セラミックの一種であるジルコニアは、金属に匹敵する硬さを備えています。通常のセラミックとは異なり、強い圧力が加わっても割れる可能性が低い素材です。審美面では通常のセラミックに劣るため、仕上がりに不満を抱えている方は少なくありません。
ジルコニアと周りの天然歯との色が合わないと感じて、何とかして改善したいと思っている方もいるでしょう。この記事では、ジルコニアの色が合わない原因と解決方法を詳しく解説をします。
ジルコニアの色が合わない原因
ジルコニアと周りの天然歯の色が合わない原因を解説します。
- ジルコニアの色が周りの歯と合わない原因を教えてください
- ジルコニアの色は、以下の原因で周りの歯と合わないことがあります。
◎色の選択を誤っている
ジルコニアにはいくつかの種類があり、なかには色の選択肢が豊富なジルコニアもあるのですが、選択を誤ると周りの歯と色が合わなくなってしまいます。
フルジルコニアは強度が高い材料ですが、色調の再現性に乏しく、周りの歯と色が合わないことが少なくありません。プレミアムジルコニアは色調の微調整が可能で、自然な色合いを再現できます。ジルコニアステインは、天然歯特有のシミや陰影まで再現できる材料なので、周りの天然歯と調和させやすいでしょう。
◎光の透過性の違いによる影響
ジルコニアの色味が自然であっても、光が当たったときの見え方の違いで違和感を感じてしまう場合があります。これは、ジルコニアの透過性が乏しいことが影響しています。天然歯のエナメル質は半透明の性質を持っており、光が当たったときには独特な質感を放ちますが、透過性に乏しいジルコニアはそれとは異なる見た目となるからです。
◎天然歯の色が変化した
ジルコニアを装着した当初は自然に仕上がっていても、周りの歯の色が変化したら違和感が生じます。天然歯は、加齢や食事の影響によって黄ばむことがあり、ジルコニアの色が合わないと感じてしまうことがあります。
ジルコニアを装着後にホワイトニングすると、天然歯との色の違いが強調されてしまうことがあります。ジルコニアの被せ物治療後にホワイトニングを行うと、天然歯だけが白くなって違和感が生じることもあるのです。
◎歯科技工士の技術が不足している
ジルコニアは、通常のセラミックよりも色の再現性に乏しい材料ではありますが、ある程度は天然歯に近づけられます。ただし、実際に手を動かして人工歯を作る歯科技工士が未熟で、技術も低い場合は、ジルコニアの色を天然歯に近づけることが難しくなります。
◎歯科医師とのコミュニケーション不足
ジルコニアの色や仕上がりへの満足度は、患者さんの価値観によって変わります。一般的には自然に見える色でも、患者さんにとっては不自然に感じる場合もあるからです。このような、患者さんの希望との食い違いを避けるためには、歯科医師との密なコミュニケーションが大切となります。
- ジルコニアの色が合わなくなりやすい歯を教えてください
- 基本的には、どの歯も同じような理由でジルコニアの色が合わなくなるのですが、高い審美性が求められる前歯部では特に注意が必要です。前歯は、ちょっとした色の変化でも違和感につながりやすいため、ジルコニアの色の調整を誤ると違和感が生じます。
前歯は着色や変色が目立ちやすい歯であるため、ジルコニアで治療をした後に色が合わなくなりやすいといえるでしょう。
- ジルコニアが変色してしまう原因を教えてください
- ジルコニアは、数ある歯科材料のなかでも変色しにくい素材ですが、まったく色が変わらないというものではありません。コーヒーや紅茶、赤ワインなどを習慣的に飲んでいる方は、ジルコニアでも変色する場合があります。ただし、一般的にはジルコニアがレジンのように劣化で変色することはほとんどありません。
ジルコニアの色が合わないときの調整方法
ジルコニアの色が周りの天然歯と合わない場合に調整する方法を解説します。
- ジルコニアの色が合わないときの調整方法を教えてください
- ジルコニアの色と合っていないのが軽微であれば、ステイン調整やジルコニアのセラミック調整で改善できることがあります。これらの調整で難しい場合は、ジルコニアの再作製によって調整しなければなりません。
- ジルコニアの被せ物を作り直さずに色を調整する方法はありますか?
