「歯磨きをしたのになんだか歯がザラザラするような気がする……」と感じたことのある方は少なくないでしょう。歯がザラザラしていると、舌触りが気になって不快に感じるものです。
この歯がザラザラする状態は、一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、歯の表面のエナメル質がザラザラする原因と対処方法や予防方法を解説します。
歯のザラザラを解消して、健やかな口腔環境を保ちたい方は、ぜひ一読してもらえると幸いです。
歯のエナメル質がザラザラする原因
- 歯の構造を教えてください。
- 歯はいくつもの層からできており、外側を覆っているのがエナメル質です。エナメル質は人体のなかでも上位の硬い組織で、歯の内部を保護する役割を持っています。エナメル質の下には、象牙質(ぞうげしつ)が歯の大部分を占めています。象牙質はエナメル質よりもやわらかく、内部には多くの象牙細管と呼ばれる細い管を通じて刺激が歯髄に伝わる構造です。
歯髄は歯に栄養を送ったり、痛みを伝えたりする歯の神経です。歯は歯肉の内側にある歯根膜と歯根の表面を覆っているセメント質によって固定されています。歯根膜は歯根と顎の骨(歯槽骨)をつなぐ繊維のことです。
このように歯にはさまざまな組織が重なって、食べ物を噛み砕くために必要な強度や感覚を維持しています。
- 歯のエナメル質がザラザラする原因を教えてください。
- 歯のエナメル質がザラザラする原因は多岐にわたります。考えられる原因は以下のとおりです。
- 初期のむし歯
- 歯石の沈着
- 酸蝕症(さんしょくしょう)
- 過度な歯磨きや研磨剤入りの歯磨き粉の常用
- 歯ぎしりや食いしばりによる歯の破損や微細なひび
- 特定の薬剤の副作用
エナメル質がザラザラになる主な原因にはむし歯があります。むし歯は口腔内の細菌が糖を分解して酸を作り出し、その酸によってエナメル質が溶かされます。これを脱灰(だっかい)と呼び、エナメル質の表面がザラザラするのはこの脱灰が進行した状態です。
酸蝕症は炭酸飲料や柑橘類、ワインなど酸性の飲食物を過剰摂取することで、胃酸の逆流によってエナメル質が科学的に溶かされる症状です。日常的な習慣によってもエナメル質がザラザラになることがあります。
歯のエナメル質がザラザラする場合の対処方法や治療方法
- 歯の表面がザラザラする場合に自分でできる対処方法はありますか?
- 歯の表面がザラザラする場合に自分でできる対処方法は、歯磨きです。まずは丁寧な歯磨きを心がけましょう。歯磨き粉はフッ素配合のものがおすすめです。ただし、ゴシゴシと強く磨きすぎると、エナメル質を傷つける可能性があるため注意が必要です。
また、食生活の見直しも歯の表面のザラザラ改善に効果があります。酸性の飲食物を控えたり、摂取後はすぐに水で口腔内をすすいだりすることも、酸によるエナメル質の浸食を抑制できます。
また、よく噛んで唾液の分泌を促すことで口腔内を清潔に保ちましょう。キシリトールガムを噛むこともおすすめです。キシリトールは唾液の分泌を促進し、唾液の持つ再石灰化作用や緩衝作用を高めます。この作用が高まることで、口腔内の酸性状態を中和し、エナメル質を保護できます。
ただし、自分でできる対処方法はあくまでも一時的なものです。歯の表面がザラザラする原因がむし歯や歯石、歯ぎしりや食いしばりによる損傷である場合は、歯科医院で治療を受けることをおすすめします。
- 歯石が原因だった場合の歯科医院での除去方法を教えてください。
- 歯石によって歯の表面がザラザラしている場合は、歯科医院で除去してもらう必要があります。歯石の除去はスケーリングといい、除去方法は2種類あります。
一つは超音波スケーラーです。超音波スケーラーは、先端が超音波によって振動する器具になります。超音波スケーラーを当てると歯石が砕け散り、同時に注水することで歯石を洗い流します。広範囲の歯石も効率的に除去できるため、一般的に使用されている歯石除去方法です
。もう一つはハンドスケーラーになります。これは手作業で歯石を削り取る器具です。歯周ポケットの奥深くにある歯石や超音波スケーラーでは届きにくい歯石、歯の表面についたザラザラした歯石などを研磨して滑らかにする除去方法です。歯石だけでなく、歯垢の再付着を防いでザラザラ感を解消できます。スケーリングは歯周病予防にも効果的なため、定期的に処置を受けることをおすすめします。
- 歯の表面に傷やひびなどがある場合の歯科医院での治療方法を教えてください。
- 歯ぎしりや食いしばりによって、エナメル質に傷やひびなどの損傷がある場合は、損傷の進行具合によって治療方法が異なります。損傷が表面のみの軽度なものであれば、フッ素や歯のミネラルパック(MIペースト)などを塗布して、再石灰化を促す処置を行うことが一般的です。
