「親しらずはむし歯になりやすい」と聞いたことがある方は少なくないでしょう。
親しらずは奥歯の末端に位置する歯で、歯茎に埋もれたり斜めに生えたりなど生え方に個人差があります。汚れが溜まりやすいためほかの歯と比べてむし歯のリスクが高くなります。
本記事では、親しらずがむし歯になりやすい理由や予防方法・放置するリスク・治療方法を詳しく解説します。
親しらずのむし歯が心配な方の参考になれば幸いです。
親しらずがむし歯になりやすい理由やむし歯の予防方法
- 親しらずがむし歯になりやすい理由を教えてください。
- 親しらずとは、奥歯の末端に位置する歯のことで、20歳前後に生えてきます。親に知られることなく生えてくることが名前の由来とされています。歯が生える場所が残されていなかったり狭かったりするため、完全な形でまっすぐ生えてくることは少ないでしょう。骨のなかに埋まったままになっていたり、斜めや横に生えてきたりすることがあります。
親しらずは奥にあるため歯ブラシが届きにくいだけでなく、完全な形で生えていないと歯と歯の隙間に汚れが溜まりやすいためむし歯のリスクが高くなってしまいます。親しらずが部分的に歯肉に埋まっている場合は、被さっている歯との隙間に汚れが溜まりやすいため歯肉炎のリスクも高くなるでしょう。
- 親しらずがむし歯になるのを予防する方法はありますか?
- 親しらずはむし歯になりやすいため、ケアをして予防することが大切です。むし歯予防のために行うとよいことは以下のとおりです。
- 歯磨きをする
- ケアグッズを使う
- 歯科医院で定期検診を受ける
むし歯予防には、歯磨きが大切です。親しらずは歯ブラシが届きにくいため、歯ブラシの向きを調整しながら磨いたり、ヘッドの小さい歯ブラシに変更したりするとよいでしょう。歯と歯の隙間は歯間ブラシやデンタルフロスを使って汚れを取り除きます。マウスウォッシュやフッ素入りの歯磨き粉を使うことでお口のなかをきれいにしたり、歯の修復を促したりできます。
また、歯や歯茎に痛みや腫れなどの症状がなくても、定期的に歯科医院を受診しましょう。親しらずは奥にあるため自分で歯の状態を確認するのが難しいです。むし歯ができていても定期検診を受けていれば早期発見ができるでしょう。また、歯に汚れが残っている場合は洗浄してもらったり、歯磨き方法の指導を受けたりできます。これらは親しらずだけでなく、ほかの歯のむし歯予防にもなります。
- むし歯以外の原因で親知らずが痛くなることはありますか?
- 歯が痛むとむし歯だと考える方は少なくないでしょう。しかし、親しらずの痛みが出る原因はむし歯や炎症などさまざまです。親知らずが痛くなる原因は以下のとおりです。
- 歯が生えてくるときの痛み
- むし歯
- 歯周病
- 智歯周囲炎
親しらずが生えるとき歯茎や隣の歯を押し、歯茎を突き破って出てくるため痛みを感じます。まっすぐ完全に生えると痛みはなくなりますが、斜めや横に生えたときは痛みが残る可能性があるでしょう。親しらずが完全に生えていない場合は汚れが溜まりやすくむし歯や歯肉の炎症を起こしやすくなります。
智歯周囲炎は唾液中の細菌が親しらず周囲に感染することで、歯茎に炎症が起こる病気です。炎症が広がると顎の骨や筋肉に膿が溜まり、強い痛みや腫れ・お口が開けにくい・喉の痛みなどの症状が出る可能性があるため注意が必要です。
親しらずのむし歯を放置するリスク
- 親しらずのむし歯を放置した場合、どのようなリスクがありますか?
- 親しらずに限らず、むし歯は放置せずに早急に治療をすることが大切です。親しらずのむし歯を放置した場合のリスクは以下のとおりです。
- 腫れて痛む
- 口臭が発生する
- ほかの歯に悪影響を与える
- 身体に悪影響を与える
むし歯は放置しても自然に改善することはありません。進行すると痛みや腫れが出てきて、強くなると眠れないほどの痛みになる場合があります。膿やむし歯菌の影響で口臭が発生したり、むし歯菌が隣の歯を侵食したりするリスクがあります。むし歯の状態を放置するとむし歯や炎症の範囲が拡大して治療が大がかりになるでしょう。
また、むし歯菌が血液のなかに入ってしまうと、心筋梗塞や脳梗塞になる可能性があります。命に関わる病気になる恐れがあるため、むし歯を軽く考えずに早めに歯科医院で治療を受けましょう。
- 親しらずのむし歯は痛みがなくても治療した方がよいですか?
