食事中や食後に、歯と歯の間に食べ物が挟まる経験をしたことのある方は少なくないでしょう。公益社団法人日本歯科医師会が、全国の15〜79歳の男女10,000人を対象にした歯科医療に関する一般生活者意識調査では、2人に1人が口腔の問題を経験している結果が出ています。
さまざまな口腔問題があるなかで、若年層の悩みとして注目されたのは歯と歯の間にものが挟まることでした。
頻繁に食べ物が同じ場所に挟まったり、挟まった食べ物がなかなかとれなかったりする場合には、歯並び(歯列)に何らかの原因が潜んでいる可能性があります。
本記事では、歯の間に食べ物が挟まる原因や放置するリスク、対処法と治療法について詳しく解説します。食べ物が挟まる回数が増えたなと感じる方は、ぜひ一読してもらえれば幸いです。
歯の間に食べ物が挟まる原因
- 歯の間に食べ物が挟まる原因を教えてください。
- 歯と歯の間に食べ物が挟まる原因は多岐にわたりますが、一般的な原因の一つとして挙げられているのは、不正咬合(ふせいこうごう:歯並びが悪いこと)です。
- 歯が傾いている
- 歯がねじれて生えている
- 歯と歯の間にすき間がある(空隙歯列:くうげきしれつ)
上記のほかにも、加齢とともに生じる原因もあります。歯肉が退縮して歯と歯の間に三角形のすき間ができるブラックトライアングルもまた、食べ物が挟まりやすくなる原因の一つです。
また、むし歯によって歯が変形したり詰め物や被せ物が劣化したりすると、段差やすき間ができやすくなります。その他にも歯ぎしりや食いしばりをしやすい方は、歯に過度な力が加わることによって、歯列が微妙に変化して食べ物が挟まる原因になることもあります。
このように歯の間に食べ物が挟まる原因は、歯と歯茎の状態や日常的な習慣によって起こりやすくなるため、注意が必要です。
- いつも同じ場所に食べ物が挟まるのですがなぜでしょうか?
- いつも同じ場所に食べ物が挟まるのであれば、その挟まる部位に特有の原因が存在する可能性が高いでしょう。見ためではそこまで歯並びがガタガタになっていなくても、隣の歯に比べて少しだけ傾いていたり、わずかな段差があったりするだけでも食べ物が挟まりやすくなります。
また、自身が気付いていない癖が影響している場合もあります。不正咬合はうつぶせ寝や頬杖をついたり、日常的な口呼吸や姿勢が悪くなったりすることによっても微妙に歯が変動するため、注意が必要です。
ほかにも、むし歯の初期段階では歯の表面にわずかな段差が生じ、食べ物が引っかかったり挟まりやすくなったりします。そのため、いつも同じ場所に食べ物が挟まる場合は歯科医師に詳しく診察してもらうことが重要です。
歯の間に挟まった食べ物を放置するリスクや対処法
- 歯に挟まった食べ物を放置するリスクを教えてください。
- 歯に挟まった食べ物を放置すると、むし歯や歯周病が発生したり進行させたりする危険性があります。
まず、むし歯は食べ物の糖分を分解して酸を生産して歯のエナメル質を溶かすことで発生します。むし歯が進行すると、歯周病菌が増えて歯肉に炎症を引き起こす可能性が高まるため、注意が必要です。
歯肉炎や歯周炎へと進行すると、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)を溶かしてしまう危険性があります。さらに、食べ物を放置すると口臭の原因にもなります。歯に挟まった食べ物によって引き起こされる口臭は、細菌が食べ物を分解するときに発生する揮発性硫黄化合物(きはつせいいおうかごうぶつ)によって引き起こされる不快な臭いです。
また慢性的に食べ物が挟まった状態は歯肉に常に刺激を与えてしまい、歯肉の炎症や腫れ、出血を引き起こすこともあります。これらの症状が長期間続くと、歯肉が退縮したり歯がグラグラしたり、歯を失う危険性が高まるでしょう。
このように、食べ物のカスはむし歯を始めとした細菌の栄養源となるため、さまざまな口腔内の健康被害を引き起こします。歯に挟まった食べ物は放置せず、きれいに取り除くことが重要です。
- 歯の間に食べ物が挟まった場合の対処法を教えてください。
- 歯の間に食べ物が挟まった場合は歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどのデンタルケア用品を使用して、優しく丁寧に取り除くようにしましょう。
歯ブラシで食べ物を取り除くときは、挟まっている部分に毛先を当てて、細かく振動させるように動かします。ただし、強くこすると歯や歯肉を傷付ける可能性があるため、注意が必要です。
デンタルフロスは歯と歯の間にゆっくりとフロスを入れて、歯の側面に沿って上下に動かすことで、挟まった食べ物を除去できます。歯間ブラシは歯と歯の間の大きさにあったものを選ぶことが重要です。歯に対して垂直にゆっくりと挿入し、前後に動かして食べ物を搔き出しましょう。
