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歯ぎしりによる身体への影響は?歯ぎしりを改善することはできる?

歯ぎしりによる身体への影響は?歯ぎしりを改善することはできる?

朝起きたときに顎が痛い、知覚過敏になってしまった、最近よく眠れない気がするなどのお悩みをお持ちのかた、実はそれは歯ぎしりの影響かもしれません。
この記事では、歯ぎしりによる影響や原因、改善方法などについて詳しく解説します。

歯ぎしりとは

歯ぎしりとは

歯ぎしりとは、一般的には寝ている間に上下の歯を強くこすり合わせてしまう行為をいいます。
歯科用語ではブラキシズム(Bruxism)といいますが、これはフランス語のLa Bruxomanieからきている言葉で、こすり合わせるという意味であり、睡眠時に限らず、日中の食いしばりなども含めて歯や顎に負担をかけてしまう口腔内の悪い習癖をブラキシズムとよび、寝ている最中の歯ぎしりは睡眠時ブラキシズムとよばれ、睡眠関連運動異常症に分類されています。
歯ぎしりは主に浅いノンレム睡眠時に発生することがわかっていて、浅い眠りを繰り返す人に現れやすく、眠りが深い人には現れにくい症状です。
歯ぎしりがあると、寝ている間に歯を擦り合わせるようなギシギシといった音が響くこともあり、一緒に寝ているパートナーなどに不快感を与えるほか、強く歯をこすり合わせることで歯や顎への負担がかかり、さまざまなトラブルを引き起こす原因となります。

歯ぎしりによる9つの影響

歯ぎしりによる9つの影響

歯ぎしりによって生じる可能性がある影響は、下記のようなものが考えられます。

歯がすり減って噛み合わせが悪くなる

歯はとても硬いエナメル質という層に覆われていて、硬いものを噛んでも簡単には削れたり割れたりすることはありません。
しかし、歯ぎしりでは歯と歯同士という同じ硬さの物同士が擦れ合わさるため、お互いに削れてすり減ってしまい、その結果として噛み合わせが悪くなる可能性があります。

歯や歯の根が割れてしまう

噛む力というのはとても強く、20代の成人男性150名を調査したデータによれば、前歯、犬歯、奥歯でそれぞれ15.66kg 、 27.74kg 、 66.90kgという咬合力が記録されています。
ただし、このデータは起床時に意識して咬んだ場合の力で、睡眠時に無意識で歯を噛みしめる際にはこの数倍の力が発揮されるとも考えられていて、最大で数百kgという強い負荷がかかるともいわれています。 また、噛む力は体重に比例するとも言われているため、より重量がある方であればさらに強い力で噛むことができるということになります。
このように、歯ぎしりのときには歯にとても強い負荷がかかるため、歯や、歯槽骨に埋まっている歯の根っこが割れてしまう、またはひびが入ってしまうという可能性が考えられます。
歯の根っこが割れてしまうと歯茎の中で炎症をおこすなどのトラブルにつながり、場合によっては抜歯なども検討しなければならないケースもあります。

治療した歯の詰め物が取れやすくなる

歯に詰め物などでの治療を行っている場合、歯ぎしりによって強く擦りあわされることで接着が剥がれ、詰め物が取れてしまう可能性があります。
詰め物が取れてしまうと歯の内部に汚れが入りやすくなってしまい、むし歯などの症状が進行しやすくなるため、早めに歯科医院での治療を受ける必要があります。
また、取れてしまうまでいかなくても、詰め物と歯の接着が弱くなってできた隙間に汚れが蓄積されると最近が繁殖しやすくなり、この部分にできたむし歯が歯の内部に進入していくといったトラブルに発展する可能性もあります。

顎関節のトラブル

前述のとおり、歯ぎしりはとても強い力が歯、そして顎にかかるため、顎の関節にも悪影響が生じやすいといえます。
また、歯ぎしりを行う際には下顎が無意識でずらされるため、これも顎の関節に負担がかかりやすくなる要因です。
顎関節の炎症や、顎関節症の悪化といった状態につながるほか、顎の位置がずれて噛み合わせが悪化してしまうといった可能性もあります。

