入れ歯を装着すると歯茎が痛い。これは入れ歯でよくあるトラブルのひとつです。入れ歯はその構造上、歯茎に刺激を与えやすくなっているため、入れ歯を使ったときの痛みに悩まされる人がとても増えています。ここではそんな入れ歯をすると歯茎が痛い原因と対処法を解説します。入れ歯による痛みがなくならなかったり、入れ歯にどうしても慣れなかったりする場合の代替案も併せて紹介します。入れ歯による不快症状に悩まされている人は、参考にしてみてください。
入れ歯の概要
はじめに、入れ歯の基本事項を確認しておきましょう。
- 入れ歯(義歯)とは何ですか?
- 入れ歯(義歯)とは、むし歯や歯周病、事故などで失った歯を補うために作られた装置です。患者さんの口腔内の状態に合わせて、個別に作成されるため、喪失した歯の審美性と機能性を自然な形で回復できます。入れ歯を装着することで、噛み合わせや発音の改善、顔の輪郭維持も可能になります。また、失った歯の隙間を埋めることで、残存している歯の移動を防ぎ、全体の口腔健康を保つ役割も果たすほか、入れ歯は咀嚼機能によい影響も与えます。取り外し可能なため、毎日の清掃やメンテナンスが容易で、患者さんのライフスタイルに合わせて使用できます。
- 入れ歯の種類と構造について教えてください
- 入れ歯には主に部分入れ歯と総入れ歯の2種類があります。部分入れ歯は、少なくとも数本の歯が残っている患者さんのためのもので、金属のフレームやクラスプで残存歯に固定されます。これにより、噛み合わせの安定性が得られます。一方、総入れ歯は、すべての歯を失った患者さんに適したもので、保険診療ではアクリル樹脂で作られ、歯茎に吸着することで工程できます。総入れ歯は、上顎と下顎それぞれに作成され、噛み合わせのバランスを取るための重要な役割を果たします。どちらの入れ歯も、患者さんの口腔内に合わせてカスタマイズされます。
- ブリッジやインプラントとの違いは何ですか?
- 入れ歯とブリッジ・インプラントには、それぞれ次のような違いが見られます。
◎入れ歯とブリッジの違い
入れ歯とブリッジは、どちらも失った歯を補うための方法ですが、構造と使用法に違いがあります。入れ歯は取り外し可能で、部分入れ歯と総入れ歯の2種類があります。一方、ブリッジは隣接する健康な歯を削って支台とし、固定するタイプの人工歯です。ブリッジは固定されているため、取り外しはできません。噛み合わせの安定性が高い一方で、支台となる歯に負担がかかることがあります。ブリッジは固定式なので、しっかりとした噛み合わせが得られます。◎入れ歯とインプラントの違い
インプラントは、顎骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、そのうえに上部構造を取り付ける方法です。インプラントは自然な噛み合わせと見た目が手に入り、顎骨の減少を防ぐ効果も期待できます。入れ歯は取り外し可能で、日常の手入れが簡単ですが、インプラントは固定されており、取り外しはできません。また、インプラントは高価で手術が必要ですが、長期的な安定性と快適さが手に入るというメリットを伴います。どちらの方法も、患者さんの状況や希望に応じて選択することが重要です。
入れ歯で歯茎に痛みが出る原因
次に、入れ歯を装着することで歯茎に痛みが出る原因について解説します。
- 入れ歯で歯茎が痛くなる原因を教えてください
- 入れ歯で歯茎に痛みが出る主な原因は、以下の3つです。
◎入れ歯が安定していない
入れ歯がしっかりと安定していない場合、お口のなかで動いてしまい、歯茎に摩擦が生じます。この摩擦が歯茎に痛みを引き起こします。安定しない原因としては、経年劣化による入れ歯の変形や顎骨および口腔粘膜の変化が考えられます。◎入れ歯と歯茎の適合性が悪い
入れ歯と歯茎の適合性が悪い場合、入れ歯が特定の部分に過度の圧力をかけることがあります。この圧力が歯茎に痛みを引き起こします。適合性の悪さは、装着時の調整不足や、歯茎の形状変化により生じることがあります。また、吸着時に、歯肉に摩擦、擦過が起こり褥瘡が発症することもあるのでその点は注意しましょう。◎噛み合わせが悪い
入れ歯の噛み合わせが正しくない場合、食事の際に特定の部分に負担がかかり、歯茎に痛みを引き起こします。噛み合わせの問題は、入れ歯の作成時に適切な調整が行われていないか、使用中の経年変化に起因することがあります。そのため入れ歯は、定期的な歯科医院での調整が重要といえます。
- 入れ歯の手入れが原因で歯茎が痛くなることはありますか?