出先の場合は、歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシを持っていない場合がほとんどです。そのときは、うがいで口腔内の細菌や食べ物のカスを洗い流しましょう。爪楊枝は、歯や歯肉を傷付ける可能性が高いため、できるだけ避けることをおすすめします。
- デンタルケア用品の選び方を教えてください。
- デンタルケア用品は、お口の大きさや口腔内の状態は個人差があるため、ニーズによって選び方が異なります。まず歯ブラシは、毛先の硬さやヘッドの大きさ、自身のお口に合う形状のものを選びましょう。
一般的には、歯肉に優しいやわらかめからふつうの硬さの毛先で、奥歯までしっかり磨けるコンパクトヘッドのものがおすすめです。デンタルフロスはワックス加工されたものや持ち手付きのもの、香りや味付きのものなどさまざまな種類があります。
歯と歯のすき間が狭い方は、細めのワックス加工されたデンタルフロスがおすすめです。歯間ブラシは歯のすき間に合わせて使用するようにしましょう。さまざまなサイズがセットになっているものも販売されているため、自身のお口にあったものをみつけることをおすすめします。
近年では、外出先で簡単に口腔内をリフレッシュできる個包装のうがい薬もあります。うがい薬はむし歯や歯周病、口臭などの予防に効果的です。
- 自分でケアをする場合の注意点を教えてください。
- 自分でケアをする場合の注意点はいくつかあります。
- 無理に力を加えないこと
- 同じ場所を何度も強くこすらないこと
- 爪楊枝の使用はできるだけ避けること
- 鏡をみながらケアすること
鏡をみながらケアをすることは、意外かもしれませんが大切な注意点です。なぜなら、正しい位置をケアできているかや歯や歯肉を傷付けていないかをチェックできるためです。また、自身で行うケアはあくまでも応急処置になります。
何度試しても食べ物がとれなかったり、何度も同じ場所に食べ物が挟まる場合には、歯科医院を受診することをおすすめします。
歯の間に食べ物が挟まる場合の治療法や予防法
- 歯の間に食べ物が挟まる場合に歯科医院に相談する目安を教えてください。
- 歯科医院に相談する目安は、頻繁に同じ場所に食べ物が挟まったり歯肉の腫れや出血、痛みなどの症状が現れたりしたときです。また、自身でケアをして歯肉を傷付けてしまった場合も、歯科医院での処置が必要となります。
自身でケアするときは、歯科医院でケアの方法を学んだうえで、定期的な歯科検診を受けることをおすすめします。
出血や痛み、口臭が気になった場合には、早急に歯科医院を受診して症状の悪化を防ぐようにしましょう。
- 歯科医院ではどのような治療を行いますか?
- 歯科医院ではまず視診や触診、レントゲン検査を使用して歯の間に食べ物が挟まる原因を特定します。
むし歯の場合は、むし歯の除去と必要な詰め物や被せ物で処置を行います。むし歯の治療だけでなく、段差やすき間ができないよう調整することが一般的です。
歯周病の疑いがある場合には、歯石除去や歯周ポケットの清掃、外科的治療を行います。不正咬合の場合は歯列矯正治療を検討することもあります。患者さんの口腔内の状態や原因に合わせて、治療方法を決めていくことが一般的です。
- 歯の間に食べ物が挟まるのを予防する方法はありますか?
- 完全に歯の間に食べ物が挟まるのを防ぐことは難しい場合もあります。しかし、日々の適切なケアと定期的な歯科検診を受けることによって、食べ物が挟まる頻度を減らすことは可能です。
もちろん、むし歯や歯周病、歯列矯正などの治療を検討することも食べ物が挟まるのを予防する効果的な方法です。自身にあったケアの方法をみつけることも、効果的な予防方法なのでおすすめします。
- 歯の定期検診で食べ物が挟まるのを予防できますか?
- 歯の間に食べ物が挟まるのを予防するうえで重要なことは、歯の定期検診を受けることです。歯や歯肉の状態を検査することはもちろんですが、正しい歯磨きの方法やデンタルフロスと歯間ブラシの使い方についてアドバイスを受けることができます。
歯科医師から指導を受けることで、より効果的に日々のケアを行えるためおすすめです。
編集部まとめ
今回は、歯の間に食べ物が挟まる原因や放置するリスク、対処法と治療法について解説しました。
歯の間に食べ物が挟まることは、老若男女問わず大きな問題となっています。急に食べ物が挟まりやすくなったり口臭が気になったりした場合には、口腔内の状態が悪化している可能性が高いです。
歯科医院を受診して、原因の解明と治療を受けるようにしましょう。歯の定期検診を受けることも、食べ物が挟まるのを予防する方法として効果的なので、おすすめです。
少しでも口腔内の健康維持にお役に立ててもらえれば幸いです。
参考文献