知覚過敏につながる

強く歯をこすり合わせることで表面のエナメル質が削られてしまうと、冷たいものや熱いものなどを口に含んだ時、その刺激が歯の内部に伝わりやすくなります。
こうした刺激で歯にしみるような痛みが生じる症状を知覚過敏といい、冷たいものや熱いもの、甘いものなどを食べにくくなる可能性があります。
また、強く噛みしめることで歯槽骨に対して強い負荷がかかるため、これによって骨がダメージを受けて歯茎の位置が下がり、歯の根元が露出しやすくなってしまう場合もあります。
歯の根の部分はエナメル質で覆われていないため、歯茎から歯の根が露出してしまうと、これも知覚過敏の原因となります。

歯周病の悪化

歯周病は歯に付着した歯垢や歯石の中にいる細菌が作り出す毒素などによって、歯茎に炎症がおきたり、歯槽骨が溶かされて歯茎の位置が下がっていってしまうといった症状です。
歯周病自体で痛みが出ることはないため、気が付いたら歯槽骨が減少してしまい、歯がグラグラするなどの状態になって、歯を抜かなければいけないという状態につながるケースもあります。
歯ぎしりで歯に強い負担がかかると、上述のとおり歯を支える歯槽骨にも強い負担がかかり、これによって歯を支えている骨やその周囲の細胞もダメージを受けやすくなるため、歯周病が悪化しやすくなる影響があるといえます。

睡眠の質の低下

歯ぎしりは無意識で口腔周辺に強い負荷をかけている状態ですので、睡眠が浅くなり、睡眠の質が低下するという影響が生じます。
睡眠の質が低下してしまうと、十分に寝ているはずなのに疲れが取れない、日中に眠くなる、免疫力が下がるといった悪影響につながりやすく、生活の質が低下しやすくなります。
また、歯ぎしりは場合によって大きな音を生じさせますので、一緒に寝ている家族やパートナーなどの睡眠の妨げになってしまうという可能性もあります。

頭痛や肩こりなどの症状

歯ぎしりによって顎の関節や筋肉に負担がかかると、顎周囲の血流が悪くなったり、咬筋や側頭筋といった、咬む動作に関係する筋肉が傷んだりといった状態につながります。
咬筋や側頭筋は後頭部や首、肩へと続く筋膜などとも密接な関係があるため、頭痛や肩こりといった症状が慢性化してしまうという影響が生じる可能性があります。

エラなど見た目への影響

歯ぎしりは無意識に咬筋を強く働かせるため、これが繰り返されていくと咬筋が発達していくことにつながります。
咬筋が強く張っていると顔を正面から見たときにエラ部分が横に張り出したような見た目になりやすく、フェイスラインに影響が生じます。
通常であれば筋力は加齢とともに低下していきますが、年をとってむしろエラがはってきたというような場合は歯ぎしりによる影響も考えられますので、歯科医院で歯の検査などを受けてみるとよいでしょう。

歯ぎしりの原因

歯ぎしりの原因

歯ぎしりは睡眠時に無意識で行ってしまう癖ですので、自分自身で注意して治そうとしても、なかなか改善が難しいといえます。
歯ぎしりを改善させるためには、その原因を解消していく必要がありますので、下記のような原因に思い当たる内容がないか確認してみましょう。

ストレスなどの精神的な影響

歯ぎしりや食いしばりは、精神的なストレスなどによって生じやすくなるとされています。
日中でも精神的に強い負荷がかかると歯を食いしばるといった行動が生じますが、これは歯を強く噛むことで全身の筋肉を硬直させ、より強い力を発揮できるようにすることで、ストレスの元凶(外敵など)と戦ったり、その場から逃げたりするための反応であるといえます。
ストレスがかかりやすい環境にいると、睡眠時だけではなく日常的に歯を食いしばって力を入れた状態になりやすく、その状態が癖になって、より歯ぎしりや食いしばりの状態が悪化してしまうという可能性もあります。
また、ストレスによる精神状態の不安を改善するために使用する精神刺激薬や抗うつ剤といった薬剤の副作用として歯ぎしりが生じる場合があったり、アルコールやカフェイン、喫煙といったストレスを解消する目的での生活習慣も、歯ぎしりの発生を促進する可能性があります。