歯のミネラルパックは、リカルデント(CPP-ACP)という牛乳由来を主成分とするペーストを歯に塗布する治療方法です。塗布することで歯の再石灰化の促進や、むし歯予防と知覚過敏の緩和に効果があります。また、エナメル質の修復を助けることができます。歯のミネラルパックは歯磨き後に塗布すると効果的です。
ほかにも、歯の表面を薄く削って歯科用のレジンで損傷部を詰めて修復する、コンポジットレジン修復が用いられることもあります。損傷が深い場合は、歯全体に被せるクラウンを用いた治療が必要となります。クラウンは歯の強度の回復と損傷部の保護を目的とした治療方法です。
- むし歯が原因だった場合の歯科医院での治療方法を教えてください。
- むし歯によって表面がザラザラしている場合は、まずむし歯がどの程度進行しているかを確認します。むし歯が初期段階であれば、フッ素塗布や歯磨き指導が行われます。しかし、むし歯が象牙質まで進行している場合は、むし歯の部分を削り取って詰め物で補う治療が必要です。
一般的にはコンポジットレジンを用いて削り取った穴の部分を修復します。むし歯によって歯の大部分が失われた場合には、金属やセラミック製のインレーやクラウンの装着が必要です。歯髄までむし歯が進行し、激しい痛みを伴う場合には根管治療が必要となります。
むし歯がどの段階であっても、早期発見と早期治療を行うことが求められます。
歯のエナメル質のザラザラを予防する方法
- 歯の表面のザラザラを予防する方法を教えてください。
- 歯の表面のザラザラを予防するためには、日常生活の口腔ケアと食生活の見直しが重要です。口腔ケアは丁寧な歯磨きを心がけましょう。
フッ素配合の歯磨き粉を使用すると、適切な圧力で歯の表面を磨くことで歯垢の付着を防ぎ、エナメル質の再石灰化を促進できます。食生活の見直しはとにかくよく噛んで唾液の分泌を促しましょう。酸性の飲食物を減らすことも、歯の表面のザラザラを予防するのに効果的です。
- 予防のために毎日の歯磨きで注意するべきことを教えてください。
- 毎日の歯磨きで注意すべきことはいくつかあります。
- 歯ブラシの硬さはふつうかやわらかめを選ぶ
- ヘッドが奥歯まで届きやすいものを選ぶ
- 歯磨きをするときは歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で磨く
- スクラビング法で歯磨きする
- フッ素配合の歯磨き粉を使用する
スクラビング法は、歯ブラシの毛先が5mm程度、歯の表面で動くよう横に小刻みに動かす磨き方です。歯の表面の根元に歯ブラシを直角にあてて、歯肉にも当たるようにします。一度に2〜3本の歯を磨くことを心がけましょう。
奥歯から前歯、そして歯の裏まで丁寧に磨きます。なお、歯磨きのタイミングは朝食後や昼食後、就寝前がおすすめです。
- 歯ブラシと併せて使用した方がよいケアアイテムはありますか?
- 歯と歯茎の間など歯磨きだけでは汚れが取れきれない場合は、歯間ブラシやデンタルフロスを使用しましょう。
食後に歯磨きをすることが難しい場合は、持ち運びできるキシリトール配合のうがい薬を使用することもおすすめです。常に口腔内を清潔に保てるよう、状況にあわせた口腔ケアアイテムを使用することが重要です。
- 予防のために毎日の食事で注意するべきことを教えてください。
- 食生活の見直しは口腔ケアにおいて、避けては通れないものです。歯の表面のザラザラを予防するためには、以下の食生活になるよう意識しましょう。
- よく噛んで食べる
- 酸性の飲食物を控える
- 酸性の飲食物を食べた後は口腔内を水ですすぐ
- 野菜やきのこなどの食物繊維が豊富な食品を摂取する
- カルシウムを含む食品を摂取する
- だらだら飲んだり食べたりすることを避ける
意外かもしれませんが、だらだら食事を続けると口腔内が酸性に寄る時間が長くなります。酸性のものを食べていなくても、口腔内では酸性の飲食物を食べているときと似た状態になるため、注意が必要です。
食物繊維は唾液の分泌と歯の表面をきれいにする効果があります。カルシウムは唾液のカルシウム濃度を高めてエナメル質の再石灰化を助ける働きをします。再石灰化を促すためにも、食事はよく噛んで食べることを意識しましょう。
編集部まとめ
今回は、歯の表面のエナメル質がザラザラする原因と対処方法や予防方法を解説しました。
ザラザラする原因にもよりますが、日常生活で意識すれば、ある程度は予防することが可能です。食事はよく噛んで、食後は歯磨きで口腔内を清潔に保ちましょう。
簡単にできる予防方法から、ぜひ取り入れて歯の健康を守りましょう。
参考文献