親知らずの抜歯はしみるという話を聞いたことがあり、不安に感じる方はいませんか。歯医者さんで抜歯する歯が親知らずであることは、少なくありません。
現代の日本人の骨格の変化により、親知らずがまっすぐに生えにくかったり、まったく生えなかったりすることがあります。 生えた場合でも、さまざまな理由から適切に歯磨きができず、むし歯になるケースもあるでしょう。
本記事では、親知らずの抜歯後のしみる原因や対処法を具体的に解説します。 親知らずの抜歯後の状態や対処法を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
親知らずの抜歯後のしみる症状について
親知らずの抜歯後はさまざまな症状が出る場合があります。親知らず抜歯後に出現する可能性がある症状は、以下のとおりです。
- しみる 腫れる
- 痛みが出る
- 口が開きづらくなる
- 顎に痣ができる
- 麻痺やしびれが出る
どの症状が出るかには個人差があります。しみる・腫れ・痛む症状が出現する部位は、抜歯した周囲の歯です。 しみるのは、多くの場合手前の歯です。
その他にも抜歯した部分や周囲の歯茎がしみることがあります。 冷たいものや熱いものなどで刺激を与えることでしみますが、歯茎の状態が改善すれば自然に治まるとされています。
親知らずの抜歯後にしみる原因
親知らずの抜歯後にしみる原因は、以下のとおりです。
- 歯根の露出
- ドライソケット
抜歯は麻酔が必要な外科的手術で、歯肉切開や粘膜骨膜弁剥離などを行います。患者さんによって親知らずの状態は異なります。
患者さんの親知らずの状態に合わせた処置が必要です。 抜歯は口腔内に大きな負担がかかり、さまざまな症状が出るリスクがあります。抜歯で出現する症状のなかで、しみる原因を解説します。
歯根の露出
抜歯後、歯茎が下がることで、歯根が露出した状態となります。歯根の露出がしみる(知覚過敏)症状の原因の1つです。
通常は抜歯当日に血餅(けっぺい)ができ、3~4日すれば徐々に上皮化が始まります。血餅は、傷口を保護し細菌感染を防ぐかさぶたのような役割があります。
歯根の露出の原因は、抜歯により骨にかかる刺激がなくなるため、顎の骨が少しずつ減って(骨の吸収)しまうためです。 歯は食べ物を噛むことで顎の骨に力を伝える役割を持ち、歯があることで骨は健康を保ちます。
ドライソケット
ドライソケットの状態は、以下のとおりです。
- 抜歯窩に血餅ができずに骨が露出する
- 歯茎の激痛が続く
- 抜歯窩から悪臭がする
- 歯茎が腫れる
通常は抜歯当日に血餅ができ始める傾向ですが、ドライソケットによる影響で抜歯後にしみたり痛みを感じたりする症状が約2週間~1ヶ月続く場合があります。 ドライソケットは心臓の拍動のように脈打つようにズキンズキンという激しい痛みが常にある状態です。
抜歯窩(抜歯後の歯茎の穴)を消毒・塗薬で保護・内部を刺激するなどの治療で、症状の改善が期待できます。 しかし、症状が改善しない場合は、歯科医院に相談しましょう。再度歯茎の外科処置が必要になる場合があります。
親知らずの抜歯後にしみる症状の持続期間
親知らず抜歯時の縫合や外科的侵襲などの影響で、しみたり腫れたりなどの症状が出現します。 原因によって、しみる症状の持続期間は異なります。
持続期間の目安は、以下のとおりです。
- 知覚過敏:数日~2週間程度
- 歯根の露出:1週間~1ヶ月程度
- ドライソケット:2週間~1ヶ月以上
約1週間で血餅が肉芽組織に変化すれば、血餅が取れて骨が露出することはほとんどないとされています。 傷を保護するためにできる組織である肉芽組織は、血餅以上に抜歯窩(ばっしか)に定着するためです。
骨の再生が始まるのは、抜歯後3週間~1ヶ月です。抜歯窩が見えないくらいになるまでは約1年かかるとされています。 抜歯後の口腔状態によってしみる症状が持続する期間は変わるため、挙げた持続期間は目安としておきましょう。
親知らずの抜歯後にしみるときの対処法
親知らずの抜歯後のしみる状態を放置していると、日常生活に支障が出ることもあります。基本的には炎症が治まれば、しみる症状も改善するとされています。
しかし、場合によっては歯科医院での処置が必要になることもあるのです。しみる状態を我慢せずに対処法を試したり、歯科医院で相談したりしてみましょう。
冷たいものや熱いものの摂取を避ける
親知らずの抜歯後傷口が治るまでは、食べ物に気を付ける必要があります。 抜歯術前・術後の生活や注意事項について、歯科医師から説明があるためしっかり理解し、歯科医師の指示に従いましょう。
