保険適用である一般的な素材の入れ歯では素材感に慣れず、何度調整しても合わないことがあります。
入れ歯がフィットしていないと噛んでいるうちに痛みが出現しやすく、食事が十分に楽しめないということもあるでしょう。
このような症状の原因の一つとして、一般的な入れ歯で使用される素材がプラスチック製であり、咀嚼時の衝撃を十分に吸収できていないことがあげられます。
シリコン素材の入れ歯では、プラスチック製の入れ歯のデメリットを改善できる可能性があるでしょう。
今回は、そのようなシリコン素材の入れ歯作成時の費用面に触れながら、メリットやデメリットについて解説していきます。
やわらかいシリコンの入れ歯(コンフォート義歯)とは?
- やわらかいシリコンの入れ歯(コンフォート義歯)とはどのような入れ歯ですか?
- 入れ歯と歯茎が接する部分にシリコン素材を入れることで、噛んだときの圧力をシリコンが吸収してくれます。そのため、せんべいなどの固い食べ物も一般的には問題なく食べられるでしょう。
また、入れ歯に使用するシリコンは生体用素材のため、アレルギー反応なども起きにくい素材です。シリコンの優れた弾力性により、お口のなかで入れ歯がずれにくく安定性が高くなるため、食事の際に歯茎と入れ歯の間に食べ物が挟まるリスクも軽減されるでしょう。
上下どちらか一方の歯がまったくない総入れ歯や部分的に歯が欠如している部分入れ歯など、患者さんの状態に合わせて入れ歯を作成することができます。
- 一般的な入れ歯との違いを教えてください。
- 保険適用でもある一般的な入れ歯は、素材がすべて固いプラスチックであるためクッション性や吸着性が十分ではなく、咀嚼時の痛みや外れやすいなどのデメリットがありました。
コンフォート義歯では歯茎に接している部分には軟らかいシリコン素材が使用されているので、従来型の入れ歯よりも弾力性やクッション性に優れています。そのため、従来型の入れ歯で起こっていた痛みなどのトラブルも発生しにくくなっています。
また、コンフォート義歯は歯茎に密着するような構造であるため、外れにくく安定性にも優れているのが特徴です。そのため、入れ歯と歯茎の間にものが挟まるということも起きにくく、口腔内の衛生環境もよいといえるでしょう。
- シリコンの入れ歯はどのような人におすすめですか?
- プラスチック製の入れ歯を何度調整しても痛みがあったりや外れやすかったりする方には、コンフォート義歯がおすすめです。咀嚼時に痛みが発生してしまうと十分に食事を楽しめない場合もあるでしょう。
また、痛みを気にするあまり十分に咀嚼せずに食べ物を飲み込んでしまうと、消化にも悪い影響を与えてしまいます。食事を十分に楽しめないというのは、生活の楽しみを失ってしまい大きなストレスにつながることもあるでしょう。そのような場合は一人で悩まずに、まずはお近くの歯科医院へ受診し相談することが大切です。
- シリコンの入れ歯の寿命はどのくらいですか?