- ジルコニアの表面にシミをつけ足すステイン調整、ジルコニアの表面の陶材で修正するセラミック調整なら、被せ物を再作しなくても色の調整が可能です。これらの方法は、高度な技術が必要となり調整できる範囲は狭いです。
- 天然歯の色を調整する方法はありますか?
- 天然歯の色は、ホワイトニングで調整ができます。過酸化水素や過酸化尿素からなるホワイトニング剤をエナメル質に作用させ、歯の着色や変色を改善します。ジルコニアの色が合わないのを防ぐには、事前にホワイトニングを行っておくことも大切です。
ジルコニアの色選びで失敗しないためのポイント
ジルコニアの色選びで注意しなければならないポイントを解説します。
- ジルコニアの色選びで失敗する原因は何ですか?
- ジルコニアの色選びで失敗や後悔をする主な原因は、光のあたり方や光の種類にあります。歯科治療で色選びをする際には、基本的に自然光のある場所で行うことが推奨されます。難しい場合は、室内光や診療チェアのライトで行うことになります。
歯科医院のライトで色選びを行ってしまうと、実生活での見え方が異なるため、失敗や後悔をしやすくなるので、歯科医師や技工士に相談してみましょう。
素材選びを間違うことで、色選びで失敗する可能性は高くなります。例えば、フルジルコニアは強度に優れているものの、色の選択肢が少ないことから、プレミアムジルコニアやジルコニアステインよりも、色選びで失敗や後悔しやすくなります。そのため、ジルコニアの色選びで失敗や後悔をしたくないという方は、はじめから色の選択肢が豊富な素材を選ぶことも重要です。
歯の着色を促す食品を習慣的に摂取していたり、ジルコニアによる治療後にホワイトニングを受ける予定であったりする場合も、事前に歯科医師へと伝えておくことが大切です。
- シェードガイドを使って色を決めるときの注意点を教えてください
- シェードガイドでジルコニアの色選びをする際には、自然光で行うようにしましょう。歯科医院の診療室に窓がなく、自然光を入れることができない環境では、室内光で行わなければなりませんが、診療チェアのライトは避けるようにしましょう。
ジルコニアを装着後にホワイトニングする予定があれば、色調に合った色をシェードガイドで選ぶ必要があります。可能なら、ホワイトニングをしてからジルコニアの色選びを行った方が望ましいでしょう。
- ジルコニアの色選びで歯科医院に確認すべきことを教えてください
- ジルコニアの色の選択肢を確認しておくことが大切です。ジルコニアの色を重視するのであれば、プレミアムジルコニアやジルコニアステインのような高い審美性を追求できる素材が望ましいでしょう。
ジルコニアの治療経験も事前に確認しておくことが大切です。ジルコニアを用いた審美治療は、経験が豊富な歯科医師は、患者さんの要望に応えてくれやすいです。ジルコニアの色選びで失敗した場合の対応や作り直す場合の費用などもあらかじめ歯科医院に確認しておくことで後悔も少なくなります。
編集部まとめ
ジルコニアの色が合わない原因と解決策について解説しました。ジルコニアの色が合わない原因としては、色の選択を誤っている、光の透過性の違いによる影響、天然歯の色が変化した、歯科技工士の技術が不足している、歯科医師とのコミュニケーション不足などが挙げられます。ジルコニアの色が合わない場合は、ステインを付与したり、陶材で微調整したりする方法がありますが、それでも改善が見込めないケースでは、被せ物の作り直しが必要となります。いずれにしてもジルコニアの色が合わないことで悩んでいる場合は、主治医に相談することが推奨されます。
参考文献