- むし歯は表面のエナメル質に限定されているときには痛みは感じません。痛みがないからといって放置すると、むし歯が神経や象牙質に進行して痛みを感じるようになるでしょう。むし歯は自然に治りません。症状が軽いうちに治療をすることで治療にかかる時間が短く済み、お口のなかやほかの歯への影響を防ぐことができるでしょう。
- 親しらずの周囲の歯茎が腫れている場合も歯科医院に相談した方がよいですか?
- 親しらずの周囲の歯茎が腫れている場合も歯科医院を受診して相談することをおすすめします。細菌によって智歯周囲炎を起こしている場合があり、放置して悪化すると痛みや腫れが強くなったり、顎の筋肉や骨に膿が溜まったりする可能性があります。
初期の炎症であれば抗菌薬・消炎鎮痛薬・うがい薬で改善しますが、悪化すると入院して治療をする必要があるでしょう。何度も親しらずの周囲が腫れる場合は、抜歯をすすめられることがあります。治療法は歯科医師と相談して決めるとよいでしょう。
親知らずのむし歯の抜歯や治療方法
- むし歯になった親しらずは必ず抜歯しなければいけませんか?
- 親しらずがむし歯になったら抜歯をしなければいけないと考える方は少なくないでしょう。基本的にむし歯の治療は抜歯を選択することがほとんどですが、抜歯しなくてもよい場合があります。抜歯せずに治療する可能性があるのは以下のとおりです。
- 初期のむし歯
- 上下とも完全に生えており噛み合わせに問題がない
- 入れ歯やブリッジの土台として必要
- 親しらずを移植する可能性がある
むし歯になった親しらずを抜歯せずに治療をする可能性があるのは、まっすぐ完全に生えている場合です。斜めや横に生えている場合は再びむし歯になる可能性や歯並びに悪影響を与える可能性が高いため抜歯を勧められるでしょう。親しらずの状態だけでなく、噛み合わせや周囲の歯の状態によっても抜歯を検討します。治療方法は歯科医師に確認しましょう。
- 親しらずを抜歯するときの麻酔方法は選べますか?
- 親しらずの抜歯は基本的に局所麻酔が用いられます。局所麻酔とは歯茎に注射をして痛みを感じなくする方法で、抜く部分の周囲だけを麻痺させる麻酔です。一般的な方法で歯科医院で抜歯するときは、局所麻酔で行います。意識がはっきりしているため、会話が可能です。
一度に複数本抜く場合や、特別な事情がある場合は入院をして全身麻酔で抜歯をします。局所麻酔だけでは不安が強い方は鎮静しながら行う方法もあるため、歯科医師に相談して麻酔の方法を決めましょう。
- 親知らずの抜歯後の過ごし方を教えてください。
- 抜歯後のトラブルを防ぐために、日常生活のなかで気を付けるところがあります。抜歯後の注意点は以下のとおりです。
- うがいをしすぎない
- 激しい運動・入浴・飲酒・喫煙を控える
- 抜歯箇所に刺激を与えない
- 食事の内容や食べ方に注意する
- 抜歯窩をきれいにする
- 処方された薬は用法用量を守って飲む
抜歯後は歯茎に穴が空いた状態になるでしょう。痛みや腫れがあり、傷口を刺激すると出血する恐れがあります。食事は固い食べ物や刺激物を避けて、傷と反対側の歯で噛むようにしましょう。傷をきれいに保つためにうがいは大切ですが、やりすぎるとかさぶたが剥がれて出血する恐れがあるため、やりすぎないようにしましょう。
また、細菌感染にも注意が必要です。抗菌薬が処方されている方は、しっかりと飲み切りましょう。抜歯窩に食べかすが溜まらないようにすることが大切です。傷口に刺激を与えると出血や細菌感染の恐れがあるため、指や歯ブラシで触らずにうがいをしましょう。
- 親しらずのむし歯の抜歯以外の治療方法を教えてください。
- 親しらずのむし歯の治療は基本的に抜歯を検討します。なかには抜歯をせず削る治療を選択することがあるでしょう。初期のむし歯で周りの歯に悪影響を与えておらず、親しらずがまっすぐ完全に生えている場合は抜歯をせずに治療できる可能性があります。また、歯茎に親しらずの一部が埋まっている場合は、歯茎の一部を除去して親しらずを露出させて歯磨きをしやすくする治療をすることもあります。
編集部まとめ
本記事では、親しらずがむし歯になりやすい理由や、治療方法を詳しく解説しました。
親しらずは完全に生えていることが少なく、奥にあるため汚れが溜まりやすい歯です。むし歯のリスクが高いため歯磨きの方法の工夫や、歯科医院で定期検診を受けるとよいでしょう。
親しらずに痛みや腫れがあるときは、むし歯や智歯周囲炎の可能性があります。治療は基本的には抜歯ですが抜歯しなくてもよい場合もあるため、歯科医師に確認しましょう。
親しらずのむし歯や智歯周囲炎を放置すると隣の歯に悪影響を与えたり、血液中にむし歯菌が入ると命に関わる病気の原因になったりするため早めに歯科医院で治療を受けましょう。
参考文献