- コンフォート義歯の寿命は十分に手入れができているか、定期的に歯科医院でメンテナンスを行っているかなどによって変わってくるでしょう。手入れやメンテナンスを十分に行っている場合は、2年から5年は使用することができるのが一般的です。また、歯科医院によってはコンフォート義歯に対して3年間や5年間の保証がついている場合もあります。
しかし、保証があるからといってお手入れや定期的なメンテナンスを怠ってよいというわけではありません。保証するうえで、ほとんどの歯科医院が定期的な検診を受けていることを条件としています。何らかの理由で入れ歯が外れやすくなるなどの不具合が生じた場合は、早めに歯科医院を受診して相談することが大切です。
- シリコンの入れ歯のお手入れ方法を教えてください。
- コンフォート義歯だからといって、従来型の入れ歯とメンテナンス方法が変わるのかというとそうではありません。むしろ従来型の入れ歯と同じ方法で十分にお手入れが可能とされています。コンフォート義歯のお手入れ方法は以下のとおりです。
- 水で入れ歯をゆすぎ、入れ歯専用のブラシで磨く
- 入れ歯用洗剤で除菌する
- 使用する前に、ブラシで磨き洗剤を落とす
一つ目の手技により、入れ歯全体のヌメリや汚れを落とします。このとき注意するのが、歯磨き粉を使用しないということです。歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯が傷つく恐れがあります。
二つ目の手技では、洗剤を容器に満たし歯が完全に浸かっている状態にしましょう。洗剤が入れ歯に触れていない部分があると十分に除菌できないので、必ず入れ歯全体が洗剤に触れるように浸け置きしておくことが重要です。
最後に、使用前に水と専用のブラシで磨くことで洗剤を落とします。この一連の方法を毎日行うことで口腔内の菌の繁殖を防ぎ、入れ歯だけでなくむし歯や歯周病に対するケアも行えるでしょう。そのため、毎日欠かさずお手入れをすることが大切です。
シリコンの入れ歯のメリット・デメリット
- シリコンの入れ歯のメリットを教えてください。
- シリコン入れ歯のメリットは従来型の入れ歯にはないクッション性があることです。このクッション性により咀嚼時の圧力を吸収し、結果的に安定性に優れ痛みの発生も防止することができます。
また、自分のお口にフィットする入れ歯として、インプラントなどを検討されている方もいるでしょう。インプラントは外科手術が必要ですがコンフォート義歯では外科手術は必要なく、そのような点もコンフォート義歯のメリットといえます。
- シリコンの入れ歯のデメリットを教えてください。
- コンフォート義歯は安定性に優れ、メリットがある入れ歯ですがデメリットもあります。デメリットは以下のとおりです。
- 作成直後は厚みがあり、慣れるまでは違和感が大きい
- シリコン素材は汚れがつきやすく、口腔内の衛生環境に注意する必要がある
- 歯科医師によるメンテナンスを定期的に受ける必要がある
- 修理時に時間がかかる
毎日のお手入れをきちんと行うことで、これらのデメリットはある程度軽減できます。また、定期的に歯科医院を受診しメンテナンスを行うことも大切です。入れ歯が合わなくなってしまうと入れ歯の破損の原因になるため、違和感があったら早めの受診をおすすめします。
シリコンの入れ歯の費用相場
- シリコンの入れ歯は保険が適用されますか?
- シリコン素材の入れ歯は保険適用にはなりません。保険適用となる入れ歯は、土台となる部分や人工歯に使用できる素材がプラスチック製と決まっています。入れ歯の作成を検討されている方は、まずは保険適用内にあるプラスチック製の入れ歯を試してみてもよいかもしれません。
プラスチック製の入れ歯を使用してみて、痛みや外れやすいなどのデメリットが自分の許容内かを確認してみましょう。もし許容できない部分があれば、コンフォート義歯を検討してみるのも一つです。
- 費用相場を教えてください。
- コンフォート義歯を作成するうえでの費用の相場は、部分入れ歯の場合は110,000円台~600,000円台(税込)までです。総入れ歯の場合は部分入れ歯よりも高くなり、相場は400,000円台~600,000円台(税込)までです。
費用の基準は各歯科医院によって異なるので、コンフォート義歯を検討されている方は見積もりも含めて一度歯科医院を受診してみましょう。歯科医院によっては、かかる費用に対してローンを組むことができます。
- シリコンの入れ歯は医療費控除の対象になりますか?
- コンフォート義歯もインプラント治療と同様に、医療費控除の対象になる場合があります。治療の内容によっては医療費控除の対象外となる場合もあるため、作成前に事前に歯科医院で相談しておきましょう。
また、医療費控除の対象となる場合は通院にかかる交通費も控除されるので、交通費にかかった領収書も保管しておきましょう。
編集部まとめ
今回は、シリコン素材の入れ歯に関するメリットやデメリットについて解説しました。
シリコン素材の入れ歯は従来型のプラスチック製のものよりもクッション性や安定性に優れ、外れやすさや痛みなどのデメリットが軽減できます。
一方で、長く使用するためには毎日のお手入れや歯科医院でのメンテナンスは欠かさず行う必要があるでしょう。
費用は治療の内容にもよりますが、110,000円台~600,000円台(税込)と幅が広く高額です。作り直しがなるべく発生しないように歯科医師とよく相談しましょう。
歯は食事を十分楽しむためには必要不可欠なものです。咀嚼時の痛みなどで悩んでいる方は、一度近くの歯科医院を受診してみましょう。
参考文献