部分入れ歯を作るとき、いろいろな種類があって、自分にはどのタイプが適切なのか迷ってしまいますよね。
この記事では、部分入れ歯の種類や選び方、そしてほかの治療法との比較などについて、詳しく解説いたします。
義歯治療でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
部分入れ歯とは
部分入れ歯とは、歯が何かしらの原因でなくなってしまったときに、その部分を補ってお口の機能を補完するために利用される義歯の1つです。
義歯にはさまざまなものがありますが、入れ歯と呼ばれるものは自分で任意につけたり外したりができるものとなっていて、取り外して掃除することが可能になっています。
部分入れ歯の種類
部分入れ歯にはさまざまな種類があり、見た目の自然さや噛み心地、治療にかかる費用などに違いがあります。
まずは、それぞれの部分入れ歯についてご紹介します。
保健診療で作ることができる一般的な部分入れ歯
保健診療で作ることが可能な部分入れ歯は、歯科用のプラスチックで作られた白い歯のパーツが、同じくプラスチックで作られたピンク色の土台となるパーツにくっついていて、歯の横などから金属のワイヤーが伸びているというような形状のものです。
歯が一本だけない場合だけではなく、複数本欠損している場合や、飛び石のように欠損している場合も一つの部分入れ歯で治療が可能で、プラスチックの土台や金属の連結子などでつながれた構造の部分入れ歯が作られることもあります。
金属のワイヤーはクラスプやレストと呼ばれるパーツで、この部分を隣接する歯にひっかけて固定することで、入れ歯を安定させたり、噛んだときに沈み込まないようにして、しっかりと噛めるようにしています。
保健診療での入れ歯を作る最大のメリットはコスト面で、治療する範囲にもよりますが、数千円から作ることができます。
入れ歯は口腔環境の変化などによって調整したり、作り直したりといった必要がでてくるものですので、手軽に利用しやすい金額であることはとても魅力的といえるでしょう。
ただし、保健診療で作る部分入れ歯はこのワイヤーパーツが目立ちやすく、つけたときに不自然さが生じてしまいやすい点や、しっかり固定できるようにするため、ワイヤーをひっかける歯を少し削ったりする点、そして、残っている天然の歯が折れたり、むし歯になったりというリスクが高くなる点などがデメリットとなります。
保健診療で作れる部分入れ歯は素材も決まっていて、上述のように白い歯の部分や土台部分は歯科用のプラスチックで作られます。
そのため、残っている歯とだいたいの色を合わせることはできるのですが、天然の歯のように透明感がある色味を実現することが難しいため、どうしても不自然さが出てしまいます。
また、土台部分もプラスチックで作られているため、はめると硬さや違和感がでやすく、使い心地という点でも十分といいにくい側面があります。
コンフォート義歯
コンフォート義歯は、歯茎にあたる部分にシリコンのやわらかい素材を張り付けて作られた部分入れ歯です。
バイテックグローバルというメーカーが展開しているもので、国内外に導入している歯科医院が存在します。
歯茎にあたる土台部分がやわらかいシリコンになっているため、装着したときに密着しやすく、プラスチックの土台のものよりもしっかりとした噛み心地が実現しやすいことや、使用時の痛みが出にくいこと、そして金属製のワイヤーで固定しないため、見た目が自然であることなどがメリットとされています。
一方でデメリットとしては、保険適用外となるため治療を受けるためにコストがかかり、さらに材料として使用されているシリコンはカンジダ菌などが繁殖しやすく、それを防ぐためには専用の洗浄剤を使用してケアを行う必要があるためコストがかかってしまう点や、シリコンがプラスチックの土台に張り付けられた構造となっているため、厚みが増えて違和感につながるケースがある点、そして、シリコンが剥がれるなどの関係で定期的な作り直しや修理が必要になりやすい点があげられます。
また、ワイヤーがないとはいえ、どうしても土台部分が歯茎とまったく同じ色ではないため、多少の不自然さが出てしまう点もデメリットとされています。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、名前のとおりクラスプ、つまり歯にひっかけて固定する金属製のワイヤーパーツがないデンチャー(入れ歯)です。
