようにしましょう。
歯根嚢胞はどのように診断するのですか?
歯根嚢胞の診断では、まず原因となる歯の神経の生死を確認します。その後、レントゲンを撮ることで、歯根の先に丸い影が見えるかを確認します。
ここで影が確認された場合は歯根嚢胞です。膿の大きさは豆粒大から鶏卵大までと、大きさには幅があり、大きくなると骨の中に大きな空洞ができることもあります。こうした画像検査を用いて、歯根嚢胞かどうかを診断することができます。

歯根嚢胞の治療と予防

歯医者で治療

歯根嚢胞の治療法を教えてください。
歯根嚢胞の治療は、嚢胞の大きさや歯の状態によって処置が大きく変わり、治療費も高額になる可能性があります。小さな嚢胞であれば、原因となっている歯の神経を取り除く根管治療で改善が見込まれる場合もあります。しかし、根管治療で症状が改善しない場合や嚢胞が大きい場合は、嚢胞そのものを取り除く処置が必要です。
歯を残せると判断された場合は、歯の先端部分を切って嚢胞を摘出する歯根端切除術が行われます。歯が残せない場合は、歯を抜いて嚢胞も一緒に取り除くことになります。嚢胞が骨や上顎洞まで達している場合には、外科処置が必要となることもあるため、早期の対応が重要です。
歯根嚢胞を早期発見する方法はありますか?
歯根嚢胞は、ほとんど自覚症状がないまま進行するといわれており、早めに見つけるのが難しい病気です。特に慢性的な歯根嚢胞は、痛みや違和感が出にくいので注意が必要になります。
そのため、早期に発見するためには歯科医院での定期検診を受けることが効果的です。レントゲンを撮れば、症状が出ていなくても嚢胞が確認できることがあります。
また、歯が浮くような感覚や噛んだときに強い痛みを感じる場合は、炎症が急激に悪化しているサインかもしれません。どちらにしても、早めの受診が安心感につながるでしょう。
歯根嚢胞の予防策を教えてください。
歯根嚢胞を防ぐには、むし歯をつくらないことが大事です。むし歯を放置すると歯の根っこにまで細菌が入り込み、それが歯根嚢胞につながります。毎日丁寧に歯磨きやフロスを使ったケアを怠らず、歯科医院で定期検診を受けることが予防策です。
特に気になる症状がない場合でも、検診では見えない部分のむし歯や歯周病が見つかることも珍しくありません。また、歯科衛生士から専門的なクリーニングを行ってもらえるだけでなく、磨き残しが多い部分を確認して自分に合った歯磨き方法の指導を受けることができます。かかりつけの歯科医院を持ち、最低でも年に1回は口腔内のチェックを受けましょう。

編集部まとめ

歯ブラシ

歯根嚢胞とは、むし歯や外傷によって歯の神経が死んだ後に形成される膿の袋のことです。

初期は自覚症状が乏しく、気付かないまま進行すると顎の骨が破壊されたり、お顔が腫れたりするおそれがあります。

完治するには手術が必要になる場合もありますので、毎日の歯磨きに加えてデンタルフロスや歯間ブラシを使用してケアを行うだけでなく定期的に検診を受けて、早めの発見と予防を心がけましょう。

また、歯根嚢胞を放置すると重症化して呼吸困難や敗血症など命に関わる場合もあるため、少しでも違和感を覚えたら速やかに受診することが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

1981年日本歯科大学新潟歯学部卒業 / 1981年~1983年横浜 有楽歯科勤務 / 1983年広島市西区にて岸歯科医院開業 / 1998年中区へ移転、(医)ティース プラザ歯科開業,現在に至る / 所属協会・資格: / (公社)日本口腔インプラント学会 理事・指導医・認定医 / (公社)日本歯科先端技術研究所 指導医・認定医 / ピエールフォシャールアカデミー国際歯学会 会員 / 昭和歯科大学歯学部 外部講師 / その他:瀋陽医学院(中国) 客員教授 / ティースアート広島店

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP

電話コンシェルジュ専用番号

電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。

受付時間 平日:9時~18時
お電話でご案内できます!
0120-022-340