噛み合わせの問題

歯ぎしりの原因について、以前は特に嚙み合わせの問題(咬合異常)が引き起こすものと考えられていましたが、現在は噛み合わせによる問題だけではなく、ストレスや遺伝、性格、飲酒や喫煙などの習慣、特定の疾患などさまざまな要因が関係する多因子性と考えられています。
そのため、噛み合わせの影響だけで歯ぎしりが生じたり、強くなるというものではありませんが、噛んだときに一部の歯だけが強く当たってしまったりするなど噛み合わせが良好でないと、その部分に集中して強い力がかかりやすくなるため、歯ぎしりによる問題がでやすくなる可能性があります。
また、噛み合わせの悪さが精神的なストレスにつながっているようなケースでも、歯ぎしりが出やすくなるといえるでしょう。

寝具が合っていない

寝具が身体にあっていないと、睡眠が浅くなりやすいといえます。
歯ぎしりは浅いノンレム睡眠のときに現れやすいことがわかっていて、ぐっすりと深く眠る人よりも、浅いノンレム睡眠を小刻みに繰り返す人の方が食いしばりを生じやすくなるため、睡眠の質が浅くなってしまうような寝具は、歯ぎしりの原因になりやすいといえます。
また、枕が高すぎると首が傾いてうつむいた状態になりやすく、奥歯を噛みしめやすい姿勢になってしまうため、歯ぎしりのトラブルにつながりやすくなります。
寝具は人それぞれ適切な硬さや大きさなどが異なりますので、身体にあった寝具選びを心がけましょう。

歯ぎしりの改善方法

歯ぎしりの改善方法

歯ぎしりを抑えたり、歯ぎしりによって生じるトラブルを減らしたりするためには、下記のような対策が有効です。

リラックスする

歯ぎしりは多因子性の症状ですが、そのなかでもストレスによる影響が大きいことがわかっています。
ストレスを避けて生活することは現実問題として難しいと思いますが、例えば睡眠直前にホットミルクなど気持ちがリラックスするものを取り入れてみたり、ゆっくりとお風呂に使ってみたりという方法で、気持ちを落ち着かせるような生活習慣を心がけることが1つの対策方法となります。
また、睡眠直前までテレビやスマートフォンを見ていたりすると、脳が覚醒状態を維持し続けてストレスを感じやすくなりますので、できれば早めに照明を決して、画面なども見ずにしっかりと睡眠をとるように心がけることも、睡眠の質を向上して歯ぎしりのトラブルを軽減されるための方法として有効です。

噛み合わせを改善する

歯ぎしりによって一部の歯に負担がかかると、その歯で知覚過敏の症状がでたり、歯が割れてしまったり、歯周病が進んだりといったトラブルにつながりやすいといえます。
噛み合わせを改善することでそうしたトラブルを抑えると同時に、適切な噛み合わせは食生活などを改善させて健康の向上につながるほか、ストレス耐性を引き上げるといった変化も期待できます。
また、噛み合わせが適切な状態になると無理に力をかけて噛む必要がなくなるため、日常生活における顎や歯への負担が軽減され、歯ぎしりによるトラブルも生じにくくなるといえます。
噛み合わせは歯科医院での歯列矯正治療などで改善が可能ですので、気になるかたは診察や治療を受けてみるとよいでしょう。

マウスピースによる治療

歯ぎしりによる歯への負担を軽減するための方法として、マウスピースの利用があげられます。
歯の状態に合わせたマウスピースを着用することで、歯がこすれて削られてしまったり、一部の歯に過度な負担がかかったりといった状態を防ぎ、歯ぎしりによるさまざまなトラブルを予防することができます。
ただし、マウスピースは歯ぎしりそのものを抑えることはできず、あくまでも歯ぎしりによる影響を抑えるためのものですので、歯ぎしりがおこらないようにするためにはストレスなどの要因を改善させる必要があります。
マウスピースは歯科医院などで自分の歯型に合わせたものを作成することが出来ますので、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

まとめ

歯ぎしりは、歯に負担がかかって歯がすり減ったりするだけではなく、睡眠の質を低下させたり、歯周病などの状態を悪化させたり、場合によっては歯が割れてしまうといったさまざまな影響を引き起こす症状です。
主な原因はストレスとされていますが、噛み合わせの改善やより深い睡眠をとれるように環境を整えることでも歯ぎしりによるトラブルの軽減が期待できます。
歯ぎしりによって歯が痛いといった自覚症状がある場合は、歯科医院で作成するマウスピースを使用するなどの治療でも症状を緩和することができますので、まずは一度信頼のできる歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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