ワイヤーがない代わりに、歯茎部分のパーツが残っている健康な歯の方にまで伸びたような構造となっていて、土台を残っている歯によって固定することで、安定させるものとなっています。
金属製の目立つクラスプがないため、装着した際の見た目が自然であることがメリットとなっていて、審美性の高い部分入れ歯を作りたいという方に向いている方法です。
一方で、土台部分でしか固定がされないことから、クラスプがある部分入れ歯と比べると安定性が低くなり、硬い食べ物が食べにくい点がデメリットとなっています。
ノンクラスプデンチャーも保険適用外となるため、自費でそれなりのコストをかけて作成する必要があります。
マグネットデンチャー
マグネットデンチャーは、磁力で固定する方法の入れ歯です。
マグネットデンチャーを使用する場合、まずは歯の根っこが残っている場所に、入れ歯を固定するための磁力によく反応する土台を埋め込む治療が行われます。 そして、その土台にくっつける形で、磁石の入った入れ歯をはめ込む方法で利用します。
マグネットデンチャーは歯を固定するためのクラスプが不要であるため、見た目が自然であることや、つけ外しがしやすい点、そして安定性が高いため、ある程度強く噛んだりしやすい点などがメリットとなっている部分入れ歯です。
デメリットは歯根が残っている歯がないと治療を受けられない点や、磁性金属を利用するためMRIやCTなどの検査に影響を及ぼしやすいことなどがあり、マグネットデンチャーを使用している人が病院での検査を受けるときは、事前に入れ歯治療を担当した歯科医師や検査を担当する医師と相談して、適切な対応を行う必要があります。
マグネットデンチャーは2021年から、保険適用でも受けることが可能になっていますので、治療に興味がある方は適応などについて相談してみるとよいでしょう。
コーヌスクローネ
コーヌスクローネは、残っている天然の歯に内冠とよばれる器具を取り付け、内冠にピッタリ合う形状の外冠がついた入れ歯を被せることで固定させるものです。
クラスプのような固定器具もなく安定させることができるのかと疑問に思われやすいですが、入れ物と蓋がしっかりと密着したサイズになっていることでしっかりと安定させることが可能で、茶筒のような仕組みととらえるとわかりやすいでしょう。
固定器具がないため使用時の違和感が少なく、安定して使いやすい部分入れ歯となっています。
デメリットは保険適用外であるためコストがかかる点や、健康な歯を削って土台にする必要がある点があげられます。
金属床義歯
金属床義歯は、入れ歯の土台となるパーツをプラスチックではなくコバルトクロムやチタンといった金属で作る入れ歯です。
プラスチックと比べてより硬い金属を使用することで、土台部分を薄く作ることが可能になるため、これにより装着時の違和感を軽減させることができます。 また、土台が金属になることで力がかかってもたわみにくく、沈み込みにくくなるため、安定感のあるしっかりとした噛み心地が得られやすい点や、プラスチックと比べて温度が伝わりやすいため、食べ物の温度を感じやすく、食事を楽しみやすい点が特徴です。
金属床のパーツをほかの歯にかけて固定する形となりますが、金属のパーツのうえにプラスチック素材などを被せることで、見た目も自然にできます。 金属製の土台であるため、割れにくく耐久性が高い点もメリットといえるでしょう。
一方のデメリットは保険適用外であるためコストがかかる点や、金属パーツで固定されているため修理がしにくい点となっています。
インプラント義歯
インプラント義歯は、オーバーデンチャーとも呼ばれるもので、歯槽骨に埋め込んだインプラントによって固定する入れ歯です。
通常、歯科診療におけるインプラント治療では、埋め込んだインプラント一つにつき、一つの義歯を装着して使用することで、自然な噛み心地を実現します。 しかし、歯の多くが欠損している場合には治療費や身体的な負担が大きくなりすぎる点や、そもそも歯槽骨の厚みなどによって治療を受けられない場合があるため、インプラントの土台を利用して入れ歯をしっかりと固定させる、インプラント義歯の治療が選択肢となります。
インプラント義歯は歯槽骨に定着させているインプラントで入れ歯を固定するため、高い安定感があり自然な噛み心地を実現しやすい点がメリットとなっています。
また、固定器具などが見えないため、自然な見た目を実現できる点もメリットです。