避けた方がよい食べ物は、以下のとおりです。
- 冷たいもの
- 熱いもの
- 辛いもの
- その他刺激物
- 硬いもの
- アルコール
- 柑橘系や酢の物
- PH値の低い飲み物
PH値の低い飲み物は、ジュース・炭酸飲料・スポーツドリンクなどです。特に冷たいものや熱いものは、しみる部分に悪影響を与えるため、できる限り避けましょう。 PH値が低い飲み物は、歯を溶かす原因となるとされています。
症状が落ち着くまでは親知らずを抜歯した場所に負担をかけないように、やわらかくて栄養価のある食べ物の摂取を心がけることが重要です。
痛みがある場合は鎮痛剤を服用する
親知らずの抜歯後に、痛みや腫れなどの症状・感染予防に対する薬が処方されます。しかし場合によっては、鎮痛薬が身体に合わないことがあります。
安全性を考慮して歯科医師に伝える必要のある方の例は、以下のとおりです。
- 薬のアレルギーがある
- 消化性潰瘍の合併症を有する
- アスピリン喘息の合併症を有する
- 高齢者の方
- 妊婦の方
上記のような方は、呼吸困難やショック症状など、身体に悪影響を与える恐れがあるため注意が必要です。 しかし、一般的には痛みがある場合は鎮痛薬を服用する方がよいとされています。
歯科医師は患者さんの状態を確認したうえで、処方しています。薬をできる限り服用したくないと考える方は歯科医師に相談し、指示を仰ぎましょう。
親知らずの抜歯後は、痛みで日常生活に支障が出る可能性があります。痛みは永遠に続くものではないとされているため、まずは歯科医師の指示どおりに服用してみましょう。 万が一、めまい・頭痛・嘔吐・発疹などの副作用が出た場合は、服用を中止し歯科医院を受診することが重要です。
歯科医院で知覚過敏処置を受ける
歯科医院での主な知覚過敏処置は、以下のとおりです。
- 歯周病治療
- 咬合治療
- マウスピースの装着
- 隙間を埋める
- 薬剤の塗布
歯は一時的にしみる症状があっても、時間の経過とともに自然に治るとされています。 知覚過敏症状が軽度の場合は、歯科医院で生活習慣の見直しを指示されることがあります。
自宅でできる知覚過敏予防は、以下のとおりです。
- 適切な歯磨き方法を行う
- シュミテクトのような知覚過敏用ペーストで歯磨きする
- キシリトールガムを噛みエナメル質の再石灰化を促す
- 酸性の飲食物の過剰摂取を控える
酸性の飲食物とは、以下のとおりです。
- 動物性食品:チーズ・バター・マーガリン・卵・鶏肉・豚肉・牛肉・鮭など
- 穀物:豆類・くるみ・ココア・チョコレートなど
- 飲料:ジュース・炭酸飲料など
酸性の食品を摂りすぎると、むし歯の進行を促進してしまいます。基本的に、体内を弱アルカリ性に保つことが理想です。 しかし、酸性・アルカリ性をバランスよく摂ることで健康な身体を作ることができます。
親知らずの抜歯後にしみるときの受診目安
親知らずの抜歯後はしみることがあります。必ずしもすぐに歯科医院を受診する必要はありません。 しかし、症状があまりにも長引く場合は、歯科医院を受診することが大切です。
受診の目安は、以下のとおりです。
- しみる症状が改善しない場合
- 強い痛みや腫れが続く場合
- 食事をとれない場合
上記の場合は、無理せずに歯科医院を受診し、相談・治療を受けましょう。
しみる症状が改善しない場合
抜歯後しみる症状は、約2週間で治まることが多い傾向にあります。しかし、症状には個人差があります。 抜歯後の注意事項を適切に守っているのに、2週間経っても症状が改善しない場合は、歯科医院で相談した方がよいでしょう。
強い痛みや腫れが続く場合
抜歯後は痛みや腫れが起こることが少なくありません。強い痛みや腫れが続くときは、まず歯科医院から処方されている鎮痛薬を服用して様子をみましょう。
しかし、ズキンズキンと激しい痛みが2週間以上続く場合、ドライソケットを引き起こしている可能性があります。ドライソケットの原因は以下のとおりです。
- 過度なうがいをする
- 血餅ができなかった・取れてしまった
- 喫煙をする
- 飲酒をする
- 激しい運動をする
- 熱いお風呂に入る
- 舌で抜歯窩に触れる
歯科医院を受診すると、口腔内を診察して適切な治療や処方をします。治療内容は、以下のとおりです。
- 抗生物質を処方する
- 生理食塩水で抜歯窩を洗浄した後薬を穴に詰める
- 再度外科的処置を行う