- 入れ歯の手入れが不十分だと歯茎に痛みを引き起こすことがあります。まず、入れ歯に食べかすが付着すると、入れ歯の適合性が悪くなり、歯茎に不均一な圧力がかかるため、痛みや炎症を引き起こします。特に、歯茎に食べかすが溜まると、噛み合わせも悪くなり、痛みが増すことがあります。 また、正しい方法で手入れをしないと、入れ歯が変形することがあります。例えば、熱いお湯で洗浄したり、強い力でブラシをかけたりすると、入れ歯が変形し、歯茎に強く当たる部分が生じることがあります。このような変形は、入れ歯の適合性を損ない、歯茎に過度な圧力をかけるため、痛みを引き起こします。そのため入れ歯は、正しい手入れ方法を守り、定期的に歯科医院でチェックを受けることが重要です。
- 入れ歯が合っていないとどのようなときに痛みを感じやすいですか?
- 入れ歯が合っていない場合、主に会話や食事のときに痛みを感じやすくなります。まず、会話時に痛みを感じる理由として、発音時に舌や口唇が入れ歯に接触し、動くことで歯茎に摩擦が生じるためです。この摩擦が繰り返されると、歯茎に痛みや炎症を引き起こします。食事の際には、噛み合わせの不均衡が原因で痛みを感じやすくなります。噛む力が均等に分散されず、特定の部分に過度な圧力がかかることで、歯茎に痛みが発生します。また、硬い食べ物や粘着性のある食べ物を噛むとき、入れ歯がずれやすくなり、これも歯茎に負担をかけます。 入れ歯が適切にフィットしていないと、日常生活でのさまざまな場面で痛みを感じることが増えます。適切な調整と定期的なチェックが、痛みの予防に重要です。
入れ歯で歯茎が痛くなったときの対処法
入れ歯を装着した直後は、必ずといってよい程、違和感や痛みが生じるものです。その症状は、入れ歯に慣れるに従い弱まっていくことから、まずは入れ歯に慣れることに専念しましょう。
- 入れ歯に慣れるまでの対処法を教えてください
- 次の方法を実践することで、入れ歯に慣れるまでの時間を短くできます。
◎入れ歯の装着時間をできるだけ長くする
入れ歯に慣れるためには、装着時間をできるだけ長くすることが大切です。初めは違和感を覚えるかもしれませんが、徐々に口腔内の感覚が慣れていきます。可能であれば、日中はできるだけ入れ歯を装着し、寝るときだけ外すようにしましょう。◎入れ歯はこまめに洗浄する
入れ歯を清潔に保つことも重要です。食後には必ず入れ歯を取り外して洗浄し、歯垢や食べかすを取り除きます。これにより、口腔内の健康を保ち、歯茎の痛みを予防することができます。また、定期的に入れ歯専用の洗浄剤を使用することで、清潔を維持できます。◎入れ歯をつけたまま会話・食事をする練習をする
入れ歯を装着した状態での会話や食事の練習をすることも、慣れるために有効です。つけ初めはゆっくりと話し、噛み合わせを意識しながら食事をしましょう。やわらかい食べ物から始め、徐々に硬い食べ物にも挑戦していくとよいです。
- 入れ歯にどうしても慣れない場合のほかの治療法はありますか?
- 入れ歯以外の治療法としては、ブリッジとインプラントの2つが挙げられます。
◎ブリッジ
入れ歯にどうしても慣れない場合、ブリッジが一つの代替治療法となります。ブリッジは、欠損した歯の両側にある健康な歯を削って支台とし、その間に人工の歯を固定する方法です。これにより、噛み合わせが安定し、自然な見た目と機能が手に入ります。ただし、支台となる歯に負担がかかることや、健康な歯を削る必要があるため、慎重な検討が必要です。◎インプラント
もう一つの治療法としてインプラントがあります。インプラントは、顎骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、そのうえに上部構造を取り付ける方法です。インプラントは固定されており、入れ歯のように動くことがないため、噛み合わせが安定し、長期的な快適さを提供します。また、顎骨の減少を防ぐ効果もあります。手術が必要で費用も高めですが、その分高い満足度が得られる治療法です。患者さんの個々の状況に応じて、適切な治療法を選ぶことが大切です。
編集部まとめ
今回は、入れ歯をすると痛みが出る原因と対処法を解説しました。入れ歯を作った直後は、慣れるまで痛みなどの不快症状に悩まされがちですが、それが長く続く場合は入れ歯の不適合などの原因が疑われるため、主治医に相談した方がよいです。入れ歯は細かな調整を加えながら使っていく装置なので、簡単な方法で痛みを取り除けることも少なくありません。その一方で、調整などでは改善できない痛みは、入れ歯を作り直すか、ブリッジ・インプラントといった別の方法で治療をやり直す必要が出てきます。いずれにせよ入れ歯のトラブルは、それを作った歯科医師に相談することが重要となります。
参考文献