デメリットはやはり保険適用外である点や、インプラント治療特有のインプラント周囲炎に注意する必要があり、治療後のケアを適切に行わなければならない点です。
部分入れ歯の選び方
部分入れ歯はさまざまな種類があるため、どの方法がよいか迷ってしまいますよね。
ここでは自分に合った適切なものを選ぶポイントをご紹介します。
見た目を重視したい
部分入れ歯を選ぶポイントとして、見た目を重視したいという方は多いと思います。 見た目が不自然になってしまう要因は固定器具としてのワイヤーの存在や、歯や歯茎の色が合っているかという点になりますので、まずは固定器具が表から見えないタイプのものを選びましょう。
そのうえで、より自然な見た目にするためには人工歯の色なども強く影響しますので、予算が許すのであれば、セラミックによる自然な透明感を再現した歯などを利用した入れ歯を選択するとよいでしょう。
嚙み心地や使用感を重視したい
機能面を重視する場合、どうしてもノンクラスプデンチャーなどの入れ歯は安定感が低くなるため、おすすめできません。
保健診療での入れ歯はしっかりと安定させることができますが、よりよい噛み心地を求めるのであれば、インプラント義歯などの方法を検討するとよいでしょう。
値段を重視したい
値段を重視する場合は、保険適用となる部分入れ歯が第一候補となります。 従来の金属製クラスプで固定させるもの以外にも、マグネットデンチャーが保険適用となっていますので、こういった方法でまずは相談してみるとよいでしょう。
また、値段を重視する点では長期的なコスト面も考慮する必要があり、治療費用や作り直しの費用を考えると、安易に保健診療で扱える素材を使用して作るよりも、長い間使い続けられる素材を使用した入れ歯の方が経済的な場合もあります。
治療にかかる費用は欠損範囲や年齢などによっても変わりますので、まずは歯科医院で長期的な部分も含めて相談してみるとよいでしょう。
他の治療法や差し歯との違い
歯を補う治療では、部分入れ歯以外にもさまざまな方法があります。 それぞれの違いについてご紹介します。
差し歯との違い
差し歯は歯の根っこなど一部が残っている場合に行われる治療で、歯が完全になくなった状態で利用される部分入れ歯とは治療目的が異なります。
差し歯は被せ物やクラウンとも呼ばれ、残っている歯の形を整えて土台をつくり、そのうえうに人工の歯を歯科用接着剤で固定するものです。
入れ歯のようにつけたり外したりすることはできず、天然の歯と同じように歯磨きによるケアを行います。
差し歯はしっかりと固定されているため、天然の歯と同じように噛みやすいですが、強い力で噛んでしまうと割れてしまう可能性などがあるため、差し歯の素材によっては食事にある程度の制限がされる場合もあります。
総入れ歯との違い
部分入れ歯は歯が残っている場合に利用される入れ歯で、総入れ歯は歯が全く残っていない場合の入れ歯です。
歯が残っていない状態のため、クラスプによる固定などが行なえず、口腔内の粘膜に密着させる形で固定を行います。
ブリッジとの違い
ブリッジは欠損した歯の両隣にある健康な歯を少し削って土台として、歯が数本つながったような義歯を被せて固定する方法です。
しっかりと安定させることができるため、天然の歯と同じように物を噛みやすく、ワイヤーなどがないため見た目も自然であることが特徴です。
一方で歯茎との隙間に汚れなどが蓄積されやすく、定期的に歯科医院での専門的なクリーニングが必要になる点や、固定させる両隣の歯に負担がかかる点、そして歯の欠損範囲が1~2本程度の場合にしか適応できない点などがデメリットとなっています。
インプラントとの違い
歯槽骨に金属製のインプラントを埋め込み、そこに人工の歯をかぶせる治療がインプラントです。
インプラントは骨に対して固定させるため、高い安定感があり天然の歯と同じように噛むことができる点や、見た目がとても自然で違和感がない点がメリットの治療です。
一方で、インプラント治療は自費診療でしか行われていないため、費用が高額になりやすいことや、大がかりな手術が必要で、治療の期間がかかる点などがデメリットとなっています。
編集部まとめ
部分入れ歯にはさまざまな種類があり、見た目や機能面、コストなど何を重視するかによって適切な選択肢が異なります。 自分に合った部分入れ歯を作りたいという方は、さまざまな入れ歯を取り扱っている歯科医院でよく相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献