ドライソケットは、抜歯窩を保護する血餅ができないことで生じます。そのため、再度麻酔をかけ、抜歯窩に傷をつけ出血させる処置を行うことがあります。 新しい血餅ができれば、抜歯治療が適切に行えるでしょう。
ただし、ドライソケットによる炎症が起きている状態では、麻酔がかかりにくいため痛みがある可能性があります。 ドライソケットにならないように、行動することが重要です。
食事を摂れない場合
どうしても食事が摂れない場合は、自己判断しないことが重要です。基本的には抜歯窩がふさがれば、普通に食事をすることができます。 強い痛みがある場合は、まず鎮痛薬服用を試し、食べられるものを食べてみましょう。
しかし、7〜10日経っても抜歯後の症状が治まらず、食事が摂れない場合は歯科医院を受診し相談する方がよいでしょう。抜歯後におすすめの食事は、以下のとおりです。
- おかゆ
- うどん
- ドリア
- 茶碗蒸し
- 豆腐
- ポテトサラダ
上記のようにやわらかく栄養価の高い食べやすいものを摂取しましょう。
親知らず抜歯後の注意点
親知らずの抜歯を行う前に、歯科医師から抜歯の手術内容と注意点について説明があります。治療を適切に行うためには患者さんの理解が必要です。
注意点を守らないと、抜歯後のしみる・痛み・腫れなどの症状が長引く恐れがあります。日常生活に支障をきたさないために、自分にできることをしましょう。
抜歯当日は安静にする
親知らずは口腔外科手術で抜歯を行います。麻酔をかけると身体の負担が大きいため、抜歯当日は安静が必要です。 避けるべき行動は、以下のとおりです。
- 入浴
- 激しい運動
- 自動車やバイクなどの運転
- 危険な機械の操作
入浴や激しい運動は血行を促進してしまうため、抜歯した部分が出血する恐れがあります。術後良好の場合は、入浴ではなくシャワーであれば浴びてもよいでしょう。
術後1~2日は、出血したり唾液に血が混ざったりする可能性があるため不安になるかもしれません。しかし、多少の出血は問題ないとされています。
もしどうしても不安な場合は、歯科医院での相談をおすすめします。 また、抜歯後完全に麻酔や薬剤の影響が体内からなくなるまでは安全を考慮して、運転や機械の操作は行わないようにしましょう。
抜歯した部分を触らない
抜歯した部分は、無意識に舌や手で触れてしまうことがあります。しかし、それにより感染のリスクが高まり、治るまでに時間がかかる可能性があります。
抜歯した部分は、抜糸するまでは触らないように気をつけましょう。万が一抜歯窩に食べ物が詰まっても、無理に触ったり歯磨きしたりしてはいけません。
うがい薬を使って軽くうがいをするか、歯科医院に相談することが必要です。
過度なうがい・喫煙をしない
抜歯後、口腔内に違和感や気持ち悪さからうがいをしてしまう方が少なくありません。しかし、過度なうがいで、傷口を保護する血餅ができなかったり取れてしまったりする恐れがあります。
また、唾液にはさまざまな役割があります。唾液の役割は、以下のとおりです。
- 消化作用
- 抗菌作用
- 洗浄作用
- 活性酸素の分解
- 口腔内の保護
- 組織の修復
- 歯の再石灰化の促進作用
抜歯後に無理なうがいをすると、自然治癒力がうまく働かない恐れもあります。 唾液の働きを妨げると治癒に時間がかかってしまうため、過度なうがいをしないようにしましょう。 また、喫煙は合併症のリスクがあるため、抜歯後7~10日程度は控えることが重要です。
処方薬をしっかり服用する
親知らずの抜歯後、歯科医師は患者さんに必要な薬を処方します。もし薬について不安感を持っていたり、疑問があったりする場合は、歯科医師に相談しましょう。
症状がなくても、抗生剤は細菌感染を防ぐために必要です。自己判断で勝手に服用を中止せず、歯科医師の指示どおりに処方された分はすべて服用することが重要です。
ただし、服用後に吐き気や発疹などの症状が出た場合は中止し、歯科医院を受診しましょう。
まとめ
親知らずの抜歯後はさまざまな症状が出現し、しみることもその一つです。通常は2週間程度で症状は落ち着くとされています。しかし、場合によっては1ヶ月以上も長引くこともあります。
その主な理由は、歯根の露出やドライソケットです。冷たい・熱い飲食物の摂取を控える、鎮痛剤を服用する、歯科医院で知覚過敏の処置を受けるなどでしみる症状の軽減が期待できます。
また歯科医師からの抜歯についての説明や注意事項は、しっかりと理解することが重要です。ご自身の健康な日常生活を守るために、自己判断することはやめましょう。
参考文献